アクティブティーチャーの挑戦 第四十一回(月刊高校教育8月号掲載)
学事出版『月刊高校教育』にてFind!アクティブラーナーの連載がスタート!
こちらでは冊子の記事をWEB版として公開しております。
アクティブティーチャーの挑戦 第四十一回(月刊高校教育8月号)
栄北高等学校
野口智弘 先生
「学校完結型の進路指導について」
≪栄北高等学校について≫
本校は2000年に開校し、今年で25年目を迎えます。埼玉県にある私立高校の中では比較的新しい高校です。開校当初は、普通科・国際情報技術科・自動車科がありましたが、2003年に国際情報技術科の募集を停止し、2017年に自動車科の募集を停止したことにより、現在は普通科のみの高校となっています。
建学の精神は「人間是宝(にんげんこれたから)」で、人は一人ひとりが宝の原石であり、素晴らしい資質を持っているからこそ、その原石を磨き上げ、文字通りの宝とするために教育はあるという創設者の佐藤栄太郎先生の信念が込められています。校訓は「今日学べ(こんにちまなべ)」で、やるべきことを明日や明後日に先延ばしにするのではなく、今日やるべきことは今日のうちにやろうという意味が込められています。
本校の属する学校法人佐藤栄(さとえ)学園は、(旧)埼玉自動車整備技術学校を前身として、1971年1月埼玉県から学校法人として認可を受けました。現在、高等学校としては、埼玉栄高等学校、栄東高等学校、花咲徳栄(はなさきとくはる)高等学校、栄北高等学校の4校となっています。
本校は、素直で真面目な生徒が多いのが特色です。私は、学校行事や授業を通して、常に様々なことにチャレンジしてほしいと願っています。近年の文化祭や体育祭は、生徒会が中心となって実行委員会を組織し、主体性を発揮して運営しています。生徒会役員への立候補者も多くなり、生徒たちの積極的な姿勢を感じているところです。
≪教員を目指したきっかけ≫
私は、小学生の頃から、将来は学校の先生になりたいと考えていました。親戚などに教員が多いのも1つの理由かもしれません。高校生になって、将来の職業を考えた時に、やはり子どもの頃の目標を実現させたいと思い、大学は経済学部だったのですが、教職課程を履修しました。大学4年生の時に、母校の中学校で教育実習を行いましたが、3週間の教育実習の中で、将来は教職に就きたいという思いがさらに強くなり、教員になりました。その夢を実現させ、栄北高等学校の教員となり、今年で17年目になります。
≪学校完結型の進路指導について≫
本校では、学校完結型の進路指導を実施しています。例えば、始業前の10分間を活用して、英単語テストやリスニングを実施しています。また、入学してすぐの時期は、リメディアル教育として、特に英語や数学が中心ですが、中学校で学習した内容の復習も授業内で行っています。
高校の学習は、中学校で学んだ基礎の上に成り立っているため、大学入試でも中学校で身につけた学力がベースとなります。基礎学力がなければ、高校の学習内容を十分に理解することはできません。そこで、本校では1年1学期を利用して、英語・数学を中心としたリメディアル教育を行っています。
さらに、授業終了後は20時まで自由に活用できる自習室などの学習環境を整えたり、夏期講習や冬期・直前講習、春期講習など、充実した講座を開設したりしています。これらは、先生方の協力の下で実現しています。例えば、20時までの学校開放については、ローテーションをしっかり組んでいます。また、休日の学校開放については、2交代制を敷いています。
その他、定期的に担任や教科担当の先生方との二者面談を通して、学習面だけではなく、精神面もケアできているのではないかと思います。担任との面談だけでなく、教科担当者と生徒との面談は、結構珍しいと聞きました。本校では、そのクラスを教えている先生全員で生徒をフォローしていく態勢ができています。
これら丁寧で手厚い取組により、生徒たちは先生方を信頼し、安心して学校に通っており、学校完結型の進路指導が実現できていると思います。
本校は、ここ10年間で大学進学実績を大きく伸ばしていますが、その理由は、勉強を自主的にできる習慣がついてきたのが一番大きいと考えています。以前は、勉強をやらされている感じの生徒が多かったのですが、学習手帳(フォーサイト)を導入し、やるべきことを明確に書くようになってからは、書いたからには実際に行動しようという生徒も増えました。また、試験が終わってから振り返りに活用できることも大きいと思います。一昨年度には、本校初の東京大学合格者も出ています。
