概要
「絶対にできる」と生徒を信じて任せ、まとめプリントも生徒たちが自分でつくる英語授業。
岡崎先生は、以前はオールイングリッシュの授業を実践されていたそうです。
しかし、実現は難しく、何とか授業を成立させたられたものの、一時間目から放課後まで一度も職員室に帰らずに英語が苦手な生徒を捕まえて指導して、やっと、全員が英語を話すことができたそう。
一定の成果は得たものの、そのやり方は、他の先生には広げられませんでした。
そして、岡崎先生も、一クラスだけならできても、クラスが増えるとどうしても数人、分からない子が出てきてしまう……。
3年前に、「分からない子を先生が見るんじゃなくて、生徒みんなで見る」という考え方に出会い、以来、生徒を信じて任せると授業に変えたそうです。
今回取材させていただいたのは、単元の終わりの授業と、その後のまとめの授業。
単元の終わりの授業では、習ったことを使って生徒同士が自己紹介をしあい、自分たちでおさらいしていきます。そして次のまとめの授業では、生徒一人一人が自分のまとめプリントを自分で作ります。
分からないところがあると生徒同士聞きあって、教え合い、全員で授業のめあて達成を目指します。
成績もしっかりと伸びるという授業設計の全体像や、生徒たちの力をここまで信じられるようになった背景など、岡崎先生にお伺いしましたので、ぜひご覧ください。
Q.『英語』という教科を学ぶこと
岡崎 正則先生(以下、岡崎) 英語を学ぶことは、失敗をする能力を身につけるということです。これからコンピュータが主体の世の中になると思いますが、コンピュータに出来ないことは、失敗することです。間違っても構わないからどんどん言ってみるという姿勢を学ぶのに、英語は最高のツールだと思います。
また、コンピュータやスマホが普及していると言っても、相手の会話を遮って、いちいち英単語を調べながら伝えるのはおかしいです。「英語で会話する時は、間違ってもいいからどんどん話すべき」という点で、英語は学ぶ価値が非常に高い教科だと思います。
私自身、半年間海外に行ったとき、最初は、「英語を話すときは間違ってはいけない」と思っていました。「正しい英語を話さないと、相手に分かってもらえないのでは」と思い、2ヶ月ほどほとんど話ができない状態でした。
しかし、いろいろな話をして「なんだ、これでいいんだ」と分かってからは、英語を話せるようになったという経験があるので、「とにかくどんどん間違えましょう」という方針です。英語は、他の教科にも通用する、「ここは学校という、間違っていいところなんだよ」ということを、とことん教えられる教科です。
英語だけでなく、学校全体で「間違ってもいいんだよ」「間違えながら、そのままにしないで、次伸びようね」と教えたいです。「1回転んだら、立ち上がろうよ」ということを学べる教科だと思うと、英語も面白いと思います。
Q.今日の授業で生徒たちに最も学び取ってほしかったこと
岡崎 一言でまとめると、「先生がいらなくなる力をつける」ということです。自分で英語を学ぶ力をつけてほしい。要するに、学んだことを、自分で取り入れて、自分でレベルアップできるやり方を学んでもらいたいです。
段々レベルが上がってくると、ディズニーの話や「ラブライブ!」の話など、自分の興味深い話でALTと話し続ける子が出てきます。自分の興味あることを使って学べるようになったとき、先生は要らなくなります。今は皆同じような内容の授業で、スタート段階を学んでもらっているところです。
Q.前後の流れを含め、授業の進行を教えてください
岡崎 「英語は技能教科である」とよく言われますが、私もそう思います。例えばテニスに当てはめてみると、「今日はサーブをやろう」「サーブを教えたから、次は大会に出よう」「今日はバックハンドをやろう」「バックハンドを教えたから、大会に出よう」という教え方はよくありません。
技能を高めるためには、サーブを覚えたら、次の練習でもサーブをやり、バックハンドを覚えたら、次はサーブもバックハンドもやるというふうに、何回も続けないといけないと思います。
教科書のユニット4では、助動詞をやります。「have to」「will」「must」「must not」を学びますが、「今日はhave toを教えました、以上。あとはテストで」ではなく、「have to」を覚えたら次の時間も、その次の時間も繰り返すのが技能教科ではないかという考えです。
今回は「will」や「have to」でしたが、生徒の作文を見ると「be going to」や「call」など、前に学んだ単語が色々入っています。短い期間でなく、3年間の学習内容を反復しながらレベルアップしています。今年はフルにアクティブ・ラーニングでなく、一斉授業形態もやっているので、一斉授業で1回教え、学んだことを周りで共有するというように進めています。
新しく学んだ内容は、自己紹介に入れて、何回も復習してもらいます。最初の5分間で、「さあ、自己紹介をやろう」と練習して、発表してもらいます。友達が新しい文法を使っているのを見ると、「あ、こんなふうに使うんだ」と学ぶことができます。たまに、高校英文法を入れる生徒もいるので、ALTも生徒もびっくりして「え?」「ちょっと教えて」と学び始めて、仮定法過去もみんな使えるようになる、そんな世界が待っています。
Q.自己紹介文の作成は単元の最後に入れるのですか?
