-
ダイジェスト
ダイジェスト [42秒]
-
インタビュー
かわのとしお先生インタビュー [23分23秒]
-
授業全編
福岡県那珂川町立那珂川北中学校・かわのとしお先生(中2・道徳・数学) [30分38秒]
-
授業1/5
福岡県那珂川町立那珂川北中学校・かわのとしお先生(中2・道徳・数学) [7分4秒]
-
授業2/5
福岡県那珂川町立那珂川北中学校・かわのとしお先生(中2・道徳・数学) [6分44秒]
-
授業3/5
福岡県那珂川町立那珂川北中学校・かわのとしお先生(中2・道徳・数学) [6分10秒]
-
授業4/5
福岡県那珂川町立那珂川北中学校・かわのとしお先生(中2・道徳・数学) [5分3秒]
-
授業5/5
福岡県那珂川町立那珂川北中学校・かわのとしお先生(中2・道徳・数学) [5分38秒]
仲間を誰一人見捨てない授業 福岡県那珂川町立那珂川北中学校(数学・道徳)かわのとしお先生インタビュー [23分23秒]
概要
福岡県那珂川北中学校の1人も置いてけぼりが出ない数学授業
福岡県の那珂川町立那珂川北中学校かわのとしお先生の数学授業は、一人も置いてけぼりを つくらない授業。
生徒間の理解度の差が起きやすい数学を通じて、かわの先生が生徒たちに教えているのは「情けは人の為ならず」の精神!?
どのような『学び合い』授業なのか、お話をお伺いしました。
【インタビュー前の雑談 <番外編>】
河野 敏生氏(以下、河野) 頭の良い人が意見を言い、他の生徒はシーンとして、授業が進んでいくことがよくあり、「面白くもなんともないな」と感じました。
アクティブ・ラーニングか分からないですが、昔から同じパターンで授業をしています。自分では、「血湧き肉躍る道徳」と言っていますが、子どもたちが考える授業です。同じ教材で同じ質問をしても「はい、意見を言って」と言うと、3人くらい手を挙げるだけですが、ちょっとやり方を変えるだけで、子どもたちがたくさん意見を言うので、僕はあのやり方がとても好きです。
このやり方は、明石家さんまさんが、ひな壇の人の意見を「ひゃっほー」と言いながら、オーバーアクションをしながら引き出すことから発想を得ています。子どもたちに考えさせることは、アクティブ・ラーニングのようにやって、最後のまとめは、さんまさんをイメージしながら行います。「深いなぁ、おまえたち」と言いながらこちらが伝えたいことを、話の中に織り交ぜます。
要するにアクティブ・ラーニングになるべきは教師ではなく、子どもだと思っているので、「まさにアクティブやなぁ、あいつら」と思っています。僕は、最後に「ひゃっほー」と言うだけというイメージです。
(インタビュアー:今回の場合、3問目はやっぱり、難問ですね。)
河野 道徳の授業では、簡単な質問から2番目、3番目と、どんどん深い思考が必要になるように作られています。道徳の授業をする時も「3番が一番難しいけんね。一番簡単なところでもいいよ」と言ったら「本当に簡単なところでもいいですか?」と聞きに来る生徒がいました。
「いいよ、簡単なところでも。でも、それで君は満足すると?」と聞くと「はい、じゃあちょっと3番考えようかな」と答えます。あの子たちは何度もこの形式で授業をやっているので、3番がいっぱいになった経験もあり、上手にばらけます。生徒はそれなりに深い意見を考えてくれているので、助かります。
【インタビュー本編】
Q.アクティブ・ラーニング型授業を始めた経緯
河野 以前は講義型の授業をしていました。7年ほど前、アクティブ・ラーニングというか、上越教育大の西川純先生が提唱している、『学び合い』という言葉を市の同和問題研修会の講演で、初めて聞いたんです。
「へえ、そんなのがあるんだぁ」と思って、インターネットで「西川純」「上越教育大」「学び合い」で検索をしてみたのですが、『学び合い』はとても魅力的でした。仲間を誰一人見捨てないと最初に魂を込めて訴えて、あとは、「みんなでやっていこう」と伝えます。
「ほ~、こんなやり方があるんだ」と思い、僕は数学の教師ですので、7年前に数学で実践し始めました。今は道徳や学活とかでも、シーンとした中でやる活動にも取り入れています。班になってホワイトボードに意見を書いてもらう授業をやっていても、班の中であまり意見を言わない人も出てしまうのですが、さんまさんを見ながら、「これだぁ~」と思い、今のパターンでやっています。
7年前は講演会を聞いて、感動した3人の教師で始めました。学校では、2年後に、校内意見を聞き、学校の先生全員で『学び合い』をやろうと取り組みはじめました。
僕はその時、研究主任をしていて、西川純さんを招いて講演を聞いたり、スカイプで授業を見てもらい意見をいただいたりしました。その学校では、国語、数学、社会、理科、英語、美術、音学、保健、体育、技術、家庭科、道徳という全ての教科を『学び合い』でやっていました。
この学校は、2年目ですが、今、個人的にアクティブ・ラーニングに取り組んでいます。アクティブ・ラーニングや『学び合い』は、人数がたくさんいたほうが良いです。「仲間を誰一人見捨てるなよ、おまえたち」というクラスを作ることで学力を底上げし、人権感覚も高めるという仮定の下でやっています。
例えば、数学の時間中に、つい居眠りをしてしまう子もいます。「なんで仲間を見捨てようかぁ」、「誰々ちゃん、寝とるやん。教師が気づく前に、なんであんたたち起さんと。冷たいねぇ」、「仲間を見捨てるなよ。こいつ学力そがれよんけえ、みんなで学力上がれよ~」と怒ります。
