概要
野望は世界?!生徒の成長にドキドキ!
生徒が教師を越えていく、ジグソー法を活用した演習授業
「はじめは、数学の偏差値を追うことだけをしていました。でもそれは結局、自分が失敗した道を生徒に押し付けていたんだということに気づいたんです」
数学の研究者になりたかったという郷地先生。
理学部数学科に進学して、そこで壁にぶつかったそうです。
高校までは数学が好きで得意だと思っていたのに、全然通用しない。
偏差値を乗り超えることしかできていなかったんだと、その時思ったそうです。
しかし、教師になってまた、偏差値だけを追っていることに気づき、それからずっと、自分が教えていることが彼らの人生の幸せや生きる力になっているのか、なっていないんじゃないかという思いがあったそうです。
そんな時に、外部の研修でアクティブ・ラーニング型の授業をしている先生に出会い、授業に対する考え方が180度変わりました。
先生が話しているときは下を向くな!手を止めて前を向け!と、押さえつけるような授業をしていたそうですが、「自分が主役じゃない。生徒が学ぶのをサポートするのが教師だ」と考えるようになりました。
授業に対する考え方が変わり、授業のスタイルが変わり、生徒が変わっていきました。
「先生、もっと良い解き方があるよ!」そんな風に挑戦してくる生徒も出てきたそうです。
予習の提出から始まる演習授業は、試行錯誤を重ねて今の形になりました。
ぜひ、実際の授業の様子とインタビューをご覧ください。
こちらの動画は3セットございますので、ぜひ他の動画もご覧ください。
2.<内部進学一般クラス編>を見る
3.<高校入学者クラス編>を見る
Q.数学を学ぶことで、どのような力を身につけて欲しいと思いますか?
郷地 倫秀先生(以下、郷地) 幸せな人生を歩むために数学を学んで欲しいと思っています。それでは、どういうことが幸せな人生なのかなと考えると、最低限の衣食住が足りる生活基盤を整えることだと思います。
そのためには、生活の糧を得ること、仕事すること、あるいは、他人とのコミュニケーションをうまくとっていくことも必要です。実際に仕事する時は、考えることも大切です。色々なことを表現することも大事だと思います。
Q.数学を学ぶ醍醐味とは、何ですか?
郷地 一つのものに対して、色々な見方が出来る点がとても面白いのではないかと思っています。例えば、色々な解き方があったり、あるいは、考え方があったりします。
一つのものでも見方によって、とても面白いと思うので、出来るだけそのような点を伝えたいと思っています。そして、最終的に伝えることができるような授業構成にしたいと思っています。
Q.生徒に学び取って欲しいことは、何ですか?
郷地 1コマ目の授業は、学力的に高く、丁寧に育てられ、中学からしっかりと教育を受けてきた生徒たちです。彼らは、言われたことはきちんと出来るが、言われない事はできない、つまり、受け身なのです。
ですから解法も、一度解説されると、その解法が正しいのだとそれを覚えてしまうので、解答の再生はします。しかし、その問題は解くことはできるようになったが、本当に学力がついたかというと、違うのかなと思うのです。「問題を見て色々考えたりすること」が、1コマ目の生徒に最も求められる点です。
2コマ目の授業は、同じ中学から来て、丁寧に育てられた生徒ですが、成績上位を除いたクラスということで、数学に自信がない生徒です
ある程度は出来るのですが、「僕たちやっても無理だし」という様子なので、「いやいや、君たちは出来るし、自分でちょっとチャレンジしていこう」という点を重視しています。
特に、そのような生徒は、一問一答式だと出来るのですが、二つ組み合わせたりすると出来なくなってしまいます。例えば、図を描き、イメージ膨らませ、そこから読み取ることをしないのです。
そのために、かれらは、予習の段階では、解けません。小さな工夫を授業の中や、プリントに盛り込み、もう少し手を伸ばしたらみんなの未来が開けていくのだということを伝えたいと思っています。