岡崎 だいたい最後にまとめて入れます。ただ、その自己紹介文作成の時間が、ユニットごとにあるので、その時間帯に使えそうな文法をノートに書いておきます。例えば、メロンパンが好きという子がいて、「must」も「will」も「have to」もメロンパンを使って英作文を作成していました。「自己紹介に4つの助動詞を入れろ」というと、「メロンパンが好き」というすでに作ってある英文を参考に、スムーズに使うことができました。
自己紹介入れることができたら、毎時間のユニット4の復習では発音するたびに理解できるということですよね。テストでも、自己紹介の問題を出題します。自己紹介の英文が書けると、テストで点数も取れるし、スピーキングもできるし、高校入試にも役立ちます。
途中でいろいろな話を入れてしまうので、単元ごとにだいたい5~6時間かかっています。やはり分からない子がいると、ゆっくり教えてしまいます。
Q.教科書をこなすので精一杯で、AL型授業をやっている余裕はないという声を聞きますが、いかがお考えですか?
岡崎 本当はすべてアクティブ・ラーニングでやったほうがいいです。時間内にそのまとめも自己紹介文も全部やるようにと動くときには、アクティブ・ラーニングの方が進められます。一斉でやると、どうしても分からない子を放っておかないと進むのが苦しいはずです。
教科書を進める人は、そこを見逃しているか、無視しているか。私の学校は、目をかけなければいけない生徒もいるので、アクティブ・ラーニングの方が進んでいるのだと思います。
できない子をそのままにして進めているか、できない子に目が向いているかという根っこのところで、この質問をする人としない人が分かれると思います。質問した時点で、「ええ?そんなに余裕がないの?」と。「あなたの教えはそんなに強烈か?」という突っ込みが入ります。
先ほどお話したように、私は元々一斉授業をやっていましたが、全員が英語を話せるようにして、英語だけで授業をやらせました。その授業内容を県大会などで実際に見せても、同じ授業をやる人がいませんでした。それは何故かというと、授業ができる状態にするまでにやらなければいけないことがたくさんあるからです。
私は、英語ができない子を、放課後や休み時間につかまえて、ずっと教えていました。いくら生徒の英語の成績につながるようになっても、職員室に戻ってくる時間もまったくない教え方を、他の先生に強要できず「この方法は他の先生には使えない」と思いました。
自分だけでなくて、やはり英語で苦しんでいる他の先生方も助けなければいけないし、小学校で英語を教える人はさらに辛いはずです。私も英語を話せませんでしたが、そうした人にも、「英語だけで話せ」と命令が下る形になっているので、それはおかしいと思いました。しかし、先生が英語を話せなくても、生徒がすごく話せるようになることに驚きました。
自分を乗り越えていく生徒をいっぱい見てからは「先生が英語を話せない」ということは、まったく関係ないと感じました。怒られるかもしれませんが、「英語の時間は英語だけで」というのは、成績の良い学校で出世した先生が言っているのかなと思います。
前の学校では、朝から放課後の部活終わるまで職員室で席に座りませんでした。休み時間もずっと分からない子に教えて、やっと英語の授業が成立していました。
Q.基礎学力が高くなければAL型授業はできないという声を聞くことがあるのですが、いかがお考えですか?
