授業を行う上での注意点や事前準備
この動画から学べること
概要
どうすれば、50分間生徒を授業に向かわせられるのか。
1年前までの澤幡先生は、「聞く」「書く」が中心の一斉授業を展開されていました。
その頃は、「生徒が授業を最後まで聞く」ということに心を砕いていたそうです。
しかし、ある学校での授業見学をきっかけに授業スタイルを変え、今では、生徒たちが授業中に話をしていると、「うれしい」と感じたり、「安心感」を覚えるようになったそうです。
生徒たちの話の内容が、授業に関係のない話から、授業の内容についての話し合いや疑問提起などに変わったのです。
実際に生徒に話を聞くと、 「(最近)ちゃんと勉強しようっていう気持ちがわいてきました」「授業はメリハリがあって、楽しい」 と言います。
澤幡先生は、どのように授業を変えたのでしょうか?
ポイントは時間設定のルールにありました。
これまでの試行錯誤の中で、うまくいったこと、うまくいかなかったこと含めインタビューでお話しいただきました。
<生徒をどのように育てたいか>
澤幡泰広先生(以下、澤幡) 学校によって実情が違うと思いますが、本校はそのまま社会に出て社会人になる子が多いので、社会に出た時に通用する、一生懸命働ける生徒になってほしいと思っています。
例えば今の工場労働は、言われたことをただやるだけの単純作業で済んでしまう部分があると思います。しかし、やはり昨今言われている通り、これからの時代はAIの発達によって、そういった仕事も段々なくなってくると思っています。
その中で、自ら主体的に動けるような、コミュニケーションを積極的に取れるような生徒を育成したいと思い、授業を設計しています。
<生徒の現状>
澤幡 今日は、特にグループを作らず自由にやってもらったのですが、時にはグループを作ったりします。そのグループは、いつも同じではなく、ランダムで席替えをして作っています。
同じクラスでも40人もいれば、仲の良い悪いが出てきます。最初は、仲の良い友達同士で集まっていたことが多かったのですが、この授業の中で、普段話せないような子とコミュニケーションを取ることができているようです。
嬉しかった、楽しかったという感想を抱いている生徒も少しずつ出てきたので、色んな意味でのコミュニケーションが少しずつ取れてきているのかなと感じています。
ただ、やはりこういったグループ活動で、どうしても自分は一人で黙々とやりたい、という子も出てきてしまいます。
そういった子たちと、どうアクティブ・ラーニングとしての本来的な目的を合わせていけばいいのかなと悩みながら、今やっているところです。
<授業で工夫しているところ>
澤幡 今日はペアワークを取り入れました。どうしても、「自由にコミュニケーションを取ってごらん」と言っても出来ないところが多いと思うので、これをやるという形はこちらで決めた問題をお互いに出し合ってもらいました。
そういった中から少しずつコミュニケーションを取れていければいいのかなと思っています。今はいきなり4人5人のグループではなく、まずは2人組でやってごらんという形でやってみています。
<入学当初の生徒の様子>
澤幡 やはり最初は、戸惑っている子が多かったです。例えば今日のように、「じゃあ、お互いに意見を教え合ってごらん」「他の人の意見はどうだろう」とやってみても、結局誰も動かずに、個人作業だけで終わってしまうことがありました。ただ、そこから一人動き出す子が出てきてくれたので、周りも「じゃあ、これでいいのか」と少しずつ広がっていきました。
<生徒が動き始めたのはいつ頃からか>
澤幡 4月の当初はなかなかうまくいかなかったので、毎回授業の目的と、授業終わった後に「本当はこうしてね、こうしていきたい」という講評を、生徒に伝えていました。
ただ、ペアワークを取り入れたりしていたので、生徒が動くようになるまでそんなに時間は掛かりませんでした。4月の間には、少しずつ動き出す子は出てきましたね。
<アクティブ・ラーニング型授業を始めたきっかけ>
澤幡 昨年度、3年生の歴史・日本史の授業を持っていたのですが、どうしても勉強に対して積極的ではない子が多く、50分間どうやってこの子たちを授業に向けさせようかなと考えていました。
教員になってからずっと、映像や話し方、プリントの内容など色んなところで試しながらやっていましたが、うまく行く時とうまく行かない時の差が本当に激しかったのです。
何かないかなと思った時に、昨年度のある学校さんの授業公開で、このアクティブ・ラーニングに出会いました。その授業を見て、「あ、これは良いな」と感じたので、そこから取り入れてやっています。
(Q,昨年のいつ?)