3コマ目の授業は、学力的に一番高く、高校から入ってきた生徒たちです。まだ、教科書の内容が終わっていないので、1コマ目、2コマ目の生徒ほど多くのことを要求するはできないのですが、深く思考することや問題と向き合って考えることはできます。
必要ならば調べたり、周りに聞いたり、自分なりのやり方で必要な情報を手に入れたりしながら、数学の力を身につけることを狙い、授業を進めています。
特に、1コマ目、2コマ目の授業に関しては、予習したものを前もって提出させ、全員分チェックしています。正直これをするまでは、「自分は、けっこう生徒のことを分かっている」と思っていたのですが、実際に予習したものを見ると、「全然分かってなかったな」と、最近よく思います。そのため、生徒の実態を具体的に把握し、それに合わせることは、大変大事なことだと思っています。
Q.授業の構成を教えてください
郷地 演習授業なので、予習をさせています。予習したものを、演習授業の前に提出させています。授業前に一通り全員分の予習したものに目を通し、生徒の躓いているポイントや、気になるところをチェックしています。
授業前半では、最初にくじを引いてもらい、担当の問題を決めています。3題のうちの1題、自分の担当になった問題をしっかり理解し、他の人に説明できるようにしようという形で、最初に15分くらい、考えるための時間を取っています。
後半は、各グループから生徒が一人ずつ集まり、自分の担当の問題を説明します。たくさん質問を投げかけるという形で、授業を展開しています。
生徒は、分かったつもりで説明しますが、うまくいかないことがよくあります。「やはり、先生、ここ分からないです」と聞く時、一方的に教壇から説明されていた時には起こらなかった気づきが、生徒の中に生まれるのだと思います。そのようなイメージの授業展開をしています。
Q.授業によって使う手法の違いを教えてください
郷地 1コマ目、2コマ目は、既習範囲の復習、演習授業という形をとりました。生徒たちに予備知識がある状態です。ですから、ある程度予習をさせ、調べさせ、自分たちで考えたという前提で、このような形の授業になっています。
3コマ目の生徒は、新しい知識を手に入れるという目的で、最初に解説をし、ポイントを押さえ、実際に演習していきました。今日の単元は、彼らにとってはあまり深い学びが起きなかった単元かもしれません。
昨日、予習した時にすでに分かっていましたが、そのような経験も必要なので、先ほどの授業形式になりました。他のグル-プと相談し、活性化するようなことをさせることにも違和感がありました。なぜならば、彼らが、問題と向き合うことで十分学び取れる内容だったと思うからです。
レベルの高い問題も、用意しておきました。一番最後の問題ですが、いつもとは違うレベルで出したつもりでしたが、簡単に乗り超えてしまいました。失敗したなというのが、最後の授業内容に対する素直な感想です。
高校1年生から彼らの授業を担当しているので、約1年半授業を持っていますが、1年生の最初は、必ず4人組という形でスタートしました。
最初は、グループと言っても、高校1年生なので、話し合いはスムーズに進みませんでした。しかし、少しずつ慣れていき、グループでワイワイと相談できるようになり、その中で、問題解くことの楽しさや数学の面白さに気づいてくれたのだと思います。
高校2年生の6月くらいからは、「あ、もう彼らは別に周りがいなくても、自分で学べることは自分で学んで、人が必要な時は人に頼ることが出来るんだな」と分かったので、思い切って、「もうお好きにどうぞ」という雰囲気にしました。
そうすると、自分で出来ることは、自分でします。自分一人では出来ない時は、周りと相談したり、調べたりするという形になりました。最近では、自分で学ぶということの、トータルのデザインのようなものが出来るといいと思っています。
Q.1・2コマ目の授業でグループ替えをした意図は何ですか?
