概要
30年後の幸せをつくる、「わかんない!」が言えるようになる授業
上越教育大学教職大学院で学ぶ福田健先生の出張授業動画。
福田先生が実践するのは、『学び合い』という考え方に基づいた授業。
それは一斉授業ともグループ学習とも全く異なり、先生は教科内容を一切教えません。
どのように子どもたちは学習を進めていくのでしょうか?
福田先生にお話をお伺いしました。
Q.授業の設計について
福田 健先生(以下、福田) 授業は『学び合い』です。授業を通して、「社会に出て役に立つコミュニケーション能力」「わからないときにわからないと聞ける力」「わからない子を助けてあげられる力」を身に付けさせようと意識しております。
今、文部科学省がアクティブ・ラーニングを謳っていますが、主体的・協働的になる時間や学習の場面を設定することが必要だと思います。
そのためには、子どもに時間をより預けなければいけないと思っているので、極力教師がしなくてもいいことは子どもに任せられる構成の授業を作っています。
特に、学校の授業の5時間目と6時間目で課題が変わっていました。今日は振り返りを書かせてしまって休憩時間を取れなかったのですが、普段の授業で1時間、5時間目と6時間目の1時間で作っています。
『学び合い』のいいところは、算数の課題が次の時間の国語に生きるところです。普段は算数の問題が出たら、次の算数の時間にそれをクリアしていきます。
『学び合い』では、人とつながりうまく人の力を借りられる力、社会で役に立つ力を付けることが大事だと思っています。その付けた力が他の場面でも活きてきますし、1時間の算数や国語の授業で確実に身に付けたい力もありますが、それを意識して作っています。
Q.1時限目と2時限目で子供たちにどんな具体的な変化が見られましたか?
福田 今日初めてやった子たちや、あまり慣れていない子たちがいたこともありますが、遊んでいる子が極端に減りました。自分の時間で自分の課題が終わらせたあと、何をするのか考えて動くようになりましたし、全員ができるように、できていない子を補助していました。
ですが、大抵の子が終わると、やることがなくなってきてしまいます。そうしたときに、いつもは手持ち無沙汰でシートで遊んだり、走り回ったりするのですが、2時間目では極力自分ができることを考えて動いている子たちが多かったです。
例えば、今日の4年生は、いろんな人に自分の意見を伝えてサインをもらっている子がいました。正解とは言いませんが、走っているよりはいいと思いますし次のステップに進んでいると思います。
さらに、サインをもらうだけではいけないなと思った子が、2年生や3年生のところに行って補助をし、その姿を見てほかの子が真似をし、徐々にその動きが広まっていくこともありました。
もちろん1時間目2時間目で完結ではないので、この2時間目の課題が次につながります。このくり返しが『学び合い』のいいところかなと思っています。
Q.今日の授業の手応えはどうでしたか?
福田 そういったことが広がるいい場面がたくさんあったので、手ごたえとしてはもちろんあります。ですが、現場の先生たちは「この1時間で本当に付けたい力が身に付いているの?」と心配されると思っており、そういった点では、まだこの授業を見て取り入れようと思う方はいないのかもしれません。
ただし、これを継続した1時間目と2時間目の変容を見ていただき、次の時間もこの変化が起こっていくことをイメージしてもらうと「1カ月後はどうなっているの?」と、結構わくわくすると思います。
Q.アクティブ・ラーニング型授業をはじめた経緯
福田 僕が『学び合い』を知る前、いろんな研究授業等をさせていただきました。特に、「関わり合う」「学び合う」「伝え合う」というキーワードはどこで研究授業をしても出てくるなと思ったのです。
そのときにペア学習やグループ学習をくり返しテーマにしていましたが、どれだけ研究しても、グループ学習に対しての違和感が抜けなくて、グループ学習に限界を感じていました。グループ学習の限界というのは、例えば4人グループなら4人しかいないということです。
1つのグループが盛り上がっているとき、ほかのグループは盛り上がっていません。グループ内の人間関係に大きく左右されることがもどかしかったのです。あと、グループでできたことを発表するという時間ももったいないなと思っていました。
そんなこともあり、何か次のステージがないかなと思っていたときに、この『学び合い』を知りました。これは可能性があるなと思い、興味を持って調べてみると、『学び合い』は授業だけでなく、子どもたちの未来につながっていることがわかり、これは真剣にやってみようかなと思いました。
Q.『学び合い』授業を行うにあたって先生なりの工夫はありますか?
