アクティブティーチャーの挑戦 第三十六回(月刊高校教育3月号掲載)
学事出版『月刊高校教育』にてFind!アクティブラーナーの連載がスタート!
こちらでは冊子の記事をWEB版として公開しております。
アクティブティーチャーの挑戦 第三十六回(月刊高校教育3月号)
わせがく高等学校
須藤泰希 先生
「教員が学び続ける環境整備の仕組化」
≪わせがく高等学校について≫
わせがく高等学校は、千葉・東京・群馬・茨城にキャンパスを持つ私立の単位制・通信制高校です。2003年4月に開校した学校で、8,000人を超える卒業生を輩出しています。また、本校は創立71年の伝統を持つ大学受験の名門「早稲田予備校」と同一の学校法人早稲田学園が運営しています。通学型の単位制・通信制の高等学校だからこその強みを発揮する「わせがく」は、卒業資格の取得は当然のこと、「失敗してもやり直せる学校」に挑戦し続けています。その結果、不登校改善率82.4%、進路決定率85.1%、卒業率99.1%となりました。
本校の教育目標は「自由・個性・夢育」です。生徒一人ひとりの夢や人権及び個性がお互いに十分に尊重され、いつも楽しい雰囲気にあふれる学校です。また、生徒が将来に渡って自立して生活できるように、人としての基礎基本を身につけることのできる学校でもあります。そして、地域に根ざし、地域を活性化し、地域に信頼される学校を目指しています。
生徒たちは、様々なバックボーンを抱えて入学してきます。また、最近は、自分の時間が使える通信制を好んで、入学する生徒もいます。新入学生だけでなく、転入学生も多数いますが、すぐに学校生活に慣れ楽しそうに学んでいます。
≪私の学びの変遷について≫
私は、小学1年~大学4年まで、野球をやっており、高校時代は甲子園を目指していました。16年間の野球で学んだことは、思いやり、やり切る力、夢を持つこと、礼儀、感謝する気持ち、そして、親への恩返しです。
大学卒業後は、都立の中学校で教鞭をとっていました。とにかくがむしゃらに生徒と向き合った3年間でした。新卒で勤め、右も左も分からない中、学年主任の先生が将来のためにと、様々な業務を経験させてくれました。その中で、不登校の生徒や配慮が必要な生徒とも接する機会があり、向き合えば向き合った分変わっていく生徒の姿を見て教員としてのやりがいを感じました。そして、不登校の生徒が進学する通信制の高校の採用試験を受けました。
今一度自分がどんな教員になりたいのかを考えた際に、「自由・個性・夢育」を大切にしているわせがく高等学校にご縁があり、勤めることになりました。太田キャンパスを希望したのは、地元群馬県に恩返しがしたいという思いからです。
わせがく高等学校の教員になってから、ジャンル問わずアンテナを高く張り情報収集をしています。生徒の趣味趣向が多様化しているため、漫画、アニメ、ゲーム、ユーチューバー、SNSなどにもアンテナを張っています。また、自らが置かれている立場から、必要な力を分析し、本を通じて学んだり、研修に参加したりと現状に満足せず、学び続けています。私の学び続ける姿が、他の先生にも伝わり、より良いキャンパスをつくることに繋がると思っています。
私の教育観についてお話しします。人は人によって、良くも悪くも変わると思います。ICTや生成AIが進む中、最終的には人との関わりが大切だと感じています。教員が「してあげること」が多くなり過ぎることで生徒の主体性が損なわれる時もあります。これからは、生徒と共に悩み考え、時には導き、時には生徒から学ぶなど、ファシリテーターとしての役割が重要だと思っています。
≪教員研修について≫
私は、教員が学び続ける環境整備の仕組化が大切だと考えています。特に、私立学校では自らそれを構築する必要があります。2019年に「Find!アクティブラーナー」という教員研修の動画研修サイトがあることを知り、検討をはじめました。そして、2020年に学校導入版を利用し始めました。きっかけは、コロナが全国的に流行し、対面で思うように研修が進まなかったことが一つでした。また、先生方の抱えている悩みや研修を受けたい内容が多様化し、そのニーズに答えるためにも、個別最適な研修ができる「Find!アクティブラーナー」を導入しました。
