概要
一人の学びになりがちな「作文」に『学び合い』を入れることで、「相手を喜ばせたい」「助けになりたい」という思いが生まれ、学びが加速していきます。
入学直後の4月から『学び合い』を実践している鈴木先生のクラス。
約1年後の3月7日に、授業の様子を取材させていただきました。
前時に書いた文章を、お互いに見せあいっこ。
正しい文章が書けているかを、チェック項目に沿ってお互いに確認していきます。
チェックする人は、間違いに気づいてあげられないと相手の為にならないので、一つ一つの項目について一生懸命に確認して、間違っているところは赤で直します。そして、できているところは、「字、きれいだね!」「漢字は書けているね!」ときちんと認めます。
文章を書いた人は、一生懸命に書いたものを友達に見てもらって、誇らしげだったり、指摘されて悔しそうだったり……でもやっぱり、なんだか嬉しそう。
文章を書くことは、一人の学びや、先生との一対一のやり取りだけになりがちですが、そこに『学び合い』を入れることで、『相手を喜ばせたい』や『助けになりたい』、という思いが生まれ、学びが加速していくと鈴木先生はおっしゃいます。
でも実は、今回の授業は一番いい授業に比べると、集中できていない部分もあったようです。そんなとき、先生はどうするのか? 鈴木先生にお話をお伺いしました。
Q.授業に取材が入るのはどうですか?
鈴木 智久先生(以下、鈴木) 今まで、保護者会や授業参観はあり、そちらはあまり緊張したことはなかったですが、やはり取材が入るということで、昨日から少し緊張し始めました。
子どもたちは、すごくテンションあがるか、それともすごく緊張するか、どっちに転ぶかな?と思っていたのですが、すごくワクワクしながら一生懸命頑張ってくれたので、私としてはだいぶ満足しています。
アクティブ・ラーニングは、子どもたちが主体的に動くのですが、見ている私のほうが、すごくドキドキしました。正直、子どもたちはいつもとは違った姿があったと思います。
Q.いつもと違う姿とは具体的にはどういった姿ですか?
鈴木 やはり子どもたちもドキドキしていて、動きがぎこちなかったです。というのは、私も緊張しているので、それが子どもたちに移ったというのもあると思います。
この間、子どもたちの会話の中で、「お母さん同士が話してる時って、僕たち、何やっても怒らないよね」という話をしていたのです。
それは、子どもたちはすごく大人のことをよく見ていて、やはり大人の顔を見て子どもは動くのだなと思ったりしました。ですので、よく先生が「友だちと仲良く協力してやろうね」と言いますが、教員同士が協力してないと、子どもたちは「先生が言ってることとやってることって違うよね」と思ったりします。
ですので、私が子どもたちに正対して授業をする時は、覚悟を持って挑まないと、子どもたちも揺らいでしまうし、授業に対しての向き合い方も変わってくるのではないかなというように感じます。
Q.今日も覚悟をもって授業に臨まれていましたか?
鈴木 そうですね。全員ができるために、私は子どもたちを、集団を信じていました。
Q.今日の授業でうまくいった点いかなかった点を教えてください
鈴木 算数でいうと、「今の問題ができれば、次のテスト100点取れるよ」というように、次の時間はテストだということを子どもたちに事前に伝えていました。ですので、終わってからも、子どもたちは自分たちで問題を解いたり、各自でそれぞれの勉強をしていたので、とても満足でした。
5時間目に国語をやったのですが、前時に自分で文章を書いて、それを今回お互いに推考していこうという授業でした。私が見ればよかったのですが、あそこをあえて子どもたち同士にやらせました。
というのは、私が大学院で論文を書いていた時に、色々な人に見てもらうと論文がどんどん出世して良い形になっていったり、逆に私が色々な人の論文を見ると、自分も勉強になったりすることがあったからです。
ですので、子どもたちには、たくさんの文章を見て、訂正して、色々推考しながら、良い文章になっていったらいいなという思いから、あの課題にしたのですが、子どもたちはたくさんの文章を読んで一生懸命学んでいました。
ただ、子どもたちがどこまで友だちの文章を読んで修正できたかというのは、これから確認していかないといけませんが、子どもたちは一生懸命やっていたので、5時間目の授業もとても満足しています。
Q.今日の授業で児童たちに一番学び取ってほしかったことは何ですか?