澤幡 10月ですね。昨年の10月の時の出張で、初めてアクティブ・ラーニングの授業を見ました。
<それまではどのような授業だったのか>
澤幡 基本的に一斉型の授業でやっていました。特にグループを作ることもなければ、席を移動することもないですし、基本的には、「聞く・書く」の作業でしたね。
<アクティブ・ラーニング型授業を始めた頃の授業の進め方>
澤幡 まずはプリントを作って、生徒に「なぜこれからこういう授業をやるか」ということの趣旨を伝えました。「3年生だし、これからみんなが社会に出て行くうえで、先生はコミュニケーション能力や主体的に動く姿勢を身につけてもらいたい。だから、これからの授業はこうするね」と言って始めました。
最初はプリントの穴埋めをみんなでやってもらうだけでした。それから、今までは私が板書していたのを、みんなに板書を書いてもらいました。特にペアやグループになるのではなく、まずは個人作業中心でやりました。
アクティブ・ラーニングかと言われると、そういうことでもなかったと思いますが、今までと違う、何か生徒が自分でやることを取り入れてみようとしたのは、昨年の10月からです。
<アクティブ・ラーニング型授業を始めた当初の生徒の反応>
澤幡 特に生徒のほうで戸惑う様子はなかったので、最初は毎回1つのテーマ・課題を設けて、「この課題を考えてみよう」というのを少しずつ取り入れました。ただ、「いま何をやったらいいのか分からない」「協力しようにも、自分がもう出来てしまったから、これでもういいや」と思ってしまう生徒が多かったようです。
そういった部分では、生徒も私も、昨年度はなかなか形が確立しないまま、試し試しでやっていました。
<3月になるまでに授業はどのように変化したか>
澤幡 50分間の授業全部をアクティブ・ラーニングでグループワーク、というところまでは、私はまだ全然行っていないです。今までと同じように、一斉型の講義形式を取り入れながら、例えば最後のまとめの問題を、今日のように2人で問題を出し合って共有してもらいます。
また、今日も書いてもらいましたが、「自分はどういうことを今日の授業で分かった」「こういうことを疑問に思った」という最後の振り返りも、一言だけの時もありますが、お互い共有してもらっています。
それは、昨年度の3年生にとって、まず導入として良いかなと感じましたね。
<それは試行錯誤の中で出来上がっていったものなのか>
澤幡 生徒は、やはり問題を出し合うのが楽しいのだと思います。だらだらとやってしまうと駄目なので、「この時間で確認してごらん」「何分で問題出し合ってごらん」と時間を区切りました。そうすることで、「この時間はこれを何分間でやればいいのか」と道筋がはっきりして、生徒が活発的になったと思います。
<授業の中で上手くいった工夫>
澤幡 正直、今の私の段階が勉強中なので、本当にうまくいったと言えることは多くないです。ただ、先ほども言ったように、時間を区切ってやっていくことは良いのかなと思っています。
今日は使っていないですがタイマーを使ったり、電子機器でスクリーンにタイマーを投影して、いつでもこの時間を確認しながらやったりすれば、メリハリがつくなと感じています。
これからもどういう形であれ、時間を気にするということをやっていきたいなと思っています。
<ワーク時間を決める時のルール>
澤幡 特にはないのですが、例えば今日ペアワークは1分、最後の振り返りの時間は5分を少なくとも取りたいなと思っているので、残り時間を確認しながらやっています。
ただ、例えば課題のワークをしていても、15分以上の時間は取らないようにしています。仮に15分経って、生徒が少しだらだらしてきたなと思ったら、そこで終わってない子がいても延長せずに、1回区切ってリセットさせるなどの意識はしていますね。
(Q,終わっていなくても一旦区切りをつける?)
澤幡 はい。ただ、その終わってない子には、「後で時間があるから、そこでやってみようか」と言います。なるべく15分を目安に、一旦気持ちのリセットをできるようにしていこうかなと思っています。
<授業でうまくいかなかったこと>
澤幡 今日もそうだったのですが、みんなでやる時と、50分の中でやる時は、かならず講義の時間を何分間か入れています。1学期の時は、最初に講義をして、その後プリントをやるというのが中心でした。ただ、最初に講義をしてしまうと、生徒のほうで答えが出てしまい、今やったことをただ次ワークで繰り返すだけなので、何も疑問点が生まれないと気付きました。
2学期からは、最初に5分ほどの簡単に説明をした後、「こういうのはあるけども、どうかな」「今日のプリントはこれについてやってみよう」という形でワークを先にやってもらうようにしました。
そのうえで、「今日の内容をみんなでおさらいしてみよう」と言って講義をしました。そのほうが、いま話を聞いている内容が、「いま自分がやったことだ」「これでいいのだな」と自分自身に納得した上で、講義を受けることができると思います。
そういった部分で、1学期と2学期の違いがあります。どのタイミングでこれを入れればいいのか、今までの講義は少しどうかなと思ってしまうところはありますね。
あとは、この授業は他のクラスでもやったのですが、クラスやその日の時間によって、生徒の反応が全然違ってきます。
同じ内容でも、このクラスではうまくいったが、他のクラスでやったらなかなか生徒が動かなくなってしまった、と思うところは今もあります。私はそれを次どうやっていこうか、次のステップに進むにはどうしたらいいかを模索している段階です。...
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