アクティブティーチャーの挑戦 第十九回(月刊高校教育10月号)

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アクティブティーチャーの挑戦 第十九回(月刊高校教育10月号)

茨城県立水戸第一高等学校・附属中学校
矢崎寬子先生

「授業改善の取組について」

≪茨城県立水戸第一高等学校について≫

水戸第一高等学校は、明治11年の創立の茨城師範学校を祖とし、今年で144年を迎える県内随一の歴史と伝統を誇る学校です。水戸城本丸跡に立地し、敷地内には水戸城薬医門が移設されています。3万6千人を超える卒業生が各界で活躍しており、その中には高校野球の父と言われている飛田穂洲氏や世界的建築家である妹島和世氏、小説家の恩田陸氏などが挙げられます。

進学重視型単位制を導入し、大学における専門的研究を見据えた教育を展開し、日本はもとより世界に羽ばたく人財の育成を目指しています。2019年度入学生からは県内の医師不足へ対応するため医学コースが設置されました。生徒たちは真理を愛する「学問第一」の校風、「自主自立」の精神を重視する自由な校風、「堅忍力行」の気風のもと、歩く会・学苑祭の二大行事を始め、様々な特色ある活動を行っています。月に一度の生徒集会の際に行われる「自由討論」には、毎回多くの生徒が参加し、時間が足りなくなるほどです。

水戸一高附属中学校は令和3年度に1期生が入学し、現在2年目を迎えており、各学年2クラス80名が在籍しております。来年度は新たに80名の生徒を迎え、いよいよ完成年度となります。そういう中で「挑戦と失敗から学べ」を合い言葉に生徒たちは日々、様々な活動に励んでおります。国内語学研修や海外研修旅行をはじめとした中学独自の活動だけでなく、高校と連携した活動についても学校行事、総合的な学習の時間、中高合同学活、体験型選択制部活動など多方面に広がり、中学生、高校生ともにお互いに良い刺激となっております。

附属中学生は制服、高校生は私服(かつては制服、制帽でしたが生徒からの発議により昭和46年から私服が認められております)など違いはありますが、これからもこれまでの良き伝統を継承しながら新たな伝統の創造に向けて附属中学、高校ともさらなる進化を続けていきます。

≪授業改善の道のりについて≫

○中学校でどのような授業をしてきたか

私は、中学校籍の国語の教員です。新採時から、言葉を根拠にして読むことを第一に考えてきました。しかし、ややもすると、生徒に自信を付けさせるために、読解では一問一答的な授業に陥るときがあり、そこからどう広げていくか、が悩みでした。当時の国語主任から、「この授業で国語のどんな力を身に付けさせたいのか。社会でその力がどう生かされるのかを考えて、授業をつくっているか?」と問われたことが、私の授業改善の軸となりました。 その授業改善の視点を元に、関東ブロックでの発表や授業公開、茨城大学教育学部附属中学校での授業公開、博報堂主催の共同研究を重ね、実生活に生かせる課題の設定、生徒の実体験から得たグッドモデルを到達目標とする話合いの授業、ジグソー学習やワールドカフェ方式話合い、接続詞指導など、試行錯誤しました。

○研修センターでの内地留学について

県立高校入試で200字の条件作文を書くことがその当時必須でしたので、その指導をする際に、どうしたら根拠と考えのねじれのない意見文を書くことができるか、が当時の悩みでした。子どもたちは一生懸命に書いても、そこに矛盾やねじりがあることに気付かない、教師が感覚に伝えるのではなく、自分で気付けるようにするにはどうしたらいいかという課題を解決するため、3ヶ月間、県の教育研修センターで内地留学をしました。この内地留学は、指導法を見直す意味で大変勉強になりました。

○水戸一附属中に赴任して感じたこと

GIGAスクール構想実現に向け、一人一台クロームブック配付という前提で、ICTを活用した授業展開が求められるというプレッシャーを感じました。それまで私は、電子黒板でスライドを映して話す、スピーチを動画録音して振り返るなどしか、ICTによる授業を行っていなかったからです。

国語という教科特性的にどうかという否定的な気持ちも内心ありました。あくまでもツールとして活用する視点を忘れず、かつ生徒の立場に立って使いやすい、学びやすい、考えを比べやすいかどうか、でアナログとどちらが良いかなど考慮しながら、ドキュメントによる文章の下書き、ジャムボードによるKJ法、フリップグリッドによるスピーチなど、いろいろ挑戦しました。

附属中1年生は、高い倍率を通過して合格したとはいえ、先日まで小学生だったことにはかわりはなく、中学生としての学びのスタートであることを意識して授業に臨むことにしました。もちろん、個人差はありますが、問いに対する答え方のずれ、文章中の言葉を関連付けて読むことの難しさ、根拠と主張のずれなど、やはり今までの中学生と変わりません。しかし、課題に対して粘り強く取り組む姿勢は見てとれましたので、そのやる気にいかに応えるか、やる気を力に変えられるかが鍵だと感じました。

