概要
このクラスを良くしたい!
課題を見つけ、みんなで解決する。小学4年生の真剣な話し合いがスタートします!
「掃除の仕方を話し合いたい」
4年2組の子どもたちが自分たちで見つけたクラスの課題。
特別活動の時間で、みんなで話し合い解決策を見つけます。
誰かが意見に詰まると、周りの子どもたちから「がんばれ」と声があがります。
意見が対立する場面があっても、冷静に、第三案を探る姿が見えます。
誰かが困っていたらみんなで助けようとし、みんなで解決していこうという意識が常にあるというこのクラス。
どのようにして、クラスづくりをしているのでしょうか?
担任の白井先生にお話をお伺いしていますので、ぜひ特別活動の様子とインタビューを合わせてご覧ください。
また、当校は、東京都八王子市の特別活動の研究指定校であり、文部科学省の研究協力校。
学校全体で、特別活動を軸に学校を改革しています。
今でこそ、子どもたちは生き生きと自分の意見を言い、協力し合って学校生活を送っていますが、清水校長が当校に着任した当時は、「あなたは、自分にいいところがありますか?」 という質問に対して「あります」と答えた児童が18%しかいなかったそうです。
この数字は、東京都内、さらに、全国の学校と比べても、一番低い数値。
学級崩壊。いじめ。保護者からのクレームも多く、この状況を何とかしなければいけないと、清水校長は、特別活動を軸に学校改革をすることを決めました。
そこからどのように、学校は、先生は、子どもたちは変わっていったのでしょうか?
Q.今回の授業で学び取って欲しかった事
白井 亜紀子先生(以下、白井) 今までは「なんとか集会」や、お楽しみ会のようなことを決めることになれば、盛り上がって話し合いは進んでいました。ですが「自分たちの課題を見つける」という話し合いは、一度もやったことがありませんでした。
中学年から高学年になるに向け、委員会で話し合い、自分たちで学級の課題を見つけて解決し、学校のために働ける子に育ってほしい。今まで考えなかった方法を見つける力をつけさせたいと思い、今回の授業に取り組みました。
Q.工夫している部分
白井 まず、子どもたちが学級会に向けて話し合おうという意識を持つために、司会グループが毎日練習を重ねていることを目に見えて分かるようにしました。休み時間が終わっても、「まだやっているな」と。
最初は教室に戻ってきて騒いでいた子たちが、休み時間明けに「もう入っていいの?」と遠慮するぐらいに司会グループの意識が伝わっていきました。それを私が「司会グループがこんなふうに頑張っているよ」と帰りの会などで毎日伝えることで、みんなで一緒に進んでいく意識を持たせるようにしました。
課題の内容に関しては、私が掃除の時間に、時間を見計らってこっそり見に行くと、私の顔を見て掃除をやり始めるということがありました。そういった課題に子どもたちが自ら気付く場面を作るようにしました。
Q.先生が関わる割合
白井 1学期からずっとインプットして、少しずつ子どもたちに委ねていくというのが出来ればいいと思っています。ただ、自分はどこまで関わっていいのか葛藤はありました。
出過ぎて成長の機会を奪ってしまうのではないかと悩みながらやっていたので、1学期は「時間、見ていこうね」「次、進んだほうがいいよ」など声をかけて誘導して、うまく時間内に収め、子どもたちが達成感を得られるようにしていました。2学期になってからは、その声かけを徐々に少なくしていく感じです。
Q.児童が自発的に動けるようになるには
白井 今年は4年生にそのまま持ち上がりでした。そのため去年1年間もずっと同じような学級会をやっているということもあって、話し合いの流れや、クラスメイトそれぞれの話し方、リーダーの引っ張り方などはなんとなく子どもたちの意識の中にあります。今日は、皆さんが見に来てくださっているということもあって、いつもはなかなか意見が言えない子もとても意欲的に話をしていました。
学級会を始める少し前に、「みんなでやるぞ」という意識を持たせることで、司会グループだけに任せることにならないようにする、という思いは私自身も持つようにしています。
Q.クラスのムード作りについて
白井 例えば算数など他の教科でも、誰か1人でも分からない子がいたら、「どうしてこの考え方になるのか」ということを、自分たちの言葉で説明し合わせます。そして「みんなが分かってから次にいこう」という進め方をしています。そういった意味では、問題解決学習はどの教科でもずっとやっていることです。
だから特別活動でも同じように、誰かが分からないとか、詰まってしまった時にも、自然と助けようという言動が、どの場面でも見られます。学級活動や特別活動だけではなく、普段の学級作りの中でも、自然と良いムードが作られていると思います。
Q.先生の試行錯誤
白井 まず初めて課題を出させる提案授業という中で、みんなで話し合いたいと決めた課題が「掃除の仕方」ということでした。
ただ、掃除の仕方というのは、学級会よりも担任主導で扱うものです。子どもたちが話し合いたい課題だと初めて言ったことを、「それ違うね」と大人がカットしていいのかは悩みました。
ですが、最後はどうなるか分からないけれど、子どもの気持ちや、初めて考えて話し合いたいと決めたことを優先しようと思い、課題として選びました。
やはり苦しくて、本質から少し逸れていくのをどう立て直していいか分からないまま進んでしまった面はあるのですが、そこは試行錯誤の果てかなという感じでいます。