Q. 中学生という多感な時期であるが、反抗する生徒はいないのか?
河野 それこそ居眠りしそうな生徒には「頑張ろうぜ」と、言いに行きます。数学が分からず、小学校の分数の足し算ができない生徒は、連立方程式の速さ・時間・道のりの文章問題の授業の時はお手上げです。
その時は「もうあんたは今日、もうせんでいい」と、通分の特訓をさせます。「あんたはこっちができんと、もうこれには辿り着かんけん。「1/2+1/3は?」とホワイトボードを用意して教えます。「1/2+1/3やって」「2/5」「違う!」と、生徒は怒られています。
また、「数学は、目当て達成は非常に困難な教科だ」と生徒たちに言っています。世の中に出たら、50分間で目当て達成することはありません。「目当て達成は困難だから、達成しなくてもいいや」と諦めるのではなく、「世の中、社会に出たら、目標達成することが1年も2年もかかることもある。その時に諦めんために、数学も目当て達成を1年に1回か2回でも頑張ろう」と言っています。
Q. 生徒からの評価は?
河野 生徒たちはアクティブ・ラーニングが好きです。座学だと、居眠りしてしまう子たちも、居眠りせずに頑張ります。
僕が「○○、きちんとやれ」と言っても「ふん!」という態度で、集中できない生徒もいます。しかし友達が「ねえ、一緒にやろうよ」と言うと「うん」と言って、勉強を一緒にしています。
去年までは、数学の教師が学年に2人いましたが、今年は1学年全部を僕が見ています。今までアクティブ・ラーニングに触れてなかった生徒が、今年からアクティブ・ラーニングに触れて、勉強して「点数が上がったぁ!」と言いに来る子もいます。
「先生、僕、この数学、2年になってから成績が上がりました」、「ああ、よかったねえ。でも、それは俺のせいじゃなくて、あんたが頑張ったけんやね。わざわざ俺に言わんでいいよ」と、けんもほろろですが言っています。
しかし、『学び合い』というのは本当にそういうものだと思います。生徒と生徒の繋がりや、絆を強めていくことで、色々な問題を解決できるということが、西川純さんの『学び合い』かなと、僕は理解しています。よく、生徒たちは頑張っていると思います。
Q.再現性のポイントを教えてください。
河野 テスト前など、ある程度授業内容が終わって、一時間テスト対策の時間ができる時は簡単に始められると思います。
市販のプリントを配り「はい、やりなさい」というのを、一人で黙々とさせるのではなく「もう教え合っていいよ」と言います。答えは一人一人に配るのではなく、前に一枚だけ用意しておきます。「初めから答えを見に来てもいいし、途中で答え合わせをしてもいいよ」と伝え、「勉強スタート」と始めるのが一つの手かなと思います。
僕は、ラスト10分で小テストをします。渡したプリントの中から、全く同じ問題をやると、暗記する生徒がいるので、数字を変えた問題を出すと、生徒たちはそれで学び合うと思います。
それが、手っ取り早い方法かなと思います。それで手応えを感じたら、普通の授業で、少しずつ『学び合い』を入れてみたらどうかと思っています。
僕自身は、西川純さんの『学び合い』をインターネットで知り、書いてあったやり方を自分なりに解釈しながら真似して、失敗をたくさんしました。皆さんもやはり失敗をして、失敗をどうクリアしたらいいか、近くで『学び合い』をやっている人に聞くべきです。誰もいなければ西川純さんにメールをすれば、すぐ返ってきます。
例えば、僕は答えを前に一枚置くというやり方も知らなかったので、はじめは全員に答えを配ろうとしていました。たまたまその時、西川さんが前任校に授業を見に来ていて、「ちょっと待って。答えは一枚、教卓の上に置いときなさい」と言いました。「なぜ?」と思いながら、「分かりました」と言って、前に、「はい、どうぞ」と置くようにしました。
そうすると、早くできた生徒たちは、「ここの解き方、こんなふうにしたけど、ここはどうなんかなぁ?」と議論をはじめ、納得した子は席に戻ってから、友達に教えていました。
失敗を恐れずに『学び合い』をやって、うまくいかないと思ったら、アクティブ・ラーニングをしている人に相談すればいいと思います。僕は西川純さんに、しょっちゅうメールします。フェイスブックでも繋がっているので、フェイスブックでも質問します。
