高校:2年、HR
単元:---
学校名:聖徳学園高等学校
先生名:小野和彦
授業の流れ:
授業を行う上での注意点や事前準備
○継続して活動をさせていくことと、週ごとまたは毎日、話をする相手を変えて、マンネリ化させないこと。
この動画から学べること
○ちょっとした活動で生徒たちの1日の始まりが変わっていく様
パートナーを毎回変えて、違ったものの見方や違った意見を聞くことができる環境を作る。
概要
朝のHRで何してますか?
クラスの雰囲気が良くなる日誌活用法とは?!聖徳学園高等学校小野和彦先生の朝のホームルーム動画を公開。
日誌を活用して互いに励ましあうことで、コミュニケーション能力が高まり、クラスの雰囲気も非常に良くなっているそうです。
小野先生が語るペアを作るときのポイントや、 生徒たちが励ましあう様子をぜひご覧ください。
Find!アクティブラーナーに登場している先生への質問企画第一弾!
聖徳学園中学校・高等学校の小野和彦先生への質問をお寄せいただいた皆様、ありがとうございました。
編集部で取りまとめた11の質問に、小野先生がご回答下さいました!
学校や教員に関して、生徒に関して、授業の工夫に関してなど、質問は多岐にわたりました。
授業の内容や、インタビューと合わせてぜひご確認ください。
<小野先生への質問リスト(Q 1 ~ 11)>※回答はリスト後に掲載しております
1.学校や教員に関する質問
Q 1. 生徒の評価はどのように行っているのでしょうか?
Q 2. 貴校では定期テストの出題形式は以前と変えていらっしゃいますでしょうか?
2.生徒に関する質問
Q 3. 生徒の学力向上に成果が見られていれば教えてください。(具体的なテスト結果や外部模試の結果の比較など)
Q 4. AL型授業を推進する中で、テストの結果に限らず、小野先生が感じている生徒の成長など教えてください。
Q 5. AL型授業を行うとクラス作りや友人関係にもプラスの効果があるとお聞きします。小野先生が実感されていることがあれば具体的に教えてください。
3.授業等の工夫に関する質問
Q 6. グループワークにおいて、生徒同士でワークが深まらなかったりする際に行っている工夫など教えてください。 また、グループワークにしても ペアワークにしても参加しようとしない生徒に対してどのような働きかけをしているのでしょうか?
Q 7. ホームルームで日誌の内容について褒め合うという取り組みが紹介されていました。褒め合う活動は、やり始めた当初は映像で紹介されていたように自尊心が高まる効果があると感じていますが、続けていくと「慣れ」が出て、効果が薄まるのではないかと考えております。小野先生は、どのように継続されているのでしょうか?もしくは、一定期間褒め合わせたのちは、違う取り組みをさせているのでしょうか?
Q8. 部活の指導について、小野先生がされているように、生徒たちに主体性を持たせて、自ら考えさせていく、という活動は、学校教育における部活動として、真にあるべき姿だと思います。
一方で、私学の場合、生徒募集の観点から、大会等で一定以上の成績を求められる部分もあるかと思います。その場合は、やはり従来型の顧問やコーチが強いリーダーシップを発揮する方法も必要になると思います。
雑駁な質問ですが、どのレベルまでを目指すのであれば、生徒の自主性・主体性を尊重し、どのレベル以上を目指すのであれば、顧問が口を出す等の線引きについて、小野先生はどのようにお考えでしょうか?明確な答えは無いとも思っていますが、何かしらのヒントを頂けたら幸いです。
Q 9. Find!アクティブラーナーに掲載されていた英語の授業では生徒は辞書を使っていないように見受けられました。当校で同様の授業をしようと考えると、生徒の語彙力の観点から、辞書を使わせないと難しいのではと感じてしまいましたが、
(1)編集でカットされているだけで、実際は辞書を使いながら授業を受けている
(2)分からない単語は友達同士で聞くようにさせて、辞書は使わせないようにしている
(3)1年次や、年度のはじめのほうは使わせているが、徐々に使わせないように移行させている
のいずれで実施されているのでしょうか?
