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アクティブティーチャーの挑戦 第四十回(月刊高校教育7月号掲載)

学事出版『月刊高校教育』にてFind!アクティブラーナーの連載がスタート!
こちらでは冊子の記事をWEB版として公開しております。

アクティブティーチャーの挑戦 第四十回(月刊高校教育7月号)

巣鴨中学校・巣鴨高等学校
丸谷貴紀 先生

「巣鴨中学高校の国際教育プログラムについて」

≪巣鴨中学校・巣鴨高等学校について≫

本校は、1910年(明治43年)に文学博士遠藤隆吉先生が創立した私塾「巣園学舎」をはじまりとし、硬教育(努力主義)を実践して今日に至っています。学問を教えるが、部活も本気で指導する教員が集う学校で、学問の醸成は学校で行うものだと考え、それを実践している学校です。浮き沈みする社会的ニーズには惑わされず、それでいてジワジワと変化している社会の要請には応えようとしている、堅すぎない伝統的男子校です。

勉強もするが、部活もする生徒、素直に人の話を聞ける生徒、小さいことに囚われず清濁併せ呑める生徒が多いと感じています。それでいて、物怖じせずに想いや考えを語れる、主張できる生徒も多く、知見を深めれば、将来大化けする逸材たちだと思います。思いの丈を語らせる場所を提供していけば、一気に伸びると感じる瞬間が多いのです。

≪私の活動の変遷≫

私が、教師という仕事を目指すようになったきっかけは、母校の智弁学園和歌山高等学校での教育実習に行った時の、指導教官の先生との出会いでした。「英語そのものの面白さ」と「英語を教える面白さ」に気づかせてもらいました。そのときに、教科は英語に絞りました。

香川県の私立英明高等学校にて3年間勤務したあと、奈良県の私立西大和学園中学校・高等学校にて13年間勤務しました。その間、国際教育主任・学年主任もつとめました。今は、東京都の私立巣鴨中学校・巣鴨高等学校にて勤務4年目になります。進路指導部副主任、高校3学年副主任、国際教育部を担当しています。

西大和学園での13年間は、大学進学指導を軸にしながら、国際教育プログラム、探究プログラムに従事しました。模擬国連活動の開始(西大和大会を創設し全国から100名を超える高校生が集結)、文科省SGH指定から独自のAction Innovation Programへの移行、World Scholar's Cup、高校生議会、JFCビジネスグランプリ、大阪星光学院とのガチ高校生討論会などへの参加、The Young Americansを導入したりしました。最後に担任した高3のクラスからは、14名が東京大学に進学しました。

巣鴨中学校・巣鴨高等学校では、東京の地の利を活かした、①英語話者がたくさん来校する「イングリッシュ・シャワー(中1)」の開始、②各業界の専門家やスタートアップ企業の代表などによる「社会人との座談会(中3・高1)」の充実、③一流の世界観に触れる「思考力研鑽講座(小論対策)(高2・高3)」の開始、④マインドセットを鍛える「ハーバード大学で実施するボストン研修」に着手しました。

学校外での活動としては、JICA教師海外研修(2014ブラジル派遣)、NPO法人アイユーゴーでの活動があります。JICAによる派遣先はBRICSのBにあたるBrazilでした。めざましい経済発展や大自然アマゾン、日系移民の人たちの生活、同時に貧富の差などを体感しました。

NPO法人アイユーゴーは、ベトナム、ラオス、タイ、マダガスカルにおいて支援・協力を必要とする地域の人たちのために活動しています。生活環境の改善には、生活用水のための井戸建設、衛生環境の改善には共同トイレ建設などを行ってきました。また、子どもたちの教育の充実のために小・中学校、図書館を建設し、就労の機会を増やすために職業訓練所を建設してきました。さらに、若いリーダーの育成をするために、4か国(ベトナム・ラオス・タイ・日本)の間で学生を中心に医療と福祉の合同セミナーを行い、自分の仕事を持ちつつNGOの事業に協力できる人材の育成を行っています。

言うまでもなく、このような支援・協力は、現地のそれぞれのコミュニティ全体が一体とならなくてはなりません。そのためその地域での活動を住民たちとともに取り組み、生活が安定するように、企業を立ち上げ、住民たちの「経済的、精神的自立」を一層確かなものにできることを目指しています。

私が学び続け、様々な活動をしている理由は、社会の趨勢を見据え、地に足をつけた教育を提示できる英語科教員を心がけているからです。そのために、これからの社会と現在の日本の社会の問題点を、解像度高く見られる人物になることを目指しています。

≪私の英語の授業について≫

現在は、高3の読解を担当しているので、目的は、大学入試レベルの英文が正しく読める力を養成することです。そのためには「精読と速読の両輪」を鍛えること。つまり「精読の徹底」と「速読への仕掛け作り」が教員の仕事です。特に精読(和訳)には力を入れています。東京大学に合格した生徒でも、目指している段階では、実は英語が正しく読めていないことが多々あります。

私が目指している授業は、生徒の心を動かす授業です。生徒のwhy全てに納得感をもって解説する、答えではなく考え方を伝授する授業です。山本五十六の「やってみせ」「言ってきかせて」「させてみて」「実感せねば」「生徒は動かじ」と考えています。勉強の意義・意味、そして勉強の仕方をきちんと伝わるようにやってみせられる授業を心がけています。

