アクティブティーチャーの挑戦 第三十五回(月刊高校教育2月号掲載)

学事出版『月刊高校教育』にてFind!アクティブラーナーの連載がスタート!
こちらでは冊子の記事をWEB版として公開しております。

アクティブティーチャーの挑戦 第三十五回(月刊高校教育2月号)

九州産業大学付属九州高等学校
山口幸一郎先生

「プログラミングを活用した働き方改革について」

▼▽山口先生へのご質問や講演依頼がありましたら、ぜひ以下学校宛にご連絡ください▽▼
九州産業大学付属九州高等学校
TEL:092-681-0461

▽▼山口先生が制作した時間割ソフトを試したい方はこちら▼▽
※詳細は記事中でご説明します
・時間割ファイル(Zip)
https://school-fal.com/uploads/files/tool/AT/2024/2402_timetable-app.zip
・補足説明書(Word)
https://school-fal.com/uploads/files/tool/AT/2024/2402_supplement.docx
※クリックするとダウンロードが開始されます
 

≪九州産業大学付属九州高等学校について≫

福岡県福岡市に所在する本校は、1964年に開校し、創立60周年を迎えました。本校の「スクール・ミッション」は、読書教育・道徳教育・芸術教育にICTを加えて、「自ら考え、判断し、行動できる真に自立した人間の育成」です。本校は、人間でいえば「還暦」を迎え、重ねた伝統による円熟と、常に新風を吹き込む進取の気性に溢れる学園として、これからもますます「進化・新化・深化」を遂げていきます。

本校の「スクール・ポリシー」は、以下の3点です。
◆本校が育成する資質・能力
・記録、要約、説明、話し合いといった言語活動と読書教育を通して、自分の意見を上手に伝えたり、他者の意見に傾聴したりできる生徒を育成します。
・他人を思いやる心、自然や美しいものに感動する心、郷土や国を愛する心を道徳教育と芸術教育によって育成します。
・各クラスの特色を活かしたクラス編成によって、生徒の能力を最大限まで向上させ、新たな大学入学選抜にも対応できる力を育成します。
◆本校で学ぶ教育内容
・「探究」を取り入れた本校独自のカリキュラム編成
・従来型の「学び」の良い所を継承し、ICT教材を取り入れた効果的で、アクティブな授業展開
・「人権感覚」と「人権意識」を高めるため、ともに学ぶ過程を大切にした場面設定型授業(ケーススタディ)をする中で学ぶ、生徒同士の学び合い
◆本校が求める生徒
・志を持ち、自らの問題意識を掘り下げて追究する洞察力を真剣に獲得しようとする人
・学年を問わず多様な仲間と協働して学び、将来はチームのリーダーとして活躍したい人
・文武両道の精神で、勉強と部活動等の両方を頑張り、将来は社会の中核となって活躍したい人
・多くの友人と関わりをもち、色々なことを経験して自分の将来をみつけたい人
・ものづくりに興味があり、表現のプロフェッショナルを志す人

本校には、約2000名の生徒が在籍しています。文武両道で、部活動と勉強の両方に励む生徒が多いのが特色です。また、吹奏楽部、応援団部、チアリーディング部、全校生徒が一体となった学校応援という伝統的な取組があります。この取組は、夏の高校野球の応援だけでなく、体育祭、姉妹校との交流試合、オープンスクール等でも実施され、九高生の一体感を示すものとなっています。

≪プログラミングとの出会い≫

教員1年目のとき、数学の課題のノートチェックに追われ、課題の内容までほとんど見ることができませんでした。授業が詰まっていると、「出した」「出していない」のみをチェックし、返却することもありました。すると、生徒も内容をチェックしていないことが分かり始め、答えを写すだけの生徒がでてくるなど、好ましい状況とはいえませんでした。