Q 10. 「Who is he/she?」「HINTHINK」「TCT」「Add+add」など様々なヒントを頂き、さっそく活用させて頂いています。ただ、質問がございまして、同じようなワークを1年間通じて行われているわけではないと思います。
・それぞれのワークは、年に何回ぐらい行われるのでしょうか?
・これらのワークが効果的な年次やタイミングについてはどうお考えでしょうか?
・他の時期や学年でやられているワークがあれば、簡単で良いので教えて頂けませんでしょうか?
(入学間もない高校1年生には、~~という目的で、○○ということをやっている等)
Q 11. Evaluation Sheetの活用について教えてください。毎回の授業で書かせた後は、どのように蓄積されていますか?
A:先生が集めて先生がまとめて持っている
B:生徒に返してファイリングさせている
Bの場合、それを試験前などのタイミングで振り返らせたりすることはありますでしょうか?そのときに、どのように振り返らせているのか等のポイントがあれば教えてください。
自校でも、Reflection Sheet、Evaluation Sheetを書かせようという活動をしていますが、書かせた後の効果的な使い方について、まだまだ改善の余地があると思っています。
<小野先生からの回答まとめ>
1.学校や教員に関する質問
Q 1.生徒の評価はどのように行っているのでしょうか?
小野 評価は以下5つの項目で行っています。
1.年間5回の定期試験での評価(5段階評価)
[中間試験100点+期末試験100点+考査外評価20点=合計] この結果を絶対評価で数字化しています。
2.考査外評価(1学期20点分)
アクティビティや活動、レポート、調べ学習、小テストをすべて点数化し、20点満点に圧縮した形で評価に入れます。
3. 自己評価
活動内容や取り組みについてルーブリック評価などを用いて自己評価をします。
4.他己評価
活動内容や取り組みについてルーブリック評価などを用いてお互いに評価しあいます。
5.リフレクションシートを評価
きちんと続けて反省することや取り組みについての見直しが主目的ですが、英作日記などに取り組んでいるかをチャックし、こちらからのコメントを記入し「A+、A、A-、B+、B」と評価をします。
Q 2.貴校では定期テストの出題形式は以前と変えていらっしゃいますでしょうか?
小野 全ての科目ではありませんが、この2~3年で出題形式は明らかに変えてきています。英語科全体として確かに変わってきましたが、特に自分が携わっている学年の英語の試験は大きく変わっています。
英語科全体のコンセンサスとして、訳読をしないという項目を確認しているため、試験に訳しなさいという問題は基本的に出しません。ただ暗記してきたものを解答用紙に書けば良いというような形のものも、なるべく出題しないようにしています。読解であれば、段落の内容をしっかりと理解できているかどうかを問うような問題です。
例えば、
・「その段落について、50wordsで簡潔にまとめなさい」
・「この本文を読んで思ったことを50words以上で書きなさい」
・「自分だったらどんな提案ができるか、述べなさい。」 等
勿論英語で答える問題もあれば日本語で答える問題もあります。また高校生の読解試験問題の設問はできるだけ英語での問いかけにしています。
文法の試験でも、
・「現在完了形の使い方について、中学3年生に説明をします。どんな例文を使って、どんな説明をするか、書きなさい」
・「have been to とhave gone toの違いを高校受験生がわかりやすいように、説明しなさい。」 等
英作は毎回文法問題に20点分入れていますが、
・「今回習った構文を使って、50words以上で日記を書きなさい。」
・「与えた助動詞をすべて使って、物語を書きなさい」 等
自分の感想や知識を書いてもらうため、写真や絵をいくつか出題し、その中から自分で選んで英作するような形の試験を取り入れています。
2.生徒に関する質問
Q 3.生徒の学力向上に成果が見られていれば教えてください。(具体的なテスト結果や外部模試の結果の比較など)
小野 昨年度の担当していた高校2年生32名(習熟度別クラス編成AコースとBコースを分けている中で、上から3番目のレベルの集団 A3コース)の中で、2016年度中に行われた英語検定の2級に合格した生徒が7名おりました。そのうちの4名はwritingセクションにおいて満点を取っています。
また2月に本校で実施しているGTEC for studentsにおいて、1年間での伸び率は1番。またReadingとwriting セクションにおいては、A2コースの平均値を上回りました。
模試の結果などと合わせると文法・語法セクションはA2コースには及びませんが、間違いなく毎日Reflection sheetに振り返りだけでなく、5-sentece diaryを書いていた結果です。
リーディングに関しても学ぶ内容に関して一時の記憶として暗記させるのではなく、印象に残るような活動を多く取り入れているため、1年で大きな伸びを見せてくれていると考えています。