あとは、どうしても時間が延びてしまって、あれだけ長々とこだわってきたのに、慌ただしく「もう時間がないからいいや」と安易に決めてしまうことがないように気を付けました。
また、最初の1分間、隣同士で話して、発言に自信を持たせることは、今回の司会グループが考えた案でした。今まで、どうしても最初に静かになってしまって、その流れがぐだぐだと続いてしまうのが嫌だということから、新しく取り入れてみて、とても良かったことです。
そういう試行錯誤や、子どもの気持ちもくみながら、新しい良い方法を、私も一緒に見つけさせてもらっています。
Q.AL型授業の準備
白井 私自身が特別活動は専門ではないので、専門の先生からお話を聞いたりしています。
あとは、「これは面白そうだな」という子どもの呟きを逃さないようにしています。子どもが今何をやりたがっているか、ポロッと言った一言を、「あ、それ議題ボックスに入れてみたら?」というように導いて、放課後や日常の雑談からもどんどん話し合いに繋げていきたいと思っています
Q.今回の授業で欠かす事のできない要素
白井 まずは、司会グループの指導です。1週間かけて休み時間もなくやり続けるので、子どもたちの負担がとても大きいのではないかと思います。
遊びたいだろうし、今回だと持久走週間ということで、みんなは持久走大会に向けて走っている。自分も負けたくないから走りたい。でも、やはり司会グループとしても、しっかりやりたいという気持ちがあったようです。
その葛藤の中、私に相談することなく、司会グループをやりながらも、放課後に自分で走ると決めていたようです。私の知らないところでも、子どもたちは工夫しながらやってくれていたということを、改めて感じました。
また、司会がどれだけ頑張っても、教室全体の意識がついてきていなければ、良い話し合いにはなりません。ですから司会グループが直接言えない思いを私が全体に伝えるようにしています。
あとは、最初の導入を工夫することです。どうしてこの課題が見つかったのか、具体例を挙げて伝えています。
Q.AL型授業を通じた生徒の変化
白井 学級会で話し合って決めたことは、みんなで絶対に成功させようというのが、暗黙の了解になっているような気がします。
先日、ハロウィンパーティーを企画してやったのですが、どうしても盛り上がってくるとざわついてしまって、話を聞かなくなることがありました。ですが、司会以外の子たちから、「みんなで話し合って決めたでしょう」「司会の話、しっかり聞こうよ」という言葉が出てきました。みんなで決めたことだから、役割も分けて頑張ってきたのだから、成功させようという思いが自然と言葉に出てくる。
こちらがガミガミ言わなくても自分たちで言い合えるということに、変化を感じます。
Q.AL型授業で先生自身が得た事
白井 途中段階なので、まだまだ手応えと言えるほどのことはありません。友達が言っていることも分かるけど、自分の思いもあるという、そういった葛藤を大事にしてほしいと思います。
それを乗り越え、誰か1人が決めたことではなく、みんなの意見を大事にして、みんなで決めたことを守る。そこに学級としての面白みを感じます。安易に多数決で決めない安心の中で、決めたことをみんなで成功させよう、実践していこう、という気持ちは大事にしていきたいなと思います。
教師の研究や準備によって、子どもの意欲が上がっていくということは日々感じています。時間に追われて「これ以上出来ない」「ここまででいい」と手を抜いてしまったりすると、思っていたところまでは到達しません。結局、「もっとこうしておけば良かったな」と思うような結果に繋がることも多いのですが、そこは教師の側がどれだけやったのかということです。
子どもの顔を浮かべて「こういう対応をするだろうな、こんな反応をするだろうな」と、しっかり準備をすれば、子どもの意欲はどんどん伸びると思います。
Q.アクティブ・ラーニングの必要性
白井 国語や算数などの机上の学習で、授業を休んでも後から追い上げてどうにかなるものとは違います。良いところはもちろん、こんな嫌なところがあったと話し合って言えるようになるのは、生きていく上で一番必要なことではないかと思います。
それが、話し合いで解決できるとか、忍耐力にも繋がると思うのです。子どもたちが社会に出た時に、粘り強く生きていける。仕事を途中で嫌になって辞めるということには繋がりません。
人間関係で悩んで、苦しい思いをしないためにも、今こうやって色々な課題にぶつかった時に、みんなで解決することを学ぶのは、とても大切ではないかなと思っています。
Q.児童たちへの期待
白井 「主体的にやる学級会が好きだ」と思える児童に育てたいと思っています。私自身も不安の中でやっているということもあって、今日も司会グループが何度も私の方を見て不安そうな顔をしていました。教室の子たちが発言するときに私を見ないようになり、「先生、そこにいたの?」となることが理想です。
先生の存在を忘れるくらい、学級会に熱中し、学級会が好きだと言えるような、そんな子たちにしたいと思っています。
Q.AL型授業を行う先生たちへ
白井 アクティブ・ラーニングや、話し合い、そういう取り組みは楽しいですよ。準備が大変で、なかなか失敗も多く、思った通りに進まないことの繰り返しですが。流れに乗って、分かってくると教師も児童も一緒に楽しめる、そんな教科ではないかなと思います。...
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