概要
?まるでクイズ番組!?まるでコント!?
全員参加のエンターテイメント国語授業
文教大学付属中学校2年生の国語授業です。
自分で課題を見つけられるようになってほしい。
一人一人が自分の役割を認識して、自分なりのリーダーシップを発揮できるようになってほしい。
浅沼恭子先生は、そんな思いから、2年ほど前からアクティブ・ ラーニング型の授業を実施されています。
今回取材させていただいたのは、会話劇を取り入れた授業。
生徒たちは意図的に間違った敬語を使ったシナリオをペアで考えて、会話劇を演じ、他の生徒たちは、クイズ番組のように間違いを探し当てます。
全員参加のエンターテイメント型授業は国語以外の教科でも 応用可能!
ぜひご覧ください。
Q.中学2年生という時期
浅沼 恭子先生(以下、浅沼) この時期の生徒たちは、とてもコントロールが難しくなり、1個1個の指示に対して、「それは良いのか悪いのか」「自分たちにとってどうなのか」ということを考えて動きます。
例えば、「こうだよ」と言って、「ああ、そうなんだ」と動くのが去年の生徒たちで、「こうだよ」と言って、「なんでこうなの?」と動くのが今年集まった39人の生徒たちです。
あと半年後ぐらいには大人になり、先を見て「早く動いたほうが得だから、早く動いちゃえ」ということを考え始めると思っています。
Q.AL型授業の内容と進め方
浅沼 まず文法の授業で、敬語という単元をやりました。例えば、「食べる」という言葉を尊敬語や謙譲語にするといった内容です。
尊敬語と謙譲語といくつかのパターンを、「何々になる」や、「尊敬語は尊敬語でも色んなパターンがある」という文法的なことをドリルでやり、定期テストにも文法の問題として出しました。
そういう知識を知ってから、自分たちが日頃接しているコンビニやファミレスでの会話、学校での会話の中の敬語というものに注目し、「意図的に間違いを入れることによって何が正しいのか」ということを考えることができます。そこで、「自分たちで場面を設定してやってみよう」ということが今回の活動の意図です。
そういうことによって、敬語というものに対し敏感に反応してもらえればなと思っています。
Q.授業の準備
浅沼 二人一組で1コマ、1.5コマぐらいのシナリオ作りをやってきました。早い子は50分間で出来てしまうのですが、遅い子は50分間よりもう少し時間がかかるので、その間に、早い子には台詞回しの練習をさせて、遅い子にはシナリオ作りをさせます。
ドリルとか、ワークをやる段階で、「これ最終的にシナリオを作ってもらうよ」と言っています。
ただそれが、「シナリオを作るよ」とポンと言っても、恐らく全然その時はイメージが出来ず、「プリントを配ってこうやるよ」と言ってから意識し始めたと思うので、一応ドリルをやる時から投げ掛けはしています。
Q.生徒の反応
浅沼 最初はすごくやる気がなかったです。「なんとかで~す」という具合でした。店員なのに、「やる気がない」など言われていましたが、あれでもすごいマシになったほうです。少し練習もしましたし、「今日、撮影するよ」と言っていたので頑張ったと思います。
Q.生徒の敬語への認識
浅沼 認識はありますし、たぶん、本当に使おうと思えば使えるのですが、わざと使わない年頃です。わざと先生にタメ口で話しかけてみて、どう反応するかということをみているのかもしれません。毎日そうです。
ただ、それはどちらかというと、敬語がちゃんと使えるかというよりは、子供たちも距離を測って接している分、生徒指導にかなり近いものになります。
Q.AL型授業を通じて感じる生徒の変化
浅沼 ワークをやって、アウトプットしておしまい、だとただの知識で流れてしまいます。それを自分たちで曲がりなりにも作って発表させるようにすると、そこで使った敬語などは、耳から入ってきた時に少し意識するようになるのかなと思いました。
「アンテナの感度を上げる」というか、まだその次元です。定着というよりは「意識する」ことについては、出来たかな、出来ていたらいいなと思っています。
Q.アクティブ・ラーニングとの出会い
浅沼 2,3年ぐらい前に、教員研修でアクティブ・ラーニングの講師の先生がいらっしゃったのがきっかけです。「これからはアクティブ・ラーニングだよ」という話があり、そういうのを取り入れていくのが「これからの形」なのだろうなと思いました。
Q.アクティブ・ラーニングのスタート
浅沼 最初は高校3年生の現代文でスタートしました。受験生だったので問題演習しかやっていなかったのですが、それでも、「どれが正解か」について話し合わせて根拠も言わせる、ということをむりくり問題集の中でやらせました。
バリバリ受験する子は、もう一方的な解説になるのですが、もう推薦が決まっていた子は,黙々とやって50分間終わるより、そういうことをやらせる方が活性化して取り組むと思い、なにより50分間耐えるだけで終わる子がいなくなるという効果はありました。取り入れられる場面があったら取り入れたほうがいいなと思っていました。
ただ、それをやるのであれば自分が準備しなければいけないし、先にどういう展開になるかということを読んで、こういうサポートが必要だなど、しっかり頭の中で組み立てないと崩壊してしまうというか、グダグダな時間で終わってしまいます。
そこは普通に予習するのと違う頭を使うというか、違う組み立てが必要ということです。
Q.中学生に対しての授業の進め方
浅沼 聞くということが出来ないと、基本的に成り立たなかったりします。中学生は、班で話し合わせても話が逸れまくるので、その話題にちゃんとフォーカスして話し合えているかということをチェックしていかなければなりません。
だから、この時間までに、「10分間でこれをやろう」や「10分間でこれを決めよう」ということを、具体的な時間やタスクで区切って促すということが必要です。
Q.アクティブ・ラーニングはいつから始める?
