情熱大陸出演の落合陽一氏が、フォーラムで語ったこれからの教育に必要なこと
第5回アクティブ・ラーニングフォーラムにも登壇し、強烈なインパクトを残した現代の魔法使い・落合陽一氏。
つい先日は、ドキュメンタリー番組「情熱大陸」にも登場し、新たな研究テーマと共に、日夜研究者として、時には教育者として社会課題に挑む様子が映し出されていました。
今回は、そんなテクノロジーやアートの最前線で活躍する落合氏が、未来に向けてどんな世界を描こうとしているか。そして、その未来ではどのような力が必要で、現場の先生としてどんな準備や教えが必要なのか。
放送を観られなかった方含め、以下で内容に触れながら、アクティブ・ラーニングフォーラムについても振り返っていきたいと思います。
天才・落合陽一と、魔法使いとされる由縁
先の番組内では、主に落合氏のライフスタイルやパーソナリティに着目し、直近で取り組む研究やプロジェクトの様子がその過程で取り上げられていました。まず開始早々に映る、レトルトカレーをストローで食す様(さま)は、観た方の目にまだ焼き付いているのではないでしょうか。主食はグミやガム、平均睡眠時間は4時間。さらにその睡眠時間を削ってでもテレビゲームをし、着る服はヨウジヤマモトで統一。
知らない人が聞けば、まずその変わり者ぶりに圧倒されるはずです。しかし、当の本人からしてみれば、それら全て研究に捧げるための合理的な行動であり、無駄な時間を省くためのものだそうです。
産学連携含め、60以上ものプロジェクトを同時進行させ、大学の一教員としては約40名が所属するラボで学生と向き合います。お風呂の予定もスケジュールに組まなければ入るのを忘れてしまうほど、「多忙」という言葉では言い表せないハードワークをこなし、「無駄を省く」という先ほどの言葉ももっともに感じます。
番組としては、これ以上ない掴みになったと思いますが、ではそんな仕事ぶりから、落合氏が世に放ってきた作品や研究成果にはどのようなものがあるか。番組内やフォーラムで紹介されたものを一部取り上げていきます。
超指向性スピーカー
番組内で紹介もあった、音の聞こえる場所を自由に操作できるスピーカーです。
特定の場所に対し、ピンポイントで音を届けることができます。1つのスピーカーで個々に異なる音を発せられるため、会議などで日本語訳と他言語の訳を各人に流し、イヤホン等で耳をふさぐことなくコミュニケーションなどが可能になるようです。
網膜投影技術
#InterBee2017 で弊社Pixie Dust Technologiesで開発中の新型の広視野角+透過型+網膜投影のHMD発表しました.詳細は日曜日の「情熱大陸」をお待ちください. pic.twitter.com/FGvXFGPYNy
— 落合陽一/Dr.YoichiOchiai (@ochyai) 2017年11月16日
Twitterで先に告知され、番組内ではその網膜投影技術の発明の瞬間がまさに放送されました。
落合氏が2年間温めてきたアイディアだそうで、65時間研究室にこもり電子回路と会話しながら完成させた様子は、研究者としての好奇心や執念が結びついた番組最大の見せ場だったと言えます。
今後、Twitterの画像にあるようなメガネ型のモックにしていく(小型化)ための改良がはじまるとのことで、製品化へのチャレンジがはじまっています。
(参考:落合陽一氏ら、広視野角・網膜投影のメガネ型HMD発表 | Mogura VR - 国内外のVR/AR/MR最新情報 : http://www.moguravr.com/glasses-hmd/)
その他、落合氏の発明には、音で物を浮かせたり、プラズマで空中に絵を描いたり、鉄球をドーナツ型の卓上に浮かべ周回させるといった技術があります。
これまで想像上のものでしかなかった現象をことごとく現実世界で実現させ、「現代の魔法使い」の呼び名にふさわしい活躍をされています。
その他の発明について、興味をお持ちになった方は、ぜひ以下チャンネルよりご覧ください。
●Yoichi Ochiai - YouTube : https://www.youtube.com/user/KurotakaOchiai
研究者であり、教育に携わる立場だからこそ見える必要な能力
こうした世界で誰も成し得なかった技術を発明する傍ら、大学教員としての顔も持つ落合氏。自身の体験や、日々学生との対話を通じて、今の教育に不足している点について、昨年行われた第5回アクティブ・ラーニングフォーラムにて言及しています。
●インターネット時代のラボ教育(落合陽一氏) | ウェブで授業研究 Find!アクティブラーナー : https://find-activelearning.com/set/1704/con/1698
ここでは、大学でものづくりを教える立場として、小中学生には「鑑賞教育」が足りないと言っています。
要は、「世の中にはどんなものがあって、どういうものによって自分の心が動かされるか」ということを知る体験が不足しており、そうしたものづくりの原点となる機会の多寡によって、大学に入ってからの伸びが全く違うのだそうです。
今後は機械にできないこと、特にクリエイターや研究者のような、アイディアを出してものを作ることが求められる社会で、そうした教育上の課題を感じているとのこと。
その他、大学のラボで心がけている考え方として、「小さなチームを作り、たくさんの仲間を作り、研究をし、サービスを作り、社会実装する。ものづくりではなくビジョンにむかったムーブメント作りをする。」という方向性・指針も紹介。
捉え方によっては、アクティブ・ラーニング型授業にも生かせそうな知見も披露し、ワクワクする未来、その未来から今できることへ逆算した話まで、惜しみなく公開されていました。
一般的な教育学者や評論家の方にはない視点の言葉が次々に発せられ、確かにこれを聞いてしまったフォーラム参加者は、ただただ呆然、もしくは未来に興奮すること間違いなしの内容だったかと思います。
未来を想像させることから創造がはじまる
photo credit: Gwenaël Piaser Ryan via photopin (license)
ここまで、落合氏が生み出してきた魔法と、その経験から発せられる“教育者”落合氏の考えについて触れてきました。
突飛な話で、もしからしたらこんなことは直接自分には関係ない、もし興味を持つ子がいればその子が自分ですればいい。
そのように考えられる先生もいらっしゃるかもしれません。
ただ、これだけ未来が変わると言われている中、こうして生まれてくる魔法が、確かに子どもたちの生きる未来を変えるかもしれない。そう直感的に感じられたのであれば、少しでも先生自身がテクノロジーに興味を示し、少しずつ知ろうとすることから始めてみてはいかがでしょうか。
なにも先生自身が、何かを発明しなければということではありません。そうした未来を少しでも伝えられることで、それをキッカケに子どもたちは想像力を膨らませ、初めてその未来でやりたいこと・知りたいことが見えてくるのではないでしょうか。
興味のある子だけが知っておけばいい、ということではなく、全ての子どもたちが、自分の生きる未来の社会について知ることのできる機会を作ってあげる。
そのためにも、社会で革新の続く科学技術やインターネット世界の情報をキャッチアップしながら、折りに触れて伝えられる、教えてあげられることが重要と思います。
改めて詳しく落合氏の講演を聞いていただくことや、その他ニュースメディア(アプリ)のITカテゴリーを覗いてみるでもいいかもしれません。ぜひこの機会にテクノロジーに対し、アンテナを張ってみていただければと思います。
・インターネット時代のラボ教育(落合陽一氏):https://find-activelearning.com/set/1704/con/1698
(Find!アクティブラーナー編集部)
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