岡崎 基礎学力を上げるために、アクティブ・ラーニングをやれば良いと思います。人間関係も良くないとアクティブ・ラーニングができないと言いますが、人間関係が良くなくてもできると思います。みんなでやろうと言って動いているとき、成績が下がるわけがなく、人間関係が悪いわけもありません。
自分でもうまく説明できないので、授業を見てもらうといいのですが。個人的には、今日、非常に気持ちいい空間でした。授業終わって「楽しかった」「楽しかった」とみんなから言われると「良かったなぁ」と感じます。授業終わった時にみんなが「楽しい」と、休み時間にもう一度英語を使うことが増えたのがうれしいです。これでこそ、基礎学力が上がると思います。
いつもは、もう少しうまくできません。「できるかなぁ」と思って作った課題を楽々達成したので、生徒たちは、実は基礎学力があるのだと思います。本来の力を出すための1つのモチベーションが、今日の撮影でした。いつもできなくて困っている子たちもできたので、本当に感謝しています。
私がいくら「やろう」と言ってもやらないのですが、撮影があるとスムーズにできました。どんどん見てもらうことが大切なので、「参観授業、良いですよ」と言いますが、先生方も参観授業があると言っても、見に来ないです。やはり、アクティブ・ラーニングという言葉にまだハードルがあるのだと思います。先生方は新しいことするのがあんまり好きではなく、怖がるというか、保守的です。
授業内容を見てもらえば、印象が変わると思います。私も青森の長者中学校を見に行き、「日本にこんな学校あるんだ」と衝撃を受けました。その話を学校ですると、「そんな学校あり得ないじゃないか」とぶつかってしまうので、授業を見てもらう機会を徐々に増やしていくしかないと考えています。授業を見てもらうと生徒も楽しく、先生も楽しく、成績も上がります。
今日は、カメラが入ることによって、生徒の準備も以前とまったく違い、課題が簡単すぎるという結果に終わってしまいました。これは、嬉しい失敗ですので、もっと授業を見てもらいたいです。見てもらうことによって、生徒が、「あ、自分はこんなにできたんだ」と実感してもらえたら、どこに転んでも良い結果になります。
「私はこんな授業しかしていません」「私は人に見せられる授業ではないです」という先生がたまにいますが、授業参観は先生を見るのでなく、生徒を見るものです。生徒には力があると信じ、どんどん見てもらって、先生自身も「生徒はこんなにできるんだ」という思いをもっと深めてもらえればと思っています。
Q.今日の授業に至るまで、どのような試行錯誤をされてきましたか?
岡崎 最初は英語だけで授業をするというのを目指し、ある程度の成功をしました。英語だけで授業をして、県大会で見せ、生徒全員が参観に来た先生方と英会話をして、話せることを見せてから授業始めるというのをやってきました。
そこで「今の授業のやり方は自分にしかできない」ということが分かりました。放課後も生徒に付き合ったり、準備をしたり、内外からの苦情に対応したりという困難を超えていかないと、授業ができません。「絶対に粘ります」という性格でない限り、どこかで逃げてしまい、授業スタイルが広まりませんでした。
自分だけでなく、他の先生方および小学校の先生、生徒もみんなできるようになってほしいという目標を掲げていたので、これではダメだと気づきました。1クラスであればなんとかできても、3~4クラスを掛け持ちすると、どうしても1人2人ついていけない子が出てきます。英語で話していると、何を言っているか分からないという顔つきする子が出てきた時に、その子に目線が行くと、どうしてもダメになってしまいます。
放課後学習にも付き合いましたが、人数が多くなると、1人2人は助けられても、10人は助けられません。必ず、クラスに2人くらいずつ分からない子が出てきて、「どうしようかな」と思った時にできたのが現在の授業のやり方です。
先生が分からない子を1人見るのでなく、みんなで見ようとすると、先生とうまく話が合わない子でもできるようになります。結果的に全員ができるようになって、こちらも気持ちが良いです。「先生のおかげで」と言われなくても構わないので、今はみんなの成績が上がってきていることがハッピーです。
Q.この形の授業を導入されたのはいつごろからですか?