GTEC for students / ベネッセ 2017年2月実施(伸びは前年と比較)
T | 伸び | R | L | W | WPM | 平均順位 | |
A1 | 604.7 | 35.7 | 236.3 | 242.2 | 126.1 | 115.2 | 14.3 |
A2 | 467.3 | 25.7 | 172.9 | 187.2 | 107.2 | 80.6 | 61.8 |
A3 | 476.4 | 37.7 | 173.6 | 185.5 | 117.4 | 80.1 | 57.5 |
B | 383 | 4 | 148 | 154 | 81 | 65 | 111 |
B | 380 | -13.2 | 144.9 | 150.8 | 84.3 | 63.5 | 110.5 |
B | 372 | 7 | 141 | 150 | 81 | 61 | 115 |
Q 4. AL型授業を推進する中で、テストの結果に限らず、小野先生が感じている生徒の成長など教えてください。
小野 現在教えている3年生の中に、3年連続して私のクラスという生徒が5人います。
最近の英作のテストでは、習った構文や熟語を意図的に使って作文をしようとし、意見を聞かれると、「合っている」「間違っている」という判断よりも先に、自分の答えを積極的に述べます。授業内でもわからない個所が出てくると、授業を遮り質問したり、いきなり席を離れることがあります。他の生徒たちもそういう生徒たちの姿を見て、「こういうやり方もありなんだ」と感じ、真似をします。
3年前、高校1年生だった頃の最初の1,2か月とは別人です。高校から入学してきた生徒たちばかり24人いましたが、皆かしこまり、怒られないようにとじっとしているだけで、男女が混じって話すこともなかなかしようとしなかったものです。
体育祭と中間試験を終えた6月頃からクラスに変化が生まれ、ペアと活動することも嫌がらなくなりました。2学期からは授業の最初に様々な活動をペアまたはグループで行えるように座席を毎回変えるようにしました。また、リフレクションシートを利用し、授業の振り返りを必ず取り入れるようにすることで、お互いを評価しあえるようになります。
この頃から一気に自分たちの意見を伝えるし、相手の言っていることをじっくりと聞く雰囲気ができ、たどたどしい英語ですが、意見を英語で伝える機会が増えます。
一番の転機だと思っているのは、映画を見た後で、そのワンシーンをペアで演じる活動を行った瞬間だった気がしています。普段おとなしい女子生徒までもが真剣な表情で相手の胸ぐらをつかみ、迫真の演技をします。
アメリカの学校で行っている「ドラマ」の授業をイメージして行っているものですが、生徒たちの変化を一番感じられた時でした。
この1年目が終わる3学期がまさに、最初の撮影をしていただいた「リンカーンのゲティスバーグ演説」の授業へとつながります。2年生になってメンバーがかわりましたが、1年次AL型の授業を受けてきた生徒たちが良いリーダーシップを発揮してくれたおかげで、初日から良い雰囲気で入っていけました。
さらに授業内ではあまり教え込まない授業を展開します。ただし、常に各自学習できるような教材は、学期の初めにすべて渡してあり、自分で学習していく習慣をつけていくことができるようにしています。
3年生になって受験に向けての学習が中心とはなりますが、今でも班は4人一組にし、機会があれば、「○○について隣の人と相談して」「グループで答えをチェックして」などお互いに教えあう活動を取り入れています。活発に意見が飛び交っているのをみていると、ものすごく成長しているのを感じています。
Q 5. AL型授業を行うとクラス作りや友人関係にもプラスの効果があるとお聞きします。小野先生が実感されていることがあれば具体的に教えてください。
小野 英語の時間は習熟度別のクラス編成のため、5つのクラスから生徒が集まってきます。また常に班員が変わるため、色々な人と交わる機会が増えます。ペアワークをする時も、「お願いします(Hello!)」から始まり、「ありがとう(Thank you.)」で終わるようにしています。
お互いの意見を言った後に、「頑張ってね」や「すごいね」などの評価をもらえると、生徒たちはとてもうれしそうな表情をしています。普段の生活の中で、あまり褒められることがないと生徒たちは言います。
そうであれば、この授業、HR、部活の中ではお互い褒め合える関係を作ってあげたいと思ってAL型を生かしています。男女の境が消え、どんな相手にも自分から声をかけられるようになっていく過程を見ていて、雰囲気作りの大切さを実感します。
また、5行日記などの課題の英文がイマイチつかみきれない時、廊下や階段、教室でお互いに確認している場面を見かけます。勉強の話題として取り上げてくれているのもありがたいことですが、分け隔てをせず共有している感じがあるので、そこはとても良いなと思う瞬間です。
3.授業等の工夫に関する質問
Q 6.グループワークにおいて、生徒同士でワークが深まらなかったりする際に行っている工夫など教えてください。また、グループワークにしてもペアワークにしても参加しようとしない生徒に対してどのような働きかけをしているのでしょうか?