そして、注目されているのが、現役合格率の高さです。例えば、今春は国公立大学に59名が合格しましたが、内57名が現役生でした。国公立大学合格者の97%が現役ということになります。
なぜ、現役合格率が高いのか。本校では、入学してから間もない頃の進路ガイダンスやホームルームにおいても、できる限り目標を高く設定するように指導しています。「大学全入時代」と言われる昨今、選ばなければ、どこかの大学には入学できますが、「いける大学」ではなく、生徒たちが本当に「行きたい大学」に合格できるのが一番です。そのために、3年間でどのように指導していけばよいのかを逆算して、日頃の授業展開を行うようにしてきたのが現役合格率につながっていると考えています。
実際、比較的安易な受験から、一ランク上の大学を一般試験で受ける生徒が多くなってから、進学実績が向上してきました。進路指導を担当するものとして、チャレンジすることの大切さを感じています。大学合格は、ゴールではなくスタートです。高校時代に勉強で努力した生徒は、いいスタートをきり、その後の人生においても、チャレンジ精神を持ち続けるものと信じています。
≪アクティブ・ラーニングの取組について≫
2014年度に河合塾で開催されたアクティブ・ラーニングの研修に、数名の教員が参加したことがきっかけで、本校でもアクティブ・ラーニングを授業に取り入れていこうという動きが高まりました。2014年度からなので、取組としては早かったと思います。
現在は、特に英語でグループ・ディスカッション、ディベート、グループワークなどのアクティブ・ラーニングに取り組んでいます。従来から、英文法の授業は講義中心で、教員からの説明が多くなりがちでしたが、本校では1年生の時に、大学受験で必要な英文法をすべて学習するので、2・3年生の授業では、大学入試の過去問を使いながら、グループワークやスピーキングを行うなど、生徒が主体的に学ぶ力を育成しています。
アクティブ・ラーニングの効果について、導入した当初はどのような効果があるのかがよく分からなかったのですが、少しずつではありますが、意欲的に学ぶ生徒が増えつつあると実感しています。最終的に、勉強は自分からやらないと成績は上がってこないので、そのような意味においても、アクティブ・ラーニングを導入してからのほうが生徒の意欲は高くなっていると思います。
≪学習手帳(フォーサイト)について≫
本校では、2015年度から、株式会社FCEエデュケーションの学習手帳(フォーサイト)を全校導入しています。今年でちょうど10年目になりました。生徒に自主性や計画性をもって、学習や部活動に取り組んでほしいという願いから導入しました。学習手帳(フォーサイト)は、現在全国30万人以上の生徒が使っているそうですが、誕生は2014年度と聞いています。本校の採用が2015年度ですから、アクティブ・ラーニング同様、新しいものを取り入れるのが早い学校だということになります。
学習手帳を導入した最初の頃は、今週の目標を設定させ、その日にやることなどを事前に計画するように指導していました。特に、1年生の担任の時には、定期的に確認したり、定期試験前に目標を記入し、実際にどのくらいとれたかを確認させたりしていました。学習した成果はもちろん、日々の努力が記録として残せるのがとても便利だと感じています。
最近は、私が3年生の担任ということもあるのですが、実際に学習した内容を記入してもらい、二者面談の際に教科バランスや模擬試験の結果と照らし合わせて、苦手分野の早期克服につなげられるように指導しています。
学習の計画と記録を手帳に記入することで、後で振り返った時に、学習の積み重ねが明確に分かることが、学習手帳を使う大きな意義だと考えています。
≪進路指導を担当している先生方へのメッセージ≫
一人ひとりの目標や将来就きたい職業が違うように、生徒の数だけ進路指導のやり方はあると思います。何が正解で、何が不正解ということはありませんが、私は日頃から一人ひとりの目標や希望に沿った進路指導を心掛けています。教員は、大変なことも多い仕事ですが、生徒が第一志望の大学に合格して報告に来てくれたり、保護者の方から感謝の言葉を頂いたりすると、この仕事に就いて本当に良かったと感じます。様々な生徒がいますが、これからもお互いに頑張っていけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。