概要
英語が楽しくなり自分の頭で考える力がつく方法
東京都目黒区 トキワ松学園中学校高等学校 岩谷奈美先生の中3英語授業を動画でご紹介。
自分の頭で考える力がつく! 英語で話すことが楽しくなる! 意見を言えるようになる!
創立100年を超える伝統ある女子高の、世界で活躍できる女性を育てる授業をぜひご覧ください!
※本授業動画は2本分割構成となっております。通してご覧になりたい方は、(全編)をご覧ください。
※先生へのインタビューも別途収録しておりますので、ぜひご覧ください。
Q.アクティブ・ラーニング型の授業を始めた経緯
岩谷 奈美氏(以下、岩谷) もともと本校は、私が来る前からグループ活動やペアワークを多く取り入れた授業をやっていたようです。私が授業をする時も、生徒が主体的に動ける内容をやっています。言葉は、常に相手を意識する必要があります。書けば読み手がいますし、話せば聞き手がいるので、やはり一人で勉強するのではなくて、相手との関係の中で言葉を身につけることが大事です。
覚えたことをただ言うことは、実際に英語を使う現場に行くとほとんど役に立ちません。生徒たちが自分たちで思いついたことを英語で発する機会を多く持って、将来的に身につく英語を学んでほしいという経緯から、このような活動をしています。
私自身は昔の伝統的な訳読式の授業を受けてきましたが、やはりなかなか楽しいとは思えませんでした。英語という言語は好きでしたが、受け身で学ぶことに意味を感じることができなかったので、教える立場になった時にやはり生徒が実際に使う場面を多くしようと思っていました。
Q.訳読とは?
岩谷 1文ずつ先生が英語を言い、日本語に訳していく授業が訳読式と言われています。私自身はそういう授業が多かったのですが、結局暗記に近く、あとで役に立つかと言えば、その文は2度と使わないことが多かったです。そうではなく、やはり実際に使ってみる、自分で考えて文を作ってみるという活動のほうが英語は身につくのではないかと感じていました。アクティブ・ラーニングは、この学校に来てから、15年ぐらい続けている活動です。
Q.授業を組み立てる上での工夫
岩谷 今日のような活動では、間違いを恐れずにたくさんの英語をアウトプットすることに焦点を置いているので、ルールを明確にするというのが大事だと思います。今日は「間違えてもいいので時間内に英語を発する」とか「日本語を使わない」というようなルールを明確にしました。
今日の大人数でのディベートに至る前に、生徒は1対1のディベートを何回も練習し、即興のディベートを何回もやります。その時も同じルールで、何を言えばプラスやマイナスになるかを明確にすることで、指導もしやすくなりますし、生徒たちもポイントがわかるので、トピックが変わっても同じようにディベートをすることができると思います。
Q.生徒のディベート経験は?
岩谷 中間テストの前に、まずは1対1のディベートと、意見の言い方を練習していました。自分の意見を言い、相手の意見を聞き、同意する場合もあれば反対する場合もあるという、意見の表明の仕方を練習します。
そのあと1対1のディベートの時、相手が言ったことに対して即興で答える必要があるので、その場で自分の反対理由を瞬時に考えて言わなければいけないという練習を数回やりました。これまで1対1の練習を何回もしていたので、今日は10人対10人のチーム戦をやることにしました。
Q.先生と同じ授業を再現するには?
岩谷 一つ目は、生徒の実態に合わせたルールを明確に決めることです。二つ目は、アキュラシーという、正確さです。正確さを求めないのであれば、別のところでフォローする計画を立てるべきでした。
今日は「間違えてもいい」ということにフォーカスしていましたが、それは間違った英語でいいというメッセージではなく、今日のポイントはとにかく話すことだからです。「正確に話す、正確に書くということは別の時間でやる」と明確にしておかないと、生徒は「通じればいい」と勘違いをしてしまうので、やはり正しい文法を身につけるためにも焦点を明確にします。今回焦点を当てない部分に関しては、別の授業なり別の時間にフォローします。
三つ目に、普段から生徒の意見を引き出すことを意識する必要があります。それが日本語であろうと、英語であろうと、生徒の意見を聞いてみる、考えさせるという時間を多く作ると、このような活動が再現しやすいと思います。
例えば、長文を読む時も、お話の流れで「なぜこうなるのか?」という、前後の関係を生徒によく考えさせます。文法に関しても「なぜこの形になっているのか?」と、「なぜ違うものではだめなのか?」と生徒に考えさせ、お互いにその意見を交換し合う授業をよく行っています。
Q.生徒の反応は?
