概要
気まずさ、困難、不平等を乗り越えろ!
現場で通用する力を身に付ける専門学校の授業を公開!
全国11都市に56の専門学校、1高等学校、1短期大学、1大学を経営し、2万5千人を超える学生が学ぶ三幸学園では、全学を挙げてアクティブ・ラーニングを推進しています。
今回はその中の1校、福岡リゾート&スポーツ専門学校の授業を公開します。
卒業後に即戦力として活躍することを目指す専門学校では、いかに仕事の現場に近い環境で学べるかはとても重要なポイント。
そこで渡邊耕太先生、窪田公太郎先生の授業では、教室で行う座学であっても、仕事の現場に近づけるために気まずさやうまくいかないことをあえて作り出したり、学生に安易に助け舟を出さずにグッと我慢して見守ります。
状況を自ら動いて変える力が身につけてほしいという先生方のインタビューと実際の授業の様子をぜひご覧ください。
Q.アクティブ・ラーニング型授業を導入した経緯
渡邊 耕太先生(以下、渡邊) 学校の教員研修の中で、アクティブ・ラーニングを知ったのが最初のきっかけです。そこで「ああ、なるほどな」と思い、取り入れるようになりました。
やり方としては、そんなに大きく変わったことはありません。ただ、普段やっていたことの中に、「ああ、これがアクティブ・ラーニングでいうと、この部分なのかな」と思える部分はありました。自分のやり方が、アクティブ・ラーニングのスキルとしても存在しているようなので、「そうだったのか」とより自信になった感じです。
先程の授業がそうですが、私の授業は覚えたり、理解したりというタイプのものではありません。従って、理解度という部分で言うと、自分でも正直よく分からないです。
しかし、さまざまな先生が授業をされている中で、言わなくても学生たちが静かになったり、時間のことを自分たちでも気にしたりという傾向は出ています。そういったところで、次に進みやすくなっていると感じます。
もともと元気がある学生たちが多いので、メリハリといいますか、オン・オフが切り替えられずに「うわぁー」となるのが、「サーッ」と行けるのは、結構変わったところではないかと思います。
Q.再現性のポイント
渡邊 再現性といえるかどうか分かりませんが、学生たちは教室の中で終わるのではなく、夏からスポーツ現場に出て行きます。だから、私や窪田をはじめ、一緒にやっている先生方が意識しているのは、やはり「できるだけ現場に近づける」ということです。
授業として再現性をどうしたらいいかと考え、グループワークもトレーナーチームの人数だったり、男女の比率だったりを実際の現場での活動と同様にします。そこで、自分たちで答えを出していかないと前には進めないといった環境づくりを意識しています。
Q.AL型授業導入は何年前から?
渡邊 3年ぐらいです。学生たちからは、やはり実際にやったことしか残っていないとよく聞きます。
現場でこういうことが起きたとか、その時にどうしたかとか、そういった経験こそが本物ではないでしょうか。だから、一番印象に残るし、覚えているというよりも心に刻まれているみたいな感じで、その中で学んだことが生きるわけです。そこには、もちろんアクティブ・ラーニングの何かが入っているとは思います。
Q.授業では実際の現場を意識している?
渡邊 それは以前から意識しています。学生たちは、まだトレーナーとして現場に出ていないので、「こういう選手がいたらどうする?」などと言っても実際には分からないですよね。何ができるかと考えても、「じゃあ、自分ができることをやります」となってしまうので、それでは、その選手の気持ちは蔑ろということになりませんか。
それならば、「いま隣りの人が何を求めているのか?」とか、「このクラスで、より良くするにはどうしたらいい?」など、既に知っている状況でやったほうが、よりリアルかなと思います。目の前の友達が本当に選手だったら、クライアントだったら、という置き換えみたいな感じです。
Q.ほかの先生方からの反応は?