≪授業の工夫について≫

○共有七箇条の考案

内地留学の際、中学校3年間で継続して活用できるものとして、共有七箇条を考案しました。きっかけは、内地留学の年は新しい指導要領解説の前年でしたが、新しい解説に新たに加わった「共有」という言葉に注目しました。これは、話すこと、書くこと、読むこと、どの活動にも「共有」が出てきます。

書くことで言えば、自分が書いた文章の良い点や改善点を書き手自身が見いだすことで、推敲とは又違うところがポイントです。改善点を見いだすにあたり、根拠から主張の矛盾やねじれ、ずれなどを改善する視点を生徒自身がもって、文章を見直すことができないか、と改めて考えました。また、この「共有」は高校の指導要領解説にも中学校三学年を踏まえて関連して書かれていました。

 

そこで、各教科書会社の作文の指導事項例、根拠を明確に示す段階でよくある誤答例や、学習指導要領の中学校第1~3学年の書くことの目標に示されている「目的や意図に応じて」(第1~3学年)、「読み手の立場に立って」(第1学年)、「多様な読み手を説得できるように」、「適切に引用したり」(第 3学年)などを踏まえて、共有七箇条を考えました。七箇条とは、①ずれ、②比較、③反例、④相手、⑤目的、⑥限定、⑦引用です。詳しくは、下の一覧表をご覧ください。

◆共有七箇条の一覧表◆
PDF:https://school-fal.com/uploads/files/images/gakuji/gakuji_2210_01klist.pdf

共有七箇条


○スプレッドシートの7つの利点

共有七箇条を使い、互いに改善点を指摘することを付箋で意見交換していたのですが、時間差が生まれたり、その場での個別指導がしづらかったりという課題がありました。ところが、一人一台端末のおかげもあり、スプレッドシートで共有することでこの課題が解決できました。

 

スプレッドシートの利点は7つあります。
1、その場で、悩んでいる生徒が参考にしやすい。
2、教師がリアルタイムで全体を把握でき、個別指導にすぐに生かせる。
3、教師が評価しやすい。
4、共有後(改善点のコメントをもらった後)、修正がしやすい。
5、他者とその場でも比較できるので、共有しやすい。
6、改善点を書く際の心理的負担が減る。
7、席にとらわれず、遠い席の生徒でもコメントがもらいやすい。

○R80の活用

ふりかえりをするにあたって、R80(アールエイティー)を活用することにしました。R80は、前茨城県立並木中等教育学校長の中島博司先生が考案されたものです。

主に単元のねらいに沿った内容が書かれているか、を見ます。読み方、書き方、話し方、視点など一般化して他の学習でも生かせる内容かどうかで評価をBかAで判断します。第3の観点の見取りの一つとして活用しています。また、接続詞の使い方や条件作文の指導としても活用しています。条件に合わないや誤字脱字、接続詞の使い方の誤り、文末の齟齬などは、再提出を課しています。何がダメなのか、どうしたら正しい内容になるのか再考し、粘り強く取り組むことを推奨しています。

次に生かせるよう、授業の導入で、悪い手本や生徒の良い手本の提示を通して、何がいけないのか、良いのかを考える時間を取り、解説もします。昨年秋にR80考案者である中島博司先生から、「中学1年生の最初は、接続詞を指定するなど文型を決めて書くと良い」と直接アドバイスをいただいたことで、生徒の取り組みが大きく改善されました。

◆R80関連資料◆
(中島博司氏)ALを学力向上につなげる「AL指数」と「R80(アールエイティ)」
https://find-activelearning.com/set/309

○テストの工夫

本校では、特色ある取組の1つとして、定期考査の代わりに単元テストを実施しています。教科書の本文から出題するだけではなく、どの文章でも正しく答えることができるよう、教科書外の文章を使ったテストを行うようにしています。

毎テストごとに、誤答分析を課題として出します。正しく読めたとしても、条件に合った答え方を書くのはまた違った学習になります。感覚で読みとっただけで正答した場合もあるので、言葉の意味を改めて確かめることが今後につながります。ですから、なぜまちがったのか、どうしたらその読みにつながるのか、再読して答えることの繰り返しで力を付けると考えるからです。

テストの本文の中での意味調べも行います。誤答分析がやりやすいように、放課後に課外として希望者のみ解説を行います。今年は、教室に入らないぐらい生徒が来ます。後で見返しやすいように、また参加できなかった生徒のために、解説で用いたスライドをクラスルームで配信しています。

