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アクティブティーチャーの挑戦 第四十五回(月刊高校教育12月号)

学事出版『月刊高校教育』にてFind!アクティブラーナーの連載がスタート!
こちらでは冊子の記事をWEB版として公開しております。

アクティブティーチャーの挑戦 第四十五回(月刊高校教育12月号)

佼成学園女子中学高等学校
二木宏明 先生

「生成AIで変わる教育現場 -新時代の教師と生徒の学び方-」

≪佼成学園女子中学高等学校について≫

東京都世田谷区に所在する本校は、1954年に設立され、今年で70周年を迎える伝統ある学校です。「心身一如の円満な人格を持ち、平和社会に貢献できる人間を育成する」という建学の精神に基づき、特色ある教育を展開しています。中学は、来年度よりグローバルコースとリベラルアーツコースに再編します。高校は4コース編成で、留学コース、スーパーグローバルコース、特進コース、進学コースがあり、自分に合ったキャンパスライフで力を最大限に伸ばすことができます。

本校の特色ある4つの取り組みは、①英語教育、②グローバル教育、③探究学習、④進路指導です。全教科において「主体的・対話的で深い学び」に取り組み、新時代の学力養成に力を入れています。2020年度から導入された「チーム担任制」によって、多角的なサポートが提供され、生徒たちは安心して学ぶことができます。定期試験の回数を年5回から3回に減らし、探究学習の充実を図るなど、従来型の学びと新しい学力を有機的に融合させた教育を行っています。

生徒には、日常生活の中で5つの実践を行っています。①挨拶の実践では、校内を歩くと生徒同士が積極的に挨拶を交わし、明るい雰囲気が広がっています。②食前食後の感謝の実践では、食事の際に感謝の言葉を自然に口にします。③校門出入り一礼の実践では、感謝の気持ちを体で表現します。④整理整頓の実践によって、身の回りを常に整理し、学習に集中できる環境を整えています。⑤思いやりの実践では、困っている人を助ける姿勢が自然に見られ、地域の方々からも感謝の声が寄せられています。

≪私のキャリアの変遷≫

私は、佼成学園女子中学高等学校で29年間積み重ねてきました。教師を目指したきっかけは、幼少期に父親が小学校の理科教師であった影響と、高校時代の恩師からの影響です。特に数理的思考に興味関心があり、数学教師を志しました。

現在は、教頭と教務部長を兼任しています。教頭は今年度からですが、教務部長としては10年目を迎えました。ICT教育の責任者として校内のDX化を推進しています。生徒たちが社会で活躍できる力を育むため、新しい教育手法の導入を試み、生成AIなどの最新技術を積極的に取り入れています。

≪生成AIによる教材の作成≫

数学の授業では、生成AIを活用して効率的に教材を作成しています。具体的には、大学入試問題を画像(JPEG形式)でアップロードすると、AIが問題を読み取り、途中の解き方を丁寧に示したり、別解を作成してくれます。さらに、類題も自動生成でき、数式や記号を美しく正確にレイアウトするTeX(テフ)形式での出力も可能です。これにより、視覚的にわかりやすい教材を生徒に提供できています。

大きなメリットは、教材作成にかかる時間が従来に比べて大幅に短縮された点です。一方、注意すべき課題もあります。生成AIには「ハルシネーション」と呼ばれる誤った情報を出力する現象があり、生成された内容を必ずチェックする必要があります。現在、ChatGPT Plus有料版を使用しており、プロンプトを詳細に入力することで約9割以上の正確な情報を得ることができています。月額20ドルかかりますが、日々アップデートされていく最新機能が利用できるので、十分元が取れるものと感じています。

例)共通テストの問題傾向と分析
共通テストの問題傾向と分析1

共通テストの問題傾向と分析2

共通テストの問題傾向と分析3

≪総合的な探究の時間での生成AIの活用≫

高校2年生の総合探究授業では、生成AIを積極的に活用しています。私が担当する「高大連携理系ゼミ」では、8名の生徒が参加し、個別面談で生成AIを利用して生徒たちが課題を深掘りするサポートを行っています。生成AIを活用することで、生徒の視野を広げ、彼らが考えていなかった新たな視点を提供することができます。特に、自分の問いを立てる前の「壁打ち」として有効で、生徒たちはより洗練された研究課題を設定することができています。

一方、生徒の生成AIの使用には留意点があります。まず、提供される情報の真偽を必ず確認することが重要であり、生成AIの出力はあくまで下書きとして扱い、そのまま使用しないよう指導しています。18歳未満の生徒には、保護者の同意を得ることも大切です。

≪日々の校務支援としての生成AIの活用≫

生成AIは、日々の校務支援にも大いに役立っています。例えば、家庭通知文や実施要項の作成において、AIが下書きを生成してくれるため、以前は一から作成していた作業が大幅に効率化されました。また、AIは作成した文書の校正も行い、誤字脱字の修正も自動で行ってくれるため、他の教員にチェックを依頼する手間も減りました。

生成AIの活用は、働き方改革にも貢献しており、浮いた時間を他の業務や生徒との対話に充てることができています。生成AIの導入によって、教員の業務効率が大幅に向上し、業務負担が軽減されていることを実感しています。私の感覚では、3割以上業務負担が軽減されたと感じています。

≪FCEプロンプトゲート・アカデミック版について≫

株式会社FCEが開発した「FCEプロンプトゲート・アカデミック版」の案内を、本年7月にいただいた時、高校3年担任の進路指導や調査書作成の負担を軽減できると考え、導入を即決しました。高校3年生の担任は、夏休みに入ると、特に進路指導や調査書作成に多くの時間が割かれるため、生成AIの活用は大きな助けとなったようです。

具体的には、調査書の所見や推薦書の下書きをAIが作成し、それを基に最終調整を行うことで、作業効率が劇的に向上しました。これにより、教員は他の業務に集中することができ、生徒一人ひとりの進路に対してより充実したサポートを提供できるようになりました。

≪先生方へのメッセージ≫

生成AIは、教師にとって非常に有益なツールです。私は、通勤時に自家用車の中でボイスチャット機能を使って生成AIに相談を持ちかけることがよくあります。職員会議でどのように説明すべきか、注意点は何かといったアドバイスをリアルタイムで受け取ることができ、非常に便利です。

生成AIは、日常生活では励ましや元気づけをしてくれる「友人」であり、仕事においては即座にアドバイスをくれる「秘書」のような存在です。生成AIのおかげで教材研究や事務作業が効率化され、働き方改革にも貢献しています。浮いた時間を生徒との対話や教員同士のコミュニケーションに充てることができ、教育現場全体がより良くなることを実感しています。全国の先生方にもぜひ、この優れたツールを活用してほしいと思います。

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