岡崎 「みんなで話をしよう」というスタイルは、最初からやっていたので、けっこう長いです。紹介を受けたのは3年前です。知り合いの先生から、「こういう授業のやり方があるよ」と言われ、実際に集まりに行ってみると、妙に話が合い、「今の授業スタイルがもっと良くなるんだ」と始めてみました。
やり始めてみると、やはりうまくいかないところが出てきます。その時に、「今はこれで困っている」と言うと、仲間は、「この先生に聞くといいよ」と紹介してくれます。すぐメールを打ったり、電話をしたり、「どうしたらいいですか?」と尋ねると、すぐ答えが返ってきます。
具体的に「ALTの扱いはどうするんですか?」とか、「授業計画はどうやって立てたらいいですか?」と質問をすると、先生から返ってくる一番多い答えが、「もっと生徒を信じなさい」でした。そして最終的に行き着いたのが、「じゃあ、見ていよう。信じましょう」という結論でした。この生徒たちは絶対できると思い込んでやったら、やはり以前よりうまく進みました。
頭の中に、「この子たちはできる」という信念を持つと、生徒は本当にやってくれます。逆を言うと、信念がない人には「できないのでは」という不安があります。「大丈夫、この生徒たちは全員できるから」という考えを持ち、スムーズに進行すると信じて進めています。
Q.その信念を持ちながらも、「もっと教えたい」ともどかしくなることはありませんか?
岡崎 昔はやはり、教えたい気持ちが強かったです。その根っこには、「感謝されたい」というような、欲があったような気がします。ただ、欲を満たすことよりも、生徒が成長していくほうが圧倒的に気持ちいいです。
前の学校で教えていたことで、「ここまでやらないとダメだ」ということや、必ず手から漏れる子が出てくるということも知っています。違う方法でいくか突き進むか、どっちかしかないという時、全員がハッピーになる方で進めるので、気持ちは固まっています。
とことんやらないと、信念は分からないかもしれません。私の力では、朝、学校に行って、放課後に部活が終わるまで職員室の机に座らないレベルまでやっていても、できないことがあったので、これ以上は無理かなと思っています。
Q.より良いAL型授業の実現に向けて、普段からどのような努力をされていますか?
岡崎 お金の話をすると「汚い」という感覚を持つ生徒がいて、高校の先生でも、就職した後の金の話はしないと聞きました。つまり、生徒たちは社会に出てから「お金ってこういうものなんだ」と分かります。それはけっこう大変なことですので、授業だけでなくて、社会の流れなど、いろいろな情報を得るようにしています。一度、「なんで金の話をするんだ」という苦情が来たこともありますが、めげずに続けています。
また、できるだけ色々人と付き合うようにしています。学校の先生だけでなく、外部で社長さん方とお話をするようになると、自分がどれだけ小さいことをやっていたのか知るようになりました。外部の集まりに行くと、落ち込んでばかりいます。そこで考え方を聞くと、「そうなんだ」と思うこともあるので、学校だけでなく、いろいろな情報を学ぶように気をつけています。
本も、気になったタイトルは全て買い、1日1冊読みます。いま面白いなと思っているのは、歴史の本です。あとは、百田さんの雑談の本も面白いです。この前は、生徒が「大学を辞めて起業するんだ」と言うので、「応援するよ」と言ったときに紹介された起業関係の本が、非常に面白かったです。
人から勧められた本は全部読んでみて、面白かったら読み続けるし、面白くなければ「考え方が違うんだな」と感じます。雑誌もとりあえず、表紙を見て、良さそうだと思ったら手に取りとりあえず情報を入れて、いい情報だと思ったら生徒にも伝えます。
Q.生徒との距離感はどのように形作っていますか?
岡崎 慣れてくるとバカ話もするし、まじめな話もするし、「先生は偉いんだ」という感覚は消えました。目の前にいる生徒のほうが、有能だという感覚です。
何の記録でも、いま新記録が出ます。「生徒たちは必ず俺の上を行く」という感覚でいるので、あんまり「自分が上だ」という感覚はないです。私は抜かされる存在で、実際に抜かされると、「ああ、やっと行ったか」と感じます。「先生、私、将来、必ず本を書くから。その本の著者名を見てびっくりさせてやる」と言う子とは、握手をしました。
Q.その感覚はAL型授業を始めたから得られたものなのでしょうか?
岡崎 途中からですね。そんな考えを持っていたから、アクティブ・ラーニングに行き当たりました。たぶん、「俺が偉いんだ」というモードになっていたら、ぶつからないかもしれません。
「俺の言うことを聞け」というのは、どちらかと言えば一斉授業の形態だと思います。だから、方法よりも心のほうが壁になっているのではと思います。そこは残念ですが、先生方のモチベーションの1つではあるので悪いことではないと思います。
Q.AL型授業を通じて生徒たちに教えられたことはありますか?