≪巣鴨の国際教育プログラムについて≫

私は、巣鴨高等学校で「ボストン研修」を企画し、2023年度から高1・高2対象として40名でスタートしました。「非日常の環境で、比較的若いハーバード大学の学生のマインドセットに触れ、先生方から講義を受け、友人と議論し、自問する」こんな経験を高校生のうちに経験することで、「視点と視力を醸成し、物事を捉える解像度を高めよう、そして人前での発信力も高めよう」という趣旨で、ボストン研修をスタートさせました。ハーバード大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)の学生は、マインドセットが素晴らしいです。そういった環境で育ったからなのかもしれませんが、「彼らの多くは自分が社会をより良い方向に導こう」と本気で思っています。

VUCAやシンギュラリティの到来、AI技術の向上によって社会の表面的なところが劇的に変わっている中でも、大切なもの、「心」は変わりません。これからの社会をつくっていく人に、特に必要になるのが、人生哲学です。自分の中の羅針盤です。ライフミッションです。

また、2017年度から実施している「巣鴨サマースクール(SSS)」は、様々な分野の第一線で活躍する英国人6~9名をイギリスから講師として迎え、少人数のグループでディスカッションや様々なアクティビティを行うものです。オックスフォード大学、ケンブリッジ大学出身の人格・教養を兼ね備えた講師と、長野県蓼科の宿泊施設で6日間寝食を共にし、英語を学ぶこと、使うことに対するモチベーション向上、広い視野・創造力・寛容さの獲得を目指しています。

さらに、2021年度に開始した「ダブルヒーリックス(DH)」は、コロナ禍での約3ヶ月のオンラインプログラムから始まりました。講師の先生方は、何れもオックスフォード大学やケンブリッジ大学を卒業され、教職(中高・大学)や医療等、それぞれの分野の第一線で活躍されています。オンラインでは、歴史、医療、免疫学に関して学び、対面版では医療、教育をテーマにしています。

≪これから社会に出て行く若者へのメッセージ≫

本校では、「巣鴨ラーナーズジム(SLG)」という特別プログラムがあります。通常の授業で養う学力とは異なる“学ぶ力”をつけてほしいと、巣鴨の先生が巣鴨の生徒に向けて講演する特別な時間です。私は、このSLGで生徒たちに次のようなテーマで講演をしました。「学び方を学べ!」「睡眠について」「運動と脳について」「フロー状態をつくりだすには」「観察力(見る・掴む・捉える力)」です。

例えば、最近話した「逆算思考」について。スポーツでも学問でも会社経営でも、何であれ、物事を進める方法はいくつかあります。いつ試合があるのか、いつ国家試験があるのか、納品はいつなのかといった期限のある物事に対しては、学際的に考え、学際的に進めながらも「逆算思考」が大切になります。対象物との距離を詰めること、詰めていく計画をより具体化することが必須です。

対象物が大学合格ならば、距離とは今の自分の実力と理想との差(だいたいは乖離している)です。そしてそのレベルに達するのに当てることの出来る日数・時間の計測、ここまでは個人レベルで出来ることですが、ここからは学校の教科教育のプロである教員と一緒に取り組むべき事になります。それは学習の具体化、距離の詰め方、乖離の埋め方について相談し、具体化することです。

本校では、その距離を詰めるアイテムとして「フォーサイト手帳」を採用しています。この手帳は、単なる予定を忘れないように書くだけのものではなく、学習のための手帳です。学びをフロー型ではなく、ストック型に導く学習手帳です。学習手帳を最初から使いこなせる人は、ほぼいません。この「フォーサイト手帳」は、やりたいことと自分のパフォーマンスとの「乖離を埋める仕掛け」が多すぎず少なすぎず、適切にあります。計画の書かせ方が論理的です。漠然としたものを文字に起こさせて書かせ、最後に「自分の見通しの甘さ」を検証する項目が簡潔なので、取り組み続けやすい手帳です。

≪先生方へのメッセージ≫

教員という立場は、やはり凄く貴重な立場だと考えています。「常に夢を与えたり、人間として、優雅で贅沢な知性を磨くことに加担できる仕事」は、他にはないと思います。学ぶ「意味」「意義」を子どもたちに伝えることのできる貴重さ、しかも経済活動から良い意味で隔たれている。ゲームでも何でも、人間の脳は「変化しないと飽きてしまう」仕組みになっているようです。

学問とは変化し続ける。「変化し続ける学問は飽きない。そんな活動に生涯を捧げられるのは幸せだと思います。「motivateできる」「inspireできる」教員という仕事を、(雑務に忙殺され過ぎない仕組みを模索しながら、)盛り上げていきましょう!日本を世界をよくする人を一緒に増やしましょう!

これからの日本の教育について、少し語らせていただきます。解像度を高めるのが教育ではないでしょうか。解像度は「深めること」でも「広めること」でも高められます。しかし、日本の教育は、まだまだ偏差値といった数値を求めることに重きを置きすぎています。よって、知識偏重は小学校教育から抜け切れていないし、大学入試でも多勢です。それが現状であり、それが常識となっている。ただ常識とは、その時代、社会によって規定されたものであって、規制されたものです。結果日本の子どもたちは、自分について「深めること」「広げること」が充分になされないまま大人になっていませんか。時に自分について「深めること」、自己評価をする機会が少ないまま、大人になっていませんか。

自分で自分を見つめて、評価し、分析して、どんなことがしたくて、どう生きたくて、そのためには何をすべきなのか、といったことをじっくり考える「時間」がもっと必要です。放課後などにそういう時間を設けることのできる子どもは少ない。だからこそ、学校教育の中で「そういう時間」を取ってやりたいと私は考えています。

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