鈴木 今回、国語、算数を勉強したのですが、その教科書の内容を学ぶことはもちろんあります。それに加えて、子どもたちには教科書の内容を通して一生涯学び続けていける力、そして人の力を借りる力、そして一生涯の仲間を、この義務教育段階で得てほしいなと毎時間考えています。
Q.児童を学びに惹きつけるために特に創意工夫していることは?
鈴木 導入の段階でいろいろ工夫をして子どもたちを惹きつけるような授業ができれば、もちろんそれが最善なのですが、教室に24人いるので、24人の興味を引くことは、私1人一生懸命頑張ってもなかなか難しいところがあると考えています。
なので、私は子どもたちを惹きつける時に、まず課題を出すのですが、誰に向けての課題なのかという対象、相手を意識させます。今回、文章を書いたのですが、やはり文章を書くというのは対象がいるからこそ書くので、今回は家の人に見てもらうという点を意識をして、最初の1時間でやりました。
今まで『学び合い』をやってきて、子どもたちが意欲的に勉強するのは発信型で、誰に向けて頑張るかという課題を入れると、子どもたちの意欲は上がります。
あと、子どもたちにはよく「先生はお店屋さんじゃないんだよ。君たちが欲しいものを君たちに与えるんじゃなくて、私がお客さんになって課題を与えて、その課題に対して、君たちがどういうふうに返してくれるの?」と言っています。
いかに子どもたちが私の与えた課題やその要求に対して、どのように課題を解決してくれるかということを、子どもたちには伝えています。今回子どもたちはまだ1年生なので、なかなか全員に浸透しない部分もあるのですが、そういう部分は、何回も繰り返し語っていくしかないのかなと感じています。
Q.課題の対象を設定することについて、両親以外のパターンはありますか?
鈴木 今まで授業した中で言うと、3年生でしたら「次の4年生に向けて作ってみよう」というパターンや、5年生でしたら「外国籍の人に向けて日本語教科書を作ってみよう」などやりました。対象を誰にしてやるのかということを意識づけたほうが、子どもたちは、どんどん勉強していきます。
特に、1年生でやったのは、来年入ってくる幼稚園生に向けて、宗二小の学校を紹介する文章を書こうということがあったのですが、幼稚園生は漢字が読めなかったりするので、「上にふりがなを書いてあげようか」など、友だち同士で相談しながらやっていました。
Q.対象を設定すると児童たちの意識にどういった変化が見られますか?
鈴木 今までは、課題達成するにしても、自分が達成できればよくて、自分のためになればいいという意識がけっこうあるのかなと思っていました。ですが対象相手がいると、その人を喜ばせたい、その人の助けになりたいなど、自分の事だけではなく相手がいることによって、どんどん子どもたちは学んでいくのかなと感じています。
大人であっても自分さえ良ければではなくて、この仕事は、相手にとってこういうことをすると幸せになるということを考えながら仕事をしていると思うので、それと同じです。
Q.AL型授業の取り組みは学校全体の取り組みなのですか?
鈴木 いえ、今のところ私1人です。興味を持っている方は他にもいらっしゃいますが、その方に本や説明をしているのですが、なかなか一歩が踏み出せないという状況がけっこうあります。
Q.今のクラスでは4月から始めているのですか?
