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アクティブティーチャーの挑戦 第二十五回(月刊高校教育4月号掲載)

学事出版『月刊高校教育』にてFind!アクティブラーナーの連載がスタート!
こちらでは冊子の記事をWEB版として公開しております。

アクティブティーチャーの挑戦 第二十五回(月刊高校教育4月号)

知徳高等学校
伊澤敏之先生

「情報の授業の進め方について」

≪知徳高等学校について≫

本校は、静岡県駿東郡長泉町にある私立高校です。普通科、情報ビジネス科、福祉科、創造デザイン科の専門性あふれる4学科9コースを設置し、グローバル化や技術革新が進み、大きく変容する社会で求められる人材を育成しています。校訓は「自律的な精神 敬愛と協力」、学校教育目標は「社会に貢献し、期待され、愛される人間を育成する」です。生徒たちは、なりたい自分や目指すスペシャリストにつながる力を身につけるため、毎日明るく楽しく意欲的に学んでいます。

≪情報の授業の進め方について≫

情報の授業は、まずタイピングからスタートさせています。本校には、パソコン室が3室あり、125台の最新のパソコンを利用して授業を展開しています。授業の最初の挨拶や教師の思いつきの話はカットし、チャイムと同時に、タイピングからスタートします。

■パソコン教室について
https://find-activelearning.com/uploads/files/images/gakuji/gakuji2304-PCclass.pdf

その後、授業の全体像を示します。私は、授業の構造化を大切にしています。これは、特別支援学校での勤務の経験を活かしています。生徒が常に授業の見通しをもって取り組めるようにデザインしています。授業は、基本的にワークショップ型で進めますが、いつでもオンラインでの授業にも対応できるように心がけています。

情報の授業でのプログラミング指導についてですが、どうしてもプログラミングというとコードを打ち込むことに終始し、アプリ、ゲームなどが身近なところに存在していることを忘れてしまう授業になりがちです。そこで私はケーススタディ形式の授業を行い、ワークショップ型のグループワークを採用しています。

<プログラミング指導の課題例>

あなたは、アプリ開発会社に就職しました。会社で半年の研修を終え、10月にいよいよ「おみくじアプリを開発するように」という注文がありました。アプリを開発するに当たって、出現が同じ確率ではなくよりリアルなおみくじアプリ(今回は大吉の出現回数が多い)を作って欲しいと注文先から依頼がありました。どのように作成しますか?

このような、より実践的で楽しい課題について、グループで取り組むことによって、生徒たちは生活に身近なプログラミングを体得していきます。我々教員が考える以上に優れたプログラムを作成する生徒もいます。成果についてはプレゼンを実施し、相互評価をしています。

私自身、Playfulをキーワードにしています。これまでの知識詰め込みの授業のみでなく、ワークショップ形式やプロジェクト学習などを取り入れ、生徒の化学反応を楽しんでいます。その場での、リアルな学びを大切にしているのです。

また、授業で使う言葉を磨いています。そのために、Find!アクティブラーナー内の岩崎由純氏の動画で、ペップトークについて学びました。Pep teacherとして言葉の持つ力を意識することにより、厳しさだけの指導からの転換をはかりました。また、中島博司氏の考案されたR80の考え方をベースに、スカイメニューで、授業のリフレクション、授業の取り組み度を5段階で生徒に自己評価させ、主体的に学びに取り組む態度や、学びに向かう人間性を見取っています。そのリフレクションシートは、自分自身の授業の改善や生徒の理解度把握にも活かしています。

≪大学入学共通テストの情報Iへの対応について≫

2022年度から情報Iの授業がスタートしました。そして、2025年1月の大学入学共通テストから、情報Iが受験科目に加わり、多くの大学で入試に必要な科目になることが発表されています。本校では、商業科と兼担ですが情報の免許を取得している6名の教員と、情報専科の教員1名が採用されており、7名体制で「ティーム・ティーチング」(TT)による授業を行っています。また3つのパソコン室、125台の最新パソコンの環境のもとで、情報に関する授業を実施しています。その中で、大学入学共通テストの情報Iについても研究しているところです。

私自身、経済学部の出身で、社会科学的なアプローチで情報について指導をしてきました。例えば情報社会論、情報経済論などです。知的財産の取り組みやカードゲームを用いたネットモラルの指導なども行ってきました。しかし、高校でのプログラミングの実施を受け、情報の学習に必要不可欠な数学の勉強を始めました。大学入学共通テストの情報Iのサンプル問題を見ましたが、あの問題を解くには、基本的な数学の能力が必要不可欠だと思いました。また、本校生徒が取得を目指す情報関連の国家試験でも数学は必須です。