小野 3年前、高校へ入学して間もない生徒たちに最初AL型を実施していた時は、全く押し黙ってしまい、時間がかかるかなと思ったこともあります。ただ、必ず初めての授業の時に、自分の経歴ややってきたこと、なぜ教員になったか、何を求めているかをしっかりと話すようにしています。
最初の時間に、生徒たちの目を少しでもこちらに向けることができれば、その後も間違いなく良好な関係が築けています。それはずいぶん前からやっていることですが、それを系統立てて、目標やルールを黒板に貼るようにしました。
そして、振り返りシートを毎日書きます。これらの部分だけがALという言葉出てきたことで、改善した部分です。
実際、この3年間では参加しようとしない生徒、またワークが深まらないという場面はあまりありません。難しいタスクで黙るようなグループがあると、ちょっと言葉をかけてあげます。「ねぇ、これはどう思う?」とか「こんなのだったらどうする?」と、こちらが誘導しすぎない程度に全員の気持ちを動かしていけるようにと考えます。
個人的に参加してない生徒がいる時などは、同じ目線にまで腰を落とし、「もう終わったの?」と声をかけます。教室を常にぐるぐると動き回り、できるだけ全員に声をかけられるようにと工夫はしています。
また、できるだけ腕組みをしないことも心掛けています。腕組みをしていると、こちらが構えているような印象を持たせてしまうため、生徒たちも心を開きにくくなるようです。
思ったようにワークができなかったとしても、その日のリフレクションシートの項目の1つ、「協働cooperation」の部分は「so-so」の評価が入るはずです。評価に「poor」を入れていないのは、生徒にマイナスイメージを持たせたくないからです。
ですから、「時には『so-so』の活動があっても良いよね」というスタンスを常に持っています。その経験もまた1つの学習活動として心に残り、同じような場面に出くわした時に、違った経験の生徒たちとグループを組んでいるため、また違った対応をお互いにしてくれます。
そういうプラスの面を考えると、やはり生徒の座席がいつも固定されている授業は、生徒たちの成長の足かせになってしまっているのではと思うことがあります。
本校の先生方には研修などで、「まずは隣の人と机をつけてみてください!そこからAL型はスタートできます」と、よく話をすることがあります。
そうすると、毎回新鮮さもあって生徒は違った顔を見せてくれます。特に男子1人、女子3人のグループなどは、本当にお互い面白いリアクションを見せてくれます。
ちなみに、私のクラスに来ると、こういう活動が多いことは知られているので、生徒も諦めて全員常に参加しています。読解をする時などに、少し眠そうな生徒もいますが、常に対面に生徒がいるため、堂々と寝る生徒はいません。
3年前の9月、他のクラスから移動してきた生徒が3人いました。夏休みも終わり、クラスの雰囲気がガラッと変わってきた時期であり、この中の1人の生徒はなかなかなじめない時期が続いていました。授業が終わって階段を下りている時に、つらそうにため息をついていたことがあり、話を聞いてあげたことがあります。
「今までのクラスでこんな活動をしたことがなかったし、人と話すのが苦手なので」とその生徒は言いました。私は「不安な気持ちを持ちながらも、毎日授業に参加してくれているんだね。ありがとう。なかなか慣れるのには時間がかかるかもしれないけど、1つずつで良いから自分が考え、できることをやっていこうよ」と声をかけ、その後も様々な活動に参加してもらっていました。