鈴木 『学び合い』は4月から始めています。もちろん、全てが『学び合い』というわけではなく、はじめは週1回から始めて、週2回、3回と増やしていくという形で、段階を踏んできました。今は3学期になって、1日に2回、3回と徐々に増やしていっています。
今まで受け持った学年だと、もっと早い段階で子どもたちに任せることもけっこうあったのですが、今は1年生なのでそこはゆっくり語りながら、ゆっくり子どもたちに任せています。子どもたちの集団を信じていっているという段階です。
Q.AL型授業は主にどの教科で取り入れていますか?
鈴木 全ての教科です。算数もやりましたし、国語もやりました。実は今日の2時間目の体育でもやりましたし、生活でもできますし、今のところ1年生では全ての教科で実践できるのではないかなと考えています。
Q.AL型ではない時はどういった授業形態で教えていますか?
鈴木 AL型ではない時は、躊躇なく教えて(説明して)います。
Q.いわゆる一斉講義型ですか?
鈴木 はい。AL型をやろうと思えばできるとは思うのですが、ここは、私が教えたほうがいいかなという部分は説明をします。ただ、全員がそれを理解するのはなかなか難しいので、そこを終えた後に、次の時間で『学び合い』をやったり、何回も繰り返し学んでいける環境は作るようにしています。
Q.一斉授業とAL型授業はどう住み分けているのですか?
鈴木 まず、私は最初から行き当たりばったりで、「今日は『学び合い』やろう」「今日は一斉授業をやろう」という形で決めてはいません。やはり1年間で単元の見通しを立てて、「この単元では『学び合い』は全部できるかな」や、「ここは私がちょっと説明を加えたほうがいいのかな」などを見極めてやっています。
ただやはり子どもたちの様子を見ると、私が黒板の前でずっと授業をするより、子どもたち同士で学んでいるほうが、子どもたちの笑顔も多いですし、意欲的にやっています。けっこう「先生、『学び合い』やらないの?」と言われる機会も多いので、やはり『学び合い』のほうが良かったかなと、一斉授業が終わった後に感じることも多々あります。
Q.一斉授業を入れるのはどういう意図があってのことなのでしょうか?
鈴木 やはり保護者の方も安心するのではないでしょうか。全てを子どもたちに任せるとなると、子どもたちも不安になりますし、家に帰って「先生ってずっと僕たちに任せて、教えてくれないんだよ」となると、1年生なので、特に不安に感じてしまう親もいると思います。
ただ、実際には私のスタンスとして、聞かれたら全部答えてあげるというスタンスです。今日の『学び合い』でも、聞かれたら答えていますし、まず初めに子どもたち同士で考えてほしいということがあるので、常に聞かれたら答えるというスタンスを取っています。
でも今は、私に聞かなくても、だんだん子どもたち同士で解決してきているので、安心して学んでいるのではないでしょうか。
Q.このクラスの1回目のAL型授業はどうでしたか?
鈴木 1回目の『学び合い』はとても良かったです。授業の形式にもまだ何も染まっていないこともあり、うまくできました。学校というのは、先生が前に出て、その話を姿勢良く聞くものと思っていると、なかなか解きほぐすのに時間がかかると思います。
ただ、幼稚園や保育園から上がってきて、学校はどういうところなのかなという不安を抱えている中で、「授業はこういうものなんだよ」という『学び合い』を子どもたちにパッと示すと、生き生きしてやります。
子どもたち同士でも、普段から一緒に外でルールを決めながら遊んでいると思いますが、それと同じです。『学び合い』も、学びの遊びなので、うちのクラスの1年生はすんなり『学び合い』に取り組めました。
Q.AL型授業を取り入れるのには、1年生はやりやすいですか?
