授業を行う上での注意点や事前準備
この動画から学べること
概要
崇城大学の自律学習センター(SALC)では、各学科の教員と大学院生からアドバイザーを選出し、学部生の学習相談に対応しています。
学生は主に、自分が受けている授業の分からないところを質問しにやってきます。
アドバイザーの役割は、答えを教えるのではなくて、勉強の仕方を教えること。
学生が主体的に学べる環境を提供しています。
Active Learning Online (ALO) について
Active Learning Onlineは、文部科学省の大学教育再生加速プログラムテーマI「アクティブ・ラーニング」に採択された全国の9つの大学が、連携して情報や成果の発信を行うポータルサイトです。
採択校である本校の授業動画については、以下からご覧いただけます。
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Q.徳島(崇城)大学の特徴や取り組みについて
松下 琢先生(以下、松下) 本学の「大学教育再生加速プログラム」の取り組みは、学生の自立学習マインドを育成する、という特徴があります。授業の中で、アクティブ・ラーニングをどう取り入れるか、ということも非常に重要ですが、あくまでも主体は学生です。その学生が自ら主体的に取り組むようなマインドを育成したい、というのが本学の取り組みです。
Q.学生生活を通じてどのような力が身につくのでしょうか?
松下 大学全体としての取り組みもありますが、今回は学科のほうから中山先生に来ていただいておりますので、先生にお聞きしたいと思います。先生、今回の取り組みを通して、学生たちに変わったところがありましたらお教えください。
中山 泰宗先生(以下、中山) 私たちが行っているSALCという取り組みでは、学生にも良い効果がありますし、私たち教員にも良い効果があると思います。このSALCを通じて、学生が自分で分からないところを考えるようになったり、もしくは他の友達に問題を教えることによって、自分の学びをより強化していくことができると感じています。
松下 少し補足しますと、SALCというのは、Self-Access learning Centerの略です。学生が自ら、分からないところを先生に質問したり、あるいは学生ファシリテーターという先輩に質問をしたりできる場所を設置しています。この「大学教育再生加速プログラム」の取り組みにおいて、現在、全ての学科にそれぞれの学科のSALCを作っています。そのような取り組みを通して、中山先生にお話しいただいたような成果がありました。
Q.ALに取り組まれた背景を教えてください
松下 本学は、平成22年に、英語教育施設として、英語教育を刷新しました。それまで英語教育は、日本人の先生方が講義形式で英語の教育をしていましたが、これを、ネイティブの先生方17名で、少人数で英語の教育を行う形式に変えて、スタートしました。これをSojo international learning Centerと言ってSILCと言います。
週に2コマ、全学の1・2年生の英語教育を全部英語に切り替えたのですが、この時にもう一つ作ったのが、Self-Access learning Center 、SALCです。
英語の教育は、コミュニケーション中心の英語の授業を行いますが、授業に出ていれば英語を話せるようになるわけではありません。授業外の時間にいかに英語に触れてもらうか、それを推進するために、SALCという設備を作りました。
SALCには様々な設備やノウハウがあります。ただ、開設当初は、本学には3700人くらいの学生がいますが、利用者数は1年間で延べ1500名程度でした。これが4年後には1万8000人まで増えたのです。理系の大学で英語の得意ではない学生が入学しているにもかかわらず、どうして授業外に英語に接するようになったのか。そこには3つノウハウがあります。そのノウハウは、全ての専門教育や教養教育にも通じますので、今回それを背景にして、新しい取り組みをさせていただきました。
SALC活用の3つのポイントの1つ目は、先生方が授業中に宿題を出す際に、「自宅で学習できるようなICTを活用した課題を与える」ということです。SALCに行けば、自分たちでその課題をすることが出来ます。
2つ目は、SALCでは、英語の苦手な学生が、自分はどこで英語に躓いてしまったのかというアドバイジングを受けられることです。この次の段階で自分は何をしないといけないか、ということも相談できます。また、すべきことは全部自分たちで決めて、そして勉強をする、あるいはその計画を作る、などの様々なアドバイジングを受けることも出来ます。これは実は、非常に大きな学習アドバイジングスキルです。
3つ目は、授業で得られる点数は全体の90%で、残りの10%が、SALCでのアクティビティで上積みされるポイントになっているということです。すると、50点くらいでぎりぎりの学生はSALCに行って、残り10ポイント稼いで合格を得ようとか、あるいは80点ぐらいの学生は、90点で秀がつきますので、SALCに行って勉強しよう、ということができる仕組みになっています。
そういったノウハウが3つ合わさって、現在確立されてきています。今お話ししたことは英語学習だけに限ったものではありませんので、これを全学の教養教育や専門の教育に繋げようという取り組みをしています。今日来ていただいた応用微生物工学科の中山先生は、応用微生物の中で、今の取り組みをしていただいています。
Q.ALを通じて学生の変化や効果はありましたか?
