高校:2年
単元:コミュニケーション能力を作る!
学校名:聖徳学園高等学校
先生名:小野和彦
授業の流れ:
8分:名言から学んだことを暗唱(発話練習)
10分:ある題材について英語で考え、相手に伝える活動
15分:時事の話題に関しての英作文活動
12分:グループ内で輪番に英文を付け足し、1つの物語をつくる活動
5分:振り返り
授業を行う上での注意点や事前準備
○自信をもって自分の考えたことを話す、書くなどの活動を通して、伝えていく気持ちを育む。
○与えられた題材に対して、すぐに自分なりに考えてみること(クイックレスポンス) を大切にする。
この動画から学べること
○1時間の中で、グループ活動、ペア活動、個人活動をいかに効率よく行うか
1つひとつの活動を盛り上げられるように、間や時間配分を工夫する。
○生徒同士、傾聴、承認しながら協働作業を行う流れ
生徒一人ひとりの様子に気を配り、生徒が参加している気持ちを高められるように適切に声をかける。
概要
本当にこれが英語の授業!?
聖徳学園高等学校アクティブ・ラーニング・センター長の小野和彦先生の英語授業。
生徒に話を聞 くと
「昨日より今日、今日より明日、確実に英語ができるようになっている感覚がある。苦手意識は無く なった」
「本当にこれが英語の授業?と、初めは戸惑ったけど、今はとにかく楽しい」
と言います。
どのような授業なのでしょうか?
小野先生にお話をお伺いしました。
Q. アクティブ・ラーニング型授業を始めた経緯は?
小野 和彦先生(以下、小野)昨年、うちの学校でアクティブ・ラーニング・センターが作られて私がセンター長になったのが一つのきっかけですが、元々アメリカに少し住んでいて、その時期の授業が、やはり対話型でした。
1対2の授業なのですが、「これ、どう思う?」と1対2でいつも聞いてくれて、それに対して「自分はこう思う」という答え方をしていました。それが自分の起点、スタートかなと思っています。
映画を見せてその後にお互いに演劇をやるアメリカのドラマの授業を向こうで学ぶ機会がありまして、この学校にお世話になって6年目ですが、その前の学校でもこのようなことを取り入れる試みは結構してきています。
何か題材を振って「これ、どう思う?」「これ、知ってる?」という問いかけをする授業はやってきましたが、去年からアクティブ・ラーニングという言葉が使われ始めました。そこでもっと体系化したものでやらなければいけないことを勉強し、特にこの一年で色々なものを一層取り入れるようになりました。
ただ、元々取り入れていなかったわけではなく、今までやってきたことをさらにレベルアップして取り入れるようになったという経緯です。
ただ一つ、私が一番思うのは、今の中高生は英語がとにかく嫌いな子が多いことです。英語の勉強は受験のためだという生徒が多いです。日本語は幼稚園に入る前くらいから親の真似をしたり、周りの人たちの話を真似したりして話せるにもかかわらず、英語はできないと決めつけています。このパラダイムを無くしたいですね。
ですから、英語の授業が楽しい、英語をやっていると面白い。そして家に帰っても色々な学習をする場面で使えば、英語力が高まる、ということを教えようとしています。今は、その気持ちが一番強いので、なるべく教科書一辺倒に、読んで授業を進めるやり方ではない方法を使うようになりました。
もちろん、教科書一辺倒に文章の説明をして、文法を説明する時期も今まではありましたが、最近は、説明を基本的にはしません。一学期の最初の段階で、必要な課題やプリント類を全部作っておき、子どもたちに渡し、自宅でとにかく少しでも勉強してきなさいと指導しています。
例えば、2時間続きの時、映画を見ると、その2時間が取られてしまいますから、カリキュラムが進まないことが出てくると嫌なので、自宅で勉強してくるという時間を増やす工夫をしています。
Q. 授業中は日本語禁止なのか?
小野 なるべく(英語を)使わせたいですね。英語で英語脳を鍛えてあげたいのが一番なので、物事を考えるとき、例えば、歩いていて「この花、綺麗だね」ではなく、その綺麗な花を表現する際には「Beautiful」だけではないと思うわけです。
ただ子どもたちの語彙力は少ないので、増やすためには普段から使わなければ駄目かなと思っています。そこで、なるべく、「たくさん英語使いなさい」「間違ってもいいから使いなさい」と指導しています。
だから、試験でも書かせる問題が多いです。ただ、文法的な間違いなどはあまりチェックをせずに大目にみて、とにかく自分のことを表現していて、言いたいことが伝わるならば、満点をあげる評価をなるべくするようにしています。
それによって、子どもたちは自分の意見を持ちます。「この間、オバマ大統領が広島へ来たときのスピーチをどう思うか?」と聞いた際、自分の意見を言えるようになってきました。
ただし、それは4月の最初からすぐ出来るようになるわけではなく、2カ月くらい経った頃に、変化してきていると明確に分かります。意図している中で聞いたときに、そういうものを取り入れたいと思っています。
たまたまこの地区は近くに外国人の方が多い大学や高校が集まる地区でして、駅の近くで、そういう人たちと知り合う機会が多いです。だから、そういう人に声をかけるチャンスは必要だと思っているので、英語を使うことが楽しいと思ってくれれば、「勇気を持って英語で話しかけたら?」とも常に言っています。
