アクティブティーチャーの挑戦 第四十二回(月刊高校教育9月号掲載)
学事出版『月刊高校教育』にてFind!アクティブラーナーの連載がスタート!
こちらでは冊子の記事をWEB版として公開しております。
アクティブティーチャーの挑戦 第四十二回(月刊高校教育9月号)
早稲田摂陵高等学校米田謙三 先生
「生成AIの活用について」
≪早稲田摂陵高等学校について≫
本校は、1962年に、大阪府茨木市に大阪繊維工業高等学校として設立されました。その2年後には、普通科が新設され、1974年には、普通科高校への変更にともない、校名を摂陵高等学校に改めました。1985年には、摂陵中学校(中高一貫)を併設しました。そして、2009年には、早稲田大学の系属校となり、校名を早稲田摂陵高等学校に変更しました。本校は、先進的な教育カリキュラムの導入を行っている進学校です。主な進学先としては、早稲田大学への内部推薦枠が一定数確保されているほか、関西地方の難関私立大学や国公立大学などがあります。また、先進的な設備の下、ICTを用いた教育も積極的に導入されており、多面的な学習方法が提供されています。
さらに、2025年4月には、早稲田摂陵高等学校から、早稲田大阪高等学校へと校名を変更し、早稲田大学との高大接続を一層深めます。2025年度入学生より、早稲田大学特別推薦枠が「39」枠から、「74」枠に拡大します。「早稲田コース(現・Wコース)」は、定員74名に対し、早大推薦枠を74設定することにより、早稲田大学進学を念頭に、大学での学びにつながることを意識した独自の教育活動を展開していきます。
私からみた生徒の特色ですが、自分なりに考えて行動できる生徒が多いと思います。自分の意見をしっかり持ち、課外活動にも積極的に取り組んでいます。
≪私の経歴や取組について≫
私は、ICTを活用した効果的な教育と協働学習を専門としています。英語・情報・地歴公民の教員免許を持ち、教育の情報化や教科横断型に関する実践と研究をもとに授業を実施しています。私の実践している主な分野は以下の通りです。
・英語×ICT 総合的な探究
・ICT活用教育
・協働学習
・教科横断型実践
・情報モラル関連 他
また、文部科学省・経済産業省・総務省などで下記の委員なども担当させていただいています。(一部任期を終えたものもあります。)
・文部科学省 教科 情報 高校学習指導要領
学習指導要領等の改善に係る検討に必要な専門的作業等協力者
・経済産業省「未来の教室」STEAMライブラリーWG委員
・総務省青少年の安心・安全なインターネット利用環境整備に関するタスクフォース委員
・総務省 ILAS(リテラシー指標)編集委員
・内閣府他 6省庁共催 「高校生ICT Conference」実行委員長
・日本英語検定協会派遣講師 等
その他、講演会活動・執筆活動も実施しています。主なものは以下の通りです。
<講演会、登壇実績> 2023年度以降のみ掲載
・2023年度「先生のための金融教育セミナー」
金融・消費者問題を学び、考え、議論し、体験するSTEAM授業
・東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)センター派遣講師 文部科学省大臣官房国際課
2024年3月 ベトナムホーチミン ベトナムの教員対象
・STEAMパワーで生徒の可能性を最大化!総合探究教育セミナー、Aiセミナー、WS 多数の地域
・ユネスコスクール全国大会 ワークショップ 2024年1月 東京
・大修館書店、中高教員向け「探究×資料読み取りに関するオンラインセミナー」オンライン
・文部科学省 ネット安全安心全国推進フォーラム、ネットモラルキャラバン隊 登壇
・New Education Expo(東京・大阪)、 関西教育ICT展 登壇 他
<執筆活動>
・『マーク式基礎問題集 情報I (河合塾SERIES)』(河合出版2024)著書・共著
・『英語×「主体的・対話的で深い学び」-中学校・高校 新学習指導要領対応-』(大学教育出版2021)著書・共著
・『生徒一人ひとりのSDGs社会論 [電子版付]』(コスモトピア2023)著書・共著 等
このように、経歴や取組を並べてみると、幅広い分野で活動していると思われる方がいると思います。私は、若いころから多角的な視野で広く学ぶようにしてきました。英語と情報と地歴公民の教員免許状をもち、それぞれの分野を横断的に結び、関連付けて実践していることも大きいと思います。
また、2000年ころから、学校外の研究会や勉強会に積極的に参加し、全国の多くの仲間たちと繋がりを持つことができています。その繋がりから、講演会の依頼や、各種お仕事を頂くこともあります。 先生方には、ご自身の視野を広くするためにも、ぜひ学校外の研究会や勉強会やセミナーに参加されることをおすすめします。
≪生成AIについて≫
