概要
「自分の考えが深められて、楽しい!」
生徒が30文字で意見をまとめる、紙芝居プレゼンテーションとは?
「では、求人広告を見てみましょう」
取材当日のテーマは、「現代日本の労働と雇用の特色と課題について理解する」。
求人広告を見ながら、自分だったらどんな点に注意して仕事を選ぶか、自分事として考えていきました。
授業の後半は、グループで紙芝居を作ってプレゼンテーション!
「自分の考えが深められて、楽しい!」
「分かりやすいです!」
「好きです!」
と生徒たちがいう、前川先生の授業。
紙芝居プレゼンテーションや、アクティブ・ラーニングを促す様々な取り組みを始めてから、授業中の居眠りは一切なくなり、成績のばらつきも少なくなっていったそうです。
こちらの動画は2セットございますので、ぜひ他の動画もご覧ください。
明光学園中学校・前川修一先生(中3・公民)その2を見る
Q.公民を学ぶ意味と必要性とは
前川 修一先生(以下、前川) この子たちが過ごしていくこれからの社会が、非常に予測のつかない社会とよく言われていますので、そんな社会とどう繋がっていくかは、今後考えていかねばならないことと思っています。
いかに自分で情報を収集して、自分の能力で判断をして、他者と協力をしながら社会を開いていけるか。そのような基礎的な力を学校にいる間に身につけるために公民は必要です。
Q.授業に対するこだわり
前川 元々私は歴史の教員で、高校では歴史を教えているのですが、社会科の良いところは、私たちの生活から世界、時間軸だと過去から未来というように、すごく幅広く人間の動きを捉えられることだと思います。
扱う内容は非常に幅広いですが、離れた世界のことであっても自分事に落とし込んで、まさに今自分たちに関係のある教科なのだと思うことができると良いかなというように思っています。
Q.今日の授業で学び取って欲しいこと
前川 働くということに対し、中学生からすれば「出来れば働きたくない」とか、「働かないように過ごしていけないか」というのが本音だと思いますが、学校を卒業した後は社会に出なければいけません。ですので、今日の授業もうまくいったこと、なかなかうまくいかなかったこと共にありましたが、働くということをいかに身近に感じさせるかということを大事に今日の授業を作りました。
Q.生徒を惹きつけるための創意工夫
前川 今日はKP法(紙芝居プレゼンテーション法)を扱いました。一行10文字×3行と字数が限定されていますので、表現する内容が非常に精選され、思考の整理の訓練になります。
それをプレゼンすることによって、今こういう状況にあるのだということの自己認識を高めることができたかなというように思っています。
Q.今のやり方を確立するまでの試行錯誤
前川 ただおしゃべりをするだけで終わってしまうと、なかなか内容が深まらないので、アウトプットをどの段階でやるのかを考えるようにしています。
中学生だとなかなか難しいところはあるのですが、そういうアウトプットの訓練をさせていくことによって、他者との協同の精神も培われますし、一つのやり方としては良いのではないかと思っています。
Q.より良い授業構築のための準備とは
前川 自分の専門教科では、使えるトピックをなるべく広く探すようにしていますが、今自分に一番欠けているのは、全体を動かすファシリテーターとしてのスキルです。
それを今、外部の勉強会や研修会、私たち高校の先生同士で作っている勉強会になるべく出掛けるようにして、新しいスキルを学び、出来るだけ取り入れるようにしています。
Q.AL型授業に欠かすことのできない準備とは
前川 やはり生徒把握だと思います。「活動あって学び無し」などよく言われるのですが、やはり活動が苦手な子もいますので、そういった子には事前に声掛けをして、なるべく真ん中に来てもらうようにするなどの工夫は非常に必要だと思います。
生徒との人間関係づくりがクリアできれば、やれることがかなり幅広くなる気がします。
Q.AL型授業を取り入れてどれくらいですか
前川 2年目です。
Q.それ以前は一斉講義形式ですか
前川 そうですね。
Q.以前の講義形式と比較した生徒の変化
前川 一番はやはり生徒が誰一人寝なくなったことと、あとは「この子こういう能力があったのか」という、今までの一斉講義型では分からなかった能力を急に示してくる生徒が出てきました。そういうのが分かるようになったことは、良かったなと思っています。
Q.AL型授業で生徒から教えられたこと
