アクティブティーチャーの挑戦 第二回(月刊高校教育5月号)

学事出版『月刊高校教育』にてFind!アクティブラーナーの連載がスタート!
こちらでは冊子の記事をWEB版として公開しております。

アクティブティーチャーの挑戦 第二回(月刊高校教育5月号)

東邦高等学校
山田剛司

――山田先生はもう5年にわたって『学び合い』の授業を実践されているそうですが、『学び合い』の授業をスタートした経緯を教えてください。

五年前にたまたま参加したICT教育関連のセミナーで見たのが、今思うと『学び合い』というスタイルでした。その時初めて出会ったやり方でしたが、非常にいい方法だなと思い、もしかするとこれはICT教育に限らず、普段の授業でも使えるのではないかと考えたので、セミナーの帰りに本屋に立ち寄り、週イチでできるアクティブラーニングの始め方、高校教師のためのアクティブラーニングという2冊の本を買い、さっそく勉強したんです。それが西川純先生の『学び合い』の本だったのですが、さっそく試してみたいと思いました。当時私は教務副部長で、教頭とも意思疎通がしやすい立場にいたので、「初めての試みなので、生徒や保護者から苦情がくる可能性はあるが、アクティブラーニングの一環としてぜひやってみたい」という話をしたんです。教頭からは「ぜひやってみろ」という返事をもらえたので、それを実践するまでに壁は特にはなかったですね。

――「初めての試み」に不満や不安を漏らす生徒さんはいませんでしたか?

それまでとはまったく違うスタイルとなるので、導入にあたっては「なぜこのような授業をするのか」「この授業のメリットはなにか」を生徒たちにできるだけ丁寧に説明をしました。
 

実践1年目は保護者から「急に授業のやり方が変わったので、子どもが授業の内容がわからないと言っている」という苦情が一件入ったのですが、よく話を聞いてみると、その子は授業がわからないというよりも、授業というものに対するその子の固定観念の問題だったのです。その子にとって授業とは「静かに話を聞くもの」であり、友だちとしゃべっていいと言われて戸惑ってしまったんですね。もともと友だちと話すのが苦手だったのも原因だったようです。そこで、その子には改めて、なぜこのスタイルの授業が必要であるかを説明し、みんなと話さなくてもよい、自分が話しやすい人と話すことから始めればよいとアドバイスしました。保護者の方も納得してくださり、気がつけばその子も楽しそうに授業に参加してくれるようになりました。苦情らしい苦情はその一件だけで、その後は生徒にも保護者にも好意的に受け入れられています。同じ数学でもすべての先生が同じスタイルをとっているわけではないので、例えば1年生のときに『学び合い』を経験した子が、2年生で普通の授業を受けたあと、3年生で再び私の受け持ちのクラスになったとき、「また先生の授業を受けられて幸せです!」と言ってくれたのはうれしかったですね。

――山田先生としては、『学び合い』の授業はもっと広がっていくべきだと考えていますか?

私自身は素晴らしいやり方だと信じて授業も公開していますが、誰にでもフィットする完璧なやり方があるわけではないし、みんなが無理してやる必要はないと思います。だから強要するつもりはないし、布教活動をしようとも考えていません。ただ、このようなスタイルは、互いのアイデアを共有するにもとてもよいやり方なので、先生同士の研修にもぴったりのやり方だと思うんですよ。

実は3年ほど前に私自身もある研修でこのような体験をしたのですが、一方的に話を聞く研修よりも、発言のハードルが低く、高い参加意識がもてることを実感しました。そこで自分の学校にもこのやり方をフィードバックしたくて、先生同士のワークショップを開いたのですが、単なる研修では見られない活発な意見のやりとりがありました。先生方にとっても新鮮な経験だったようで「定期的に行っていきたい」という声もあがったんですよ。

――『学び合い』の授業では、先生の出番はあまりなさそうな印象を受けますが、生徒との距離に変化はありましたか?

自分が話す時間は圧倒的に少なくなりましたが、生徒との距離はむしろ近くなったと思います。かつてはいかにも「先生」という感じだったのが、今は生徒同士が教え合ってるのをニコニコしながら見守ってる人というイメージなのかもしれません。教えている生徒の近くにいると、ちらちら私のほうを見てしまうんですよね。だから、それに対しては、「それで大丈夫だよ」とジェスチャーでサインを送ってその場を離れます。そうすると、安心した表情を浮かべ、もうそこからは自信をもって教えることに集中してくれます。ごくまれに、生徒たちの様子から私の最初の説明で勘違いをさせていることに気づくこともあり、その時は一度ストップをかけて、説明が良くなかったことを謝り、説明しなおして仕切り直してもらいます。そういうやりとりの中で、以前より身近な存在だと感じてくれているのかもしれませんね。

 

―今日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

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