鈴木 1年生は素直なので、「こうすると友だちと一緒に学び合って、全員ができると素敵だよね」や「困っている人がいたら助けるよね」「電車に乗っていて、困っているおじいさんとか、おばあさんとかいたら、あなたたちだったらどうする?」とか投げかけると、「助けてあげる」「声かけてあげる」と言います。
「じゃあ『学び合い』で、困っている人がいたらどうする?」ということになると「教えてあげる」「助けてあげる」となるので、子どもたちは素直です。
しかし、それは1年生に限ったことではありません。3~6年生まですべての学年においても、何回も何回も話して、ゆっくり時間をかけていけば、『学び合い』というのはどの学年でもできると思うし、やりにくい学年というのはないのではないでしょうか。
Q.先生は児童たちにどういうルール作りをしていますか?
鈴木 正直な話、「こういう『学び合い』をしてほしい」「こういう姿になってほしい」というイメージは私の中にはあります。しかし、それを教師から一方的に「こうするんだよ」と言うと、やはり子どもたちは、「やらされている」「なんか面白くない」など思ってしまうので、自分たちで決めたルールを授業でやっていくことにしています。
例えば、「今回課題できなかったけれども、次の時間どうすればいいかな?」というように投げかけると、「ちょっとこの間、体育の(大きい)声の人が多かったから、図書室の(小さい)声でやってみようよ」や、「なんか課題終わっちゃったんだけど、そうするとフラフラしちゃう人がいるから、プリントがちょっとあるといいな」。「先生、ちょっとノートに勉強していいですか」や、「あとかけ算、先生まだやってないんだけど、2年生でやるんだけど、やっていいですか」などの意見が出てきます。
「じゃあ、そういう子もいていいよね。全員が達成できるんだったら、その方法やってごらん」と言うと、子どもたちは俄然やる気を出してどんどんやっていきます。私からこのようにしなさいというよりは、子どもたち自身でしっかりとルールを決めてやったほうが、『学び合い』はうまくいきます。
Q.どうしたらそういった自主的な提案などが出てくるのでしょうか?
鈴木 子どもたちは、元々勉強したいとか、やる気はあると思います。なぜやる気がないのかなと考えた時に、やはり教師が止めている部分がけっこう多いと思うのです。
例えば、「1年生だったら1年生の勉強だけしかしちゃダメだよ」や、「終わったら復習してごらん」。あと「教科書は開きません、まだ見ません」など、教師側が子どもたちのどんどん学びたいという機会を閉ざしているような感じがします。
だから、私は「どんどんやりたい、学びたいんだったらやってごらん」と言っていますし、そうすると、子どもたちはどんどんと、まだ習っていないかけ算などもするのです。やってみて間違ってしまうところもありますが、できたらマルを付けて「頑張ったね」と言い、違っていたら「実はね、こうやるんだよ」「ちょっと難しいね。2年生になった時に勉強してごらん」というように声をかけながらやっています。
ただ、学校でできなかった1年生の子が、家に帰ってお母さんやお父さんに聞いて、「先生、ちょっと家の人に教えてもらったよ」など言いながら掛け算ができるようになるというようなこともあります。
Q.45分の授業で1年生の児童たちの集中力はどうですか?
鈴木 課題によって違いがあります。課題が早く終わり過ぎたりすると、子どもたちの自由な時間が増えてしまうので、少し集中力が途切れてしまう部分もあります。
ですが、私は「先生だって45分間、誰ともしゃべらず、ずっと仕事することなんてできないんだよ。時には隣の先生とお話したりとか、ちょっと違う話とかしたりするんだよ。」とも言っています。
ただ、「でも、ずっとしてるわけじゃなくて、お話してちょっと休憩したら、また仕事に戻るのだから君たちも45分間ずっと集中することが難しいと思ったら、ちょっと休んでもいいけど、すぐまた勉強に戻れるようにしなさい。あまり離れ過ぎると、戻れなくなるからね。休憩してもかまわない、ただ全員ができるように周りに迷惑をかけないように休みなさいよ」と、時々言うことはあります。
Q.国語の授業の最後に、少し緊張感を持たせる場面がありましたが?