郷地 1コマ目と2コマ目の授業は、1時間に扱う問題が3題ずつという設定になっています。前半は、各自担当の問題1問を、グループに分かれて自分たちで完璧にマスターしようという方針です。早く出来ると、他の問題にも進むことが出来ます。
後半は、自分たちが完璧にした問題を他の人に説明することにより、分かったつもりか、本当に分かったかどうか、という大切な部分をしっかり確認しようという意図で、グループ替えをしています。
最初にカードを配り、その番号の席に座ってもらいます。3で割って1余る番号のカードを引いた生徒は、1番の問題を、2余る生徒は、2番の問題を、3で割りきることが出来た生徒は、3番の問題を、最初に説明します。
それぞれ1番のカードにはA、B、Cと、さらに3種類に分かれます。2番もA、B、C、3番もA、B、Cと分かれているので、後半は、1番のAの生徒、2番のAの生徒、3番のAの生徒が一つのグループになり、それぞれ自分の問題を説明するという形で進めました。
Q.授業で使用した自己評価表とプリントはどのように使用しましたか?
郷地 自己評価表は、自分の今日一日の学びを振り返り、「一番大事だったことは何でしょうか」という問かけで、いつも書かせています。毎回、授業が終わってから目を通し、一言コメントを書くようにしています。
郷地 その時、「ここが大事って言うと、そこのどこ?」とか、出来るだけ疑問の形で返すようにしています。最近では、生徒が、「これ無限ループや」と言い始め、バレてしまいましたが、出来るだけ、疑問を投げかけるようにしています。
もう一枚配ったプリントは、1コマ目は、次の授業のための予習用プリントです。2コマ目は、予習用のプリントと復習のプリントです。復習プリントは、その日の授業でやったことを、もう一回本当に分かったか、説明して分かったつもりか、本当にできるかどうかを確認するためのものです。
今日は少し時間かかってしまったのですが、出来れば1時間で、授業で扱った問題を黙々と解いて、「分かったから自分一人で出来た」という感覚を最後に持たせたいと思っています。
1コマ目の生徒は、自分で出来ると言うので、出来ることをこちらから押し付けるのはマイナスなので、あえて、復習プリントは配らず「できるよね?」ということにしてあります。
以前は本当に、押さえつける教育だったなと思います。ちょうど卒業生が来て、「先生、すごく怖かった」と言っていました。しかし、最近では、卒業生も私が変わったことを知っているので、「なんか、変わったらしいですねぇ」と言って、ニヤニヤしています。
そして、生徒とのやりとり見て、とても意外そうな顔をしています。
Q.振り返りシートの活用の仕方を教えてください
振り返りシートには、「その日の授業で一番大事だと思うことを書きなさい」と言っています。後で生徒自身が見た時、「ああ、こんなことを大事だと思っていたのだ」、あるいは、「忘れていたなぁ」という気づきの材料として使えたらいいと思います。
今日一日の自分の取り組みを振り返り、特に気づいたことを書かせています。この授業スタイルに変えた2年前、これに意味があるのかなと思い、一回やめたことがあります。
しかし、後で言語化して、書いたりしゃべったりすると、自分の考えがまとまるということを最近実感し、再開したところなのですが、まだなかなかうまく使えていないのが現状です。
Q.生徒が自主的に取り組む為に、先生が一番大事だと思っていることとは、何ですか?
郷地 「自分が一番楽しくないとダメかな」と思っています。自分がどうすれば、もっとこの授業、楽しくなるのかなと常に考えています。
もちろん、クラスにより、興味関心が違うので、例えば、2クラス目の生徒は、友達とワイワイしながらやっていいます。「すごいね」と言われる瞬間、つまり、自己肯定感が高まる瞬間が彼らの学びへの意欲に繋がるのかなと思っています。
逆に、3クラス目の生徒は、考えて分かること、自分で分からなかったことが分かることが彼らの学びの意欲に繋がっています。それは、生徒やクラスにより、違うので、それぞれのクラスの状況に合わせて考えています。
Q.講義形式の割合はどのくらいですか?
