学びのリレー 未来に向けて学び続ける先生たち 第11回(月刊高校教育2026年2月号)
学事出版『月刊高校教育』にてFind!アクティブラーナーの連載がスタート!
こちらでは冊子の記事をWEB版として公開しております。
学びのリレー 未来に向けて学び続ける先生たち 第11回(月刊高校教育2026年2月号)
東北生活文化大学高等学校
平出 大(ひらいで だい)先生
「生成AIを活用した授業実践について」
≪東北生活文化大学高等学校について≫
本校は、宮城県仙台市泉区虹の丘に所在する東北生活文化大学高等学校です。1900年(明治33年)、三島駒治先生・よし先生によって東北法律学校として創立されました。その後、両先生は女子教育の重要性を感じ、東北女子職業学校を設立しました。戦後の学制改革を経て1948年に三島学園女子高等学校となり、2003年に共学化して現在の校名となりました。建学の精神である「励み・謹み・慈み」は、創立者の思いとして今も受け継がれています。現在、男子488名・女子547名が在籍し、明るく穏やかな学校生活を送っています。
本校はスクールミッションとして、「実学を重んじ、個性を伸ばし、礼節を重んじる人間を育成し、もって地域社会の発展に貢献する」ことを掲げています。知性・感情・意志の調和を大切にし、愛情深く実践力に富んだ人を育てることを目標としています。
学科構成は、普通科・商業科・美術・デザイン科の3学科です。普通科には未来創造、保育、進学、看護医療の4コースがあり、未来創造コースでは体験を通して将来への興味・関心を深めることができます。保育コースでは、本学園に属する幼稚園で実習を行うことができます。進学、看護医療コースでは、上級学校への進学に特化された学習内容が組み込まれています。商業科では情報ビジネスと進学ライセンスのコースがあり、簿記をはじめとする資格取得に向けたプログラムが整えられ、美術・デザイン科では美術領域からデザイン領域まで幅広く専門的な教育を実践しています。
生徒たちは礼儀正しく、先生方や来校者へ元気よくあいさつをする姿が毎日のように見られます。学業面でも、中学校時代に苦手意識を持っていた生徒が努力を重ね成果を上げています。今年の春の卒業生約280名のうち、4年制大学への進学が約120名、専修・各種学校への進学が約120名、就職が約35名という結果を残しました。進路先からも「本校出身者が活躍している」という嬉しい報告が届いています。
部活動も盛んで、女子ソフトボール部をはじめ、少林寺拳法部やライフル射撃部、文化部では商業経済研究部やマンガ・イラスト部が全国大会で活躍しています。さらに、サッカー部、剣道部、男子バスケットボール部、女子バレーボール部、ソフトテニス部、バドミントン部、弓道部なども県大会で活躍、入賞するなど、学習と活動の両立を実現しながら生徒たちは日々成長しています。
≪私のキャリアについて≫
私が英語に興味をもったきっかけは、身近にあった英語の文字であり、子どものころ、あこがれていた車や電化製品のロゴを見て「どんな意味だろう」と思ったのが始まりです。意味を知れば、世界やモノの見方が変わるのではという期待があったのだと思います。高校生になると洋画に興味を持ち、『プラトーン』や『スタンド・バイ・ミー』、『アメリカン・グラフィティ』などを観る中で、字幕ではなく本当のセリフを理解したい、あの世界に入り込みたいという思いが、英語学習への情熱につながりました。
当時の高校ではコミュニケーション形式の授業がほとんどなく、訳読中心の学習でした。同じ内容でも、もっと効果的な授業ができるのではと感じたことが、英語教員を志すきっかけとなりました。大学では文法の基礎をもとに英語でのコミュニケーション力を鍛えたいと考え、2年次にアメリカへ1年間留学しました。現地では夜中まで宿題に追われながらも、授業後に学生寮の仲間と語り合い、街のカフェで過ごす時間が何よりの学びでした。また、ボランティアとしてHIV患者やホームレス支援など人との関わりを通じて、英語の本当の価値を実感しました。
大学卒業と同時に宮城県の英語教員として勤務し、これまで中学校・高校での進学指導を中心に取り組んできました。宮城県の学力向上指定校である高校においては、授業力向上委員会委員長として受験指導の最前線で取り組み、進学率の向上に努めました。本学園に移籍し、大学の授業を担当した際には、それまでの訳読式の授業から、学習内容に関係する音楽や国、都市に関する映像を活用し、学生たちが新たな文化的背景の発見に取り組むという授業を展開し、学生たちのモチベーション向上を見ることができました。東北生活文化大学高等学校では、英語科主任や特別進学コース長などを務め、現在はICTや生成AIを活用した授業づくりに取り組みながら、生徒一人ひとりの可能性をさらに広げる教育を目指しています。
