アクティブティーチャーの挑戦 第三十七回(月刊高校教育4月号掲載)

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アクティブティーチャーの挑戦 第三十七回(月刊高校教育4月号)

仙台市立仙台商業高等学校
勝又淳成 先生

「スケジュール管理のできる人材の育成」

≪仙台市立仙台商業高等学校について≫

本校は112年の歴史のある仙台商業高等学校と90年の歴史のある仙台女子商業高等学校が統合し、2009年4月に開校しました。開校以来、両校の伝統、文化を継承しつつ、「自律」「友愛」「創造」を校訓に掲げ、豊かな人間性を育む魅力ある教育活動を実践しています。仙台市や宮城県だけでなく、国内外にわたり、経済産業界の第一線で活躍する優秀な人材を数多く輩出しています。

本校の教育目標は、「生涯にわたり学習する基礎的資質の育成」「社会の変化に柔軟に対応できる能力の育成」「ビジネス界をリードできる人間の育成」「個性の伸長を図り、社会の発展に寄与できる人間の育成」です。

商業高校ということで、生徒の最終進路を就職と思われがちですが、本校は、就職・進学半分半分の実績があります。部活動も盛んで、運動部(野球部、軟式野球部、男子バレーボール部、自転車競技部等)の活躍だけでなく、文化部(珠算部、簿記競技部、情報技術部、ワープロ部、商業情報部)も全国大会出場、入賞等を果たしています。

明るく素直な生徒が多く、自分の目標に向かって努力をすることができる生徒が多いのが特色です。

≪宮城県高等学校商業教育研究会の事務局としての活動≫

私は、2023年度には、2年生の財務会計I、課題研究、3年生の総合実践、広告と販売促進、課題研究を担当していました。校務分掌は、生徒指導部、3学年副担任でした。また、部活動は、情報技術部の副顧問をしています。情報技術部は、全国商業高等学校協会主催の全国大会の常連校になっています。

一方、私は、2008年度から宮城県高等学校商業教育研究会(県内商業科教員の団体)の事務局を担当しています。2018年度からは、主担当となり、宮城県内の商業教育関係事業の企画・運営にあたっています。事務局の主担当となったことで、全体が見えるようになりました。自分で考えたことが形になる喜びも感じています。例えば、講演会の講師選定に携わり、その講演について先生方から勉強になったと言ってもらえると、事務局をやっていてよかったと感じます。

また、宮城県高等学校商業教育研究会の事務局ということで、宮城県の代表として東北六県商業教育研究会の会議に連絡委員として関わっています。東北六県商業教育研究会より、各県に下ろされた議案等について、宮城県としての意見を集約し、会議に宮城県の意見として提案し、東北六県の商業教育の発展のために取り組んでいます。宮城県代表として会議に出席する機会が多くなり、他県の先生方とのつながりもできました。事務局を担当して、もう16年になります。忙しい時期もありますが、近年はこの仕事を楽しいと思えるようになりました。

≪生徒に身に付けてほしいと考えている力≫

生徒には、物事に進んで取り組む主体性を身に付けてほしいと考えています。なぜなら、最近の高校生は、「やってもらって当たり前」という感覚を少なからず持っているようだからです。例えば、授業ではプリントがもらえるのが当たり前と考えている生徒もいます。実社会に出たら、誰もやってはくれないし、準備もしてくれないのが普通ですので、ぜひ、自分で考えて行動する力を身に付けてもらいたいと思います。

自分で考えて行動するためには、課題解決に向けた計画力が大切です。例えば、アポイントメント管理を習慣化し、スケジュール管理ができる人材を育成したいと考えています。タイムマネジメントは極めて重要ですし、振り返りや改善に向けた工夫も大切です。

本校では、そのために、生徒向けの振り返り力向上手帳である「フォーサイト手帳」を導入しています。5年前に、進路のためにポートフォリオを生徒に作成させる際、その準備をさせなければならないという事から、「フォーサイト手帳」の導入を決定しました。

最初は、手帳を書くという事に慣れていなかった生徒も、先生方の指導により、手帳の記入がうまくなりました。時間を重ねることで、自分なりの記入方法も編み出し、スケジュール管理や振り返りに使えるようになっています。うまく手帳を使っている生徒を表彰していた学年もありました。

世の中のデジタル化が進むことで、高校生たちの生活は便利になっていると感じます。しかし、本を読まない、字を書かないことで、知識が定着していないと感じることもあります。簿記などで、勘定科目の漢字が書けない生徒も見受けられます。毎日、手帳を記入することによって、スケジュール管理を身に付けるとともに、考えて書く習慣も身に付けてほしいと思います。

最近の生徒を見ていて、昔の生徒に比べて、生きる力が弱いと感じる時があります。社会は、学校のようには一人ひとりを守ってはくれません。社会の理不尽さの中でも、たくましく生きていける力を身に付けてほしいというのが、私の切なる願いです。

≪商業科における資格取得について≫

商業科の生徒は、多くの資格取得に取り組んでいます。例えば、全国商業高等学校協会主催の検定である、ビジネス計算(珠算・電卓)、簿記、情報処理(プログラミング・ビジネス情報)、ビジネス文書(ワープロ)、商業経済、ビジネスコミュニケーション、英語、会計実務(財務諸表分析・財務会計・管理会計)を主に取得します。また、日本商工会議所主催簿記検定2級、情報処理推進機構主催ITパスポート、基本情報技術者試験等の資格取得をする生徒もいます。

資格取得というと、就職のために有利だからとお考えの方が多いと思います。しかし、本校生徒の半分は,大学や専門学校に進学します。私は、資格取得の主な目的は「成功体験を得る」ことだと考えています。資格取得では、「努力した分は必ずかえってくる」ということを実感することができます。

資格取得に取り組む時には、点をとる方法を身に付けるのではなく、自発的に自分の頭で考えてほしいです。そのために、授業では、教わったことを活用できるよう自分で考える、自分で調べることを身に付けさせるようにしています。一方、資格取得に向け、綿密な計画を立てることができていないと感じます。そのためにも、手帳を活用することを推奨しています。

≪読者へのメッセージ≫

私は、子どもたちに、私は先生である前に、生徒と同じ「人」としての立場で話すことがあります。先生としては伝わらないことも、人として話すことによって、伝わることが多いと思うのです。立場や地位ではなく、真摯に人として付き合っていくと、子どもたちは心を開いてくれるように感じています。

確かに、先生としての立場で言わなくてはならない場面もあります。そういう時には、しっかり話をしますが、基本的には、私は自分のことを先生だと思ったことはあまりありません。

そして、私は、物事は「なるようにしかならない」と考えています。少し後ろ向きに感じるかもしれませんが、人間は努力した分しか戻ってこないという意味です。私は、努力した分しか力(実力)を発揮することはできないという経験を、学生時代から今までしてきました。実力以上の力を発揮しようとすれば、空回りして自分の持っている力すら発揮できないと思います。よって、「なるようにしかならない」という言葉が自分の中ではしっくりとくるのです。

だからこそ、結果を求められる世の中だからこそ、いつも通りの力が発揮できるように子どもたちには、普段の生活で地道な努力を続けさせたいと考えています。


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