岩谷 やはりディベートは自分の意見とは違う時もありますので、最初は自分の本心ではないことを言うことに抵抗があったようです。例えば今日も「本当は給食のほうが好きなのに、お弁当派になったときは、お弁当派のいいところを言わなきゃいけない」という練習をすると、もう少し広い視野で物事を見ることができるようになり、発話量も増えました。
あとは、今日は特に「みんなが間違えてもいい」という授業をやっているので、「自分だけが間違えるわけではない」という安心感があり、生徒たちは間違った英語でも大きな声で発しているというのが大きな変化だと思います。
このような活動を続けていくとやはり相手に教えるとか、相手と意見を共有することにつながると思います。教え合う授業もよく行いますが、一人でやるのではなく、自分の知っていることを相手に教えると、教えることによって自分も学ぶということにつながっていくと思います。
間違いを恐れずに言う効果は、特に生徒たちが実際にホームステイなど英語を使う現場に行った時に実感すると思います。
Q.生徒から先生への評価について
岩谷 生徒たちは英語を話すことが楽しいと思っているようです。間違えるから恥ずかしいというよりは、とにかく英語を口から発することが楽しいと単純に思っているようです。
Q.生徒からのネガティブな反応
岩谷 話すことがあまり得意でない生徒は、やはり少し戸惑ってしまうという声もあります。今日のように、途中で一旦考える時間を作り、お互いに協力する時間を作ることによって、英語や発話が苦手な生徒も、チームで助け合うことができます。
苦手な部分は授業中に友達と協力して克服していけば、少々ネガティブな気持ちを持っている生徒も楽しく学習できるので、何とか解決できているのではないかと思っています(笑)。
Q.アクティブ・ラーニングの感想
岩谷 私自身はアクティブ・ラーニングという学習方法はいいことだと思います。やはり受け身で学んだことは定着率も非常に低いですし、人から簡単に聞いたものは覚えません。しかし、自分で調べたり、友達と一緒に解決策を探したり、提案したりという主体的な活動が増えれば増えるほど、自分の頭で考える力がつきますので、やはり学習効果は高いと思います。
今後、2020年からの大学入試の変革にも考える力がかなり求められてくるので、やはり進めていくべきことかなと思います。
Q.他の先生や親からの反応
岩谷 本校はもとから、グループワークやペアワークを取り入れる授業が、教科を問わずに多いので、どの教科の教員からも好意的に思われているのではないかと思います。また、英語科ではお互いのやっている授業を見に行き、お互いに学び合う文化があり、お互いにいい授業は自分の授業でも取り入れるため、あまり否定的な声を聞きません。
保護者からも、否定的な意見はあまり聞かないです。ちょうど先週、授業参観があり、少し形は違いますが、アクティブ・ラーニング型の授業をご覧いただきました。保護者の方も皆さん、「面白かった」と書いてくださり、好意的なのではと思います。
Q.アクティブ・ラーニングを成績と受験にどう結びつけるか?
岩谷 成績をつける時には筆記テストのほかに、提出物や発表活動も平常点として、すべて数値化して入れています。生徒にはこれらの発表活動の点数について、教員が主観で付けているものではないと明確に示すためにポイント制を取り入れています。誰が何を言ったら何ポイントという表を配って、生徒たちはそれを使って練習するので、成績に関して大きな不安はないと思います。
大学入試にどうつなげていくかですが、私はこの3月まで同じ学年の生徒たちを中1から高3まで6年間受け持っていました。そして、中1の段階からこのようなアクティブ・ラーニング型の授業を多く取り入れていました。
例えば単調になりがちな英文法の授業というのも、お互いに教え合ったり、教え合ったことをテストし合ったりという活動を多く取り入れることで、先ほど申し上げた通り定着率が上がり、英語の成績がいい学年でした。大学受験でもいい成績が出たので、アクティブ・ラーニング型の学習を進めることで、成績が上がり大学入試に役立つと実感しました。
Q.通常の授業とアクティブ・ラーニングでは授業の進み具合に差が出るのでは?
