概要
「具体から抽象へ」一段ずつ思考が深まっていく!
楽しいからこそ学びが深まるSSH指定校の公民授業
楽しくなければ授業じゃない。
駆け出しだった25年前から、このスタイルで授業を進めているという松浦先生は、 楽しいからこそ学びが深まるといいます。
この日の授業は、二時間続きの授業の一時間目。「行政権を持つ内閣」について学びます。
授業の冒頭、前回の振り返りの後は、まず生徒が生まれてからの総理大臣について学び、次に、歴代の総理大臣一覧が書かれたプリントから気が付いたところを書きだしていきます。
ここにも一つ、生徒の思考を楽しく引き出していく工夫が。
詳しくは、ぜひ実際の授業動画をご覧ください。
授業のポイントは、 「授業規律」 「子どもたちの発言を丁寧に受け止めること」 「思考が深まる発問の組み立て」
次の授業では、今回の授業で出していった生徒たちの気づきから、さらに思考を深めて日本の政治の現状や課題を学んでいきます。
生徒たちがどんなことに気づき、そこから学びをつなげていったのかも動画の中でご紹介していますのでぜひご覧ください。
全員が当たり前のように発言し、授業に参加して思考を深めていく仕掛けがされた授業展開に注目です!
Q.今の授業スタイルはいつ確立されたものなのか?
松浦亮先生(以下、松浦) 今日見ていただいた授業は、最近何かを新しく開発したということではなく、私が駆け出しの頃に学んだやり方を、25年間変わらずにずっとやり続けているものです。
今日の授業をアクティブ・ラーニングと呼んでいただけるのであれば、そういうことになるかと思います。開星中学・高校は、4年前に文科省のSSHに指定されました。21世紀型の授業開発ということが非常に大事なテーマとなっており、その中の1つの大きな柱であるアクティブ・ラーニングを、全教員が出来るように推進しています。
Q.「規律」を重んじる教育方針について
松浦 授業を実際に展開する上で、まず何よりも規律が大事だと常々思っています。アクティブ・ラーニングであれば、なおのことです。
誰もが何かテーマを持って一生懸命取り組みます。誰もがお互いのことをしっかり思いやり、同じテーマに向けて思考を深めていきます。そのような場面を作っていこうとする時に規律がしっかり出来ていないと、散漫な学級崩壊のような状況に陥りがちです。
そのあたりのトレーニングと言いますか、中学1年生の入学当初からしっかり鍛えて、その成果として、本日の中学3年生のような阿吽の呼吸で、色々な学びを深めようという方向性が出てくるのではないかと思います。
Q.生徒を「誉める」ことの大切さ
松浦 アクティブ・ラーニングというのは、やはり生徒たちの主体性を引き出します。また、生徒たちの思考を引き出すということがとても大事ですし、自由な発想を保障して初めて成立するので、彼らが発した思いや、考え方を基本的に全てきちっと肯定的に受け止めることが、ファシリテートする教員側の一番大事なことかなと思っています。
授業の規律については、そういったことを言わなければいけないシチュエーションが出来るたびに、彼らにメッセージとして伝えています。そのおかげで、中学1年生から「松浦という教員は、ここから先のふざけは許さないんだな」とか、「場合によっては良心に従って判断して、少し周りを明るくするような柔らかさや、そういう発言は許すんだな」とも思われているようです。
こういうことはやはり人間関係において、社会に出たとき、良いチームや、良い家族を作るのに、とても大事な要素だと思うので、あまりガチガチと固めるのではなく、少し遊びの部分を保障するというのは心がけています。
Q.学校生活全般について
松浦 授業者としての目線に立った場合、授業を成立させるために、ダメなことはダメだというメッセージを伝えたり、毅然とした態度で、時にはかなり大きな声を荒げて注意することもなかったわけではありません。
ただ、3年間そういった関係性を深めてきましたので、それにはひとつの大原則として、社会に出た時に許されるかどうか、というところがあります。その点で、やはり教員はしっかりとガイドラインを示し、そのガイドラインが明確であれば、生徒たちはちゃんとそれを受け止めて応えてくれると思います。
授業者としての目線はそうですが、やはり1人でそれを作るということは出来ないので、教員集団で、学園の中における共通理解を図っていく必要があると思います。
例えば、挨拶を大事にすることで規律をしっかり保って、授業のみならず、全ての教育活動において、きちっと子どもたちが集中して取り組めるようにする、ということです。この学園全体の取り組みが出来ているからこそ、アクティブ・ラーニングの授業が出来るのであって、どこかにポッと入って、成立する授業ではありません。
アクティブ・ラーニングというのはやはり学園全体で作り上げていくものではないかと思います。
Q.授業における「規律」は部活動にも影響している?
