高校:2年
単元:コミュニケーション能力を作る!
学校名:聖徳学園高等学校
先生名:小野和彦
授業の流れ:
8分:名言から学んだことを暗唱(発話練習)
10分:ある題材について英語で考え、相手に伝える活動
15分:時事の話題に関しての英作文活動
12分:グループ内で輪番に英文を付け足し、1つの物語をつくる活動
5分:振り返り
授業を行う上での注意点や事前準備
○自信をもって自分の考えたことを話す、書くなどの活動を通して、伝えていく気持ちを育む。
○与えられた題材に対して、すぐに自分なりに考えてみること(クイックレスポンス) を大切にする。
この動画から学べること
○1時間の中で、グループ活動、ペア活動、個人活動をいかに効率よく行うか
1つひとつの活動を盛り上げられるように、間や時間配分を工夫する。
○生徒同士、傾聴、承認しながら協働作業を行う流れ
生徒一人ひとりの様子に気を配り、生徒が参加している気持ちを高められるように適切に声をかける。
概要
本当にこれが英語の授業!?
聖徳学園高等学校アクティブ・ラーニング・センター長の小野和彦先生の英語授業。
生徒に話を聞 くと
「昨日より今日、今日より明日、確実に英語ができるようになっている感覚がある。苦手意識は無く なった」
「本当にこれが英語の授業?と、初めは戸惑ったけど、今はとにかく楽しい」
と言います。
どのような授業なのでしょうか?
小野先生にお話をお伺いしました。
Q. 生徒からはどのような評価を得ていると思いますか?
小野 最初に話しましたが、英語が嫌いな子が多い中です。4月にアンケートを取ると、24人中、今年のクラスでは半分以上が「英語が好きではない」という問いに「そうだ」と答えています。この一学期が終わる頃にまたアンケートを取りますが、半分以上、あるいは大半が面白いと言ってくれるようになりました。
うちの学校では放課後にセミナーという形を取っていて、英語を勉強したい子たちが別に授業を取ることが可能です。今、朝の7時40分から朝補習をやっていますが、今このクラスで授業を取っている子の参加率がとても高いです。
というのは、英語の必要性を感じているのと、英語が面白いと思って期待をしてくれているのかなと思っています。子どもたちの期待に応えたいと考えた時に、我々の努力は必要で、子どもたちとコミュニケーションを多く取り、授業にも早く行って会話をしながらやっています。そういうところでは、授業は子どもたちにうまく浸透していっているのではないかと感じています。
もちろん全員が全員とは思えません。去年もやはり、最後まで英語が好きではないという子が一人いました。全員にはなりませんが、クラスのほとんどが「楽しい」とか「勉強しよう」と思ってくれるのであれば、成功しているのかなとは感じています。ただ、できれば全員が楽しいと思ってもらえるように、そういう機会はできる限り放課後とか朝に取るようにしています。
Q. 生徒以外からの評価はいかがでしょうか?
小野 2週間前に、本校で先生方向けの公開授業をさせていただきました。英語科は、お互いに評価に厳しい科目です。しかし、生徒が一生懸命英語を使おうとしていること、色々な展開をしながら子どもたちの力を引き出そうとしていることに、「非常に面白いことをやっているよね」と言っていただく方が結構いました。「早速授業の中で使ってみるよ」と言った先生も3,4名おりました。
だから、そういう点では非常にありがたいかなと思っています。保護者の中からも「子どもが先生の授業はとても楽しいと言っています」と言われることがあります。そういう言葉一つでも聞くことによって、自分のモチベーションが高まるかなと思っているので、一つ評価される部分なのかなという気はしています。