郷地 新しい単元では、3割くらいです。演習では、ほぼ無い状況です。できたら、生徒の邪魔をしないという状況にしたいと思っています。
Q.今の形になるまでに失敗したことと改善策を教えてください
郷地 2コマ目のクラスは、ちょうど2ヶ月前から今の授業スタイルにしました。始めた当初、大きな手応えがありました。生徒は「分かる、分かった、楽しい、面白い」と言い、「これはいけた!」と思っていました。
しかし、定期考査に臨むと全然、ダメでした。なぜだろうと思い、定期考査が終わってから、何人かの、悪い点数の生徒やこちらの印象とかけ離れた点数を取った生徒、力があっても伸びなかった生徒に話を聞きました。
「ちゃんと分かったけど、あんまり復習してなかった、定着しなかった」ということを生徒に教えてもらい、そこから、「じゃあ、復習させよう」ということになりました。
授業内容が終わってから、最後にもう一回、今日勉強した、数字もまったく同じ内容の復習プリントを、解き、分かったことが出来ることに変わる瞬間をもう一回、再現してもらうという工夫は、生徒に教えてもらって、出来たことです。
3クラス目は、去年始めた時、一切誰もしゃべらなかったのです。最初は、「どうしよう、グループワークなのに、誰もしゃべらない」と思いました。
しかし、ラーニングピラミッド見せたりすることにより、他の生徒に教えることが、自分がより深く学び、知識も定着するという話をし、コンセンサスゲームを通じて、他の人と話し合うことで、もっと良い答え出るということを教えました。
学ぶということは、自分だけで学んでもいいし、人と共に学ぶことは、もっと良い学びになると分かり、さらにそれを超えて、問題と向き合うことができる時は一人でやろうとなり、今日のような授業になりました。
Q.フリーライダー(他人任せ)な生徒が出た際にどう対処されましたか?
郷地 フリーライダーは必ず出てしまうと思います。それを防ぐために、少ない人数のグループにしています。しかし、もう少し人数が多いほうが意見の多様性が出て、いいのかなと思うこともあります。
特に、ジグソー法をする時、自分が必ず発言し、他の人と相談しないと、自分の責任の部分がしっかりしないので、工夫しています。
Q.アクティブ・ラーニング型授業を始めたきっかけと努力した点を教えてください
郷地 AL型授業をするきっかけは、大学で理学部数学科に進みましたが、全然自分の力が通用せず、2回留年したことにあります。
高校の時までは、高校数学は好きで得意だと思っていましたが、今振り返ってみると、結局、偏差値を乗り越えることしか出来ていなかったのです。
大学を卒業する時、塾でアルバイト講師をしていました。教えること、人が嬉しいと言ってくれること、そして成長する姿を見ることが楽しいと思い、教員になることを決めました。
数学の偏差値だけを追うことを、教員になった当初は、ずっとしていました。しかし、これは、結局、自分が失敗した道を生徒に押しつけているだけだということに気付いたのです。本当に自分の授業が、彼らの人生の幸せ、あるいは、生きる力になっているのかと考え始めた時、すでに教員生活、10年が過ぎていました。
そして、そのような時期に、AL型の授業をしている方の研修に参加しました。実際に参加し「あ、そうか。こういう考え方、こういうことってあるんだ」と、180度、考え方が変わりました。
それまでは、教壇で話している時は、「下見るな、手を止めとけ」という授業をしていました。しかし、その研修を経験し、完全に授業に対する考え方が変わったのです。
普段から努力していることは、出来るだけ生徒の様子、その日の、その時の、その瞬間の状態をしっかり掴まないといけないということです。以前は、こちらで引っ張っていくような授業だったと思いますが、今は、授業の主役は自分じゃないと思っています。
生徒が主役で、それをサポートする役が教員だと思っているので、生徒の状態をしっかり把握することを心がけています。また、自分もまだまだ手探りの状況なので、外の研修があると、出来るだけ参加して、勉強しています。
Q.授業準備の仕方にどのような変化がありましたか?