≪生成AIを活用した英語の授業実践≫
生成AIを活用するようになったきっかけは、毎時間の授業準備に多くの時間を費やしていたことでした。私用で生成AIを使う中で、その「候補提示のスピード」や「問題作成の速さ」に大きな可能性を感じました。例えば、文法学習用のコミュニケーションプリントを作成する際には、日常生活に基づいた例文を多く用意する必要がありますが、その作業を生成AIに任せることで、これまで数十分かかっていた作業を数秒で完了できるようになりました。
例えば、乗り物に関する英単語をリスト化したい場合も、自分で “train” “car” などを思い浮かべるより、生成AIに依頼することで瞬時に10個以上の英単語を得ることができます。こうした効率化は、授業準備のスピード向上だけでなく、学校現場で課題となっている教員の多忙化の解消にもつながる点で大きな魅力でした。また、問題作成に特化する場合には、株式会社FCEの「プロンプトゲート・アカデミック版」のフォーマットを利用することで、学習指導要領の趣旨に沿った高品質な問題を効率的に作成・実施することが可能になります。
このように学校現場で生成AIを活用する中で、“AI-assisted lesson planning(授業準備用の生成AI)”から“AI-integrated learning(生徒自身で生成AI活用)”への移行、つまり「生徒自身が生成AIを主体的に活用できるようにすること」が、英語力のさらなる向上につながると考えました。そこで、生徒主導型の生成AI活用を目的として、校内研究授業で「英語学習を楽しむ場の創作」と題し、iPadを使ってChatGPTと英会話を行う活動を実施しました。
実際の授業では、会話内容に個人差は見られたものの、ほとんどの生徒がスムーズに英会話を進めることができました。当初想定していた課題は、使用回数の制限と、近くの生徒の声が混ざってしまい音声認識が難しくなる点でした。これらの対策として、CopilotのQRコードを予備として準備し、イヤホンを使用することで対策を講じ、一定の成果を上げることができました。この研究授業には、他教科の先生方も多数参観していただき、集団での生成AI活用授業の可能性を感じさせられる良い機会となりました。
≪「英語4技能講座」の開催≫
私は、本学園で、金曜日の放課後に50分間の「英語4技能講座」を開講しています。英会話や英文法の学習を通して、英語の「話す」「聞く」「読む」「書く」など、インプットに偏らずアウトプットする機会をふんだんに取り入れることで、総合的な英語力をバランスよく学ぶことを主軸とした講座です。
本講座は今年で3年目を迎え、地域でも広く知られるようになりました。対象は、本学園の大学生・短大生をはじめ、地域の方々や近隣の中学生まで多岐にわたります。地域に根ざした教育活動としてスタートしましたが、実際の授業を通して感じるのは、参加される中高年の方々の非常に高い学習意欲です。学生の参加者に劣らないエネルギーで学習に励む姿勢には毎回感心させられます。世代を超えた受講者が集い、英会話という共通のツールを通して互いに教え合い、学び合う姿は大変印象的であり、参加者にとって日々の生活の楽しみになっている方もいるようです。そのような場を提供できていることは、本校としても大きな喜びです。
また、中学生の参加者の中には、保護者と一緒に受講し、「ここで英語を学び直して本校への入学を考えたい」と話してくれる生徒もいます。このように、本講座は地域住民の学びの場であると同時に、本校の教育理念に触れていただく貴重な機会にもなっています。
参加料は無料(テキスト代のみ徴収)で、合わせて20回以上の講座を受講できることもあり、地域と連携した実践的な英語学習の場として着実に定着しつつあります。今後は、より多くの受講者を受け入れるとともに、受講者が主体となった行事や活動も行っていければと考えています。
≪英語の教科書指導書の執筆≫
2022年と2023年に、開隆堂出版株式会社の英語コミュニケーション用教科書『APPLAUSEⅠ・Ⅱ』の教師用指導書と、付属CD-ROM内の Communication Worksheet、Grammar Worksheet の作成を担当しました。きっかけは、開隆堂出版の学校担当者の方と、より効果的な英語指導のあり方について話をしていたことでした。現場でどのような教材が求められているか、また教師用指導書にどんな情報があると授業がしやすいかといった具体的な話を重ねていくうちに、実際に教材を一緒に作ってみようという流れになりました。