Q. 先生の授業を再現するときのポイントは?
小野 いつも私は自分で考えていることや題材はどこにでも転がっていると思っています。本当に我々教員がニュースや身の回りのことに気をつけていれば、それはすぐに教材になると思いますね。ですから、先生方はアンテナを張って、身近にあるものを教材に使ってあげて、その場で生徒に出してあげると、非常にタイムリーに子どもたちの学ぶ機会は増える、これがまず一つです。
二つ目は、子どもたちは学ぶ意欲が非常に強く、本当に色々なことを吸収しますので、こちらからヒントを与えて、自宅に帰って、ちょっと勉強してみようかな、考えてみようかな、というきっかけを与えるのが、一番我々にとっては必要なことと思います。
私は週末に、よく宿題を出します。「自分でもしデザインを考えるとすればどんなデザインをするか」というプリント的な宿題ではなくて、自分の想像力を掻き立てるような宿題を出すようにしています。すると、発表するとき、いきいきと自分の意見を述べる子が増えてきているわけですね。
ですから、やはり子どもたちの持っている「知的好奇心」を揺さぶりつつ広げられる活動をするために、なるべく子どもたちに機会を与えてあげるということが大切と思います。
三つ目に大事なことは、自分が楽しむことではないかと思います。私は子どもたちから、「今日、先生何やるの?」と聞かれることが一番嬉しいです。「ああ、この子たちは、いつもやっていることを期待していないんだな」と分かる瞬間です。「じゃあね今日はね、楽しみにしていて」と言うと、子どもたちは乗ってきます。基本的にこの授業で、眠そうにしている子があまりいないのは、たぶんそこのところだと思うわけですね。
全員参加型にしていますし、眠ければ立ち上がってあくびしてもいいし背伸びしてもいいし、教室内をうろうろしてもいいというルールを常に貼ってあります。だから、子どもたちは結構自由に活動します。
映画を見る時は、変な話ですが、「飲み物を持ってきていいから、途中でのどが渇いたら飲みなさい」と言っています。外国の映画館で足を投げ出しポップコーンを食べながら観るのと同じですね。
「少しリラックスしていいから、映画を楽しんで。その後に、ドラマを演じようね」と言うと、子どもたちは自分たちが主役になって授業に参加しているという気持ちを持てます。私が主人公ではなく子どもたちが中心になるためには一番良い方法だと思っています。とにかく私は、どの時間も楽しいなと思って毎日授業のデザインを考えています。
Q. 生徒の変化についてはいかがですか?
小野 去年の最初にやった高校一年生のクラスは、高校から入学してきた生徒たちでした。要するに、受験勉強をしてきた生徒たちで、活動するとか、授業中に立ち歩いて良いとか、そういう発想が全くない子たちです。
最初の4月、5月の2ヶ月間は、みんな真面目に座っているだけで、男子と女子が交じることもありませんでした。「お互いにペアワークやりなさい」とか「最初に握手して始めなさい」と言っても、全く交われなくて、本当にお葬式みたいな授業でした。
しかし、2ヶ月経って中間試験が終わり、行事をこなした後の頃、一人の生徒が活発に意見を言う姿をみていて、「ああ、授業でこう参加してもいいんだ」と感じる生徒が増えました。授業が活発になって、9月になるとクラスにまとまりが出てきましたし、非常に授業を楽しむ雰囲気が明らかに感じられてきました。
ただ、英語は能力別に分けているので、成績によって何人か入れ替わります。9月に、新しく転校してきた生徒、他のクラスから編入してきた生徒が3人いて、この3人がやはり10月まで馴染めませんでした。
1ヶ月間、「このクラスの雰囲気はなんだろう?」というとても嫌な顔をして帰ることもありました。「ああ、これじゃ可哀想だな」と思って、話をする形で「ごめんね、こういう授業をやっているんだけど」という話をしました。「できる限り、自分で参加して欲しいね」と話をしましたが、中には、疲れていたり、眠かったり、体調が悪かったりする時もありました。
でも「とにかく今日の授業来てくれてありがとう」と言うことにし、「じゃあ次の時間はちゃんと参加しようね」と言うと、子どもたちも少しほっとするような部分もあったようです。そして「じゃあ、今日はちょっと参加できないけど、次は参加しよう」という気持ちで授業に出るようになり、11月12月は、随分と表情が変わってきました。
ですから、昨年度の2月にこちらの撮影を一度させていただいた時、子どもたちの表情は9月の時の、新しいクラス編成になった時とは、別人のように明らかに変わってきたと思います。
高校2年生に上がって、今のクラスが24人ですが、去年は8人だけです。16人は全く初めてのスタートで、去年やっていた8人がいたおかげで、後の子たちは入りがとても早かったです。
ですから、4月の下旬頃にはみんな馴染んできていて、週に一回くらいのペースで映画を見せました。「今日は何を見るの?」「今日は何を確認するの?」と生徒から質問を受ける中で、社会問題や考えさせる問題を扱いました。そして、それを通して子どもたちの気持ちの成長が明らかに感じられるようになりました。
正直に言うと、試験前なのに試験勉強を全然しないとか、教科書をあまり進めないのは、あまり良いことではないかもしれませんが、ただ、試験勉強であれば翌週の一週間やるだけで十分終わります。
たぶん彼らは、与えられた課題は家でやってきていますし、こちらが投げかける課題をこなしてきてくれているので、少なくとも勉強していないわけではありません。今まで以上に、学習することに対しては前向きですし、非常にポジティブにものごとを考えるようになっています。その辺りが一致してくると、学力も確実に上がっていくと思います。...
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