Q.現時点での課題と展望を教えてください。
河野 今、数学では、連立方程式の計算をしていますので、最初にプリントを4枚か5枚くらい、「予習できる人は予習してきて」と配っておきます。
「部活とか色々忙しいから、そんな人もなかなかおらんやろうけど、でも、予習は友達のためやんね」、「だって、予習してきたら、授業が始まったとたんに答え合わせができて、そして、答えを友達のところに教えに行けるので、予習は友達のためだ」と言っています。
それで授業を進めますが、単元分のプリントを渡したら、あとは自分たちで、どんどん、どんどん進んでいくという『学び合い』の高次元の姿があります。
早い子は、5枚も6枚も先の内容を扱うプリントも終わっています。僕はプリントを配る時、「今日はナンバー1のプリントをしますね」「今日はナンバー2のプリントをしますね。答えはここです」というふうに、進度を決めていますが、それさえも子どもに任せてしまうやり方を聞いたことがあります。
「単元テストで全員80点取るように、みんなで頑張ってください」と、言うそうです。点数を取れない子がいたら「おまえたち何をやっているんだよ」と言うそうです。いつか、そうした授業内容もやりたいと思っています。
また、前任校では少しずつやっていましたが、クラスや学年、全校の合同学び合いも、いつかやれたらいいなと思っています。こればかりは、校内研究をいうスタイルを取ればやりやすいのですが、今はどうしようかと思っています。
Q.道徳と数学でやり方を変えているのですか?
河野 だいぶ違うと思います。数学はもっとシステマチックです。子どもたちが動くのは同じですが、「何分になったらテストでーす」と声をかけると、子どもたちは時間を気にしながら「あと3分しかないよ」と言って教え合いをしています。
Q.道徳の授業について解説をお願いします。
河野 道徳の授業は、まず資料を配りました。資料の1枚目を読んで質問1の内容を確認、それが終わって、2枚目を配って質問2、それが終わって、質問3と進めていく授業が一般的です。
僕の授業は最初から、資料も質問も全て提示して、そ「さあ、どこか1ヶ所を友達と一緒に深く考えましょう」という提案の仕方です。
反論も色々来ますが、生徒の姿を見ると、とても深く、深く考えて回答しようとしますので、僕はこういうやり方もありかなと思っています。
生徒たちがアクティブ・ラーニングで一生懸命頑張るシーンが「考えるところ」とするならば、ラスト10分の解説は「教師の見せ場」だと、僕は思っています。
さんまさんのようなオーバーなリアクションも入れつつ、生徒に語れるものを持っておかないと、上辺だけの知識や薄っぺらい解説は子どもに見透かされると思っています。僕はやっぱり魂を込めて勉強をしていますし、被差別の方たちと話をしてきて、その方たちの思いも授業に取り入れているつもりです。
そこは教師の見せ場だと思うので、一生懸命勉強しないと、最後の10分が薄っぺらいものになると思います。さんまさんの雰囲気を醸しだしつつ、言っていることは実は深いというギャップが、僕は好きです。
Q.数学の授業について解説をお願いします。
河野 数学でこだわっているのは、目当てを書いて、簡単な解説をした後「さあ、勉強スタート」と言うことです。昔は「学び合いスタート」とか、今で言えば「アクティブ・ラーニングスタート」と言うのかもしれませんが、僕は「勉強スタート」と言います。
仲間を誰一人見捨てないというのが、僕の取り組んでいる授業ですが、例えば、授業の最初、挨拶の時に、元気がない人や、腹が立っていて、授業を受ける気ない生徒もいます。
そんな時に「ねえ〇〇ちゃん、頑張ろうよ」と声をかけることから、そのアクティブ・ラーニング、『学び合い』はスタートしていると考えたら、意見交流する時間だけがアクティブ・ラーニングではなくて、授業の最初の挨拶から『学び合い』が始まっています。
もっと言えば、その前の10分休みに「今日、おまえ、前の時間の勉強分かったとや?」と声をかけるのもアクティブ・ラーニング、『学び合い』だと思っています。そのため、「さあ、アクティブ・ラーニングスタートです、さあ、『学び合い』スタートです」とは言わないようにしています。
