概要
わざわざテストをしなくても生徒の理解度を瞬時に把握できる“フリップメソッド”とは?
茨城県の土浦日本大学中等教育学校5年生の物理授業の公開がスタートしました!
松原大輔先生の講義の秘密は“フリップメソッド”と“問いかけの仕方”。
「熱」について学ぶ今回の授業。
生徒たちはどんな姿を見せてくれるのでしょうか?必見です!
授業のグランドデザイン
松原 大輔氏(以下、松原) 通常もそうですが、今日の授業は特に、日常知と科学知をいかに結びつけるかをテーマとしました。日常的に普段気軽に使っている言葉を、科学の言葉として生まれ変わらせなければ、このあとの理解が困難になってくるので、そこの橋渡しです。
それが今日のグランドデザインです。
フリップメソッドで大切なこと
ホワイトボードに書かせることは、自分の意見を表明させる一つの方法です。自分は普段どう使っているのかということを恥ずかしがらずに言うということです。
今日もよく言っていたのですが、間違えることは恥ずかしいことではなく、間違えて、その間違いをどんどん訂正していき、正しいものになるべく近づけていくことが大切です。
今の科学が正しいかどうかわかりませんが、今の科学も堂々と意見を表明しているわけです。それに対して、誰かがまた新しい理論を出したら、今の科学が間違いだとわかって、新しい科学になるように、一度出すことが何よりも大切なのだと伝えています。
ですから、本当に小さいことですけど、テストでもとにかく自分で答えを書きなさいということは必ず言います。
議論をさせることとの違い
まず今日の授業では、普段自分たちがどう使っているか個人的な使用だったので書かせました。
ただそのあと議論させるのは、その使っているものをみんなで共通理解にしたいという時は話し合わせるべきであって、何でもかんでも話し合わせればいいというものではないです。
普段自分でやっていることについて個人的なものについては書かせたほうがいいですし、それで、書かせたものを視覚化するためにはああいうホワイトボードのほうがみんな隣の人は何を書いているのかなって見ることもできるので、そうすると議論も、「えっ、なんで、なんで」っていうことにはなりやすいです。
議論をさせる意図
本当はもっと長い時間かけて議論させたかったです。
今回は時間的な制限もあり、移動する子はいませんでしたが、自分たちで議論することによって他者の意見と戦ってくうちに、実はどちらかの意見に寄ってくるのです。
議論していくうちに言葉がたくさん生まれます。狭いところでやってしまうと仲のいい子の意見にただ同調していくだけですが、もっと長くやっていくと、多分意見を変えない子のほうに移動する子が出てくると思います。
人数は関係ないです。大体もう少し時間かければ、どんどん向こう側に行ってしまいます。多数派の方が意見が割れやすいです。
実はみんな、それぞれ違う考えを個々で持っているので、そこを統一はできません。そうすると少ない方は意見を統一されるので、だんだんそちらに移動するというのが通例です。
ですからあのままやっても本当は面白く、2時間続きだったらやっていました。
議論する時間を設ける頻度
ここぞ、という時はやります。
アクティブ・ラーニング型授業と一斉型授業の配分
基本的に講義と実験と演習というのが僕の中の3本柱です。
講義は通常の学校でも行っている通り、黒板に書いて講義して理解してくということだと思います。演習は問題を解いて、その問題をどうやって解けばいいのかを解説するのですが、一見この演習を予備校に任せてしまったり、問題集を解けばいいと思ってしまうのですが、実は演習がとても大事なのです。
演習の解答というものは、どのように考えていけばいいか、問題に対してどう取り組めばいいか、指針をどう立てればいいか、式と文章と図をどう書いて、いわゆる報告書を書いていけばいいかということです。そういうことを練習しないと、実は伸びないので、演習も大事だと思っています。
そして、実験も同じくらい大事です。実験の時は完全なグループワークですけれども、そこでもなるべく差が出ないようにして、みんなの意見が同じぐらい尊重されるようなグループにしています。
意見をすごく言うタイプの子ばかりのグループに、あまり意見を言えない子が一人いるとそのまま他の子の意見に従ってしまうので、みんなで意見が言い合える雰囲気作りがまず最初です。
半年くらいはどの組み合わせがいいかなと考えて、やっていきます。
今日の授業は講義・実験・演習のどれか
今日の授業は講義と講義の変形です。で、講義の変形で、基本的にただ黒板に書くだけでもいいのですが、今日は色々な問いかけが多かったので、問いかけが多い時は今日みたいなスタイルで、いろいろ書かせたり、表明させたりします。
これは普通の演習でもやりますし、大学入試の演習でもやります。この問題は「ホワイトボードに書かせることで、みんなの意見を映し出せる、浮かび上がらせられる」という時に使います。受験生でも使います。
問題の解答をみんなで出し合うというのはあります。計算ではなく、直感的に解答が分かる場合や図に書いて解答させたりします。
ホワイトボードはみんなで議論する時にも使います。グループごとにそのホワイトボードの意見を合わせて、一つのホワイトボードにまとめさせたりします。今日は個人で出す場合と、それを元に全体で議論する場合がありました。必要であれば、4人一組で議論させる場合もあります。
ホワイトボードは、アナログですが非常に使い勝手がいいので僕は好きです。
うちの学校は1人1台パソコンを持っているので、パソコンでもいいのですがそれだと友達と書き合ったりすることができません。
そういう意味ではホワイトボードの方が気楽に書けるので使用しています。
パソコンはもっと高度な時に使います。実験の時にパソコンを持ってきて、データをエクセルなどに入力して、「どういう変化が測定しながら起きているか」、数値を入力してくとどんどんグラフの形が変わってくので、「ここでこういうことが起きているんじゃないか」ということを見抜く時に使わせます。
フリップメソッドを使用する頻度
よく使います。毎回使っているというわけでもなく、使う場面ではどんどん使うという感じです。
例えば、「鉄と水どっちだと思うか」という問題に対し、「自分は水だと思うな」と言っても、周りが「鉄、鉄」と言うと黙ってしまうかもしれません。ですが、全員に意見を書いて出してと言うと、サイレントマジョリティが浮かび上がるので、これはフリップメソッドの効果が大きいと思います。
クラスのみんなに意見を聞いて、発言する子というのは大体決まっているので、それに対して全員どこまで考えているか、この子はどう考えているか、このレベルの子はどう考えているか、普段こういう考え方する子はどう考えているかも全部手に取るようにわかりますし、教員としてはとてもやりやすいと思います。
ああ、大体こう考えてるんだというのがわかることはすごく大きいと思います。
「大きく書いて!」というのは先生が確認するため?
僕が確認するためです。
本人たちは、「僕の意見はこれです」ということを出しますし、僕もそれを確認できるので、恐らく教員の方はこれがあったほうが助かるのではないかと思います。
すごく簡単なレベルで、「この説明わかった?わかった人、丸書いて」でもいいと思います。
何でもできると思います。恐らく子どもたちも喜びます。
周りに合わせてしまう理由
日本人の特性はあるかもしれないです。あと年頃かもしれないです。
周りに合わせてしまうのは、日本人だけじゃないかもしれないです。恐らく世界共通、人類にひょっとしたら埋め込まれているのかもしれないです。
ヒットチャートはどこにでもあるので、世界中の人間が、今何が流行っているのか、何が流行なのかということを確認したがっているわけです。これは多分人類の社会性がなすもので、その時にみんなが自分で今思っていることを表明しなきゃいけないっていうのはあると思います。...
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