概要
【初登場!専門学校のAL】教師が手を放す授業
専門学校の授業見学動画が初登場!
三幸学園福岡医療秘書福祉専門学校西川聖子先生の授業は、ジグソー法を使い、介護の現場で使える生きた思考力を身につけることを目指しています。
教師が手を放し、学生に任せる授業を展開するために、どのような事前準備が必要になるのか、ぜひ先生のインタビュー動画も併せてご覧ください。
※本授業動画は5本分割構成となっております。
授業動画を4本ご覧いただき、その後、先生インタビューをご覧ください。
授業動画をまとめてご覧になりたい方は、(全編)をご覧ください。(インタビューは全編には含まれておりません)
アクティブ・ラーニング型授業を始めた経緯
最初は、学校の教員研修で行われたアクティブ・ラーニングを導入しましょうという取り組みで知りました。いろんな教育の方法ややり方の中で、もともと私は共同学習に興味があったこと、学生が主体的になるほうが高い教育効果を期待できることから、取り入れてみようと思いました。
何年前から?
「今日はこの手法」という大々的なアクティブ・ラーニングを授業に取り入れたのは、おそらく4、5年ぐらい前からだと思います。
AL型授業を始めたきっかけ
確かもともと授業には取り入れていたと思います。学校全体の教員が行く年度初めの研修で、「アクティブ・ラーニングを、明日の授業から取り入れてください」と言われたので始めました。
授業で工夫していること
学生が考えられる課題提供をするというか、どういうテーマや設定で投げ掛ければ学生が学べるかはすごくこだわります。
学ばせたいゴールがあった時に、いきなりゴールに持っていこうとしても大体できないので、どのぐらいの分割で授業をしていくかを考えてやっています。
今日の授業だと3段階ぐらいにして、グループ学習でここまで、ジグゾー法をかけてここまでと、達成目標を小分けにする形で行いました。
再現性のポイント
一つはグループ分けの内容ですね。引っ張っていく学生や、口数が少ない学生などがいるので、学生の特質性を考えながらどのようにグループ分けをするかがポイントです。もちろん先生達はベテランなのでなさると思います。
あと、グループ学習の中で、やはり話が逸れてしまったり、盛り上がったりする学生が出てきます。その学生を常に引っ張って戻せるように、必ず私はグループ学習に入る前に「何時までにここまで到達して」という目標をあらすじとして明確に提示します。
普段しゃべっている子がしゃべっているのは当然ですが、グループの中で普段発言しない子が発言している時には、「いいこと言ったね」「その意見こそ、いいよ」とできるだけそばにいってほめるようにしています。
毎回の授業の中で、私は「数少ない意見が好きだよ」などと言いますね。普段から常に「レアな意見こそ貴重かもしれないよ」「1人が発言しないことで達成できない目標のほうが実は多いから、必ず話さない子も話してね」と言うように心がけています。
グループの設定について
今回もわざとグループを組んでいるのですが、学生はまず普段の座席表を見るので、わざと組んでいることはわかってないと思います。
私は普段の座席表を見ておいて、どういうふうにテーブルを配置したら、今回バラしたい子が一緒にならないようなグループになるのかを考えます。
ただ本人たちは、普段の座席通りに座っていると思っていると思います。意図していることが伝わってしまうと、やらせ感が出てしまうので、結構私は環境にすごくこだわります。
“環境”でこだわっているところ
パワーポイントだとあらかじめ設定ができている状況で進めていける長所があるのですが、その通りにいかなくてはいけなくないという短所もあります。今日はパワーポイントのみでやりましたが、逸れたことを大事に取り入れたい時にはパワーポイントは使わず、黒板を使います。
PowerPointと黒板の使用頻度
その時のテーマによるのですが、半々ぐらいですね。
学生の変化
私、実は授業をこの科目になってから、もう7年ぐらいやっているのですね。やることは思考過程の習得なので、本筋7年間教えることは何も変わっていません。
ただ教える内容は変えてきています。学生が自分たちで考えなければいけない授業なので、学生が自分で考える力は、やはりアクティブ・ラーニングに変えてからのほうが断然ついていると思います。
以前は一斉授業をしていた?
一斉授業で全部持っていくことができない科目なので、もともと何かしら演習は入れていたのですが、今よりももっと講義のほうが多かったです。
90分枠の中で、前半が講義、後半が演習という授業パターンを組んでいました。
以前の授業形式と現在の対比
学生が自信を持って発言できるようになったと思います。学生の発言に、私のほうが「ここまで考えられるのか」「ここまで話せるのか」「すごいなあ」と驚くことが多くなりました。
アクティブ・ラーニングをすることによって、こっちがしゃべる比率よりも学生がしゃべる比率のほうが多いので、私が学生から学ぶことが多いです。自然と私も「すごいね」という言葉が出ます。
それによって、学生が「えっ、そうなの」とまた自信を持ってくれます。そこがとても大きい変化かなと思います。
学生からの評価
科目について学生が評価していく授業アンケートというシートがあるのですが、そこで学生が高い評価を付けてくれるので、そのままでいくようにしています。
学生からの具体的な声
それは恥ずかしいですが(笑)学生は、私の授業はわかりやすいとすごく言ってくれます。
あと、「先生が何をさせたいのか、どう持っていきたいのか、ゴールが明確なので乗りやすい」「何を発言しても的確に受け止めてくれるので、安心する」などと言われますね。
ネガティブな評価
思考過程の習得なので、達成度の確認を意図的にしないとわかりにくいと思います。これでいいのかなと思う時があると思いますね。
達成度の確認はどのようにしている?