「はい、勉強スタート」と言い、生徒たちは交流を始めます。交流の中で、ホワイトボードや黒板を使うこともあり、「何を使ってもいいから目当て達成してください」と伝えています。
今日の授業では、時間を指定して、「○時から小テストをします。小テストで全員8割を取ることが今日の目当て達成ですので、それに向かってがんばりましょう」と、評価基準をはっきり子どもたちに伝えています。
「だから、時間も気にしなさい」、「友達ができているかどうか、一生懸命気にしなさい」と言い、できたかどうか、ネームプレートで表明させています。
あとは生徒たちに「できると分かるは違う」、「数学が苦手な子は友達から教えてもらって、ああ、分かった分かった、でも小テストで点数が取れない。そんなのは、当たり前やろ」と言っています。
「おまえ、部活の顧問の先生から、野球部とかソフト部の人が、素晴らしい素振りを、素振りは脇を締めてこうするって習った。それを目で見て、ああ、そうなんだ。それで素振り出来るようにならんやろ」と。
「見て分かった後に、出来るまで一日100本も200本も300本も素振りをして、それを1年も2年も続けてやっと出来るようになるっちゃね。だから、分かったと思ったら、次は練習問題せなやろ」とメッセージを送ります。それは、できない生徒に対してのメッセージではなく、できる子へのメッセージです。
数学が得意な子が、友達に教える時に「ああ、分かった」と言われて満足するのでなく「本当にわかったと?じゃあこの問題解いて?」と言わなくてはいけないと思っています。
小テストをしない時もあると言いましたが、昨日は、久しぶりにくじをしました。小テストではなく、出席番号で当たった人が5人、前に出てきて、その日解いた問題が全部解けたら目当て達成にします。
普通なら小テストで全員が合格しなくちゃいけないのですが、くじにすることで少し目当て達成のチャンスが増えます。昨日は5人前に出てきて、1人できなかったので、目当て達成はしませんでしたが、子どもはそういう授業が好きです。
だから、数学でも小テストだけでなく、色々なやり方があると僕は思っています。実はそれも西川純さんとか、あと上越教育大の水落先生の本に書いてあった内容を参考にしながらやらせてもらっています。
Q. 河野先生の授業にタイトルを付けるとしたら?
河野 僕は、ごくごく普通に授業をしているつもりでいますが、仲間を誰一人見捨てない授業を求めています。
「誰一人見捨てるなよ。そんなの、世の中当たり前だよって。道歩きよって、おばあちゃんが買い物袋持ってゴーンッて転んだって。すごい音がした。振り向いて、あら、ばあちゃん大丈夫?たんこぶ出来とうやーん、みかんを拾ってやる。これが世の中普通よ」と伝えます。
「それを学校の中でしようよ」と言い、授業の内容を分かっていない人がいたら「俺、教えられるぜ」と声をかけるべきだと数学の授業の最初に、魂を込めて話します。最近は「2020年に大学入試が激変するよ」という話もします。ちょうど今の中学2年生がそれの当たり年、その年になります。
大学入試が激変して、知識偏重ではなくて、コミュニケーション能力や、問題解決能力を計る集団・小集団の面接、小集団討議、講義を聞いてレポートをまとめるというように変わります。
「頭良いだけじゃもう駄目だから、頭良い人は、自分がどれだけ人を説得できるか説得力が要るとよ」と話しています。「どうぞ、数学の時間を利用して、君の説得力を磨いてください。数学ができん人を利用して、自分がどれだけ説明できるか」と。
「それを一年間毎日やってん」「そして、今から7年間毎日やってん、おまえの説得力はすごいぜ。大学通るぜ」って。「だから、人を助けることが自分の得になるよ」という話をします。
「人を助けなさい。それが道徳的に正しい行いです」ではなくて、「自分のためになるよ」ということも伝えますね。
※かわの先生の道徳・数学の授業は、学校導入版で視聴できます
学校導入版の詳細はこちらをご覧ください...
テキストの続きを読むにはプランのアップグレードが必要です。
さらに表示する