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アクティブティーチャーの挑戦 第十六回(月刊高校教育7月号掲載)

学事出版『月刊高校教育』にてFind!アクティブラーナーの連載がスタート!
こちらでは冊子の記事をWEB版として公開しております。

アクティブティーチャーの挑戦 第十六回(月刊高校教育7月号)

北海道札幌北高等学校
濱田愼吾先生

「総合的な探究の時間について」

≪札幌北高等学校について≫

 札幌北高等学校は、明治35(1902)年、北海道庁立札幌高等女学校として開校し、昭和23(1948)年、新学制実施により北海道立札幌女子高等学校へ転換、昭和25(1950)年、北海道札幌北高等学校と改称し男女共学となりました。これまで全日制42,937名の卒業生を輩出。令和4年10月7日には、120周年記念式典の実施を予定しています。

 本校は、生徒の学習意欲が高く、それに呼応するための授業や講習、添削はもちろん、進路相談等、面談体制も充実しています。たいへん面倒見のよい北海道有数の進学校です。その一方で、部活動数も41あり、加入率も毎年9割に及ぶ文武両道をモットーとしている学校です。
 
大学進学率はほぼ100%で、毎年、現役で東京大学、京都大学の合格者を複数輩出しています。2022年春には京都大学に10名が合格しました。特筆する点は、北海道大学に現役生で毎年100人程度の合格者を輩出していることです。なお、北海道大学の札幌キャンパスは本校のすぐ近くにあります。
 

≪教育課程研究指定校について≫

○研究の背景 
 平成28年度に、本校は文部科学省の「教科等の本質的な学びを踏まえたアクティブ・ラーニングの視点からの学習・指導方法の改善に関する実践研究」の指定を受け、平成28年度~平成29年度の2年間は拠点校、平成30年度~平成31年度までサポート校として、学校全体で「主体的・対話的で深い学び」に係る実践研究に取り組んできました。その一つとして「総合的な探究の時間」における探究活動の視点を重視した取組を行っています。

このような背景のもとで、令和2年度~令和3年度に、国立教育政策研究所の「教育課程研究指定校事業」に取り組みました。研究主題は、「総合的な探究の時間」の取組を基盤とし、教科等の学びとの関連を意識した「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善、学習評価の在り方に関する研究としました。

○研究の目的
  これまでの「主体的・対話的で深い学び」に関する実践研究を基盤として、「探究」を共通の軸とし、「総合的な探究の時間」と他教科・科目等における学びとを相互に関連付けることにより本校生徒の資質・能力の向上を図ることを本実践研究の目的としました。

○研究の目標
以下の2つを本実践研究の目標としました。
(1)「総合的な探究の時間」と他教科・科目等における「探究」を相互に関連付けることにより、本校生徒に育成する16の資質・能力の確実な定着を図る。
(2)「総合的な探究の時間」で身に付けた資質・能力を他教科・科目等で活用することにより、「主体的・対話的で深い学び」の視点を取り入れた学習・指導方法の工夫・改善を一層推進する。

○研究体制
平成28年度以降、全校体制で取り組んできた「主体的・対話的で深い学び」に関する実践研究で培った知見を基盤として、本実践研究に効果的に取り組むため、取組全体のマネジメントを担う校内委員会を継続して設置しました。

本実践研究の企画・運営は校内委員会内のコーディネーター及びファシリテーターが行い、学校課題については、少人数のユニットが分掌や学年と連携してその解決に当たりました。「総合的な探究の時間」については、教務部と学年が連携した「探究」ユニットがそのコーディネートを担いました。

探究の過程を「総合的な探究の時間」の本質と捉え、学びが「総合的な探究の時間」に留まらず、教科等の学びとの関連性を意識したものになるように、教材や指導方法等を常に分析・評価できる指導体制を構築しました。