おそらく、かなり本人にとってはつらい体験だったのかもしれませんが、英作文力が高まり、遠慮がちではありましたが、自分の意見をきちんと相手に伝えられるようになりました。
それぞれの生徒が違うのですから、うまく参加できない生徒がいるというスタンスが私たちの側に必要ですし、参加してくれていることに、まず「ありがとう」という意思表示をしてあげて、さらに「もう1歩踏み出してみよう」「何かできることを1つやってみよう」と声をかけるのが良いと思われます。
Q 7.ホームルームで日誌の内容について褒め合うという取り組みが紹介されていました。褒め合う活動は、やり始めた当初は映像で紹介されていたように自尊心が高まる効果があると感じていますが、続けていくと「慣れ」が出て、効果が薄まるのではないかと考えております。
小野先生は、どのように継続されているのでしょうか?もしくは、一定期間褒め合わせたのちは、違う取り組みをさせているのでしょうか?
小野 確かに慣れが出てくると怖いと感じています。私のクラスは毎月席替えをします。毎月、周りのメンバーが変わるチャンスがあるということですから、話をしあうペアも1週間単位で交換しています。
今週は1列目と2列目のペア。翌週は1列目と3列目、その次の週は1列目と4列目、というように変えていくと、書いている内容も違いますし、同じペアに当たる確率はものすごく低くなり「慣れ」があまり生じない状況になります。
現在、高校3年生の担任をしていますが、毎日1行の日記を記入し、前日学習したことを記入しています。中間試験後は、じっくりと学習内容を見つめる時間を多くとるようにしていますが、自分が学習したことや部活での頑張りについてペアの子から褒められるのは本当にうれしいようです。
受験で少しでも良い結果を出させるためには、クラスの雰囲気作りも大事だと思っています。お互いの将来の夢、悩んでいること、困っていることなどを気楽に声に出せる雰囲気を作るためには、やはり朝の褒め合い活動は良いのかと思っています。
昨年1年間続けて行ってみましたが、修学旅行でもクラスのまとまりと仲の良さを感じました。
毎日やらされている感がでてくると、「慣れあい」になってしまいます。本校では朝のHR中は朝学習に充てているクラスが多いのですが、私のクラスでは、まずどうするかを生徒に決めさせてきました。
生徒たちは与えられた朝学習はやらないということだったので、こちらから1つ要望を出しました。それが「毎日日記を書き、お互いに話をする」ということです。もちろん日記を書くことに慣れていない生徒も多く、恥ずかしいと思っている生徒もいたはずですが、やはり誰かに認められるという体験は人を変えてくれます。
お互いに話が終わったら、必ず講話を入れています。その日の出来事や自分がみてきたことなど、様々な話を取り入れ、ここでも生徒との問答が続きます。注意や伝達だけで終わることのないようにと考えています。
そうすると1時間目の授業への向き合い方も変わってきます。「1日を頑張るぞ」という気持ちに少しでもなれるような工夫をしています。
Q 8.部活の指導について、小野先生がされているように、生徒たちに主体性を持たせて、自ら考えさせていく、という活動は、学校教育における部活動として、真にあるべき姿だと思います。
一方で、私学の場合、生徒募集の観点から、大会等で一定以上の成績を求められる部分もあるかと思います。その場合は、やはり従来型の、と言いますか、顧問やコーチが強いリーダーシップを発揮する方法も必要になると思います。
雑駁な質問ですが、どのレベルまでを目指すのであれば、生徒の自主性・主体性を尊重し、どのレベル以上を目指すのであれば、顧問が口を出す等の線引きについて、小野先生はどのようにお考えでしょうか?明確な答えは無いとも思っていますが、何かしらのヒントを頂けたら幸いです。