渡邊 あまり聞いたことがないし、見られることもないので、それは分かりません。
Q. 現時点での課題と展望
渡邊 先程もお話しした通り、現場により近づける、実社会に近づけるということが一番のテーマかなと思っています。あまり学生にとって居心地の良い環境を作り過ぎないことも必要ではないでしょうか。
現場に行ったら、誰も助けてくれないこともあります。もちろん、先輩や監督、スタッフ陣などはいます。けれども、自分から一歩求めに行かないと、そこまで行き着かないという状況で、とても気まずい雰囲気や、「どうする?」という心の葛藤が生まれてくるはずです。
それを、できれば学内でいつも体験させたいのです。学生たちから、あまりにもどんどん意見が出るようになると、雰囲気が良くなってくるから、ますます言いやすくなります。しかし逆に、誰も発表しないとか、誰も何も言えないといった状況のほうが大事かなと思います。
自分から行かないと何も始まらないという状況で、その時にどうするかということです。普通、学校であれば、「誰か発表してくれる人は?」と促してくれる人がいます。そこで、シーンとして、先生もちょっと気まずい雰囲気になったら、「じゃあ、誰々に」と当てて発表させてしまうわけです。私もそうでした。だから、今年からですけれど、そこを我慢するように意識をしています。
Q.世間のパラダイムに対する意見
渡邊 いまは私と窪田の2人ですが、もう1人、吉永さんという方が月一で来てくださっています。もともと東京にいらっしゃって東京校や横浜校、名古屋校でも授業をされる方です。
各校で、吉永さんが発信されることは大体同じだと思います。おそらく学校ごとに、学生の状況の違いや、キャラクターの違い、地域性などに応じてマイナーチェンジされているのではないでしょうか。
私がいま受け持っている5クラスを見ても、「このクラスはこういう雰囲気が得意で、これは苦手だな」ということがあり、テーマは同じでもやり方は結構変わります。
学生に対して「選手のことをよく見て」とか「友達のことをよく見て」と言う以上、自分たちも、全クラスを同じパッケージで、同じやり方で進めるというのは違うだろうと、先生たちとも話しているところです。全部はもちろん変えませんが、ある程度のパッケージと、そのマイナーチェンジの部分は、柔軟にやれるように頑張っています。
私も窪田も、そして吉永さんも、普段、現場に出てトレーナーとしても活動しているので、自分たちが選手を見るように学生も見るという感じです。
Q.授業において大切にしていること
渡邊 「学生たちを我が子として捉える」というと言い過ぎかもしれないですが、我が子だったら見捨てることはしないはずです。子どもに対しては「いまは言わないけど、後々タイミングを逃さずここで言おう」ということがあると思うのです。そういう感じで、授業を“自分ごと”として捉えるのはすごく大事だと考えています。
何回も同じ授業をすると、機械的に進めようと思ったら進むものです。私も、いま思えばある年に、機械的な進め方をしてしまった過去もありました。そういう時は、やはり学生にも伝わるらしく、「なんか、どんどん進んで行ってしまっているな」と思われるわけです。
だから、そのクラスに対して、最終的には一人一人に対して、“自分ごと”として進めることはすごく大事にしたいですね。
Q.アクティブ・ラーニング型授業を導入した経緯
窪田 公太郎先生(以下、窪田) 学校の会議の場で講習があって、全体で取り組んでいこうという状況でしたし、自分が運営する授業の中でも取り入れたら面白いのではないかという思いがあったからです。
Q.以前は一斉授業を行っていたのか
窪田 科目によりけりです。今日やったトレーナー特論のような授業に関しては、以前からグループワークをすることがありました。いまは、他の科目でもグループワークを行うなどの取り組みをしています。
Q.AL型授業導入は何年前から?
窪田 2年前からだと思います。去年は確実にやっていました。
Q.AL型授業導入後の学生の変化
窪田 入学後、最初のオリエンテーションなどで、担任の先生方がアクティブ・ラーニングで、黙るところは黙る、オン・オフの切り替えなどをやってくれます。それによって授業がすごくやりやすいなと感じています。
Q.現時点での課題と展望
窪田 グループワークをすることによって、しゃべる学生が出たり、しゃべらない学生が出たりします。特に今日の現場実習は、現場に出る前の授業ですから、気まずさだったり、うまくいかなかったりというところを引き出したかったのです。
座学の授業と、自分たちで考えて答えを出していく授業とでは、使い分けをしていかないといけないと思っています。あとは、通り一遍にならないように,やり方を工夫しながら、変えながらやっていきたいです。
Q.気まずい状況を敢えて作り出すことに関して
窪田 今日の授業は、かなり気まずい状況になったと思います。けれども実習で、学生たちは現場に出て、スポーツ選手と話したり、さまざまな相手とグループを組んだりします。
その時に気まずさや、うまくいかないことが絶対に出てきます。準備をするこの前期の間に、居心地が良くて、どうやってもうまくいく環境にいるだけでは、夏からの実習に対応できません。いまのうちから、困難を乗り越えていくことにチャレンジさせたいなと思っています。
Q.授業の最後に学生を引き締める言葉をかけていたが、その意図は?
窪田 もともと予定にはなくて、グループで話をし、書いて終わろうと思っていました。ところが、「誰か発表して」という時になったら、やはり手を挙げる学生はいません。
彼らの中に「自分は発表しなくても、誰かがするだろう」と責任を逃れるような雰囲気があり、かつ、それを悪いと感じてもいなかったと思います。そこを感じさせたほうがいいと考え、話をしようと予定を変えました。
Q.再現性のポイント
窪田 特に今日やったATEのクラスに関しては、競争力がちょっと弱いところがあったので、あのように競争させました。ただ、ATE科でやるのと、アスレティック科でやるのと、スポーツトレーナー科でやるのでは、全然違う現象が起きたりします。今日のようなランク付けや順位付けをしながらの授業は、学科や学生の特性に合わせて使っていったらいいのかなと思います。
Q.順位付けをすることについて
窪田 スポーツ現場に行けば、勝ったり負けたりしますからね。順位を付けるというのはごく自然に、当たり前にある世界なので、みんな平等ということはないでしょう。
「頑張らなかったら負けるよ」という点は、授業がスポーツ現場と同じになるようにしたいと考えています。でも、負けたとしても、その経験を次に活かしてほしいということがちゃんと伝わればいいのかなと思います。
Q.学生の競争心を煽ることについて
窪田 渡邊と私で合わせて、大体同じような狙いでやっていますし、そこはなるべくぶれないようにしています。...
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