Q. 周囲の評価に対する先生の意見は?
小野 まずはやってみることかなと思いますね。対話型の授業を経験している先生は実は多いと思います。アクティブ・ラーニングという言葉が使われるようになってから、何か非常に難しいものをやるイメージがあるようです。
うちの学校でも何人かは、「プロジェクトベース型の学びをしなきゃいけないんだよね」、「話し合いしなきゃいけないんだよね」と、よく聞かれます。「いや、そんなことはないですよ。授業の最初の5分間、前回の授業の振り返りをする。それだけでも十分アクティブ・ラーニングになりますよ」という話をします。先生方の重荷を取っていくことによって、スタートできるのではないかと思っています。
そんなに難しいことではなくて、子どもたちがその授業を通して、何か一つ学ぶことがあれば、もうそれはアクティブ・ラーニングに繋がっていくのかなと思います。私は先生方に、「じゃあ机をちょっとつけてみてください」「机を移動させてみてください」「プリント持ってるもの、お互いに交換して、お互いにマーカーをつけてみてください」「それで、もうアクティブ・ラーニング型になりますよ」とお願いしています。
本校は男女共学で、面白いことに、今までわりと授業に不真面目に参加していた男子が、女子とプリントを交換するとなると、必ずきちんとやりますね。それに、汚い字では書けないので、いつも以上に綺麗な字で書きます。それだけでもう、子どもたちの中に学びがありますし、隣同士との話をすることによって、やはり違った意見が存在することも学べます。それが、アクティブ・ラーニングの一番の良い部分ではないかと思っています。
「こんなことをやっても大学受験に繋がらない」とか、「進路には全然繋がらない」という意見を持つ生徒は、実は高校3年生にもいますし、先生方にもいます。でも、これから大学に入ると、講義型より参加型の授業が増えていますし、面接に行ったときに自分の意見が言えなかったら、やはりそれはうまくいかないのではないかと思っています。やはりこういう授業を実際に色々なところでチャレンジしてみることだと思いますね。
失敗はいっぱいあると思いますが、その失敗の中から子どもたちと一緒になって、授業を作り上げていく、そして、自分も一緒に成長していく場になると非常に良いと思います。勇気を持ってチャレンジしてもらえると非常にありがたいと思いますし、皆さんは本当にご経験を持っているので絶対に出来ると思います。
むしろ、入って2,3年目の若い先生方よりも、40、50のベテランの先生のほうが良い授業展開をされるのではないかと私の持論の中にあります。
Q. 否定的な意見はありますか?
小野 「そんなことばっかりやっていて、試験範囲終わるの?」と見る方もいらっしゃいます。また、「本当に力が付いているの?」と言われるケースもあります。実は、先ほどのこのメンバーは、うちの学校の中で、能力別に分けているちょうど真ん中くらいの子たちです。だからとても英語が出来るクラスの子たちではなく、本当に英語が嫌いで中学受験でとにかく覚えさせられた授業を経験し、もがいている子たちです。
でも、もがいている子たちですが、確実に力を伸ばしていて、うちの学校で受けるGTECの「for STUDENTS」試験でも、書くこととか、または聞くことの能力はかなりレベル的に上がっています。去年の1月の試験の結果でも見えて取れました。
また試験でも、「とにかく自分の思ったことを書きなさい」という形で書かせているので、かなりライティング能力、量も含めて書くことは出来ます。これは明確ですよ。今年、高校2年生のクラスの生徒と比べると、レベルは一個上ですが、書ける量が違うのは明確です。色々な話を言われることはもちろんないわけではありませんが、でも確実に繋がってくるかなと思っています。
今、大学入試でも、筆記をメインにしている学校も増えていますし、面接でも自分の意見を言いなさいという場では、確実に対応できると思っています。
英語を通して、社会や理科や国語を勉強する授業なので、他の教科とのリンクを目指しています。その中で、なるべく子どもの知識を増やしてあげようという形はプラスになっています。反対意見があっても結果が付いてくると、おそらく理解していただけるのではないかと思っています。