最初に書かせたものと、3カ月後自分が書いたものを比較させて、自分の中でどう変わっているかを自分たちで確認させています。
点数では出ませんし、暗記したものが10割覚えて10割書けたという授業ではありません。知識の習得がどれだけできたかであり、客観的な指標に乗せにくいものなので、これでいいのかなという、漠然とした不安は持ってしまう授業だと思います。
ですから、比較させたり、○×問題をしたりする授業をちょこちょこ入れています。
ALという手法に対する意見
アクティブ・ラーニングは肯定派の方、否定派の方がいろいろいらっしゃいますよね(笑)
教員自身がアクティブ・ラーニングをどう思うかではなくて、アクティブ・ラーニングを使って学生をどう持っていきたいのかということが一番大事だと思います。
学生が主体的に学ぶということはもちろんすごく大切です。ただ、授業によってはどうしても講義で一方的に伝えなければいけないこともあります。
私の場合だと解剖学ですが、なかなかアクティブ・ラーニングを取り入れにくい科目もあります。学生がアクティブにラーニングしていくためには、どの部分にそれを使えば効果的なのかを、教員が考えることがすごく大切だと思います。
私はアクティブ・ラーニング自体を、使いにくい、自分の授業ではないなどと否定的に考えるものではないと思います。
ALに向いている授業
Find!アクティブ・ラーニングのサイトを拝見させていただいた時に、どの授業でも使えるなと思いました。
解剖学を教えるのに、全部は無理でもできる部分はあると思いました。私は結構学生とやり取りしながら進めるのが好きで、一方的にしゃべるのは嫌いなのですね。
どれが使いやすいとチョイスすることはできませんが、どの教科も取り入れられると私は思います。
周囲の先生方からの評価
介護の授業はほかの科目の統合なので、自分がやっていることがほかの科目とずれていないかは気にしますが、周囲からの評価はあまり気にしたことがないかもしれません(笑)。学生が生き生きと授業に参加してくれることが、私にとってとても大事なのです。
学生が知識を習得してくれれば、それがほかの科目に反映して、連携していくと思います。学生から「そこで学べてわかりやすかった」「実習や就職した時にすごくためになった」と返ってくれば、私もやり甲斐を感じ、もっと頑張ろうと思えます。
お答えになっているかわかりませんが、この前の3月に卒業した男子学生が、「もう1回この授業の見学をしたい」と言って遊びにきてくれました。私の授業のグループワークに入って、私と同じことを学生に指導したのですが、私はそれを見てとてもびっくりしました。
その子はこの介護過程の授業があまり得意ではなくて、ずっと「どうしたらいいかわからない」と言っていたのですが、卒業して1カ月たったら、私と同じ思考過程で在校生に指導していました。
やはり言われっぱなしだとなかなか身につかないことも、自分で考えたり自分で書いたりしていくと身につくのだなと思いました。それはとてもうれしい出来事でした。
講義形式で一方的にではなく、学生の中に入り込んで引き出していくと、卒業してからも表現できるようになるのかなと思ったので、やはり頑張ろうと思いました。
現時点での課題と展望
アクティブ・ラーニングの中で、学生を主体的に引っ張っていける技法はほかにもたくさんあると思うので、今日良かったからこれで良いのではなく、いろんなことにチャレンジしていきたいです。学ぶことの楽しさを自分も感じていきたいですし、学生にももう少し感じてもらいたいなと思っています。
卒業生からの声
やはり学んでよかったとは言いますね。
卒業後、介護過程では施設や就職先でいろんな様式や書き方があります。在学中使っていた紙や用紙は、あまりごちゃごちゃ書かずに自分で作っていったので、案外丸投げで来ても何となく対応できると学生は言います。
「そんなに詳しく書かれていなくても、何を書けばいいのかが頭の中に入っているので、こういうことかなと理解できるから助かった」と言ってくれるので、そこでもっと発展させてもらえればと思いますね。
授業のコンセプト
今までずっとやってきて思うのが、手を離せば離すほど、自分の事前準備が必要になってくるということです。何もやらないためには、すごくいろんなことをやっておかなければいけないなというのが自分の感覚ですね。
(インタビュアー:そのために先生、具体的にどんな準備をされますか。)
その間しゃべらないためには、学生をどう持っていくのか、どういうプリントを作っておくのか、事前に何を伝えておくのかをかなり意識して準備をします。...
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