学びのリレー 未来に向けて学び続ける先生たち 第14回(月刊高校教育2026年5月号)
学事出版『月刊高校教育』にてFind!アクティブラーナーの連載がスタート!
こちらでは冊子の記事をWEB版として公開しております。
学びのリレー 未来に向けて学び続ける先生たち 第14回(月刊高校教育2026年5月号)
開智中学校・高等学校
米田麻由(よねだ まゆ)先生
「英語の指導方法について」
≪開智中学校・高等学校について≫
本校は、和歌山県和歌山市直川(のうがわ)に位置しています。前身校である1922年創設の女子校から、1993年、全日制・普通科・中高一貫併設の男女共学校となり、現在の地に「開智中学校・高等学校」として開校しました。現在、開校34年目を迎え、生徒数は約1,400名、2025年度卒業生299名中、国公立大学合格者数は170名(現役生152名)となっています。
校訓(建学の精神)は、仏教の教えに基づく「四恩報答」です。わたしたちを生かし、支えてくださっている一切のものの恩に感謝し、その恩に報い応えるべく、主体的・行動的な生き方を目指しています。また、「心豊かにたくましく生き、時代の要請に対応し、社会に貢献し得る人間の育成に務める」ことを教育方針としています。
教育目標としては、
・確かな学力と創造的な問題解決力を身につける
・豊かな心と体を育み、積極的に社会と関わろうとする意欲を高める
・学校生活のあらゆる場面で主体的に取り組み、個性を生かし伸ばす
・多様性を尊重し、協働的に国際社会に貢献しようとする姿勢を持つ
・自己をよく理解し、見通しのあるキャリアプランを立て、実現する
の5つを掲げ、意欲をもって主体的・協働的に問題を解決する力を身につけ、成長し続ける人となることを重視しています。
学校長からは、生徒たちに向けて「『あなたがいてくれて良かった』と言われる人になってもらいたい」とメッセージが贈られ、「make it better」をスローガンとしています。自分がいることで物事をより良くし、改善していく、そんな姿勢を大切にしています。
2017年より、中等部ではスーパー文理コースと特進コース(定員140名)、高等部ではSⅠ類コースとⅠ類コース(定員160名)の各2コース制を設けています。すべてのコースで、高校3年次まで国公立型カリキュラムを採用しています。
主な取り組みとして、自律学習プログラム「Independent Learning Programs(ILP)」があります。これは教育課程外のプログラムで、放課後に生徒が自ら選択して受講します。受講の有無や内容はすべて生徒の自由意思に委ねられており、学ぶことの楽しさや意義を実感することにつながっています。
また、自習室延長「Extended Learning(EL)」の時間を設け、19時の完全下校後も21時まで自習室を利用できる環境を整えています。日曜・祝日などにも「休日開放」を実施し、「学校」で一日を完結できる学習環境を提供しています。クラブ活動や学校行事、課外活動にも力を入れており、「今」しかできない経験を通して、生徒の主体的な挑戦を支援しています。
国際交流プログラムでは、英国、アメリカ、カナダ、オーストラリア、韓国、台湾などでの語学研修やリーダーシップ研修、ホームステイプログラムを実施し、また、海外の提携校・姉妹校との交流を通じて、広い視野を育んでいます。さらに、アジア太平洋の高校生国際サミットであるAPYLC (Asia-Pacific Young Leaders Convention)では、日本代表校として初回から参加しています。
英語教育では、中等部の3年間にBerlitzによる少人数英会話授業を週1時間実施しています。高等部では、オンラインによるネイティブとのマンツーマン・スピーキングトレーニングを週1回行い、加えてネイティブ教員によるライティング指導も実施しています。6年間(または3年間)を通して、ネイティブスピーカーと日常的に英語でコミュニケーションを取る機会を確保し、語学力だけでなく国際感覚や国際理解力を育成しています。
本校では、確実な知識を身につける「学習(認知能力)」と、知識を活用して問題解決に取り組む「探究活動(非認知能力)」の両輪を重視し、その力を進路実現と生涯にわたる学びにつなげています。本校の生徒は、明るく素直な生徒が多く、学習指導に前向きに取り組むだけでなく、文化祭や体育祭などの学校行事にも積極的に参加し、心から楽しもうとする純粋さがあります。
≪私のキャリアについて≫
高校時代に出会った恩師の影響が大きなきっかけで、教員を目指しました。英語担当の厳しい先生でしたが、授業が非常に分かりやすく、「自分もこの先生のように、受験英語を分かりやすく教えたい」と思うようになりました。
同志社大学文学部英文学科で英文学を専攻し、シェイクスピア劇のゼミに所属しました。在学中にはイギリスのストラットフォード・アポン・エイヴォンにあるシェイクスピアの生家を訪れ、現地で『マクベス』を観劇する経験もしました。
新卒で開智中学校・高等学校に常勤講師として3年間、教諭として3年間勤務しました。出産を機に一度退職しましたが、7年後に非常勤講師として復職し、8年間勤務した後、教諭として再び採用され、現在に至っています。
≪英語の指導方法について≫