前川 僕が授業のデザインの中に組み込めなかったことを、時々生徒が「こうしたら良いのではないか」「こうしたらもっと盛り上がるのではないか」と教えてくれる場合があります。中学生でもしっかり意見があるので、そういった部分はすごく参考にさせてもらっています。
Q.教科書の内容だけで精一杯という考えに対して
前川 教科書をきちっと終わらせて内容を習得させなければという考えは、学校教育の場合第一義的にあると思いますが、恐らくこれからの教育は恐らくそれだけではないだろうと思っています。
どちらかというと、授業の中でこの教科をもう少し深めてみようという学びの引っ掛かりになるようなものをどれだけ作ってあげられるかが、いま求められていると思います。
教科書もきちっと終わらせることも大事ですが、「ちょっとこれ、来週までに考えてこようか?」など、時には大きな問いで終わらせることも必要だと思います。
Q.基礎学力が低いとAL型授業はできないという考えに対して
前川 僕はどちらかというと真逆の考えで、むしろ基礎学力を高めるために、アクティブ・ラーニングは有効だと思います。
アクティブ・ラーニング型に変えたことによって、成績が急に良くなることはありませんが、全体の平均点の推移からすると積み残しが減ってきていると思います。ですから、今後はむしろ、上位層をどう伸ばしていくかということが課題です。
Q.要領の良い子中心で他の生徒は学びが深まらないということに対して
前川 それはやり様だと思います。授業の内容を刻むと言いますか、細かくデザインしていき、なるべく最初は下りたところで興味関心を引いてから、その学習内容の本丸に持って行くことが大事だと思います。
Q.AL型授業で入試に対応できるのかということに対して
前川 生徒本人や保護者の皆さんもそうですが、色んな意味で誤解があると思っていて、アクティブ・ラーニング型の授業で学力の底上げが図られることは恐らく間違いないと思います。
ただし、その後の大学受験などでは、個人の積み上げ方にかかってくると思います。例えばセンター試験のレベルであればなんとかいけるとしても、その先はやはり個別に対応していかなければならないと思います。
Q.AL型授業は学園全体で取り組んでいるのですか?
前川 まだ学園全体ではありません。私と数人の若い人が少しずつやり始めたというくらいです。
Q.それは自主的にされているのですか?
前川 そうですね。ただ、今年に入ってからは少し職員研修を見直して、アクティブ・ラーニング型の授業で有名な先生をお招きすることにしました。学校サイドも、来年度以降の変革を期待していると思います。
Q.本校は上品でおとなしい生徒が多い印象でしたが
前川 全体的におとなしい子のほうが多いかもしれませんが、今日は撮影ですごく緊張していたのだと思います。普段はもっと騒がしい時は騒がしいのですが。
Q.騒がしくなりすぎた時のコントロールの変化
前川 みんなが乗っている(騒がしい)時には、もう大きな声で言っても誰も聞かないと思うので、そういうこともある程度想定して指導案・授業案を作っていくことが大事だと思います。
私は机間巡視をして、介入できるところはなるべく介入をし、大丈夫だと思ったところは引くようにと、バランスを取っています。
Q.極力介入しないことが大切という考えとは逆ですね
前川 介入しないで成り立つのが一番理想ですしやり方として一番良いと思います。ただ本校の、特に私がいま持っているこの特進クラスは、高校入試を選択している生徒たちなので、私たちが調整をしていかなければいけないと思っています。
Q.先生が挑戦していきたいこととは
前川 今日の授業でもカメラマンさんたちに入っていただいたように、生身の大人・生身の社会人にもっと協力をしていただいて、例えば私たちが社会に出向いていくなど、まさに教室の壁を壊すようなことが出来ると非常に良いなと思います。
Q.全国の先生へ勇気づける一言を
前川 僕がいま勇気づけてもらいたいぐらいなのですが(笑)。先生、特にフロントランナーと呼ばれる先生方は、色々と壁にぶつかったり、試行錯誤をしたりということがあると思います。
しかし、恐らくじわじわと成果は上がってきているはずなので、自信を持ってとにかく突き進んでいきましょう。私も励まされながらお互いに励まし合いながら、頑張っていきたいなと思います。...
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