中山 一つは、学生が自分で計画を立てて勉強するようになってきているという点です。今までは、「勉強したくてもどうすればいいのか分からない」という学生もいたのですが、SALCを通じてアドバイジングを受け続けることで、段々と自分でどう勉強すればいいのか、ということが分かるようになった学生が増えてきたと感じます。
また、それ以外にも、学生が勉強する場所を提供できていることも大きいと思います。学生の中には、図書館で、自分自身で勉強できる学生もたくさんいますが、友達とみんなで話し合いながら勉強を進めたい、という学生もいます。
今までは、そうした学生が勉強できる場所が本学にはなかったわけですが、このSALCという活動を通じて、各学科にそういう場所を設けたことによって、学生が共に勉強し、教え合うことが出来るようになったことは、とても大きな変化です。
もう一つ、学生がお互いに教え合うことができるようになったことで、学生が自分自身の理解を客観的に確認できることにも繋がっていると思います。今まで分かっているつもりだったことも、実は人に教えると分かっていないことがたくさんあって、その中から自分の理解も深めていくことができる。
また、このSALCの活動は、私たち教員だけではなくて、聞きに来ている学生の先輩に当たる大学院生の学生さんにもお願いしていいます。そのため、院生さん自身も他の学生にアドバイスすることによって、教えている本人が自分自身の今の能力を確認したり、より学びを進化させることができるようになっていると感じます。
私自身もこのSALCを通じて、学生がどこで躓いているかということが、だいぶ分かるようになってきました。それを授業にフィードバックできるようになったという利点もあります。
数学、英語、生物、科学など、学生さんはなんでも聞いてきますが、中でも、僕が実際に担当している授業を聞きに来る学生も多くいます。そのため、学生さんの質問や分からなかった点を聞いて、自分自身の授業の足りない部分を迅速に次の授業にフィードバックすることができます。授業がより分かりやすくなることで、さらにそれがまた学生のためになる、というサイクルが出来るようになってきてました。
これは、おそらく元々の取り組みの狙いではなかったとは思いますが、そのような副次効果も生まれていて、全体を通してとても学生の教育に繋がるような活動になっているのではないでしょうか。
Q.自律学習について教えてください
松下 自律学習者というのは、日本が変革の時期にある中、基本的には生涯学習者に繋がる言葉ですね。多くの学生は、まず何か勉強が分からない時に、「どこで何が分からなくなったか」ということが分からない状態になります。
私たちは自律学習者を育てるために、アドバイジングをしていくわけですが、まずその第一歩は、「何が分からなくて躓いているか」ということを本人に自覚させることです。自覚させた後で、「今の状態だったら、どこまで何が出来るだろうか」ということをアドバイジングしていくんですね。そして次に、計画を立てさせます。具体的にどういうことをいつまでにやっていきましょうね、ということを決めていきます。
そして次に大事なことは、それを時々、「どのくらい出来ていますか?」とチェックを入れることです。そして、最終的にある程度の到達点に達したところで、次の展開についてアドバイジングをする、という流れです。
全体を通じて大事なことは、先生方からは決して、「これを次にやりなさい」とは言わないことです。あくまでも学習者である学生に決めさせます。答えを言わないというのは、もっとも難しいところであります。我々教員は主にティーチャーですので、常にティーチングモードでいます。
ティーチングモードでは、既に答えがあって、「その答えをどう伝えるか」ということが大事です。しかしアドバイジングモードでは、学生自身が自分で気づくか、あるいは選択肢を与えて自分で選ばせることが大事になってきます。その中で、学生自身から「これをやります」という答えを、対話を通じて引き出していくことが、非常に重要な技術になります。
我々の大学教育再生加速プログラムの取り組みでは、そのような先生を1人でも多く増やすために、毎2ヶ月に1回程度、ファカルティ・ディベロッパーと言われる先生方を学科から推薦していただいて、研修を行っています。また、東京での研修会に行ってもらうことあります。いかに、こうした先生方を少しずつ増やしていくかということが、非常に肝心です。
Q.学生の変化や成果が感じられるところは?