何とか提出記録だけでも、簡単にチェックする方法はないものかと考えていたある日、スーパーのレジで使用されているバーコードリーダーを見て閃きました。これを生徒のノートチェックに利用できないだろうかと。そこから既存のソフトはないものか調べたところ、高額な商品しかありませんでした。ただノートをチェックするだけで何十万も払えない…と思いました。

そこで、「無いのなら自分で作ろう!」と考えたことが、プログラミングを学ぶきっかけです。この時、初めて、マイクロソフトのエクセルVBAと出会いました。そこから数多くの本を読み、独学で学習しました。学習しては、作ってみて、実行、エラー。エラーを起こしては、調べる、実行、エラーの繰り返しで何とか作り上げることができました。

生徒のノートにバーコードを貼付すると、ノート提出チェックが30秒以内でできました。集めて持ってきてくれた生徒に、その場で未提出者リストを渡し、未提出者に呼びかけをしてもらうこともできました。また、「出した」「出していないの」のチェックが瞬時にできるので、生徒の取り組み状況(内容)チェックに時間をかけることができるようになりました。生徒も日々課題に取り組む習慣が付き、成績はどんどん上昇しました。

この経験によって、教員の働き方の無駄な時間をなくせば、生徒にかける時間が増え、楽できるうえに生徒の伸長にもつながることが分かりました。当時、「長い時間働くことこそ生徒のため」という空気がありましたが、私は、効率よくできるところは改善したらいいのにと若手ながら思っていました。

学校では、「反省」と「振り返り」をやたらするが、それを次の年に活かせていないのではないかと思うこともあります。私は、反省を充分活かせていないことが、学校の一番の反省点だと考えています。では、なぜ反省が活かされないかというと、日頃の業務が忙しすぎて(手作業によるチェックなど)、昨年通りやるしかないからだと思います。

プログラミングを学習すれば、数時間かかる業務でもプログラムミスさえしなければ秒単位まで時間を縮めることが可能です。中には、数週間かかっていた業務を1時間以内で完結することも可能です。また、パソコンに命令を書いて一晩仕事をさせていれば、次の日には「完了している」というような仕事ができるのも魅力的です。

さらに、数人掛りでチェックしていたことも、ボタンを押すとチェックをミスなく処理できます。こういったことを、任された業務の必要に合わせて、同時進行で進めてきました。業務命令を受け、業務を遂行しながら、次の年までに「ミスなく、ストレスなく、遺漏なく」をモットーに、ボタン1つでできるように、用途に合わせてプログラミングを学びました。

≪どのようにしてプログラミングを学んだのか≫

学んだ言語は、VBA/VB.NET/バッチ/vb script/java script/GAS/HTML/CSS/JAVA/Pythonです。このうち実践で業務活かせているものは、VBA/GAS/VB.NET/vbscript/javascriptです。

VBAは、エクセルで簡単に作ることができるプログラミング言語です。VBAのすごい所は、Excelで、かつてのプレイステーションくらいまでのゲームを再現できることと、Excelはどの学校にもインストールされているので、ファイルをコピーするだけで他者に利用してもらうことが簡単にできることです。また、Excelのバージョンが変わっても、未だに20年以上前のファイルが現役で動くこともとても魅力的です。

GASは、Googleが提供しているサービスで、JavaScriptをベースにした言語です。業務においては、共有や集約がとてもしやすいので、生徒の大学受験校の合否報告をスプレッドシートとApp spcriptで行っています。これまでは、私大用の調査書を渡した後に、生徒が受験校を変更していると、合否結果を調査することがとても大変でした(特に、卒業式が終わった後の合否確認など)。こういったことをチェックシート型にして、生徒のタブレットでチェックを入れてもらいます。担任教師のスプレッドシートには全員を集約する仕組みを組んでおくことで、自動的に集約されます。

プログラミングの学習には、「作りたいこと」「やりたいこと」を書き出し、目的に一番合った言語を選んで学習しながら作成をしています。作成と学習を同時進行で行っています。

