概要
企画力がすごい!提案理由が命!?
「なかよし会をしたい」
小学1年生の学級会を公開!松井有沙先生
1年2組の学級会。
司会役の児童が話し合いの開始を宣言して、話し合いがスタートしました。
「これから第13回学級会を始めます。話し合いでは、提案理由が命です。提案理由を意識して、話し合いましょう。」
途切れることなく意見が飛び交い、いい意見だと思うと子どもたちから「いいねー」という声も上がります。
議論が煮詰まったときには、司会役の児童が機転を利かせて、「それじゃあ、1分、隣の人同士で話し合ってみましょう」と、見事にファシリテート!
大人顔負けの議論の運びに、本当にこの子たちは小学校1年生なの?と信じられない気持ちになりました。
いったい、この子たちは何者なのでしょうか?
実は、当校は、東京都八王子市の特別活動の研究指定校であり、文部科学省の研究協力校。
学校全体で、特別活動を軸に学校を改革をしているのです。
今でこそ、子どもたちは生き生きと自分の意見を言い、協力し合って学校生活を送っていますが、清水校長が当校に着任した当時は、「あなたは、自分にいいところがありますか?」 という質問に対して「あります」と答えた児童が18%しかいなかったそうです。
この数字は、東京都内、さらに、全国の学校と比べても、一番低い数値。
学級崩壊。いじめ。保護者からのクレームも多く、この状況を何とかしなければいけないと、清水校長は、特別活動を軸に学校改革をすることを決めました。
そこからどのように、学校は、先生は、子どもたちは変わっていったのでしょうか?
Q.特別活動とアクティブ・ラーニングの関係
佐生 秀之先生(以下、佐生) アクティブ・ラーニングではない特別活動はない、と思います。特別活動は、子どもたちがより良い生活や、より良い人間関係を築く力を形成していくことが目的です。
そのために、どんな課題があるかを自分たちで見つけ、課題解決に向けて自分たちで話し合い、解決策をみんなで決めます。そして、決めたことをみんなで分担して、実践していくわけです。
実践してみて振り返りをしていく中で、例えば集団の中の活動であれば、こんな気づきが出てきます。自分のことを友達が見ていて「あいつ、頑張っていたよね」と言ってもらえたり、逆に自分が友達のことを「あの人、頑張っているよね」と伝えることができたりといったことです。
自分を認めてもらえたり、友達同士が認め合えたりする、こういう集団を子どもたちは「なんか素敵じゃん」と思えるわけです。
そして、今回の課題は何だったのかを見つけ、今度はその課題解決に向けてアクションを起こしていくことにつながります。そのスパイラルの中で子どもたちは、豊かな社会性や望ましい集団性を育てていくのではないでしょうか。
そういう「成すことによって学んでいく」ところが特別活動の狙いです。子どもたちが主体的でなければ、そもそもこの活動は成り立たないので、まさにアクティブ・ラーニングそのものなのだと感じています。
Q.特別活動の内容
佐生 例えば、運動会などの学校行事です。文化的行事でいえば、その中に学芸会もあります。それからクラブ活動です。あとは児童会・生徒会活動のような、より良い学校に向けた運営を子どもたちが直接的にやるものがあります。それから学級活動も行います。
大きく分けるとこのように、学校行事、クラブ活動、児童会活動、学級活動の4つの領域で特別活動は構成されています。
学級活動の中でも、(1)と(2)の2つに分かれます。今日、低学年と、最後の5時間目にやった中学年の授業は(1)で、4時間目にやった高学年6年生の授業は(2)に当たります。(1)は、自分たちで課題を見つけ、自分たちの手によって生活をより良くしていくという活動です。
(2)は、教師の方で意図的、計画的に1年間やることが決まっていて、それをきちんと子どもたちに伝えていきます。即効性を求める道徳と捉えてもらえば分かりやすいと思います。
だから(2)は、教師が「明日から君、どうする?」「それ、具体的に振り返れる?」「できたか、できないか、白黒はっきりさせよう」といった働きかけをし、子どもは「自分たちはできた」というように、具体的に改善していくものです。
一方、(1)は、教科書がない特別活動です。なぜなら、毎日の学校生活そのものが子どもたちの学びのフィールドだからです。教科書などを作ると、それは「ごっこ」になってしまいます。ですから、教科書は用意しません。
うちの子たちの場合で言うと、「弐分方小学校での毎日の生活をより良くしていくためにどうする?」というテーマになるので、教科書などは使わないのが特別活動の立ち位置と言えばよいでしょうか。実際、今日の低学年と中学年の授業の中で、それが色濃く出てきたのではと思います。
Q.アクティブ・ラーニングに取り組む理由
佐生 学校のみならず、教育において大事だと思うのが、やはり学びへの動機付けといいますか、やらされる勉強ではなくて、自ら追求していく心です。その意欲を育てていくことが、一番大事なのだろうと思います。