Q. 成績や大学受験とのつながりについてはどうお考えですか?
小野 アクティブ・ラーニングをやるようになると、中間試験、期末試験の意義が随分と薄れてくるのは現実ですね。
ですから、今までは暗記をしてくれば出来る問題を作る先生が多かったのですが、それだけでは、子どもたちの能力を計れなくなってきています。授業の中でお互いに評価をしたり、あと、本校は高校2年生まで考査外評価といって、その授業でやる活動を評価する点数化がある(20点分)ので、振り返りをしたものを点数化したり、行ったプロジェクトに関する評価を入れる形を取っています。
そうすると、筆記で計れない部分とか、定期試験で計れない部分は、試験では出来ないが喋らせたらとても上手な子を評価してあげられるので、そういう形で精査をしていきます。
これは今後、20点分という配分も変わっていく可能性があります。今本校でも、この評価方法をどうするかは議論になっています。ルーブリック評価などでもちろん評価はしていますが、それ以外に、新しい評価方法を考えないといけない時期に来ています。例えば、中間、期末試験は50点の割合。それ以外の活動を50点にする発想も実は出始めています。
極端に言えば、中間、期末試験をなくしてしまって、普段の活動を点数化しようという意見も実は持っています。ただ、それが本当に良いものかどうかというのは、今後の議論の対象になっています。また、大学の入試が変わりつつあることも前提にしますので、明らかに変われば、その素養が必要な子どもたちを育てることになりますので、中間試験、期末試験の流れも変わってくると思っています。
リーディングに関しても、グラマー・ライティングに関しても、やはり自分の意見を考えたり、読んだ内容をどう思っているか考えたりすることが必要です。「この内容について自分の意見を書きなさい」と、英語で考えさせる試験を入れる形にしていて、それが繋がるような形のものにしたいです。
だから、授業からテスト、そして評価、そしてそれが大学受験にと、一つの線路のように繋がる授業に、また評価方法にしていこうと学校全体で考えているところです。
Q. 先生の中高生時代はどのような英語学習だったのですか?
小野 やはり昔の学習だったので変な話、私が今子どもたちに絶対してほしくないと言っているのは、「英文を読んで日本語を読み、英文を読んで日本語を読む」対訳式ですね。自分が勉強していたあの対訳式は、通訳者がやる練習であって英語の学習者の勉強方法ではないと、自分が教えるようになって理解し始めました。
それよりも、文章全体の内容を一気に読む練習をしていかないと試験時間が50分なので、50分で読み切れません。でも、いまだに一週間かけて一つの単元を終わらせる先生方が多いです。私は基本的に1時間で一つの単元を終わらせるようにしています。
そうすると子どもたちも集中します。ただその前に、その内容に関する、内容的なものを子どもたちは結構インプットしています。例えば、前回の試験でドナルド・キーンさんが出ました。彼はどういう人なのか、どんな生活をしてきたのか、三島由紀夫との関係のスピーチとか、インタビューを授業で見せて、単語は徹底的に頭の中に入れておきます。
そして「じゃあ今日は一気に読むよ」と言って一気に読ませると、子どもたちは映像として残ります、言葉として残ります。だから、内容がすらすら入ってくるのではないでしょうか。
でも、我々の時代にはデジタル黒板もありませんでしたし、iPadも当然ない時代ですから、画像的なものを入れてもらった記憶が全くないわけです。だから、自分の頭の中に残っているものは何もないので、結局、残っていくものというのは、「試験やったよね」それだけで、中身が残ってないのが現実でした。
今考えると、そういう授業があったらよかったのになあという思いがあって、今の子どもたちには、なるべく使えるもの、色々なツールを使います。脳に刺激を送れるインプットやアウトプットがたくさん出来る機会が取れるものを加えようと思っています。
単語に関しても、昔あった単語集を必死で覚えるという形でやっていましたけれど、今の時代、単語集を必死に覚えても、なかなか使いこなせていないなと思います。当時はしゃべることに重点を置いていなかった時代で、今はやはり使える英語です。単語をただ単に丸暗記するのではなく、それ使ってみようというのが課題かなと思っています。
ですから、面白いことに、今お昼休みに2人で会話を英語でしゃべっている子がいます。一生懸命言って、「先生、これなんて言うの?」って聞かれますが、きっかけにしてくれるとありがたいと思います。授業では英語の歌を歌います。大体月に2本くらい歌を歌いますが、ある生徒は、「先生、この間、これ歌ってきたの」と、カラオケで歌っている映像を見せてくれました。
授業でやった歌を歌ってきた。「面白いよね」って言って見せてくれていまして、授業でやったものが生活にも繋がっていると感じ、「ああ、やっていてよかったな」と思いました。そういう展開が出来るのは、今の時代ならではだと思います。映画や英語の歌、ニュースなど、色々なところから引っ張って来られる時代になっているので、昔とは全く学習の仕方も違うと実感します。
文法も、買ってきた問題集をとにかくやるしかなかった時代でしたが、今はネットで問題も出てきます。そういう使い方が出来る時代とは、全く違うやり方の時代だからということで、勉強のやり方も変えようという発想です。