小野 テニス部の指導法でお話させて頂きますが、全くの初心者で入部してきた生徒にも、初日からボールを徹底的に打たせます。まずはフォームなどは気にせず、ボールを打つ楽しさを感じてもらいたいからです。そして楽しいと思えた生徒は次の日も、また次の日も練習に出てきます。
1週間くらい経ったところで、2,3箇所だけ気を付けたほうが良い部分を教えてあげます。1か月経った頃には1年生にも球出しをしてもらっています。もちろん上手にボールを出すことは難しいですが、いつも球出しをしてくれている人の気持ちを考えて欲しいからです。
1年目の生徒たちにはティーチングが確かに必要です。ただ教えるばかりではなく、上手な生徒の動きを観察したり、雑誌やビデオなどでも他人のプレイを見ることの大切さを教えます。
2年目3年目の生徒たちの練習は基本的に生徒たちでメニューを考え、練習をしていきます。ここからは、必要な場面でアドバイスを送ることを一番の目的にしています。コーチングを中心の時期です。
昨年私立中学校の全国大会に初めて出場できましたが、夏過ぎまでは球出しをしながら、アドバイスを送る機会を多くとり、新人大会が終わったころからは、手放してみました。
すると上級生に教えを頼んだり、自分で練習方法を調べたりするようになり、1人が頑張っている姿を見せると、もう1人がという関係が生まれ、相乗効果で全体のレベルが上がっていきました。
試合のスコアを生徒同士で記入させたり、お互いに声をかけることを第一にすることで、意識も高くなりレベルアップにつながったと思います。こうだと決めつけるよりも、生徒一人一人の成長段階に合わせてアドバイスの仕方、接し方を変えることは大切だと感じています。
試合で負けた後も、基本的に怒ることはしません。今日の試合の報告をさせ、負けた後でも今日の試合で良かったところを最初に確認し、そのあとで、ダメだった点を確認します。
その反省した事柄は、「テニスノート」に記入をします。普段の練習内容、もらったアドバイスなどを記入するノートですが、意識が高い生徒は、このノートもとても充実しています。
もちろん、他の人よりもうまくなりたいと思っている生徒は、自宅でも素振りをしたり、走っています。そういう生徒の努力はすぐに気が付きます。頑張っていることを、練習後のミーティングで取り上げてあげると、その生徒はさらに頑張ろうとします。
また隣の生徒も、「自分も」という気持ちが強くなると、影の努力を増やしていきます。言葉のかけ方、こちらからのアプローチの仕方で生徒は変わるものです。
ただ、今のような部活のあり方にして、結果を出すには6年かかりました。この6年間、心の持ちようや練習への取り組み方、技術的なことなどを話すようにし、できるだけ時間をやりくりしながら、少しでもコートに立つようにしています。そして、生徒とコミュニケーションをとるようにしています。
Q 9. Find!アクティブラーナーに掲載されていた英語の授業では生徒は辞書を使っていないように見受けられました。当校で同様の授業をしようと考えると、生徒の語彙力の観点から、辞書を使わせないと難しいのではと感じてしまいましたが、
(1)編集でカットされているだけで、実際は辞書を使いながら授業を受けている
(2)分からない単語は友達同士で聞くようにさせて、辞書は使わせないようにしている
(3)1年次や、年度のはじめのほうは使わせているが、徐々に使わせないように移行させている
のいずれで実施されているのでしょうか?