そういう気持ちのある子は、自分で自分の学力を高めたり、生活を良くしていこうと考えたりすることができます。自分から動いて周りも良くしていこうという、集団における人として望ましい子どもに育っていくのかなと思います。
我々がやっているのは、子ども作りであり、人間作りです。そういう全人教育を行っていくにあたり、アクティブ・ラーニングは外せないと考えています。
Q.アクティブ・ラーニングの難しいところ
佐生 一つ目は、評価が難しいというところです。客観的に点数化されることがなかったり、場合によっては、こちら側が意図したものが子どもたちから出てこなかったりします。要するに、今日のこの学びが子どもたちにとってどれだけ効果的なものだったかを、短いスパンではなかなか掴めない時があるのです。
もし、やる内容が決まっていて、伝えなければいけないものがきちんとあるならば、正解・不正解と分かります。テストをやって、丸付けをしてみて、「合っていた」「間違っていた」とはっきり出ます。
けれどもアクティブ・ラーニングで見るのは、子どもたちの学びの意欲です。あの子には学びの意欲があり、この子にはないとは、なかなか見定められません。黙ってジーッとやっている子でも、実はじっくり集中している場合もあるのです。果たして子どもたちをきちんと見て評価できているのか、難しいと感じることがあります。まず、それが一つ目です。
二つ目は、アクティブ・ラーニングの手法の用い方です。例えば、子どもたちに話し合いの場を設けている、自分たちで課題を設定させているといった形ばかりにとらわれてしまうと、子どもたちがまったく中身についてきていないということになりかねません。そこのところは、教員として気をつけなければいけないと思っています。我々が油断しないようにやっていかなければ、子どもたちもすぐに気持ちが抜けていってしまいます。
こちら側も、アクティブ・ラーニングではなく、やることがきちんと決まっているものをバーッと伝えるだけの授業の方がある意味、楽なのです。
だから、やはり教師自身もアクティブ・ラーニングの魅力を理解し、それによって伸びゆく子どもたちの姿を期待していかないと、消えていってしまうだろうと思っています。そのあたりは、緊張感を持ってやっていきたいです。
Q.先生自身が行っているアクティブ・ラーニング
佐生 うちのクラスは、朝の時間に子どもたちがスピーチをやるようにしています。担当は日直の子で、毎日変わるのです。大体3分以内と言ってはいますが、実際にはちょっと授業に食い込んでしまうこともあります。
ただ、スピーチといっても、「今日も楽しく元気に頑張りましょう」ではなく、テーマは自由設定です。基本的に資料を用いて、考察を最後に入れなさいと言っていますが、子どもたちは結構、面白いスピーチをやるのですよ。
例えば、自分が好きなスポーツ選手の秘密に迫ってみたりしています。自分で課題を設定して、なぜみんなに知ってもらいたいのかという理由をきちんと言い、出典はどこかを伝えて、「この選手の考え方のこういうところがすごい」などと発表していました。
この間、とても感心したのは、ある子どもが食品ロスについて考えてきてスピーチしたことです。その子は、「日本は輸入までして食品ロスの多い国」と、結構シビアな発表をしていました。兄弟の中に栄養士のお兄さんがいて、内容を組み立てるに当たっては「お兄ちゃんにインタビューしてきました」と言うのです。
こういった発表ができるようになってくると、何かを見つける目を養うことになります。その中には話し合いこそありませんが、自ら学んで、自らまとめて、それを工夫して楽しく発表していくという、一つの「学びの過程」を学んでいくことができ、「良いなぁ」と思います。
そういうことが得意な子は、今日のような学級会でも非常に力を発揮できます。「さあ、みんなで話し合ってみようか」という時に、疑問を持つ視点や、「いや、僕はこう思ったからだよ」という考察を、きちんと持って学び合いに参加していけるのです。うまくいけば、アクティブ・ラーニングの土壌作りに良いのかなと思って、朝のスピーチをやっています。
Q.生徒たちへの期待
佐生 何のために自分は勉強するのか、何のために学びを深めるのか、その「何のため」という動機が見てとれる子どもたちになってもらいたいのです。
人から与えられたものでもこなすくらいはできますが、やはり「できるか、できないか」ではなく、「やるか、やらないか」というところで日々、自分を成長させていってほしいと思います。
点数がパパンッと簡単につくものだけではなくて、点数がつくかどうか分からないものでも、疑問に思ったことを調べてみよう、という意欲を持ってもらいたいのです。あるいは、「これについて、おまえ、どう思う?」と人を巻き込んでいくような、そういう一緒にいたいと思わせる魅力のある子に育ってほしいと思っています。...
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