AIから発展を遂げた生成AIは、「プロンプト」と呼ばれる指示や質問を投げかけると、その内容を解読し、自動で新しいコンテンツを生み出して、学習していくものです。この仕組みでは、大量データから特徴を自動的に発見できる人工技術の一種であるディープラーニングが展開されます。ここで、代表的な生成AIサービスを分野別で紹介するとともに、教育現場でおすすめの生成AIを紹介します。生成AIには多くのサービスがありますが、求めるアウトプットを得るため、目的に沿ったサービスを選ぶことが大切です。(無料サービス・有料サービスがあります。確認をお願いします。)
※ 情報は2024年6月末現在です。
◆画像生成AI:クリエイティブの可能性を広げます
従来の画像編集ソフトとは異なり、テキスト入力だけでオリジナル画像を生成できるAIは、まさにクリエイティブのツール。Webデザインの背景画像やバナー、広告素材はもちろん、イラストやアート作品まで、アイデアを自由に形にできます。
・写真のようなリアルな画像から、抽象的なアート作品まで、幅広い表現が可能
・特定のスタイルや雰囲気の画像を生成
・複数の画像を組み合わせ、ユニークな作品を制作
代表的なサービス Image Creator Stable Diffusion Canva DALL-E Midjourney
活用事例
商品ページやブログ記事のアイキャッチ画像制作、ソーシャルメディア投稿の画像制作
プレゼンテーション資料の装飾、オリジナルキャラクターやイラストの制作
◆テキスト生成AI:アイデアを瞬時に形にします。
文章作成、校正、翻訳、要約など、幅広い用途で活用できるテキスト生成AIは、プログラミングコードのデバッグから、マーケティング文書や論文の作成まで、あらゆる場面で活用できます。
・ワンランク上の文章作成をサポート
・独自の文章スタイルを学習し、個性的な文章を生成
・文法やスペルチェックを行い、誤字脱字を修正
代表的なサービス ChatGPT Google Bard(Gemini) Microsoft Copilot Jasper Copy.ai
活用事例
ブログ記事やWebページのコンテンツ制作、広告やコピーライティング、レポートや論文の作成
メールや手紙の作成、小説や脚本などの創作活動
◆動画生成AI:短時間で高品質な動画を制作します。
テキスト入力だけでオリジナル動画を生成できる動画生成AIは、広告やソーシャルメディアコンテンツ、教育用ビデオなど、様々な用途で活用できる。
・既存の動画を加工し、新たな作品を生み出す機能
・自動字幕生成や音声挿入機能
代表的なサービス Runway Pika Pictory
活用事例
商品紹介やサービス説明の動画制作 教育コンテンツやトレーニング動画制作
◆音声生成AI:人の声を再現し、新たな表現を生み出します。
ある一人の声を入力し、声質を高精度で再現する音声生成AIは、ナレーションやキャラクターボイスの作成などに適しています。本人の声を収録しなくても、テキストを読み上げることができます。
・感情や抑揚を表現したリアルな音声生成
・音声にエフェクトをかけ、個性的な表現を生成
・複数の音声を組み合わせ、ユニークな作品制作
代表的なサービス Voicevox Voice Engine CoeFont Amazon Polly Google Text-to-Speech
活用事例
ナレーション付きの動画制作 キャラクターボイスの作成
音声教材や音声ガイドの制作 音楽作品や音声アート作品の作成
生成AIは、教育現場でもその力を発揮し、授業の質向上や生徒の学習支援に役立っています。
参考 大阪大学 生成AI教育ガイド https://www.tlsc.osaka-u.ac.jp/project/generative_ai/
≪英語の授業での生成AIの活用について≫
英語科における生成AIの活用事例には、例えば、テスト問題の作成があります。教師が生徒のレベルに合わせた問題やオリジナル問題を作成するには時間と労力がかかりますが、テキスト生成AIを使うことでその時間を大幅に短縮できます。ただし、AIが生成する英文には誤りが含まれることがあるため、教師の専門知識でチェックする必要があります。AIは英語のプロである教師にとって有用なツールと言えるでしょう。他にも、フレーズの穴埋め問題、オリジナル単語帳、4択問題の作成にAIを活用することができます。具体的な使い方については、インターネットで「AI 英語のテスト問題作成の方法」と検索すれば参考になる情報が見つかります。
また、ChatGPTなどの生成AIを利用することで、教材や授業用の資料作成が容易になります。特に、教師がゼロから資料を作成するのではなく、AIを使って新しい素材を生成することで、時間を節約しつつ質の高い教材を提供できます。