小野 語彙力を増やすためにも紙の辞書を利用することを常に奨励しています。学年が上がるにつれて、授業中にすぐ辞書を引く生徒の数は確かに増えてきましたが、全員が常に辞書を利用しながら学習する、という状況はあまりありません。
2年ないし、3年目の参加者は辞書を利用する率は高いと思いますが、今年から参加している生徒は今まで辞書を使う機会がなかったためか、あまり利用していない感じがします。
実際にはグループで常に授業をしているため、分からない単語に出くわした時にも、お互いに教えあったり、1人が辞書を持ってさえいれば調べることも可能なので、特別に辞書を使って学ぶ、ということにあまり拘ってはいません。
説明をしたい単語などがある時には、自分のパソコンからインターネット辞書の画面を映し出し、「こんな使い方もあるよ」と紹介し、情報共有をしたり、辞書で引いた画面をIPadで撮影し、電子黒板に投影することもあります。そういう形で紹介した単語の定着率は高いようです。
コミュニケーションで使用している教科書や問題集の単語に関しては、単語学習ツール「quizlet」で作成してあるものを利用するようにしています。ゲーム形式のものも含まれており、自宅学習教材として利用している生徒が多いです。
授業でも「今から5分で30個の単語を一気に覚えるよ」と呼びかけ、全員で必死になって覚える時間を取ります。自分で一つ一つの意味をチェックし、成句などまで調べてくれるのは一番良いですが、まずは読解をするための準備として、新出単語のチェックをさせたいと考えているので、「単語のイメージ化」を優先しています。
文脈や状況から語彙を想像していく力をつけたいと思っているので、すぐに辞書で意味を引くことよりも、考えてみようという時間を大切にしています。その次の段階は、分かっている人が教える。そこでも疑問が生まれた生徒は、自分で辞書を使って調べています。
Q 10. 「Who is he/she?」「HINTHINK」「TCT」「Add+add」など様々なヒントを頂き、さっそく活用させて頂いています。ただ、質問がございまして、同じようなワークを1年間通じて行われているわけではないと思います。
・それぞれのワークは、年に何回ぐらい行われるのでしょうか?
・これらのワークが効果的な年次やタイミングについてはどうお考えでしょうか?
・他の時期や学年でやられているワークがあれば、簡単で良いので教えて頂けませんでしょうか?
(入学間もない高校1年生には、~~という目的で、○○ということをやっている等)
小野 毎時間、何らかの活動をすることを基本コンセプトとしています。正直、試験範囲の教科書の内容を扱ったり、文法の説明をすることを主眼に置いてはいません。試験の1週間前になると一気に試験範囲の確認を含めて授業を展開しています。
英語を学ぶことの重要さは理解していますが、やはり学習に違和感を持ち、「なぜやるのか?」と疑問を持っている生徒、英語が嫌いという生徒は多く見受けられます。嫌いな状態でいくら色々なことをやっても、結局心を開いていない生徒には何も伝わらない気がします。
まずは、英語を学ぶことは楽しいという経験を積ませること。そして、身の周りの事柄を英語で考えていける「英語脳作り」を第一に考えています。
常にいくつかの活動を用意しておき、その日の生徒の様子や前授業で書き残してある板書の内容を利用して、さらに英語の授業として広げることもあります。
1つの活動にかける時間は長すぎると飽きてしまいます。大体5分から10分ぐらいでできるものを行い、それから本題に入ることが多いです。
効果的な時期というのは特に感じてはいませんが、試験前にやるのはあまり良くないかもしれません。それでも、私は試験前でも行うことが多く、また行事の直前などは生徒も集中できないことが多いため、なるべく活動系の授業展開を心掛けます。
【入学間もない生徒たち】
まずはペアになって自己紹介からスタートします。先生の紹介も英語で行います。
【2回目以降】
・ペアにそれぞれ課題を与え、1分で考え、相手に伝える
→リフレクションシート内の課題である日記の内容に関してお互いに問いかけをし、答えるというスピーキング練習は毎回実行しています。
・Who is he/she?