松下 自分たちで学習する場が出来たということから、自然発生的に、大学の中で教職の免許を取ろうとする学生たちがその場所に集まり始めました。自分たちで「教職サークル」というサークルを作って、時間を決めて、みんなで集まって勉強会をするとか、あるいは卒業して教員になっている先輩方に来ていただいて、指導してもらう、ということを自発的に始めました。
まだ2年目くらいの取り組みですが、その結果、今年、先生の学科から現役で教員免許の採用試験に合格する学生が2人も現れました。
中山 実際に北九州で教員に決まっている子や、沖縄で一般教員に決まっている子が出てきています。
松下 教員採用試験というのは、一発で現役合格するのは難しく、普通は、臨採(臨時採用)や非常勤で入られて、それから何年かして、ある程度スキルを身につけて、やっと合格できるというケースが多いのです。教員課程を持っている教育学部とも違いますので、中学の理科の教員に、現役で2人も決まるということは、非常に素晴らしいことだと思います。
学生というのは、自分たちで目標を決めて、そこに到達するためのある程度のアドバイジングを受け始めると、どんどん変化をしていき、伸びていくという非常に良い例だと思います。
また、本学では、ベンチャー教育にも力を入れております。ベンチャーマインドの育成のため、「ベンチャー企業論」、「イノベーション論」という授業を2年前から開講しています。800人ほどいる1年生の半分の、約400人程度が受けています。
授業を受けるだけではなくて、大学公認の起業部というものを作っています。そこでは、ビジネスプランコンテストに応募するために、自分たちで案を練り、実際に各地のコンテストに応募しています。初年から、例えば、1年生のチームがNEDOのコンテストのファイナリストに8組か9組残りました。他は皆さん大学院のチームでした。
東京大学の大学院のチームや、京都大学の大学院のチームといったところとガチンコで勝負をして、賞を獲ってきています。そういった1年生2年生が周りからのアドバイジングと環境によって意識が切り替わり、大きく成長できるというのが、学生にとってもハッピーだし、教育者としても非常に大事なことではないかなと思います。そうしたマインドの育成という意味で、我々がその一端を担っていると思います。
Q.ベンチャー起業部について
松下 そのベンチャー起業部の部のサポートを中山先生もされていますので、中山先生から、その話をしていただきたいと思います。
中山 学生が自発的に、「こういうビジネスがあったらいいのではないか、世の中がもっと良くなるのではないか」、ということを自分たち自身で考え、それをスーパーバイザーの中島先生という方にスーパーバイズされて、ビジネスプランコンテストに出したりしています。
学生さんによっては、複数の賞をたくさん受賞して、例えば、賞を獲るとシリコンバレーに研修に行く制度があったりするのですが、中には、シリコンバレーの切符を3つ4つ持っている学生さんもいます。そのように、ものすごく頑張っています。中でも、すごいと思うのは、そのベンチャーラボを卒業し、実際に起業されている方です。その方は、日本人とコロンビア人のハーフの方で、日本の良さを両親の母国のコロンビアに伝えたいということで、コロンビアでカレー屋さんを始めました。
それ以外にも、ビジネスプランを勝ち抜いて、実際に事業を起こした学生さんもいますし、去年は、Makuake(マクアケ)というサイバーエージェントのクラウドファンディングで、実際に自分たちがブランディングした焼酎のお酒を発表し、資金が、予定額以上に集まっているという学生さんもいます。今年も豆乳のアイスをそのMakuake(マクアケ)でお披露目して、目標額を達成した学生さんも現れています。
Q.どのような学生に来て欲しいですか?
松下 うちの大学に来てくれた学生は、どんな学生でも最後はちゃんと社会に送り出せるように厳しく育てるということは意識しています。今の取り組みとの関連でお話しするならば、高校でも様々なアクティブ・ラーニングをやっていると思いますが、その高校で学ぶべきことをきっちり学んで、そして大学で花を開かせたいと思っています。
ですので、まずはやはり意欲でしょうね。それが大事ではないかなと思います。受験の中でうまくいかなくて、うちの大学に来る学生もいますが、そんなことでは人生は決まらないので、そこから自分が変わろうと思ったら、いくらでも変わることは出来ます。意欲を持って、自分がやりたいことを見つけられる人、これが一番重要ではないかと思いますね。
そのために、学生が持っている夢を叶えるために、我々は様々な改革をしています。例えば、1人の先生が5人くらいずつ担当を持って、卒業するまで継続的に指導していくという取り組みもしていますので、是非、意欲を持って入学してきてほしいと思います。意欲があればいくらでも変わることは出来ますよね。
Q.今後の展望を教えてください
松下 非常に難しい質問だと思います。今、日本社会では、18歳人口が減っていき、それだけではなく、日本の社会を支える労働者人口が減っていくわけですよね。労働者人口が減っていく中で、まず大事なことは、うちは理系の大学ですので、きちんとできる技術者を育てるということです。そしてもう一つは、新しい産業を起こしていかないと、日本はこれから太刀打ちできなくなるということです。そのために、イノベーションを起こせるような気力を持った学生を育てていきたいと思いますね。