≪授業に関する情報収集について≫

○ビジネス書を参考にする

国語の授業を通して得た学びを、実生活にどう生かすか、を導入で繰り返し話をしています。その導入で参考になるものはないか、と考えて、書店に向かいました。すると、ビジネス書コーナーには、話す、聞く、書くに関する本が山積みになっていることに気付きました。大人になっても、お金を出して国語に関する内容を勉強するということを子どもに気付かせることで、子どもの学習意欲の喚起につながっています。

そこで、ビジネス書コーナーでのスキルと中学生に指導するスキルの共通点など生かせるところはないかを考える良いきっかけとなりました。また、接続詞の働き方など勉強する上で、「思考法図鑑」(翔泳社)に出会ったり「ポスターの批評文」を書くにあたり、広告文やコピー集を読んだりすることもあります。キャッチコピーやボディコピーを書く際に、本屋さんでいただける文庫本のパンフレットを参考にすることもあります。

生徒の学習が社会にどう生きるかという視点を大事にすることから、今後もビジネス書を良い機会として活用していきたいと思います。

○他社の教科書を研究する

他の教科書会社の教科書を全て買い求めているので、書く、話す教材では特にどのような指導や展開で進めていくのか、模範例文での文型や言葉の使い方などを比較してよいものを授業に取り入れることがあります。

○学習指導要領を読み込む

系統だった指導ができるように、付録の系統表を読み、前後の学年の指導は何かを見ることで、今何を教えなければいけないか、重点事項を確認することを心がけています。内地留学の際は、高校の学習指導要領解説を読み、中学3年生との関連付けを読むことで、意見文指導の際に大いに役立ちました。

また、解説を読むと、学習活動のイメージがしやすく、そこから研究授業のアイデアが思いつくこともありますし、書くことや読むことの違い、関連付けて読むことで、指導を見直すことにつながったりしています。

≪これからの授業のあるべき姿≫

社会の在り方が劇的に変わる、予測困難な時代の中で生き抜いていく資質や能力を、授業を通していかに育んでいくかを考えると、授業のあるべき姿が見えてくると思います。中央教育審議会答申によれば、個別最適な学び、協働的な学び、それぞれを一体的に充実し、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善につなげるとあります。

10年前に拝読した、多田孝志先生の著書『授業で育てる対話力~グローバル時代の「対話型授業」の創造~』(教育出版・2011年)を読んでから、授業のあるべき姿というのは変わっていません。生徒の「共創型の対話力(inventive dialogue)」を高めることが、これからの授業のあるべき姿だと考えています。

「たとえ意見は一致しなくても、さまざまな意見・叡智を出し合って語り合う楽しさを実感させ、多様な他者とも相互理解を深め、仲間としての親和感を醸成させることができる」授業を、これからも目指していきたいと思います。

≪教師という仕事のやりがいについて≫

大学のゼミを通して、言葉を根拠にして、小説の読みを共有する面白さを体感しました。ゼミでは、先輩、後輩関係なく、自分の読みを存分に語り合える学びの場でした。恩師の関谷一郎先生のおかげです。この面白さを、子どもたちと分かち合えたら最高だなというのが自分の国語教師を目指す出発点でした。

今はオンラインなど個別で学習することも簡単にできますが、やはり教室でたくさんの友達と語り合うことで、新たな気づきや刺激を受けるライブ感あふれる授業での感動はまたひとしおだと思います。それを、教師である自分がその場を提供し、問いを投げかけ、子どもたちの様々な読みや疑問や考えを分かち合い、新たな学びを得ること、そして教師の予想を超える学びが奇跡的に出てくること、それは何よりものやりがいだと私は感じております。

卒業生が先生の国語の授業が役立ったと報告に来てくれたり、学校の先生を目指していますと実習に来てくれたりすることも、生徒の未来に少しでもプラスになったと実感できることに、大いにやりがいを感じています。

≪学び続けている先生へのメッセージ≫

学び続けている先生の姿はかっこいいと思います。憧れの先生方の模擬授業を受けたり、話を伺ったりしてきた当時、学び続けている先生の姿に感銘を受け、自分もいつかそうなりたい、どうか近づきたいと思って自分なりに試行錯誤してきました。

経験を重ねても、新たな課題が出てきます。また、若いときには気付かなかった課題に経験を重ねたからこそ、気付くこともあります。その課題を解決するためにどうすればいいだろうか、頭を悩ませつつも、本を読んだり他の先生方と語らったりすることは楽しい充実した時間でもあります。学んだことを子どもたちに還元し、子どもたちの「分かった、できた」という感動を一緒に分かち合えることができるのは、教師にとって何よりも幸せなことだと思います。

悩んでいるのは一人ではない、時には教科の枠を越えて悩みを話すだけでも、そこから学びのヒントを私は得ることができました。実際、今も国語の話をできる仲間と月1で勉強会をしています。現状維持は退歩なり、という言葉をかみしめて、一緒に学び続けていきましょう。

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