→ウォームアップとして週に1、2回利用。
・Hinthink
→季節や学校行事に合わせて工夫ができるので、かなり利用しています。
・Add+add
→ウォームアップというよりも、少しじっくり考えさせたいので、月1回でも良いでしょう。
・他にはドラマや漫画、映画のシーンを英作させる
→作ったモノを実際演じる。月に1回程度の割合で行っています。
・教員が一文ずつ英語を読み、その状況を絵にしていくというリスニング練習
→1学期に1,2回程度です。
・Quizletを利用したマッチングゲーム大会
→これは他の生徒よりも早い数字を出したいと思うため、緊張感があります。とても盛り上がるので、眠くなりがちな午後の授業で利用します。
・Quiz battle
→グループ対抗戦の単語テスト、英語に関する常識テストなどを月に2回ほど行っています。日本語から英語に直す、または英語から日本語訳を書かせる。利用するのはホワイトボードを使います。テレビのクイズ番組をイメージしてください。
列対抗で行う時は、1列目の生徒同士の対戦として、全員が答えられた列が勝者となります。この時もブザーを用意し、楽しめるように工夫をしています。わかっていないのにブザーだけ鳴らす生徒がいると、教室内にブザー音が響きますが、午後の授業は楽しくなります。
【高校1年1学期中間試験以降】
・文法の内容をそれぞれがまとめてきたA3の用紙を利用し、それぞれ重要なポイントを教えあう
→これは新出文法項目があるとそのたびに行っています。
・リーディング内容に関する調べ学習
→A4枚でまとめてくるのを週末の宿題にし、月曜日にグループ内で発表する。1学期に2単元ほどの内容を扱うので、だいたい1学期2回。
・教科書の未習内容の英文をいくつかに分け、グループで話の流れを作る
→これも新しい単元を学ぶ前に行うと、そのあとの理解度が高まるようです。
【高校2年生以降】
・ジグソー学習方法
→超長文を4つのグループでそれぞれ読みあい、グループで持ち寄り、設問にチャレンジしていくものを1学期に1回ほど行います。
・速読
→速読をする前に、Powerpointなどで作ったスライドから、その内容に関するインプット活動を行い速読にチャレンジします。答えの確認前にわからない単語などをチェックさせ、グループで答えを確認。そのあと、50語程度で内容をまとめます。週に1~2回。
・文法学習
→英語表現では文法演習が中心になるため、グループ毎に答えの確認をしあい、なぜその答えになるのかお互いの考えを伝えあう。そこでどうしても説明しきれない文法問題だけを取り上げ、生徒本人に説明をしてもらう。そのあとで補足説明を入れ、定着を図っています。
【高校3年生】
・英語で物語を読んで、その後を想像し物語を作り発表する。1年に1回。
・速読(2年生より頻度が増えます)
→速読をする前に、Powerpointなどで作ったスライドから、その内容に関するインプット活動を行い速読にチャレンジします。答えの確認前にわからない単語などをチェックさせ、グループで答えを確認。そのあと、50語程度で内容をまとめます。週に2~3回。
Q 11. Evaluation Sheetの活用について教えてください。毎回の授業で書かせた後は、どのように蓄積されていますか?
A:先生が集めて先生がまとめて持っている
B:生徒に返してファイリングさせている
Bの場合、それを試験前などのタイミングで振り返らせたりすることはありますでしょうか?そのときに、どのように振り返らせているのか等のポイントがあれば教えてください。
自校でも、Reflection Sheet、Evaluation Sheetを書かせようという活動をしていますが、書かせた後の効果的な使い方について、まだまだ改善の余地があると思っています。
小野 3年前はA4の紙に3回分の授業内容を記入していました。その時は、活動内容の確認とその日に習ったことを記入しているだけでしたが、夏以降には、授業を受けて自分が思ったことなどの感想を書くように変えました。
ファイリングさせていくことはなかなか難しかったです。紙を配っていく形をとると、どうしても無くしたり忘れてくる生徒がいたため、2年目からは冊子形式に変えました。
1週間単位で授業が振り返りできる形に変え、その週に学んだことを別の枠で記入するようにしています。後期からは、与えられたお題に対し、3行で自分の考えを書く自由英作欄を作りました。授業のウォームアップとして、この日記は大いに利用しています。
今年は高校1年生も3年生も、5行の日記を毎回書いています。このReflection sheetは週に1回提出してもらい、こちらからのコメントを入れるようにしています。
これを利用するようになって、生徒たちから「今日のここが良くわからなかった」とか「ここをもう1度説明して欲しい」「○○のプリントがやりたい」「この活動をしたい」など生徒たちの旬の要望が読み取れるメリットがあります。
コメントを入れるだけでなく、充実した振り返りになっているかどうか評価を端に書き込んであげます。生徒たちとのコミュニケーション手段の1つとして利用しているところです。
※小野先生のQ&Aは以上となります。...
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