教育課程研究指定校事業「総合的な探究の時間」 校内体制概念図

教育課程研究指定校事業「総合的な探究の時間」 校内体制概念図

≪「総合的な探究の時間」について≫

各学年の「総合的な探究の時間」の主な内容は以下の通りです。
なお、1・2学年の7月に実施している「Benesse GPSテスト」については、次の項目で記載しています。
○1学年の取組
・ワールドカフェ(4月)
・進路学習(7月~9月)(個人レポートの作成、プレゼンテーションの実施)
・思考力アセスメント(Benesse GPSテスト)(7月)
・課題研究(10月~2月)(グループワーク、ポスターの発表)
・ワールドカフェ(道徳、12月)

○2学年の取組
・思考力アセスメント(Benesse GPSテスト)(7月)
・課題研究(9月~12月)(グループワーク、ポスターの発表)
・個人レポートの作成(2月~3月)

○3学年の取組
・学問探究(9月~10月)(選択した講座におけるグループワーク) 

取り組みの様子1
取り組みの様子2

≪具体的な研究活動について≫

○「探究」における教科等横断的な取組
 「総合的な探究の時間」だけではなく、多くの教科・科目において探究的な実践を行う際には、実施する時期の重複等により、生徒の活動が過多になってしまう時期を作らないよう、年間計画を作成する段階で調整し、生徒・教員ともに負担感が出ないよう配慮した上で実践を行いました。

なお、3学年で実施した「学問研究」では、設定されたテーマを各教科で共有・連携し、複数の教員が3週間にわたり掘り下げる講義やグループワークを実践することで、より多面的な思考力の育成につなげることができました。

○思考ツールの活用
 Benesseの「GPSテスト」を1・2学年で実施しました。結果をフィードバックするために、掲げられている様々な思考力と探究活動で身に付ける資質・能力とを関連付け、自己評価を行うことができました。1学年の7月に実施し、その1年後の2学年7月にも実施したのは、変化や伸長を見取るためです。

○持続可能な教材の開発と実践
「探究」ユニットが企画して校内研修会を実施し、令和2年度に実施した各学年の「総合的な探究の時間」の実践事例について、全教員に共通理解を図ることができました。「総合的な探究の時間」を取り組む上で、「カリキュラム・マネジメント」の定義を明確にする必要があると考え、校内研修会を通して本校におけるカリキュラム・マネジメントの定義付けを行いました。

また、1年生が、2年生の課題発表を見る機会を設定することにより、より高度な探究方法を学ぶだけではなく、学校としての探究の在り方をつなぐ役割を担うことができました。

○学習評価
令和2年度は、1学年の進路学習において、個人が作成したレポートについて、生徒間でルーブリックを活用した相互評価を行いました。また、適切な場面で状況に応じた思考ツールを用いて、生徒自身が自己分析できるようにポートフォリオとして記録を残し、自己評価ができるようにしました。

令和3年度は、校内に「評価」ユニットを立ち上げ、2度の校内研修会を実施した後、教務部が主体となり3回目の研修会を実施しました。実践事例の検討等を通じ、本校が生徒に育成を目指す資質・能力に基づく評価の観点を全教科で共有しながら、教育計画の作成に取り組んでいます。

○学習環境の整備
 校内に「ICT」ユニットを結成し、ユニットを中心として校内のICT環境の整備を図りました。「Google Form」を用いたチェックテストの実施、自己採点及び分析等を行い、授業を通じてフィードバックを実施しました。

授業においても「Chromebook」を活用して授業を行う教員が増える等、授業改善につながるオンラインの活用がなされています。「総合的な探究の時間」でも2学年が実施した課題研究におけるポスターセッションを1学年に配信するため「Zoom」を活用しました。

また、令和4年度から始まるBYOD端末の活用に向けて、校内研修会で本校教諭が実践しているICTを活用した教育活動の実践紹介や、全国高等学校の実践事例の紹介を行いました。
 

≪研究の成果と課題について≫

○研究の成果について
(1)1・2学年生徒の家庭学習時間(11月)の伸長
本校が独自に実施している「学習状況調査」によると、「総合的な探究の時間」に係る取組を実施した令和元年度以降では、平日の家庭学習時間が1時間未満である生徒の割合が減少し、3時間以上学習している生徒の割合が増加しました。