それには、まだまだ改革をしないといけないところがたくさんあります。現在、学長がリーダーシップを取って、そうした取り組みを進めていますので、是非その中で、この「大学教育再生加速プログラム」の取り組みが結びついてくるように、進めていきたいと思います。
学生さんだけの改革ではなく、先生方の意識改革も重要です。そのためには、ティーチングモードからアドバイジングモードに切り替えられるとか、学生が答えを出すまで待つことができるとか、こうしたことをできる先生を少しでも増やしていって、学生のスイッチを入れて、意欲を持った学生を世の中に送り出したいと思います。
Q.高校の先生方へのメッセージ
松下 最近、高校の先生とお話する機会が増えてきました。学習指導要領にもアクティブ・ラーニングが入ってきて、本学はそういう意味では先進的な取り組みをしているつもりではあります。
私は、お子さんの発達段階に応じて、学ぶべきこと、あるいは学ぶべきタイミングというものがあると思います。なので、高大接続をしっかりやって、1人の子どもを7年かけて一人前のイノベーションを将来起こせるような人材に育て上げる、という協力体制が、今後ますます必要になってくるのではないかと思います。
しっかりリーダーシップがとれるような子が入学してくれれば、大学で教えることはないですよね。なので、高校は高校で教えるべきこと、大学は大学で教えるべきことというのをしっかり情報共有しながら進めていくこと、子どものためにはそれが大事だと思います。
中山 高校での教育、あるいは教育だけではなく、今の日本を取り巻く環境も変わってきています。大変だとは思いますが、高校の先生を応援しています。大学では、引き受けた学生さんはしっかりと育てて、社会に出していきたいと思っています。私立大学は、様々な良い面も悪い面もあるのですが、例えば国立大学に比べてバラエティに富んだ学生が入ってくるので、教育が大変だという方もいます。
僕としてはむしろ色々な学生さんがいて、共に情報交換しやインタラクションすることで、ものすごくローバスト(頑強)な学生さんが出来るのかなと思っています。私たちも頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。
松下 もう一言だけ付け加えさせていただきますと、去年の4月に熊本は大きな地震に見舞われました。この地震が起きて、学生にものすごく大きな変化が起きています。
普段、当たり前に出ていた水が出ない。当たり前に使えていたガスが使えない。お風呂にも入れない。あるいはトイレも流せない。そのような状態を経験している今の学生は、ものすごく自分たちで何かを成し遂げようと努力し、その時に一人では何も出来なくて、やはり周りの人の手助けが必要だったり、あるいは、誰かのために動くことが自分にとっての喜びになったり、ということを経験している学生が熊本にはたくさんいます。
そのような経験を是非、教育に反映させて、その経験を活かした人材を育てていきたいと思いますし、まだまだ被災の中におりますので、暖かい目で見ていただければと、是非よろしくお願いしたいと思います。
Q.最後に
松下 本学の取り組みは、決してアクティブ・ラーニングの授業のやり方を提案するという取り組みではありません。今、我々が取り組もうとしているのは、その入り口の部分のマインドの育成です。今度は、それをどうやって評価するのかということもまた非常に大事なことです。色々な大学の先生方には、我々の取り組みを知っていただくと同時に、ご提言をいただけるとありがたいなと思いますので、是非リンクさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
中山 私たちの取り組みは、学術的に言うと、おそらくメタ認知を強化するということにあると思います。
松下 そうですね。
中山 昔に比べて、現代における社会情勢はとても速く変わりますし、技術面でも10年前のことは、もう古くなっていることもあります。特にIT部門では、もう3年くらい前のことは過去のことになっていたりしています。そういう意味では、学んだもの自体を重要視してしまうと、おそらくその学生さんの10年後20年後には、社会に取り残されてしまうような状況が生まれるのではないかと危惧しています。
それに対して大切なのはメタ認知で、自分を俯瞰的に見て、自分自身で管理して、また意欲的に勉強するということが出来る学生さんを育てることが、とても大事だと今、感じています。
そうすることによって、たとえ自分の周りの環境が瞬時に変わったとしても、新しい環境に慣れるために、自分で新たに別のことを学んだり、その環境に慣れるために新しいことを取り入れたり出来るようになると思います。
専門の教員なので、もちろん学生には専門を大切にしてもらいたいと思いますし、基礎の部分は、世の中が変わっても変わらない部分はたくさんあるので、そこはもちろん勉強してほしいですが、それだけではなくて、自分でどんどんアクティブに学んでいくというアクティブ・ラーニングの姿勢が今後とても大事になると感じています。...
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