大学入試&未来につなげる「課題探究」の実践と先生のあり方とは!並木中等AL授業公開レポート第3弾!

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「総合的な探究の時間」「古典探究」「地理探究」「日本史探究」など。
新学習指導要領の科目再編により、ひときわ目立つ「探究」のキーワード。

知識の暗記や単なるアウトプットではなく、自ら課題を設定し、解決する力が求められる新科目です。
今回は、本シリーズの最終レポートとして、開校1年目よりその取り組みを行ってきた当校の実践内容から、その目的や具体的な活動、ポイント等をご紹介していきます!

課題探究が求められる3つの背景

本年度で11年目となる並木中等教育学校の課題探究。これまで様々な試行錯誤を続けてきた中で、その必要性や求められる背景を、以下3つの観点でまとめています。

1)AI時代を生き抜くため
⇒学習に必要とされる力を「記憶再生力」「問題解決力」に分けた際、役割分担として、前者はAI等のテクノロジーが力を発揮し、人間は後者の問題を解決する力(問題解決する探究力)を磨いていく必要があるため

2)新テストの対策になる
⇒2020年からの新テストで「思考力」「判断力」「表現力」を重視した問題に求められる力と、課題探究で身につけられる力(議論の中での論理的思考、解釈力など)が同等と考えられるため

3)調査書で困らないため
⇒今後の入試における多面的、総合的評価の中で、高校時代の活動や学びの履歴(教科の学習以外に何を学んできたか)が求められる可能性があり、それを課題探究における活動内容(論文執筆、発表等)でカバーできるため

こうした背景の確認は、「そもそもなぜ課題探究をするのか」「課題探究でどのような力を身につけさせたいのか」という点を明確にすること。
そして、実際の取り組みにおいて、生徒も教員も優先順位が下がりがちになる(取り組みへの温度差が生まれる)ことを防ぐため、こうした目的や理念を、定期的に職員会議や学年集会を通じて確認しているそうです。

探究力=「テーマ設定能力」×「探究デザイン能力」



ではそうした背景をもと、実際にどのような探究活動が行われているのでしょうか。
以下では、当校が課題探究として進めている「理数探究」教科でのポイントや進め方、年間スケジュール等についてご紹介していきます。

4年次「テーマ設定能力」の育成

まず、探究力を2つの力「テーマ設定能力」「探究デザイン能力」に分け、4・5年次の2年間を通じて育んでいきます。

4年次に育成するのは「テーマ設定能力」です。
並木中等では、このテーマ設定を課題探究の中で特に重視しており、「仮テーマ設定」から「お試し探究」「テーマの再考」といった活動を通じて、なんと4年次の1年間を丸々かけて行っていきます。

これは、探究していく中でも、「何を探究するのか?」というテーマ設定が一番難しいと考えているためです。
特に「簡単なテーマだとすぐに答えが見つかってしまうこと」「テーマが広すぎるとどこから手をつけてよいかわからないこと」など、その難易度や対象の範囲は、最初に設定したものから生徒自身で何度も向き合い、先生もアドバイスしながら共にすり合わせていきます。

この時に大事な考え方になるのが、「研究と探究は異なる(研究≠探究)」という視点です。



上記図の「研究」と「探究」の違いをもとに、当校では「ゴールにたどり着く(研究成果を残す)こと」を目的とするのでなく、「活動する2年間でどこまで問題解決できたか(ゴールに近づけたか)」に重きを置くようにしているそうです。

特に生徒側も、「2年間でゴールにたどり着くようなテーマにしなければいけない」と考えがちだと語り、その際にはその必要性はないこと、そして入口の問い(例)として「身近な疑問」や「こうなったら便利だな」ということをまずテーマに据えてみるなどのアドバイスをします。

「身近な疑問」をテーマにする例
  • ・コンビニで行列があったらどの列に並ぶと効率的か
  • ・相手がいる時と単独で走る時では50m走のタイムは変わるのか
  • ・サイコロの目をコントロールできる振り方はあるか
  • ・まちの小さな個人経営店がつぶれない理由 など