教材づくりで大切にしたのは、「教師の使いやすさ」と「授業の広がり」です。教師用指導書には単なる解答だけでなく、本文に出てくる内容の背景や文化的な情報も載せることで、授業中のやり取りがより活発になり、生徒の興味を引き出せるようにしました。また、本文に登場する単語や熟語の解説や関連語句を丁寧にまとめて記載することで、授業者の教材研究の時間を減らし、多忙な学校現場のサポートにもつながると考えました。
さらに、各ページの新出文法に基づいたコミュニケーション活動を取り入れることで、生徒が「英語を使って~」というアウトプット活動に取り組めるよう工夫したことで、教室内に活気が生まれ、自然と学習内容の定着にもつながりました。
自分の経験をもとに、具体的な形式や構成をベースにしながら、教室で実際に起こりうる反応や問題点を考慮した形式で作成業務に取り掛かりました。完成した教材については、採用校の先生方から「とても使いやすい」との声をいただき、出版社の方を通じて喜んでくださっている話も伺いました。結果として採用校数が大きく向上し、多くの教育現場に貢献できたことをうれしく思っています。
≪日々の学び・研鑽について≫
私の授業スタイルを根本的に変えたきっかけは、生徒の一言でした。「先生、教科書をわかりやすくしたプリントとかは配らないんですか?」 この言葉から、生徒が何を求めているのかがはっきりと分かりました。私はそれまで「教科書を教える」授業をしていたことに気づき、「教科書で教える」授業への転換を始めました。
それ以降は、教科書やワークの問題を解くだけでなく、教科書で扱う文法や表現を実際のコミュニケーションの中でどのように使えるかを重視しました。生徒同士が学び合える活動をどのように設計するか、教師ではなく生徒が主体的に動く授業をどう作るかなど、さまざまな方策を試行錯誤しました。自作のワークシートを導入し始めたころから、授業の質が目に見えて変化し始めました。
さらに、より理論的な裏付けを得て授業を深化させたいと考え、通信制で英語教育を専門的に学べる名古屋学院大学大学院外国語学研究科英語学専攻に入学しました。高校3年生の担任等を務めながら2年間学び、3年前に修了しました。大学院では、英文学から時代背景や文化的文脈を読み解く力、英語教育の理論や効果的な学習法の関係性などを体系的に学びました。これにより、自らの実践を理論的に検証・修正し、授業の質をさらに高めることができました。
大学院で学んだ理論をもとに、前述の「英語学習を楽しむ場の創出」をテーマとした研究授業を実践しました。授業では、生徒がグループで会話活動を行う際に、対話者以外の第三者の視点を導入することで、より多角的なコミュニケーションを生み出しました。また、質問への回答に加えて付加的な情報を発信するルールを設けることで、会話に広がりと自然な流れを生み出すことができ、この授業の様子は開隆堂出版の冊子『English Cafe Vol.9(2025)』に掲載されました。
現在は、学校現場で活用できる生成AI事業を展開する民間企業とも連携し、授業の質を高めるための効果的な生成AIの導入方法を模索しています。これからも、理論と実践の両面から、生徒が主体的に学び、英語を通じて自分を表現できる授業づくりを目指していきます。
≪教育の未来について≫
教育の目的は、知識を教えることから、学びを共に創り出すことへと変化しています。生成AIやICTの発展により、教材作成や情報整理は短時間で行えるようになりました。こうした時代に求められるのは、膨大な作業を抱える存在ではなく、学びの方向を示す「先導者」としての教師の資質です。
生成AIは教師の仕事を奪うものではなく、むしろ「人にしかできない教育」を支える存在です。教師は生成AIによって生まれた時間を、生徒一人ひとりの思いや課題に寄り添う時間へと変えることで、学びはより深く、実のあるものになります。生成AIが情報を処理する間に、教師は「人の心を動かす学び」を設計し、生徒に考える力や他者と協働する力を育むことができます。
これからの教育で重要なのは、生成AIを深く知ることではなく、教育の目的の中にどう位置づけるかという視点です。生成AIに依存するのではなく、それを通して生徒が自分の興味を探究し、表現を広げられる環境を整えることこそ、教師の役割といえます。
また、学校は社会から切り離された学びの場ではなく、地域や多世代が共に学び合う拠点であるべきです。互いの経験を分かち合う中で、学びは「教科」から「文化」へと広がります。
生成AIが発展するほど、教育の価値は「人との関わり」に立ち返ります。効率化によって得られた時間や労力を、生徒の声を聴き、共に考える時間に変えること。その積み重ねこそが、未来の教育を豊かにする礎になると確信しています。