本校では、毎年12月に、来年度の研修の計画を立てています。来年度は以下の研修を計画しました。全体研修(年3回)、新人研修(年3回)、2年次研修、3年次研修、視聴研修、入園前研修です。この中の視聴研修で「Find!アクティブラーナー」を活用しています。
具体的には、新人研修、2年次研修、3年次研修は、研修内容とリンクさせ、事前課題や事後課題として動画視聴を課しています。2年目以降の教員については、各先生方の課題に応じて視聴してもらっています。
教員研修の仕組化では、走り出しと、リフレクションが大切です。先生方が学び続けることができるように、できることは全て実施してきました。勤務年数に応じたテーマ設定や、資料の作成、各先生方に見てもらいたい「Find!アクティブラーナー」の動画を研修担当で全て確認し、内容をまとめてメールで送付するなど、工夫を凝らしています。来年度は、メール送付などをより積極的に行い、視聴時間の増加につなげていきたいと思います。
さらに、来年度は、各教員の研修履歴の作成を考えています。公立学校では、来年度から教員一人ひとりが研修履歴を持つことになりますので、本校としても、しっかり作成したいと思います。そのことで、先生方の研修に対するモチベーションを上げるとともに、学び続ける学校文化を醸成したいと考えています。
≪不登校支援について≫
○失敗してもやり直せる学校
本校は、失敗してもやり直せる学校です。やり直しができるってとても素敵じゃないですか。人生も失敗の連続です。失敗があるからこそ成功ができると感じています。失敗を失敗で終わりにせず、分析し次に生かしていく。大人の世界も同じだと思います。勉強が出来なければ、生きていくすべを覚えれば良いです。勉強ももちろん重要ですが、それよりも社会生活を営む力、そして生きていく力が大切だと思っています。その上で、わせがくの建学精神である「本学は百人百様の個性をもつ生徒に対してその能力・適性にあった教育を施し、人としての基礎基本を身につけ、健全に社会に自立ができる個人を育成し、社会発展と人類の福祉に貢献すること」に基づいて、我々教員は生徒へ指導しています。
○不登校改善率82.4%の秘密
本校で、不登校改善のために特に力を入れて指導しているのは以下の3点です。
- ・中学の総復習からスタートする授業
- ・専門的支援のための教育相談室を設置
- ・一人ひとりの状況に合わせたサポート
わせがく高等学校は、大きなグラウンドや体育館があるわけではありません。どこで、他校との差別化を図っていくのかと考えた際に、やはり教員の質かと思っています。教員一人ひとりが、研修の中で教育相談について、毎年学んでいます。
○不登校支援にあたっている先生へのアドバイス
生徒の内発的動機付けをどのように上げるのか、そこが一番重要だと思っています。何を生徒に身に付けてもらいたいのかを考えゴールを設定し、そこに向かって行動していく。これに尽きるかと思います。教員が一生懸命考えていると、生徒に必ず伝わります。上手くいかないこともありますが、下を向かず上を向いて、ポジティブに物事を考えていただきたいです。
≪先生方へのメッセージ≫
生徒への関わりや授業展開などについて、現状に満足しないことが大事です。学び方が多様化している現在、我々も変わっていく必要があると感じています。時代の流れと共に、柔軟にそしてスピード感を持って対応していくことが大切です。
植松努氏の『空想教室』を読む中で、「思うは招く」という素敵な言葉に出会いました。私が大切にしている言葉です。誰もがなりたい教員像や、やりたい授業展開があるはずです。思わないと始まりません。是非、現状に満足せず、お互い高みを目指していけたら嬉しいです。