授業は、いわゆる従来型の講義形式が中心です。予習を前提とし、授業では文構造やディスコースマーカーを意識して、論理的に読解できるようにすることを目標にして解説を行っています。また、「ロイロノート」を活用し、生徒に音読を録音して提出させることもあります。
ディスコースマーカー(discourse marker)とは、文字通りの訳としては「談話標識」です。広義には、話し言葉で使う「相槌」や「つなぎ言葉」(a-ha, well, you know…)等を含みますが、狭義には「書き言葉において論理展開を示す目印」を指し、特に受験英語の世界ではこの使い方が一般的です。
英検(実用英語技能検定)の指導についてお話しします。私は、3年間を見据えた計画的な意識付けと指導を行っています。その結果、中等部6年生(中6)のS文理コース68名中24名が英検準1級を取得しています。中4で2名、中5で4名が合格しました。中4から希望者を対象に『英検準1級単熟語EX』を用いた単語テストを実施し、中6まで継続しました。また、中4の秋から中6の夏まで、英検準1級の希望者補習を行い、一次試験合格者には面接指導も実施しました。
中6になると授業で扱う英文が準1級レベルに合ってくることを見越し、中4の段階から「2級に合格したら、次は準1級に挑戦するのが当たり前」という雰囲気作りをしました。中5までは授業内容と試験レベルに差があり合格は難しいですが、中6ではレベルが一致するため、実際に合格した生徒は長文問題でほとんどミスをしませんでした。また、英会話については、中4から中6の夏まで、週1回「Weblio英会話」を利用しました。英検やGTEC対策のレッスンを選択する生徒が多く見られました。
近年の大学入試(英語)について述べさせていただきます。文法、語法など英語の知識を問う問題もあり、コツコツ努力した生徒が高得点を取れたセンター試験と違い、大学入学共通テストは、英語の基本的知識があるのが前提で、限られた時間内で大量の英文を読み解く処理能力も必要とされるようになっています。一方、国公立大学の二次試験については、細かな変更はあるものの、全体として大きな変化は見られません。
≪AI時代における英語学習について≫
近年、AIによる自動翻訳等が進展していますが、英語学習の最終目標は、人と人とのコミュニケーションであることを忘れてはいけないと考えています。目先の便利さに流されるのではなく、英語を学んで「どんな自分になりたいのか」を大切にしてほしいと思います。機械を介したやり取りではなく、生のコミュニケーションにこだわらせたいです。特に、英語学習の初期段階では、できるだけAIを使わせたくはありません。自分で理解できる力がある程度身についてから、質問ができない場面や英作文の添削などで効率的に活用することは、有効だと考えています。
≪オリジナル「開智手帳」について≫
本校では、オリジナルの「開智手帳」を作成し、生徒にスケジュールや課題管理のために記入させています。初期段階では担任が週1回チェックし、時間の使い方や課題の進捗を把握し、面談などでフィードバックを行っています。中等部では、中学1年生から手帳を用いたリフレクションを重視し、PDCAサイクルに活かしています。教員とのコミュニケーションツールとしても活用されています。
効果と課題ですが、スケジュール管理や1週間の振り返りがしやすく、多くの生徒が有効に活用しています。社会に出てからも必ず求められる力だと思います。一方で、全員に徹底させることや、チェックの負担が大きい点が課題です。自分の生活を「視覚化」する意義は大きいものの、デジタルとアナログ併用の負担も課題として挙げられます。
≪日々の学び・研鑽について≫
私は、6年前、中4を担当した際に、英検1級を受験しました。S文理コースの生徒に準1級を勧める立場として、教員自身がさらに一歩先にいるべきだという思いが強くありました。通勤時間や家事の合間、授業の空き時間を活用して学習し、帰宅後は毎晩オンライン英会話でスピーキング練習を行いました。約半年間、集中的に取り組み、いわゆるガリ勉状態でした。
受験直前、生徒たちに、英検1級にチャレンジしていることを伝え、合否発表は生徒と一緒に確認しました。教師自身が学び続ける姿に驚く生徒も多く、それを聞いた保護者からも、年齢に関係なくチャレンジしていることにお褒めの言葉をいただくこともありました。結果は、無事合格でした。
≪教育の未来について≫
大学入試において、一般入試よりも総合型選抜や学校推薦などの年内入試での入学者が増えてきている現状を踏まえると、教育は画一的なものから個別対応へと変化せざるを得ないと感じています。一方で、家庭環境や地域格差といった、生徒自身の努力だけでは解決できない課題もあります。どの生徒も努力次第で未来を切り開ける教育であってほしいと願っています。
小学校で英語が教科化し、ますます英語の4技能を重視するようになっています。一方で、大学入試は「読む」「書く」の2技能を重視しており、4技能を身につけさせるのが理想とわかっていながらも、なかなかできない現場レベルでの葛藤があります。英語の大学入試改革がなければ、大きな変化は難しいと感じています。
教師は生徒にとって最も身近な大人で、多感な時期に良くも悪くも最も影響を与える存在であるということを私自身常々心に留めています。多くのことを学んでいく生徒の前に立つ者としても、自分自身が率先して学び続ける姿勢を大切にしていきたいと考えています。



