概要
先生1人で3学年同時に教えても50分で驚くほど児童が成長した 小学校の算数の授業とは?
上越教育大学教職大学院で学ぶ2人の先生の出張授業。
橋本和幸先生と福田健先生が実践するのは、『学び合い』という考え方に基づいた授業。
それは一斉授業ともグループ学習とも全く異なり、先生は教科内容を一切教えません。
どのように子どもたちは学習を進めていくのでしょうか?
橋本先生にお話をお伺いしました。
Q.授業前半の手応えはどうでしたか?
橋本 和幸先生(以下、橋本) 子供たちは、『学び合い』の授業を受けるのは今日が初めてだったので、最初に「なぜこの勉強をするのか」を子供たちの前で語りました。
Q.授業の設計について
橋本 大人になったときに社会で求められる、「うまくいろんな人と力合わせていく力」を身に付けるために勉強しているのだと語らせてもらいました。
そのあとは、それを達成するためにはどうすればいいかを子供たちに考えてもらい、それを見守りながら1時間授業をさせてもらいました。
Q.授業前半の手応えはどうでしたか?
橋本 子供たちは授業が始まってすぐに、相談し合ったり「わからないから教えて」と聞いたりしていました。その雰囲気がすぐにできていたので、スタートとしてはとてもやりやすかったです。いい姿をほめていったり価値付けしたりしていくことで、さらにいい行動が広がったので、すごくよかったかなと思います。
Q.後半 子供たちの集中力が途切れてしまっても先生が怒ったりしないのはなぜですか?
橋本 本来怒れば簡単なのですが、それをやったら毎回その行動に対し怒らないといけなくなってしまい、結局先生がいないとクラスがうまいこと進まなくなってしまいます。
クラスの問題や課題を子供たちに返すと、それを改善する行動を取る子が必ず出てきます。そこでその子に「そういう行動いいよね」と価値付けすることで、クラス集団がよくなることを狙っています。
あえてそこでは怒らずに、「こういう課題があるよ」「次を考えてね、改善してね」とくり返し語ることで、クラス集団を育てていくようにしています。
Q.小学生向けの『学び合い』授業について
橋本 僕はずっと小学校で教えていて、中学校には飛び込み授業・出前授業という形で2回ぐらいしか行ったことがないのですが、小学校低学年だったら少しやさしく、わかりやすい言葉を使います。高学年になってくると、中学生と同じように「将来はこういうことなるよ」「大人になるために付ける力なのだよ」と教えます。集団の中に2割ほどわかってくれる子がいますので、その子たちに伝わるように自分の思いを語るようにしています。
Q.アクティブ・ラーニング型授業をはじめた経緯
橋本 僕は教師になってからずっとグループ学習が好きで、もともと一斉で前を向いて授業をするより、何でもかんでもグループで話し合って発表するという形式をとっていました。
それをずっとやっていると、友達の発表を聞いているようで聞いていないなどの問題が出てきて、グループ学習は無駄な時間が多いなと悩むようになりました。その時に、西川先生の『学び合い』という考え方に出会い、自分で自由に選択できるスタイルがすごくいいなと思って勉強し、始めるようになりました。
Q.『学び合い』授業を行うにあたって先生なりの具体的な工夫はありますか?
橋本 子供たちに任せている時間は、僕が「いいな」と思うことをできるだけたくさん子供たちに声かけするようにしています。気になるところも語りかけるのですが、それよりいい行動が広がってほしいので、いい行動を重点的・意識的に子供たちに返すようにしています。
Q.『学び合い』を授業に取り入れるための3つのポイントを教えてください。
橋本 まず1つ目は、「1人も見捨てないことを諦めない集団になってほしい」という思いを、先生の言葉や具体的なエピソードを込めて語ってあげることです。
2つ目は、やはり子供に任せることはとても勇気がいると思いますが、子供を信じて任せてみることです。そして、いい行動をどんどん広げていってあげて、子供たちに返してあげることが必要だと思います。
3つ目は、クラスの気になるところや問題の改善策を子供たちに伝え、改善した行動は必ず先生の言葉で「いいよね」と返してあげることです。このくり返しがポイントだと思います。
Q.2時間の『出前授業』を終えて子供たちの変化をどういうところで感じますか?
橋本 1時間目と2時間目があるのですが、1時間目に僕たちが出した課題を解決できなかったのに、2時間目には解決したところです。あと大きく違ったのは、子供たちの勉強する姿です。
スタートの段階では、子供たちはクラスや仲いい子同士で固まっていたのですが、2回目になるともう関係なくいろんなところでやっていました。その変化はすごく見えましたね。
最初は、「どう動いていいかわからない」「1人も見捨てずに全員達成ということ自体わからない」「とりあえず自分のわかる範囲でしか関わらない」という子が多かったと思います。
しかし、「自分だけではなくここにいるみんなだよ」と何回も語ることで、それが徐々に広がっていき、いろんな学年で付き合ったり、問題を解き合ったりする姿に変わっていったところは、目に見える変化かなと思います。。
Q.先生自身の今後の課題を教えてください
橋本 僕はすでに2~3年やっているので、やり方はわかってきているのですが、やはり他の先生方に「何をしているのか?」という目で見られてしまうことがあります。「こうしてるのですよ」と伝えても、なかなかわかってもらえないこともしばしばです。
せっかくいい取り組みをしているので、もっと広がればいいなと思うのですが、なかなか広められず、どうしたらいいのか日々悩みながら研究しています。
出前授業や飛び込み授業は珍しいのですが、初めてのクラスでやる中で、いろんな先生の不安や思いを聞くことができる機会になっています。その不安を解消するためにどうすればいいかを日々悩みながらやっています。
今回先生から「課題作りに悩んでいます」という話をいただいたので、このあと一緒に課題を作っていきます。
ただ私から「『学び合い』はこうですよ」と言うのではなく、一緒に課題作りをすることで、これから先生方が疑問を1つ1つ解決できるようなバリエーションを持っていければいいかなと考えています。
Q.先生の将来の展望を聞かせてください
橋本 今、現職派遣として県から勉強させてもらっているので、この2年間で実践したことは自分の県・市に戻ったときに、還元できるようにしていきたいなと思っています。
自分が勉強したことをどう伝えるか、実践していってもらうためにどうしたらいいかというのは、現場に戻っていろんな先生と折り合いを付けながら考えていきたいと思います。
Q.アクティブ・ラーニング型授業が子供たちにどんな影響を与えると思いますか?
橋本 子供たちが、いろんな人達と力を合わせられる大人になったら、例えば地元に戻ってきて、そこで培った仲間たちと一緒にがんばったり、自らの地域を活性化させたりしてほしいです。
ここで学んだことを生かして、さらに大きなことができるような大人になってもらえればと思います。子供たち全員が力を付けて、幸せな人生を送ってくれればいいなと思っています。
※橋本先生の算数の授業は、学校導入版で視聴できます
学校導入版の詳細はこちらをご覧ください...
テキストの続きを読むにはプランのアップグレードが必要です。
さらに表示する