岡崎 アクティブ・ラーニングも、英語も、部活も、「ここまでうまくなっちゃうの、ここまでできるの」という、想像を超える生徒が、たくさん出てきます。
自分が教えていても、そこまで行かないと感覚で分かります。部活では顧問をやりますが、必ず部長に引っ張らせて、歩く時も必ず後ろを歩き「自分が教えたらこれより下になる」と思っています。
昔から、生徒たちに任せたほうが絶対に良い結果が出ます。アクティブ・ラーニングも同じで、「そんなうまい教え方もあるのね」と、ちょっと頂戴して、一斉授業で使うこともあります。
Q.AL型授業をするにあたり、絶対に欠かすことのできない準備は何でしょうか?
岡崎 心の準備です。細山先生や西川先生が言うように、「生徒を信じろ」「絶対にできるから」という、これが一番の心の準備です。陰で「こいつはできない」と言うのではなく、「絶対にできるから」と信じなければいけません。実際に「もう無理だ」と考えていたのが、ひっくり返るシーンを目の前でたくさん見ています。
「この子たちはできる」という心の準備ができれば、アクティブ・ラーニングは成功すると思います。逆に言うと、引っ掛かりがある人は、まだ準備が足りていないと思います。
Q.AL型授業に取り組むようになってから、生徒たちの学びに向かう姿はどのように変わりましたか?
岡崎 下位群が圧倒的に変わりますね。英語でする授業は、やはり下位群の子にとって苦しく、分かった振りをするのに一生懸命という感じです。今は、分からない時は「分からない」と言えるようになってきました。
最初は、分からないけども分かった振りをするという壁があります。それが取れれば、下位群は動きます。私自身が、分からなかったら分からないとすぐ手を挙げる人なので、「移ってきたかなぁ」と感じます。これまで、自分は分からない時は「分からないです」とすぐ聞きながら、授業の時に「これはこうだから、そのまま覚えろ」と教えるのは違和感がありました。
分からないなら「分からない」と言うことがすぐできるようになったことで、下位群が動いているのを見て非常にハッピーです。クラス全員が動くようになったということです。できないと困っている子がいなくなりました。
Q.生徒に聞くと、授業だけではなく学級会や部活などにも影響が波及しているとの声が聞かれたのですが?
岡崎 青森の長者中学校は本当にその通りです。朝の会から始まり、授業中も給食も掃除も全部、静かな中にも落ち着きがあって、みんな仲が良いのが、外から見ても分かります。素晴らしい学校だと思いますね。
英語を教えながら、やはり朝の会もクラスも部活も全部同じく、同じ目線でいたいと思っています。私が手出しできるのが英語科だというだけで、学校全体を見ているという気持ちはあります。部活も同じく、1人も見捨てずやっております。
Q.要領の良い一部の生徒が主導権を握り、その他の生徒の学びが深まらないという声がありますが、どうですか?
岡崎 学びが深まるのは教える生徒だと思いますね。教えてみようと思っても出てこないことはけっこう多く、やはり私自身も教えようとする時に、「あれ?」と思う時があります。
その時に、適当な気持ちだと「まあいいや、暗記しろ」という教え方になりますが、しっかり教えようと思うと、教える側も勉強し直す必要があります。これが、深まりだと思います。
一方的に話されるだけで考えが深まるというのは、その時点で、話がすれ違っているように感じます。中位群は教えてもらったことを、今度誰かに教えることによって、またそこで考えが深まります。1回聞いて考えが深まるなら、「どのくらい素晴らしい説明をしているのか」と感じます。「その素晴らしい説明で何人が分かるのかな?」という感覚があります。
一方的に聞くだけでなく、みんなと話したほうが深まると思います。一番考えが深まるのは、教える人です。去年、今まで分からなかったという下位群の子が、「ここ、こうじゃん」と上の子に教えることもありました。
生徒が「先生、発見したよ」と言いに来る時もあります。私が教わったのは、「walk」という英単語について。「walk」と「work」、どうしても生徒たちは、「walk」、歩くを「ワーク」と呼んでしまいます。しかし下位群の子が、「いや、歩くのがウォーク。あるく(alk)っ、あ(a)る(l)く(k)って書けばウォーク」と言いました。
「みんなちょっと、新しい発見があったよ。歩くってウォークだ」と言ったら、そこから間違いがなくなりました。私自身、いつも困っていましたので、良い発見をしてもらいました。
Q.AL型授業で入試に対応できるのか不安が強いため導入に躊躇するという声がありますが、どうでしょうか?