≪時間割ソフトの開発について≫

どこの学校でも、新年度の時間割の作成や、日々の時間割変更は、非常に骨の折れる仕事だと思います。たとえば、新年度の時間割作成の際には、特別教室数/非常勤の先生の勤務時間/ALTの先生の契約/合併授業/授業実施回数/授業を3時間以上連続にしないこと/分掌会議や教科会議への考慮等、多くの条件の下で時間割を作成していると思います。

私は、数学の先生は時間割得意でしょ?といった、勝手な思い込みで、どこに赴任しても時間割を任されました。こんな機械的な作業は、何か良いソフトがあるはずだと思い、いろいろ調べて、お試し版や在籍した学校に導入されている時間割ソフトを触って何とかできないか、金額はいかほどか等模索しました。

しかし、多くの時間割ソフトは機能が多すぎて、初心者には全く扱えませんでした。辞書のような説明書を読むだけでもうんざりするし、今まで使っていた人が転勤になってしまったらその年はもうとんでもなく大変です。また、販売されている時間割ソフトは、自動で時間割変更を行ってくれるが、教師への配慮までは行ってくれません。例えば、事故で一時的に車椅子の先生がいたとしても、1時間目は本館6階で授業をして、2時間目は別館の3階まで移動しなければならない。こういった移動に対する配慮は、人の目でないとできません。

ですから、赴任した学校には、高価な時間割ソフトが、分厚い説明書と一緒に埃をかぶって眠っていました。そして、結局手作業による時間割作成や変更をしていました。例えば、大きな紙を印刷して、数学教師が数人がかりで頭をひねっている。レゴブロックのようなコマを一つひとつ動かしているイメージです。結局時間割ソフトを使うより手作業の方が早いという結論に至っている学校が殆どでした。

そこで、インストール不要/手作業で時間割を作れる/操作が単純/ファイルの授受が簡単。これらにこだわって、時間割ソフトの作成に取り掛かりました。この場合、普段使っているExcelが一番いいと考えて、VBAにこだわって作成しました。ちなみに、私自身は、時間割変更が得意というわけではありません。むしろ見落としが怖いからチェックをPCに任せているだけです。オセロの開発者がオセロの強さ世界1位でないのと同じです。

<私が作成した時間割ソフトについて>

▽▼実際にソフトを試したい方はこちら▼▽
・時間割ファイル(Zip)
https://school-fal.com/uploads/files/tool/AT/2024/2402_timetable-app.zip
・補足説明書(Word)
https://school-fal.com/uploads/files/tool/AT/2024/2402_supplement.docx
※クリックするとダウンロードが開始されます
※不明点があれば、ぜひ山口先生へお問い合わせください

◆ソフトの概要
年間時間割、時間割変更、課外の時間割の3つのことができます。
 特に、効果を発揮しているのは、日々の時間割変更と長期課外の時間割作成で、ミスなく運営できています。
◆ソフトを自作した理由、エクセルにした理由
 インストール不要/手作業で時間割を作れる/操作が単純/ファイルの授受が簡単/誰でも一度は使ったことがあるからです。
◆開発した効果
コロナ禍の急な教師の欠席、授業の代打、過度な変更を乗り切ることができたエクセルファイルです。変更によるミスは一切なく、課外のコマ数カウントで事務処理も大幅な時間短縮をすることができました。
 また、生徒への影響として、開発者が身近にいたことで、興味を持った生徒がプロのプログラマーになりました。
◆ソフトの具体的な使い方、入力方法
 初期設定は、どんなに高価なソフトにも必要不可欠です。入力方法は、マウス操作で一番使用頻度が高いダブルクリックと右クリックのみに限定しました。また、時間割の性質は、時間軸の行と教師軸の列にクラスの重なりが起こらないようにすればよいのです。そのため、瞬時にダブルブッキングを知らせてくれれば、ダブルブッキングのチェックを目視で行い、ストレスなく変更できます。これらに、こだわりました。