郷地 これをした時、生徒はどのような反応をするのだろうかということを、以前よりも考えるようになりました。以前は、私が、授業の主導権を握っていたので、ある程度,想定し、変化が出た時に対応すればいいと思っていました。
うまく転がしていけばいいかなという感じでしたが、今は、以前よりはるかに生徒の力、状況を把握していくことに気を配っています。
ですから、同じ授業を同じクラスでしても、「ああ、明日5時間目だなって。体育の後で疲れているな」、あるいは、「今日はたぶん2時間目だし、週の頭だし、元気だろうな」ということを念頭におき、問題の配置に気を遣っています。
今日のプリントにもあえて書きましたが、私が最初に解いた時、解けない方法を試してしまい、間違えてしまいました。以前はそのようなことは、言わなかったと思うのですが、今は、失敗してからどのように立て直しているのか、あるいは、どのように方向を変えていくのも話すようにしています。
よく考えると、それは、大人になってもたくさんあることなのです。そして、そういうときのヒントになるのかなと思い、「困って、僕はこう考えた。でも、こっちのほうがいい」という解答を書いたりしています。
少し先のことも考えて、今の問題が解けるだけではなく、目の前の問題以外のことも、将来、役に立つようにと考えながら、解説のプリントは書くようにしています。
Q.アクティブ・ラーニング型授業を始めて感じた手応えとは、何ですか?
郷地 最近、生徒が自由奔放に考えるようになりました。以前は管理していたので、きちんと色々なことが出来たのですが、今は、自分でどんどん解いてきて、こちらの身が危ういという感じです。
生徒は、どんどん教員を超えていくのだなということが実感です。以前はそれを抑制していたのですが、それを止めると、生徒の主体性がとても出てきたと思います。ですから、生徒が、これよりもっと良い解き方あるよと言って、挑戦してくるので、いつもドキドキはしますが、これは大事なことだと思っています。
さらに、数学という教養の部分でも、他の部分でも、もっと勉強しなければならないといけないと思っています。その意味でとても刺激があり、ドキドキしながら授業をしています。
Q.アクティブ・ラーニング型授業を通して逆に生徒から教えられたことは何ですか?
郷地 「生徒の力」だと思います。以前は、「あ、これも出来ない、あれも出来ない」というマイナスの面がとても多かったのです。
宿題を出さない、テストしても、こんなことも出来ないという、出来ないところを潰していくことが主でしたが、今は、「あ、こんなことが出来るようになった、あんなことが出来るようになった。こんなこと出来るんだな」と思うことができるようになりました。
「この問題は無理かな」と思いながら、プリントに入れても解いてしまい、「俺、要るのかな」と思うことが増えました。
他の生活指導面でも、以前は、これまだずっと注意しても直らないなというマイナス面ばかりを見ていたのですが、今はどうしても変わらない子も「ああ、みんな変わっていくのに、こいつ変わらへんな」という目で見るようになりました。
「世間の波に抗って、こいつだけ変わらない。それも、また、すごいよね」と、最近思うことができるようになったので、その意味では、プラスの評価として、生徒のそのような部分に観点を置いて見ることができるようになったと思います。
Q.基礎学力が高くないとアクティブ・ラーニング型授業は出来ないと思いますか?
郷地 基礎学力が高い低いで、狙う授業、狙いが変わってくると思います。低い生徒は、授業をきちんと聞くことができていなかったり、ぼんやりしていたりする時が多いので、グループワークのような、考えさせることを意図した授業をすることにより、生徒は考えるようになるので、効果が上がると思っています。
Q.授業の進度はどのように調整していますか?
郷地 以前は、生徒の力、あるいは、「これくらいの進度で、この内容の深さで授業したら大丈夫」と、全部分かっているつもりだったのです。ところが、実際に生徒にやらせてみるとこちらが教えなくても、「生徒って勝手に学んでいくんだな」ということが分かりました。
できる事がたくさんあると分かったので、その分は生徒に任せることにより、進度も早くなると思います。逆に、こちらから、ここ飛ばしてもいいよというところもあります。
ここは少しゆっくり進めないとといけないというところも、以前よりよく見ることができるので、ポイントを早くするところと丁寧に行くところがしっかりと分かるようになったと思います。
Q.偏差値偏重とは違うこだわりは、何ですか?