令和2年度は、感染症予防の観点から多くの学校行事が縮小、廃止となり、部活動や特別活動の時間が減少していることから、家庭学習時間が増加したと見ることもできますが、令和3年度は、ある程度部活動等の制限が緩和された状況であっても、継続して学習時間が確保される状況でした。

また、「総合的な探究の時間」の学びを進める中で、教員が育成を目指す16の資質・能力と教科・科目との関連性を共有しながら指導することで、探究のテーマと教科・科目との関連性が生徒にも明らかになり、探究学習の深まりを求める中で必然的に今まで以上に学習に多く取り組むという相乗効果をもたらしました。

本校における生徒の家庭学習時間の推移(11月の平日)
平日の家庭学習時間 H28年度 H29年度 H30年度 R元年度 R2年度 R3年度
1時間未満 11.3% 12.1% 16.0% 11.6% 9.1% 7.1%
1時間以上~3時間未満 70.8% 64.6% 71.7% 71.4% 56.0% 59.7%
3時間以上~4時間未満 16.0% 19.3% 10.7% 14.2% 27.4% 26.3%
4時間以上 1.9% 4.1% 1.6% 2.8% 7.5% 7.0%

(2)学習習慣の定着
1学年から2学年にかけての学習習慣の定着度合いを見てみると、毎日ほぼ決まった時間に学習する生徒の割合が増加傾向にあり、生活習慣も含めて本校の学校生活の中で確立されている生徒が多いことが分かります。さらに、アンケートでは「思考力が高まったことを実感している」という回答も多くなっています。
令和元年~令和3年度平均 1年6月 1年11月 2年6月 2年11月
毎日ほぼ決まった時間に学習する 54.8% 49.7% 56.8% 61.5%
宿題の有無やその内容・量によりやったりやらなかったりする 43.9% 47.8% 41.8% 36.8%
自宅での学習はしない 1.3% 2.5% 1.4% 1.8%
 
○課題について
一部の実践で生徒の資質・能力を向上させることは難しいため、学校教育全体で教育効果を上げる必要があります。また、教員の異動により、取組の本質が失われてしまうことも考えられることから、校内研修会や校内委員会の取組の公開を通して教員間で認識を共有するとともに、本校で目指す資質・能力の育成に向け、生徒の実態に合わせ、取組内容を改善する必要があります。

○今後の取組について
(1)「探究」を軸とした学びの関連付け
本研究により、本校においては3年間を見通した「総合的な探究の時間」の目標と各学年における実践内容が確立しました。これにより探究を踏まえた学習を促す大枠が完成したと考えられます。

また、探究学習だけではなく、各教科学習や各種行事に関しても、本校が育成を目指す16の資質・能力と関連付け、「いつ」、「どのタイミングで」、「どの資質・能力を身に付けさせるか」を明記した計画を作成し、教員と生徒が年間計画を共有することができました。

今後はスクラップアンドビルドを繰り返していく中で、より効果的な学習を考察することはもちろん、教員の異動があったとしても、取組の本質等が引き継げるよう、工夫する必要があります。

(2)「主体的・対話的で深い学び」の視点を取り入れた学習・指導方法の工夫・改善
令和4年度入学生から一人一台端末になることを踏まえ、探究活動をより効果的に実施するために、ICTの積極的な活用を促す必要があります。そのため、ICT環境の充実を目指すとともに、「Chromebook」の活用や「Google Workspace」を用いた授業を実践することにより、「主体的・対話的で深い学び」をより一層の充実させる必要があります。 

≪SPARK(スパーク)委員会について≫

○結成の経緯と名称の由来
SPARK(スパーク)委員会とは、平成28年度からの2年間、文部科学省の「教科等の本質的な学びを踏まえたアクティブ・ラーニングの視点からの学習・指導方法の改善のための実践研究」に係る拠点校指定に伴い、学校体制を確立するために構成された組織です。

委員会は委員長と副委員長の2名のコーディネーターと、3月に公募制で募ったファシリテーターで構成されるので、委員会はその年々により人数が変化します。今年度は5名で構成されています。なお、SPARKとは火花、ひらめき、活気、才気という意味であり、かつ Student、 Partnership、 Active-learning、 Research、 sapporo-Kita から来ています。