福田 授業に入る前の工夫、気を付けているのは、ゴールや目標とする姿、それを評価するポイントを設定しておくことです。
目標と評価は一体化しているべきだと思っているのですが、それを子どもたちにわかる言葉でアウトプットできる課題を作ろうと思っています。「これができたらこの力が身に付くよ」ということが子どもにもわかる課題作りをしようかなと思っています。
授業中は子どもたちに任せたいと思っており、僕はいい姿を認めて広げたり、方向を間違っていたら「違うのではないか」と言ったりするだけにとどめています。あとは子どもたちに極力任せたいという思いでやっています。
『学び合い』の時間に教師が出るのは、最初と最後の場面です。極力出る時間を減らすのですが、最初と最後は語りたいと思っています。そこでは、子どもたちの具体的ないいところをたくさん紹介し、最後の語りの時間にはさらなる課題を与えたいと思っています。
そうすることで、次の時間に子供たちがさらにレベルアップした姿が見えてきます。そして、レベルアップした子どもたちのいいところをさらにフィードバックし、課題を与えます。それをくり返すよう意識しています。
Q.『学び合い』を授業に取り入れるための3つのポイントを教えてください
福田 1つは課題の設定です。先ほど言った、目当てを達成する姿をどう評価するか。アウトプットできる形の課題を設定するということです。
2つ目は、思いきって子どもたちに任せることです。先生たちはいい人が多いので、子どものことを思って教えたい人がいるのですが、そこをぐっと我慢します。すると、子どもたちは実は大抵のことは何とかクリアできるので、その瞬間にほめてあげるといいと思います。
3つ目は、なぜこういう勉強をするのかを、先生の気持ちで語ることです。形だけ真似するのだと、おそらく子供たちは限界を感じてしまうと思います。「どうしてこの授業やるのか」を先生なりの言葉で語ることが大事だと思っています。
現場の先生方は、やはりこの1時間の成果を見たいと思っている方がたくさんいます。ですから、授業で見える成果をどう提供するかが大切です。形は今までの一斉授業と全然違うことをしていると思いますが、子どもの姿から成果が見えてくればと思っています。
アクティブ・ラーニングという言葉を注目され始めていますから、子どもたちが主体的・協働的になる学びをどうデザインするかは、おそらくどこの現場でも課題として上がってくると思います。その1つの方法として、僕らが今日やらせてもらった授業があります。
それに共感できる人は「もっと実際に試してみてほしい」「少しでも試してみる人が増えてほしい」と思っています。
授業の最初でも語りましたが、僕たちは社会に出て幸せになる子どもたちを育てたいと思っています。『学び合い』と一斉授業の違いは、「未来」です。子どもの幸せというのは、1年後でも10年後でもなくて、20年30年先のことです。20年後30年後に幸せになるために、今授業で社会的能力を身に付けようとしています。
いろんな人がいると思いますが、僕は柔軟でいいかなと思っています。アクティブ・ラーニングの定義は文科省が出した通りなので、それをクリアしている授業の方法や理念であれば、イコールとする必要はないとは思っています。
私は、『学び合い』でやっていることは、アクティブ・ラーニングだと思っていますが、唯一の方法だとは思っていません。まだまだ可能性はあるはずです。
※福田先生の国語の授業は、学校導入版で視聴できます
学校導入版の詳細はこちらをご覧ください...
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