郷地 生徒それぞれの学力状況により、変わってくると思うのですが、学力的にあまり高くないクラスの生徒は、2つのことを組み合わせて考えることや、図や表を書いてまとめ、そこから情報を読み取り、問題を解くヒントにすることを学習させることが大事であると思います。
一方、高い学力の生徒は、方針を立てて解いてみたが、うまくいかない時、どのように対処するのかであったり、全く別の切り口を考えてみることであったり、似たような他の問題との共通点を見つけ、それを当てはめてみることであったりだと、思います。
Q.新しく学習することをどういう形で説明していますか?
郷地 一学期は、新しい事項を学習していましたが、同じように進めました。ただし、理解力や思考力が違うので、丁寧にしっかりと説明しました。
3コマ目のクラスは、授業の最初に映したスライドのプリントも生徒に配っていました。前の授業で配り、予習出来るように配慮していたのですが、3コマ目の生徒は、「予習は要らない。授業中に分かる」と言うので、その日に配るというスタイルに変えました。
1コマ目と2コマ目の生徒は、きちんと予習してくるので、前に見せておいたほうが分かりやすい場合、スライドのプリントを配っておくことにしました。
しかし、以前は、声の抑揚、雰囲気、あるいは、動作をとても気にしましたが、あまり色々なことを気にして説明が長くなると、「もう長いよ」という雰囲気になるので、1年半で、段々と短くなっていきました。
そのように、生徒を惹きつけることをとても意識しながら授業を進めていましたが、彼らから、「もうそれは自分で出来る」という感触をつかみました。そのような意味で、学びのデザインが自分で出来てきていると思っています。
課題に興味持つことは出来るので、新しい知識だけ教えて、関連する古い知識の復習も手伝い、あとは自分で進めましょうという感じです。
ですから、「ガニエの9教授事象」で言うと、3と4くらいだけ学習したら、あとは1から9まで、全部自分たちでしますという印象なので、結局、現在のスタイルになっています。
Q.アクティブ・ラーニング型授業を通して、生徒にどうなって欲しいですか?
郷地 世界を良くして欲しい、そういう人材になって欲しいと生徒に期待して、ことあるごとにそのことを、話しています。言うよりは見せたほうが良いと思い、君たちにこうなって欲しいと思っているという「思い」を、毎授業見せているつもりです。
生徒にとって、そのための授業だと考え、常に「思い」をこめて授業をしています。
Q.先生の今後の野望は、何ですか?
郷地 野望は、もっと生徒を成長させるようなことをたくさん学びたいということです。そして、学んで出来るようになれば、それを外にも発信し、生徒が成長する様子をみたいと思います。
隣のクラスの同じ学校の生徒が成長するだけではなくて、隣の学校の生徒も成長する、日本中の子ども、世界中の子どもが成長するような挑戦できたらいいなと思っています。
それが数学という分野だけにとどまるのではなく、色々な他の分野にも、挑戦していきたいなと思います。理想の授業は、マイケル・サンデルの授業です。
演習で「この問題、どう思う?」と言うと、「あ、これ、こう思います」と返ってくる、こちらも全部分かっていて、「ふ~ん、じゃあ、こうはどう?」というやりとりが進行していくような授業が出来たら、素晴らしいと思っています。
生徒が、こちらが投げかけた疑問や発問に対し、よく考え、時々は、時間内で生徒同士考えたり、発表したりしながら授業が出来たらいいなと思うのですが、なかなかそこまでは至らず、今も目標に向かって努力している最中です。
Q.全国の先生へのエールをお願いします
郷地 今の授業スタイルにして、生徒を、以前にも増して好きになりました。一人ひとりの生徒をしっかりと見て、生徒の良さを発見できたので、生徒の成長のために貢献しているなと実感できました。
アクティブ・ラーニング型の授業は、自分の生きがい、やりがいをもっとアップさせてくれるような取り組みだと思います。それだけに、ずっと続けることが大事であると思います。今、挑戦している方とは、共に長く一緒に続けていくことができればいいなと思っています。...
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