実際に、情報Iの授業の中でデータ分析の授業などをする時には、相関係数、相関分析、回帰分析など統計学の基礎知識の必要性も感じています。そのため、現在私は、通信課程で、数学の免許の取得を目指しているところです。

≪情報ビジネス科の取組について≫

専門学科である情報ビジネス科は、商業の科目を中心に学ぶ学科です。1年次に、ビジネス基礎、情報処理、簿記を学習します。2年次に、簿記やマーケティングを中心に学ぶビジネスコースと情報処理やプログラミングを中心に学ぶ情報コースに分かれて授業を行います。成果については、課題研究でまとめています。

専門学科では、各種国家資格の取得を目指します。しかし、それだけでなく本校では、ビジネスプランコンテストやアプリコンテストなどに積極的に参加しています。また、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)の「知的財産に関する創造力・実践力・活用力開発事業」に3年間採択されました。さらに、沼津高等専門学校や早稲田大学の教授や、弁理士の先生の指導を受けるなどして、学内だけでなく、大学や企業、専門学校や行政と連携した取り組みも行っています。

授業を担当していて、情報処理を専門とする情報コースの生徒でも、なかなか自分の頭で考えてプログラミングできるようにならないことが悩みでした。プログラミングの上達のためには、教科書の内容をただ一方的に学習するだけではダメだと考えました。自分で苦労をし、楽しみながら、周りと協力して、時には専門学校や行政、企業などの人からも教えてもらって作り上げることが本来の学びであると考え、Monacaを使ったアプリ作りに取り組むことにしました。

生徒は数名ずつ12のグループに分かれてアプリ制作に取り組みました。まずはテーマや役割を決めてプロジェクトが始動しました。演劇に関する業界用語辞典、英単語学習アプリ、ロールプレイングゲーム、情報処理検定対策アプリ、長泉町アプリなどのアプリを制作することで、活きたプログラミング学習を行うことができました。詳細については、下の記事をご覧ください。

■コースガイダンス「情報ビジネス科」
https://find-activelearning.com/uploads/files/images/gakuji/gakuji2304-courseguide.pdf

■知徳高校「情報ビジネス科」インターンシップ
https://find-activelearning.com/uploads/files/images/gakuji/gakuji2304-internship.pdf

■【参考】「教科書のコードを写すだけでない、生徒が自分で考えアプリを作るMonacaによるプログラミング授業/知徳高等学校」(2021年4月7日付け ICT教育ニュースより)
https://ict-enews.net/2021/04/07monaca-education/

≪中堅教員の先生へのメッセージ≫

国家資格である情報セキュリティマネジメント試験を取得するなど、自分自身、常に専門性の向上に励んできました。今後も専門学校の夏季研修会に参加するなどして専門性を更に向上させ、情報の分野では静岡県に伊澤がいるというような存在になりたいと思っています。

また自分のことだけではなく、今までの経験を活かして後輩教員がきちんと授業ができるように、指導をしていかなければならないと感じています。40歳を過ぎ、私自身教員生活を振り返る時期にきています。自分の生徒指導、学級経営についての教育実践を振り返り、今後どのようなキャリアを歩んでいくかを考えさせられる時期となりました。学校では、上司、後輩との「架け橋」となることを期待されています。

本校でも、世代交代が進み、多くの若い教員が所属するようになりました。中堅教員は、若い教員を指導するとともに、学校経営を担う上司の力にもならなくてはいけません。また自分の仕事、クラスだけではなく、学年、学科、教科、学校全体も意識して仕事をすべき段階に入りました。つまり、自分自身が変わらなければならない、広い視野を持たなければならない時期が来たのです。

2021年度には、青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラムに完全オンラインで半年間在籍して、修了しました。Zoomでの双方向の授業やGoogleのスプレッドシートなどの活用、ファシリテーションスキルやワークショップの手法の学習などを学びました。さらに、教員以外のネットワークを構築することができました。こうしたオンライン研修に参加すると、もがき苦しんでいるのは自分だけではないと勇気づけられます。

今回この取材を受けて、①自分は価値のある仕事をしているという実感、②学校で価値ある存在であるという実感、③自分は成長しているという実感という、教員としての使命感を支える3つの実感が改めて大切であることが確認できました。

気持ちを新たに、自分自身が変わり、成長できるように知徳高校で仕事をしていきたいと思います。これまで知徳高校に勤務してきて、外で知徳高校を見るよりも中で見ている方がよい学校であると感じています。盛んな部活動、素直な生徒、素晴らしい教員がそろっている。自分も知徳高校を盛り上げる力になり、外からも更に評価される学校にしていきます。中堅教員として学校運営の中核として広い視野を持って活躍していきながら、これまでの実践的な研究の成果を、博士論文としてまとめ博士号を取得したいと考えています。教員にとって、学び続けることは崇高な使命です。一緒に頑張りましょう。

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