≪現在取り組んでいること≫

●大学出願に関するシステムの開発

今年度が初めてなので、うまくいくかわかりませんが実験段階では問題なく動作して、40名分の出願状況一覧が、10秒ほどで完成しています。出願状況の把握は、Googleのスプレッドシートを用いて把握しています。具体的には、大学一覧にチェックボックスを設けて生徒に出願大学をチェックさせています。

また、合否入力については、出願時にチェックした大学の隣に合否のチェック欄があるのでそれを生徒に押してもらい合否を把握することに役立てています。ただし、今年度が初めてで、研究中です。多分、ミスなく問題なく動作します。

●事務室の働き方改革の推進

事務室では、職員の残業報告書の提出を2~3日ほどかけて、一つひとつチェックしていました。ファイル名を変更したり、単純に提出してほしいデータを回収したり(職員も生徒も同じでなかなか提出しない人はしてくれないようです。)

これを、事務室の1つのフォルダーに全職員分をあらかじめ作っておいて、リンクで共有する方法で入力してもらおうと計画しています。職員には、毎週末に一人ひとりリンクが送信できるように組んでいます。ですから、職員は提出をする作業がなくなり、送られてきたファイルに入力だけすればよいということになります。

≪研究・開発室について≫

私は、校務分掌では、研究・開発室の室長をつとめています。この部署では、主に教員の研修をデザインしています。初任者研修/初担任研修/10年研修/20年研修/職員全体の研修などです。

研修は、「Find!アクティブラーナー」を用いて、年間計画を立てて視聴してもらう形で実施しています。計画的に、効果的に利用すれば、先生方の時間に合わせて研修を受講することができるのでとても助かっています。また、講演料が高額な講師の先生の研修を受講できるところもとても魅力的です。

「Find!アクティブラーナー」は、来年度からリニューアルされ、動画の研修を視聴するだけでなく、ロールプレイができたり、他校の先生と一緒に研修を受けたりすることができるようなのでとても期待しています。私は、室長として、受動的な研修から、能動的な研修にしたいと考えています。自由参加型の研修や他校訪問などで、本校に合った研究に取り組んでもらい、生徒の学びに繋げたいと考えています。

≪教務部・進路指導部の先生へのメッセージ≫

データでやり取りしている作業のほとんどは、プログラミングによって自動化可能です。自動化可能なところは、どんどんPCにさせて、先生方のコンディションをよくしましょう。たとえば、大幅な時間短縮が期待できるのは時間割です。毎日変更が発生していますから、1日30分短縮できる取り組みができれば、1か月間を20日ほどと計算しても30分×20日分=10時間捻出できます。つまり、そこを生徒のノートチェックや、次年度に向けてのプランニングの時間に替えればいいのです。

「そう簡単に言うな!」とお思いでしょう。しかし、本気で時間を捻出するために色々なソフトを検証したでしょうか。「手法・やり方」の切り替えには、大きな負荷がかかるので今のままで問題が起きていないからこのままにしておこうという思考になっていないでしょうか。

学校における時間割は、毎日行う大切な業務です。ですから、すごく時間がかかるし、ミスできない。逆に、ミスせず、時間がかからないものを構築すれば、大きな改革です。長期課外にも同じことが言えます。作成者は、数週間かけて調整しなければならないとても大変な業務です。さらに、課外費も発生するので報告書提出まで含めればとても大変です。ですから、ここにも改革できるレベルの「時間の埋蔵金」が眠っています。

どこの学校にも「時間の埋蔵金」は眠っているはずです。それを掘り当てて、そこで捻出できた時間で、さらに次の改革に打って出れば、働き方を改革することができます。そのためには、時間を捻出するためのチームも必要だと思います。チームの中で、自分の学校が何に一番時間を割いているのかを真剣に考えて、そこを改革すると「働き方改革」になり、生徒にかける時間や早く退勤できることにつながると思います。

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