Q. 今の生徒たちを見て思うことは?
小野 これだけものがあふれている時代、日本は裕福な国だと考えると、本当にこんな与えられている現状をありがたいと思いますね。
今、英語の授業で、「世界のデザインの90%は、裕福な人のためにしか作られていない」と。また、この間も授業で、「世界で一番高い品物を週末に調べてきなさい」と言いました。そして英語でスピーチを30秒やるのですが、マウンテンバイクが1億2千万円、世界一高いプリンが158万円らしいです。それ誰が食べるの?誰が買うの?と思いますが、そういうことを簡単に学べる時代で、今の子たちは本当にうらやましいのが一つ。
そして、まだ発展途上国においては、授業に行けない子どもたちがいます。我々が授業で色々なことが出来るのはありがたいので、これをそういう国の子たちになんとか繋げられないかというのも一つ課題だと思っています。
今の高校1年生は、私が中1、中2と担任した学年でした。地雷が教科書に出てきて、ボランティア活動して地雷のための募金をしようという発想がクラスで持ち上がったので、ある団体を通して募金活動をしていました。
募金をカンボジアに贈る、またはカンボジアの学校を作るための寄付をする活動をやっているのですが、世界にはまだ1億1千万個の地雷が残っていて、これを普通に取り切るには1,000年くらいかかるということでした。そこで、自分たちに出来ることはないかと呼びかけて、彼らの解決能力、自分たちで考える力、出来ることはないかと考える力を繋げていくことが出来れば、世の中も変わってくるのではないかなと思っています。
ですから、これからの21世紀を担う子どもたちを育てるために、そして担って欲しいから、「色々なことを考えて、自分の今ある現状を甘んじることなく、ちょっと外に目を向けてみよう」という話は普段からしています。
そうすると、子どもたちは英語を使ってそういう国へ行って、やってみようかなという気にもなるかもしれませんね。本校では、たまたま冬場に国際研修旅行でベトナムに行く計画が毎年あります。昨年はこの武蔵境あたり、武蔵野市の特産物である唐辛子を使った商品を現地のイオンで売るというプロジェクトベース型をやりました。
要するに、うどんを持って行って、唐辛子をかけて、ベトナムですから、暑い国なので、こんなおいしい食べ方がありますよと紹介する。売ったものは一応、全部完売したという話でした。
ですから、子どもたちはやはり、自分たちの学んでいることから外に目を向け始めて、そしてその一つの媒体として英語を使う、ということが、段々分かり始めているのではないかと思います。そう思うと、本当に今の子たちは恵まれた環境で、私立学校でこうやってiPadを持っている学年もあり、デジタル黒板があり、何でも使える環境です。
そのことを本当に良いことだと思ってもらい、その環境で育んだ力を使って、やはり「世界に目を向けて今度は考えましょう」と子どもたちに投げかけて、実現することが出来たらいいなと思っています。
Q. 今後の展望を教えてください。
小野 子どもたちが全て英語で説明する、全て英語で話をするのが理想的だなと思いますが、一番は、この子たちがこれから世の中に出ていった時に、英語を使って他の人たちと一緒に仕事を出来るような能力をつけてほしいという思いですね。
だから、大学入試ももちろん大事です。ですが、それは一つの通過点であって、それ以降も英語が使える人間になってほしいです。人間的に、英語を通して知識を増やし、成長してもらいたいと思っています。今、高校2年生は来年、高校3年生です、一つやはり大きな山がありますが、その山を目指すのではなく、山を越えた後のことも目指すような学習をしてくれるといいと思っています。
今やっている内容がそのまま大学受験に繋がって、自分で考えて、自分で学習でき、自主的に活動できる、そんな子どもたちに育ってくれるといいと思って、常に考えています。
※小野先生の英語の授業は、学校導入版で視聴できます
学校導入版の詳細はこちらをご覧ください...
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