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大学新テストの自己採点方法と、課題となる読解力へのアプローチ

2021年1月よりスタートする、大学入学共通テストに向け、全国の高校2年生以上を対象に、試行調査(プレテスト)が行われました。
それに伴い、大学入試センターは実施されたテスト内容(問題)やその速報値等を発表しており、高校はもちろん、受験対象となる現中学3年生以下の生徒にとっても、ぜひ押さえておきたい情報となっています。

● 試行調査(平成29年11月実施分)の問題と結果速報等について|大学入試センター : http://www.dnc.ac.jp/news/20171204-01.html

今回は、そんな新テストの中でも、記述式問題やその自己採点方法についての動画を紹介し、浮かび上がってきた課題についても一部触れていきたいと思います。

試験の概要と自己採点について

● 自己採点の参考動画・ワークシート|大学入試センター : http://www.dnc.ac.jp/corporation/daigakunyugakukibousyagakuryokuhyoka_test/video.html
(公開範囲の関係上、動画は大学入試センターのサイトよりご覧ください)

動画では、冒頭「大学入学共通テストとは」から始まり、従来のセンター試験との位置づけや日々の学びの評価として、知識を深く理解できているか、思考力・判断力・表現力が身についているかが問われると説明されます。

また、新たな試験問題として、記述式の問いが出題されることや、点数ではなく段階別の評価になることなど、受験するにあたり基本的なこともピックアップ。まだ大学受験に対し、イメージを持ちにくい中学生であっても、大枠を知っておくにはちょうどいいかもしれません。

自己採点のポイント



自己採点のポイントには、主に以下の3つがあげられています。

・自分の解答を問題冊子の下書き欄に残しておくこと
・正答の条件を確認すること
・どの類型に当てはまるかを判断すること

1つ目は、自己採点をするには欠かせないことですので、ここで確認すべきは次の2点になります。

まず、「正答の条件を確認すること」です。記述式問題には明確に定まった1つの答えというものが存在しにくいため、ある一定の条件下に当てはまるものに評価を与えていきます。

例えば、今回ワークシートにある国語の問題では、「1,そもそも指定した文字数内で解答できているか」「2,聞かれている問いに対し、該当する対象のキーワードが含まれているか」「3,その対象をどうすればいいかを文中の表現を使って書き表せているか」。
このような3点が「正答の条件」となり、次の「どの類型に当てはまるか」を判断していくことになります。

<解答類型>
・ア:条件1~3のすべてを満たしている解答
・イ:条件2、3を満たしている解答
・ウ:条件1、2または条件1、3を満たしている解答
・エ:上記以外の解答
・オ:無解答
・採点不能:正答の条件に合致するかどうか判断できない等
・自分の解答不明:解答を下書き欄に残しそびれてしまった等

今回の動画内では、どの基準まで評価され、どこから評価されないのかについて触れられていませんでしたが、概ねア~ウが評価されることはわかります。あとはエについて、条件を1つだけ満たしている解答にどの程度の評価が下されるかは不明です。

以上のように、記述式は「正答の条件」と「類型の判断」によって、点数ではなく段階別に評価されるということは頭に入れておくといいかもしれません。自己採点は、子どもたちが出願の際に目安となる指標なため、できるだけ採点基準や条件を意識しながらの指導が求められていきます。

問題量の増加によって求められる力



● 大学新テスト試行、問題2割増 素早くこなす力必要に :日本経済新聞 : https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24220300U7A201C1000000/

その他、各教育機関や予備校等ではすでに問題の分析が行われ、特に新たに出題されている記述式問題についての見解も発表されています。

そんな中、気になる分析としては以下のようなものがあります。
 

大学入学共通テストの狙いの一つである思考力を問うため、身近な事象を数式や記号に置き換える力を確かめたいのは理解できるが、数学の試験なのに「国語力」が多く問われた出題になっている。
(大学入学共通テスト試行調査 大手予備校が分析 - 産経ニュース : http://www.sankei.com/life/news/171205/lif1712050006-n1.html


数学なのに「国語力」。
問題量が増え、より複数の文章や資料を読み合わせながら問題を解く必要がある中で、それが決して国語だけでなく数学にも求められている。
もちろん、今回の調査を受けてテスト内容は毎回吟味・調整されていきますが、こうした問題が出されたということは、それに対する備えは少なからず必要になっていきそうです。

情報を素早く処理する、とは日経新聞にある通りですが、そのために必要な能力とは何でしょうか。数学であれば、計算力や公式等への習熟度がフォーカスされますが、文章や資料から情報を読み取るという基本的なことは、まさに読解力とされるものかと思います。

最新の研究からみえてくる、学力と読解力の関係性

読解力といえば、最近では東ロボプロジェクト(AIで東京大学合格を目指す研究)をけん引していた新井紀子氏が興味深い調査結果を発表していました。
それが、「中学3年生の15%は短文であっても理解が困難だ」とする読解力への課題を示す調査結果です。

さらにその中では、基礎的読解力のレベルと進学できる高校の偏差値には、強い相関関係があることも示されました。高校受験はもちろん、それが学習の基礎になることからも、その先の大学受験にも大きな影響を与えうると考えられます。

またその他にも、当社フォーラムに登壇された西川純氏は、ご自身の所属する上越教育大学大学院にて、子どもが学習の過程でつまずくポイントを明らかにしています。



上画像の意味はおわかりになりますでしょうか。
これは、子どもたちの学習の様子をボイスレコーダーに収め、生徒同士の会話ログを徹底的に洗い出して判明したものになります。

実はこれ、社会科の先生がある単元を説明しているのですが、子どもたちにとってはこのように聞こえてしまっているかもしれないとするモデルなのです。

要は、子どもたちのつまずきは、難しい方程式や英語の文法にあるのではなく、もっと基本的な語句や言葉の意味を理解できていないがために、そこから理解が進まないとしています。



こちらが、本来先生が説明していた内容ですが、つまずいてしまう子どもは、内容以前に「国会」や「衆議院」「審議する」といった言葉がわからないのです。
先生としては、授業や日常で教わったであろう言葉を踏まえ、さらに先の内容を教えたいと思うかもしれません。しかし、実はそこに至るまでの基礎的な言葉の意味がわかっていないことが、つまずきの原因になっている可能性があるのです。

今回の大学入学共通テストを通して、知識への深い理解や思考力・判断力・表現力が問われるといわれています。ただ、出題される問題踏まえ、各校がその力を養うための設計をどの段階から始めるかは、言葉や語句、読解力等含め検討していくべきかもしれません。

(Find!アクティブラーナー編集部)

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