「こうなったら便利」をテーマにする例
  • ・絶対忘れない暗記法
  • ・授業中眠くなっても目が覚める方法
  • ・授業中お腹がすいてもお腹が鳴らない方法 など

これだけ時間をかけ生徒と向き合い、テーマ設定にこだわるのは、単に探究活動をする上で必要だから、というだけではありません。

今回、取り組みを紹介してくださった吉村先生は、
「子どもたちは意外と忙しくて、自分が何に興味があるのか、何を深めたいのかを真剣に考える時間を持てないでいる。だからこそ、この時間を使って『自分の問い』を持ちそれを深めてほしい。」

と語り、テーマを深堀りする中で見えてくる「自分の問い」こそが、将来の進路選択(大学で何を学びたいか)にも結びつく重要なものという認識を持っているからなのです。
そのために教員は、「なぜそのテーマをやりたいのか」「そのテーマを探究することで、自分の何が満たされるのか」を生徒に繰り返し問い、とことん向き合わせてあげることが重要だとしています。

5年次「探究デザイン能力」の育成

5年次からは、実際に探究をスタートさせていきます。
ここでのポイントは、「オリジナルデータを必ず取ること」、そして「データを数値化すること」の2点をあげられています。

「オリジナルデータを必ず取ること」とは、インターネット検索だけで活動が終わらないよう、主に以下の探究方法を取り入れながら、自分で自分の探究にしかないデータを取ってくることを指します。
 
  • ・実験、観察
  • ・フィールドワーク
  • ・インタビュー調査
  • ・モニター調査(体験調査)
  • ・現地調査(人数を数える、個数を数える) など

実際に足を運び、体験しながらオリジナルデータを取ってくることがそもそも評価につながること。また、これら活動の意義として、大人になってからも必要とされる「発想力(どうやってデータを取るか)」や「行動力(実際にデータを取りに行くこと)」といった能力の育成も狙いとしています。

また、「データを数値化すること」については、考察に説得力を持たせるために重要なこととし、4年次で学ばせている「Excelを用いた統計処理(相関係数、標準偏差など)」を活かして探究に取り入れています。

こうしたポイントは、課題探究の“課題”になりがちな「探究が調べ学習になってしまう」ことを防ぐために行っていることだとも言います。
特に、理系ではなく文系探究でそうした傾向に陥りやすいため、当校の「理数探究」では、自分で考えた提案を専門家にぶつけ、そのフィードバックをもとに考察する「提案型」の探究を薦めたりもしています。

(理数探究科目、年間スケジュール)

「試行錯誤」「新しいものさし」「伴走者」が課題探究のポイント!

こうした2年間の取り組みを通して、最後に行われるのが5年次の12月にある「校内発表会」です。

5年生全員が1~4年生に向けて、口頭(15分間)とポスターで発表を行い、コンテスト形式で金賞(4名)、銀賞(24名)、銅賞(24名)の生徒が選ばれます。

その最後の舞台で評価されるのが、以下の4項目です。

【ポスター発表コンテストの評価のポイント】
① 探究テーマがユニークで面白い
② 探究内容がユニークで面白い
③ 工夫してオリジナルデータを取っている。また、それが探究に活かされている
④ 試行錯誤しながら探究されている

ここで重要となるのが、高度で難しい探究テーマが良いというわけではないという事です。
生徒独自のユニークさが備わっていたかどうか、そして色々な失敗をしながらも前に進めていくような試行錯誤ができていたのかを、評価の対象としています。
この活動を通じて得てきた思考する力、課題解決する力など、偏差値では測れないこれから生きていくための力を測ること。そして、それらが評価されることを示す場として、このコンテストは開かれています

これまでとはまったく違う新しいものさしの登場により、先生側も、これまでのように明確な答えを持つ指導者ではいられません。
答えの無い問題を生徒と一緒に考え問いていく「伴走者」として、先生自身も楽しみながら向き合っていけばいいのではと、その在り方を提示し本活動報告は締めくくられました。


並木中等教育学校での課題探究には、「テーマ設定」や「探究の仕方」などそれぞれにポイントや工夫があります。ぜひそれらをヒントにしながら、生徒たちの未来につながる学びを探究活動を通じて実現してみてください!
 

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