岩谷 検定教科書を使った授業では、本文の内容を理解し、理解しているかチェックし、こちらが問いかけて生徒が答えるという授業もやっています。ただ、私の授業では一時間まるまる講義をするということはほとんどありません。それは大学入試問題を解いている時も同じです。何らかのかたちで生徒の主体的な活動を求めているので、ずっと講義型という授業はあまりやりません。
Q.今回の授業とは違うアクティブ・ラーニング型の授業とは?
岩谷 検定教科書を使った授業のほうでは、杉原千畝さんという日本の外交官のお話を読んでいます。お話をパート毎に分け、3人ないし4人で1パートを担当させて、10~15分程度準備の時間をあげて、その間に自分たちの担当したパートの内容だけをしっかり理解させます。時間が過ぎたら今度はグループを組み直し、各班に先生役の生徒が入るようにして、各パートを担当した生徒を集めると即興でミニレッスンができます。
先生が教えるより、同じ立場の友達から、自分たちが使っている言葉で教わるほうがわかりやすい時もあり、やはり友達から学んだことは忘れにくいので、お互いに教え合う活動もよく入れています。違う活動に取り組ませ、教え合うという授業はよくやります。
Q.現時点の課題は?
岩谷 学年がもう少し上がっていくと、同じディベートをやらせるにしてももう少し社会的な内容に取り組むことになるので、教科横断型の授業をもう少しやっていく必要があると思っています。
例えば、去年担当していた学年は、冬に本格的なディベートをやりましたが、その時のトピックは少年法の改正についてと女性の旧姓使用についてでした。この題材は社会科との連携がどうしても必要になり、使う言語が英語なだけで、内容はかなり社会に近いものがあります。準備段階ではやはり社会の教員の助けもいりますし、生徒も各教科で学んだことをつなげる練習が必要だと思います。
Q.他の教科と連動することによるメリットとは?
岩谷 例えば、生徒たちは、現代社会や政治経済の授業で、少年法の改正問題や女性の旧姓使用について、知識としては学んでいます。
ただ、それはあくまで知識で、どちらかと言えば受け身で得た知識だったと思います。ディベートをするにあたり、相手を言い負かすという大きなミッションがありますので、問題を自分のこととして捉えなければいけません。
「相手を言い負かすにはこのデータが必要である」という読み取りは主体的に資料を検索していかなければいけないので、やはり学んだことが身につく、自分のこととして考えられるという意味で効果があると思います。
Q.今後の展望は?
岩谷 今申し上げたように、できるだけ教科横断型の授業を多くしていきたいです。英語は教科書にもさまざまな教科のトピックが入ってくるので、他教科のカリキュラムを見ながら、できるだけ他教科と学ぶタイミングを合わせていけたらと思っています。
Q.今回の授業以外で行っていることは?
岩谷 個人で1対1のディベートに至るまでの指導を簡単に申し上げると、最初に自分の意見の言い方を教えます。例えば、「I think」から始まり、「Summer is better than winter.」のように自分の意見を言うという練習を最初にして、第2ステップとして相手の意見に同意する、もしくは反対する表現を勉強しました。例えば「I disagree.」、「I agree.」、「I don’t think so. 」、「I think so.」 という表現です。
次に、「なぜ自分の意見のほうが正しいと思うのか」と、理由付けをしなくてはいけないので、理由や新しい意見を言う時のセットフレーズをいくつか教えておきます。例えば「canを使って言うといい」とか、「It toの構文を使うといい」とか、いくつかセットフレーズを教えておくと、生徒は言いたいことに合わせてそのセットフレーズに当てはめていくことができます。
ディベートではこれまでに勉強したフレーズをいっぱい使っているので、その訓練をして、最後にお互いの理由を言い合って、それをどう相手に譲歩するか指導しておきます。生徒は「大変だった」と言っていましたが、このやり方ならディベートを比較的簡単に指導できるのではないかと思います。
Q.他の教科に応用するには?
岩谷 今度は社会科で、日本語でディベートをしてみるとか、理科の実験で仮説を立てる時に、「なぜそのような仮説を考えたか」という理由付けをきちんとするとか。数学も問題を解く時に「なぜこの公式を使う必要があるのか」というような、「なぜ」という部分を説明することです。考えずにやるのではなく、「なぜそれをやる必要があるのか」という、whyの部分を明確にすることはどの教科にも応用できるのではないかと思います。...
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