岡崎 グループごとに分かれて、入試問題を1問ずつ担当してみんなで説明するという授業を実際にやってみました。生徒たちは解説をとてもこまかくやっていました。
自分は「そこで話し合ったことを他のグループにも伝えなさい」という形にします。アクティブ・ラーニング型のほうが、先生が一方的に言うよりも、責任感が発生し、生徒は動くし、聞くし、理解できると思います。自分が伝えなければいけない内容が書き込まれたメモの量は、とんでもないものです。
私は、高校入試などについて、先生が一方的に話した時に、どのくらい通じるのか自信がないです。上位群だけ集めた時には、上位群に向けた話をします。成績が取れない子に対していかにして成績取れるかという話をすることは、アクティブ・ラーニングでないと苦しいと思います。
Q.生徒たちの成績をあげるためであれば、取材や授業公開などできることは行うべきだとお考えですか?
岡崎 やはり、どんどん授業参観をやることによって、同じ形態で授業をする人が増えてほしいです。西川流のように、授業参観をして保護者を毎日1人、日替わりで招待するのが良いのではないかと考えています
保護者の目的は、「子どもの成績を上げたい」ですよね。そこで、方法があるのであれば、「なぜ使わないの?やらないの?」「あなたのプライドは、どうでもいいよね」と思います。
英語の授業を英語で行うときは、私も「こんなに面白い授業あるから、みんなに見せたい」と手を挙げて、生徒も「やりたい」と言い、来た人たちもみんな「すごい」と言って帰っていきました。
1人、「すごい」と泣いた人もいたという話です。それなのに、広まらなかったのです。目立ちたいわけではなくて、「みんな英語で授業をやったら、こんなに楽しいし、英語の成績も上がるよ」という趣旨でしたが、伝わりませんでした。それはある意味失敗です。
「なんだ、これだけでいいんだ」「あの先生、何もしてないじゃん」という感覚で広まったら、少し残念ですが、成績を上げることはできると思います。成績をあげる先生になるために、生徒を信じてどんどん授業参観に参加すればいいと思います。
「授業参観は、研究授業をやります」と伝え、「何をするの?」と聞かれたら、「さあ、みんなやれ」と言って見ていればいいです。「できるよ」と信じると、実際にできました。1回できれば、終わってから「ああ、気持ちよかった」、「今日、楽しかった」と言う子が多いです。その味をしめた子たちは、もう1回やりたがっているはずですから、本当にハッピーです。
Q.今後もっとこんな挑戦をしていきたいという野望はありますか?
岡崎 野望は、日本の英語をアジアでナンバーワンにすることです。自分だけがカリスマ型の先生を目指すということは、要するに野球選手全員にイチローになれということです。
それなら試合に勝てるかもしれませんが、何人がイチローになれるのでしょうか。それよりもちゃんと、走って守って投げられる子たちを平均的に増やせば勝てるかもしれません。いろいろなことができる人たちを増やしたいのです。一方的に先生がしゃべるのではなく、「こうしたら、生徒が伸びる」と心得ている先生の集団を増やし、日本の英語力をアジアでナンバーワンにしたいというのが野望です。
だから是非いろいろな形式の授業をやってみて、先生方でも分からないことは「分からない」とすぐ聞いてください。その姿勢は必ず生徒にも届くと思います。今まで分からなくて困っていた子たちが、「分からないから教えて」と言えるようになれば、成績も上がり、英語力もトップになれると思います。
いろいろな授業のやり方を、みなさんに知ってもらうと良いですよね。そのために、やはり授業参観をして、実際に授業の様子を見てみたり、この動画を見たり、いろいろな授業を見て、分からないことは聞いてください。日本の英語がアジアで一番になるために、仲間をどんどん増やしたいと思っています。
※岡崎先生の英語の授業は、学校導入版で視聴できます
学校導入版の詳細はこちらをご覧ください...
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