○主に何に取り組んでいるのか
 先生たちが実践されている発展的な授業実践や学校で現在課題になっていることを、教員全体で共有する環境整備を目的としています。課題に対しては委員会が課題を検討するユニットを新たに公募します。

昨年度は「探究」「校内事例」「評価」「道徳」「ICT」のユニットが結成されました。このユニットは必要なときに結成され、業務が終了すると年度途中でも解散します。SPARKやユニットはあくまで公募であるので、有志で結成され課題に取り組みます。

また課題の共有が目的ですので、例えば昨年度結成した「評価」ユニットは、評価の考え方や他校の事例を紹介し、先生たちが「ブレインズ=オン(熱心に考えている状態)」を促すことまでが業務となります。具体的な評価形態の作成や提案はせず、先生たちが考えたものを踏まえ実際に学校の評価の形を作成するのは教務部になります。

情報共有に向け実施した校内研修会一覧(平成28年度~令和3年度)
※SPARK委員会やユニットが中心となって年間3回程度の校内研修会を実施
 
第1回 「アクティブ・ラーニングとは」 「教育用語の定義」
第2回 「コンピテンシーとは」 「AL校内事例(数学)」
第3回 「ルーブリック評価」「今後の取組」 「AL校内事例(国語)」
第4回 「高校教育改革動向」「実践の振り返り」
第5回 「道外視察研修」 「カリキュラムマネジメント研修」報告
第6回 「インクルーシブ教育・合理的配慮」
第7回 「変わる大学入試・探究ユニット報告」
第8回 「JAPAN-e-Portfolio」「道外視察研修報告」
第9回 「ポートフォリオ」「e-ポートフォリオ」
第10回 「探究学習」(1・2学年の取組)
第11回 「資質・能力」
第12回 「道外視察研修」「新傾向問題への対応について」 
第13回 「実践の振り返り」「学習評価」「情報機器の活用」
第14回 「高大接続」
第15回 「総合的な探究の時間」「ICT」
第16回 「観点別学習状況の評価」「ICT」
第17回 「授業改善」「評価規準・評価基準」
第18回 「ICTの活用とアクティブラーニング」
第19回 「観点別学習状況の評価」「推薦入試の変化」
第20回 「ICT活用による学びの質の向上」

○委員長としての役目
私は、現在SPARK委員会の3代目の委員長をつとめています。SPARK委員会は、学校課題に対しての情報収集、情報共有が必要な業務です。従って、必要なときに必要な「ユニット」を公募すること、必要なときに校内研修会を企画し調整することが、主な業務となります。教員間や分掌間と連携し問題の共有化をはかることが委員長の業務であり委員会の業務です。

なお、このような特徴から、SPARK委員会は分掌、学年、管理職から独立している必要があり、委員長は部長・主任と兼務はしないことになっています。

SPARK(スパーク)委員会の概念図 SPARK(スパーク)委員会の概念図

≪探究担当の先生へのメッセージ≫

 「総合的な探究の時間」の3年間を見据えた計画を作成するにあたって大切にしたことは、目的や内容を共有することでした。「生徒に社会に求められる資質・能力を身に付けさせたい」という根本的な理念のもと、校内研修会を何度も実施し、「本校で身に付けさせたい資質・能力はなにか」「活動内容とその活動を通じてどのような資質・能力を身に付けさせるか」「活動はどのような時期でやることが効果的なのか」を教員全体で共有することを心がけました。

そして完成した年間計画は、生徒たちにも「いつ、どのような内容で、どのような能力を身に付けるか」を年度当初に時間をかけしっかり説明するようにしたことで、学校全体の意識の共有を促しました。これにより、札幌北高校としての「総合的な探究の時間スタンダード」が確立できたと考えています。

このスタンダードの確立は「みんなで作り上げる」という達成感がありました。個人で実践する業務というのは限界があると思います。たくさんの人の意見を聞き、情報を共有することでよりよい型が形成されます。探究の担当はたいへんですが、生徒の成長を考えるたくさんの先生たちの意見に触れることができる特等席的な仕事だと思います。喜びと誇りをもって一緒に頑張りましょう。

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