浅沼 アクティブ・ラーニングを始めるのであれば、学年が低ければ低いほど抵抗がなく浸透すると思っています。中学1年生の生徒たちは、恐らくやろうと言えばすぐやろうとなるため、発表系の授業も普通にやっていれば形になると思います。
Q.AL型授業のポイント
浅沼 段取りとオチを決めておくことです。発表すると、本当はフィードバックシートがあって、最終的なデータとして成績になります。また、オチについては、発表としてのオチと、もう1つは成績に入るかどうかというオチがある。
中学2年の生徒たちは、「先生、これ成績に入るのですか?」といったように、自分たちの取り組みとか、一生懸命頑張ったことが何に繋がるかということをすごく気にします。
発表して、「ちゃんと出来たね」「よかったね」というだけで終われるのが中学1年生で、中学2年生は、そこにちゃんと「成績がどのぐらい入るの?」「取り組みの時から見ているよ」「全部評価されているよ」「聞く態度も見られているよ」とか、そういう一個ずつを言ってあげて、それが見える形にオチをつけてあげるといいです。
数値化は、評価付けに絶対必要です。フィードバックシートや最終的に集めたプリントも、ABCとか評価してコメントを書いて返さないといけないと思います。
要は、評価付けが最終的なオチにないと、結局アクティブ・ラーニングって何だろうということになってしまいます。
Q.AL型授業の効果
浅沼 中学1年生の時、入学式から1か月ぐらいで色んなことをさせたのですが、その時から見ると、色々出来るようにはなってきていると思います。
「発表することに抵抗がない」「発表するものを作ることの要領の良さ」とかは、年を追うごとに付いてきました。去年よりは、短時間で作れるとか、取り組みが早いというのもあります。
今は、「班で話し合う」「何かに複数で取り組む」ということに対するハードルなどはないと思います。
また、1日にたくさん授業を受けていると思うのですが、ただただ何もなく過ぎ去るのを待つ時間ではなくなるという意味で、国語という教科に対する関心度の高さみたいなものはあげられると思います。
すごく根本的なことですが、結局、ペーパーテストが出来るか出来ないかということは、それと共に、国語とか言葉、要するに気付き力があるかないかということになります。色んなものに関するアンテナの感度を上げていくということが、自分の授業の本質であり、そこに繋がってくるのかと思います。
例えば、総合学習の時間というのがあり、そこでも発表とか調べることをやっているのですが、「国語で素地を作ってくれたから、すごくやりやすかった」と、他の学年の教員に言われました。
なので、そういう色んなところへ派生していくのかなという気はします。
Q.これからの改善点
浅沼 同じ評価軸を設けてやらないと、自分がやったことの振り返りや検証が出来ないということが反省点でもあり課題です。
その時1回で終わってしまうことが多く、どんな発表形式でも、どういう活動であっても、何か共通する評価軸をしっかり自分の中に持ち、それをその都度チェックしていかないと、「活動して終わり」ということになってしまいます。ですので、そこは検証できるような活動をもう少ししっかりやっていかないといけないなと思います。
Q.どのような授業にしていきたいか
浅沼 例えば、文法の授業の場合、自分たちで身の回りのよく聞く会話を集めてきて、疑問に思ったことを検証していくとか、そういうグループ学習、研究といった自分の掘り下げ方が出来ればいいです。
色々な場所によって使われる言葉は変わっていきますし、ある場面で良いとされる文法も、それが全てということではないので、そういうことについて、興味関心を持ってもらえる授業にしていければいいなと思います。
Q.どのような生徒になって欲しいか
浅沼 最終的にはしっかり自分で課題を見つけられるとか、色んなことに気付いて、それをちゃんと掘り下げていけたり、発表の時に人前でしっかり話せる子になって欲しいです。
あとは、グループ学習の時、今回は2人でしたが、どういうポジションをこのメンバーの中でこなしていけば、話がまとまるのかということを「しっかり空気を読む」ではないですが、それぞれのリーダーシップを発揮して欲しいです。
1人の賢い子が全部を引っ張るというのも1つのリーダーシップなのですが、このメンバーで1つのものを完成させるためには、自分はどこをやればいいんだとか、それぞれの個性や性格に合ったリーダーシップを、その場面場面で発揮できるような子になって欲しいと思います。...
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