さらに、生成AIは生徒自身にも使わせることで、AIの限界や正しい使い方を学ばせる良い機会となります。例えば、翻訳ソフトを使って自分の翻訳と比較し、どの部分が正確かを学ぶことで、より深い理解を得ることができます。
≪生成AI活用の留意点≫
生成AIには、メリットと課題があります。従いまして、そのことをよく理解した上での活用が必要になります。私の考えるメリットと課題は以下の通りです。◆メリット
・個人の学習レベルにあわせてアドバイスや教材を個別に提供できる
・リアルタイムでアドバイスできる
・これまでのデータに基づいて授業や教材、生徒の成績の評価や分析ができる
・低コストで実施できる
◆課題
・データの蓄積や管理が必要となる
・AIの思考プロセスをいかに活用できるか。
・「考える力」や「学ぶ意思」という主体的に学ぶ姿勢をいかに育てることができるか
・個人情報や機密情報が流出する危険がある
・AIの情報が正しいかどうか検証する必要がある。(倫理的問題がある。)
※生成AIがつくる間違いを「ハルシネーション(幻覚:Hallucination)」と言います
・プロンプトの適切な入力 ※次の項目参照
≪FCEプロンプトゲート・アカデミック版について≫
私は、特に課題の中でもプロンプトの入力が大切だと考えます。株式会社FCEの開発した「FCEプロンプトゲート・アカデミック版」に注目をしています。このサービスに関して、以下の3つの機能がとてもいいと考えています。◆機能➀:AIプロンプト8+1の公式を学べる
「AIプロンプト8+1の公式」をマスターし、 生成AIの基礎的な公式・使い方を学ぶことができます。これにより精度が高く、的確なアウトプットを導くことができるプロンプトを作成することができます。
◆機能②:探究授業や大学推薦にも使えるテンプレートを用意
「座席表や学級通信をつくる」「課題を作成する」といった教員の校務・教務から、「探究授業に使える探究パック」「自己推薦文の添削」「大学入試の模擬面接対策」といった生徒向けまで学校現場ですぐに生成AIを活用できるテンプレートを用意しています。
◆機能③:プロンプトの校内管理・共有ができる
生成AIの利用が進んでいますが、多くの場合個々での活用になっており、せっかく作成したプロンプトが管理できていない状態になっています。各自が作成したプロンプトを共有・管理することで、効果的なプロンプトを活用できるようになるだけでなく、生徒たちの作成スキルを上げていく機会にもなります。
参考 Prompting guide 101 Google
https://services.google.com/fh/files/misc/gemini-for-google-workspace-prompting-guide-101.pdf
≪先生方へのメッセージ≫
AI,ITは、想像を絶するスピードで進化していく時代を迎えています。そうした中で、何をどのように学ぶかが非常に重要になってきており、中でも「プロンプトエンジニア」の必要性を強く感じています。そのためにも、私は「FCEプロンプトゲート・アカデミック版」を活用し「基礎的な生成AIリテラシー」「生成AIを動かす基本フレームワーク」「探究する力を身につけ、国際社会へ貢献する人材、新しい時代を想像する人材」の育成を図りたいと考えています。また、そうした人材の育成を通して、将来的には労働生産性の向上にも貢献していきたいと思います。まずは、ユーザーである教員や生徒にできるだけ主体的に活用してもらうことを狙いにして活用を進めていく予定です。「プロンプトゲート」の映像教材などを活用し、基礎知識の取得および具体的な活用方法をイメージしてもらうこと、テンプレート機能をもとに実際に作成し、それらを、共有機能をもとに共有していくなど、フル活用していこうと考えています。
<省庁からの参考サイト>
経産省「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方」
https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230807001/20230807001.html
⽂部科学省初等中等教育局(2023)「初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン」⽂部科学省
https://www.mext.go.jp/content/20230718-mtx_syoto02-000031167_011.pdf
総務省 生成AIはじめの一歩~生成AIの入門的な使い方と注意点~
生成AIはじめの一歩~生成AIの入門的な使い方と注意点~ | 安心・安全なインターネット利用ガイド | 総務省 (soumu.go.jp)
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