松浦 開星中学・高校の良いところは、部活動がとても盛んなところです。部活動を通して、そういった規律も学んでいると思いますし、社会に出た時のことを想定するならば、部活での学びと日頃の勉強、学習のその積み上げというのは、必ずリンクしてくると思います。
学んでいたからこそ、部活で活かせることもあるし、色々な経験を積むことが日頃の学習にやはり活かされています。それは、意識的に彼らに伝えないと、なかなか彼らは自覚をしないことでもあるので、我々が肯定的に彼らの取り組み一つ一つを、丁寧に認めて、彼らが安心して活動に臨めるようにしなければなりません。このようなことの循環がとても大事かと思います。
Q.中高一貫教育について
松浦 社会の担当者としては、中学生の歴史と地理、高校生の日本史、地理、世界史など色々な授業で6ヶ年を通して彼らの成長をサポートすることは、中高一貫の醍醐味だと思います。
Q.再現性のポイント
松浦 ポイントを3つに絞って申し上げるとするならば、1つ目は、先ほどから話が出ています授業規律です。2つ目は、生徒たちの発言を丁寧に受け止めるという教員側の姿勢です。
そして3つ目に大事なこととしては、やはり授業の発問をどう組み立てていくかということです。組み立て方を間違えると思考は止まります。これは諸先輩方から私が学んで、常々大事だなと思っていることです。
どのような投げかけをすれば、彼らの思考が深まるかは、数々の素晴らしい優れた実践があるので、やはり教員として、授業を作り上げるということを大いに学ぶべきではないかと思います。本当に数多の実践があるので、私はそういったところからヒントをもらうということをお薦めします。
Q.授業にタイトルを付けるとしたら
松浦 自分の授業というのは、極めてオーソドックスだと認識しています。最初に授業の導入では、基礎基本的なことを確認します。
今日であれば、内閣総理大臣が現在誰であるかという、具体的なものから入って、彼らの興味関心をぐっと惹きつけ、そして最終的に彼らに伝えたい抽象的な概念に辿り着くという意図があります。
私としては、誰一人つまらないなと思わせたくないと考えています。ベネッセさんと私たちが共同でやっている調査があるのですが、内容は授業を好きか嫌いかというものです。
私の目標は、嫌いだという生徒が0%になることです。少し手前味噌な話ですが、2回ほど、0%になったことがあり、だんだんそうなっていくのです。
今日の授業でも、生徒が必ず自分が発言をせざるを得なくても、それをせざるを得ないなという後ろ向きに捉えるのではなくて、自分はそういう役割が来るのだという前提でポジティブに入っていくのです。
その結果として、全員参加で楽しい授業になります。楽しくなければ授業じゃないと駆け出しの頃から思っています。実は、大学時代、あまり学校の先生をやりたいと思っていなかったのです。
ただ、山崎先生という先生に出会い、その方の全員参加の授業が素晴らしく、本当に心の底から楽しかったのです。私もそのような授業をやりたと思いました。
こんな授業があるのなら、こんな授業を作るのなら、この先生という仕事もとても良いなと思いました。ですから、私が常々テーマとして思っているのは、「全員参加の楽しい授業」です。楽しいからこそ、学びが深まるし、彼らは学んで良かったなぁと思うのだと思っています。...
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