鈴木 授業の最後は、子どもたちの一番良い時を知っているので、その良い授業を見ていると、「今回はまだ本当に集中できてないな」「本当に全員達成のために頑張れているのかな」と思ったので、気持ちを入れて、最後に語らせてもらいました。
それは、子どもたちの本当の力を信じているからこそ、5時間目の国語の最後はあのような形で終わったのだと思います。ですので、あれは叱ったのではなく、子どもたちの次への授業へのエールという形でお話しさせていただきました。
Q.叱らずに静かになるのを待っていましたが、どういう気持ちでしたか?
鈴木 叱ることはすごく簡単です。子どもたちはまだ1年生なので、大きな声で「静かにしなさい!」と言えばシーンとなると思います。しかし、私は叱るのではなくて、子どもを待っていたいです。
大きな声で叱るのは簡単ですが、教師は子どもを「こうしたいな、静かにさせたいな」と思ったら、何パターンも方法を持っていて、それで子どもたちを動かすというのが大切なところなのかなと思っています。
ですので、大きな声を出すことに対しては、私の中でなくしたいと思っている部分なのですが、実際に大きな声を出す時も、時々はあります。毎回、怒った後に反省しています。
Q.静かになるのを待ったり、教えるのをこらえるのには勇気が要りますか?
鈴木 本当は、分からない子がいたら説明したい、教えたいという気持ちは私の心の中にはあります。
しかし、そこで私が子どもたちに教えてしまったら、「ああ、先生教えてくれるんだ」や、「なんかあったら、先生が来てくれるんだ」と思ってしまうので、やはりじっと我慢して声をかけています。私自身も少し苦しい部分もありますが、ぐっと我慢してやっています。
Q.教えないことで先生への信用がなくなる等、マイナスな面はないですか?
鈴木 そこは信頼関係なのかなと思っています。学校というのは授業だけではないと思います。それ以外の休み時間や朝の時間、あと帰りの会に毎回日記を見たり、今日1日のことについて子どもたちが書いたものに対し、先生がコメントしたりする時間もあります。
そうした中で、子どもが常にどういう気持ちなのか、どういう状況なのかというのを見て、子どもたちと1日1回は話そうという意識で、学校生活を送っています。
もし「先生って教えてくれないんだ」「残念だなあ」と思っている子どもがいたら、私は申し訳ないなという気持ちになりますが、今のところ、そういう子は私のクラスにはいないと思っています。
そのへんに関しては、子どもたちと授業以外のところでたくさん機会を作り、お話したり、遊んだりなどはしています。
Q.孤立してしまう児童が出てくることはありますか?
鈴木 なかなか、自分から「教えて」と言えなかったりする子もいますが、そういう子は、はじめは自分で学んでいたりするのですが、周りの子がサポートしてくれます。
途中で分からなくなってしまったら、周りの子がネームプレートを見て「あ、何々ちゃん終わってない」「何々君終わってない」と言い、サッと行ってノートを覗いたり声をかけてくれています。
ですので、見た感じは独りでいる子も、誰かが気にしてくれていることや、この教室に独りでいても誰かと繋がっている、関わってなくても繋がっているという安心感が、この『学び合い』にはあるのかなと思います。
Q.孤立している子への声かけを先生が促すことはありますか?
鈴木 特にないです。個別に、「何々君行ってごらん」とかもありません。ただ、私は授業中に皆ができるということを常日頃から言っているので、そうすると毎回、同じ子ではなく違った子がサポートして説明しています。
Q.今のクラスでは、そういう部分はうまくいっていますか?
鈴木 そうですね。周りを意識してくれることや、皆ができるということはこのクラス全員が意識していると思います。
Q.より良いAL型授業の実現に向けて、授業以外で行っている努力は?
鈴木 同じアクティブ・ラーニングをやっている同志とお話したり、勉強会に参加したり、多様な本を読んだりしています。時々、自分を俯瞰して見るために、私とは全く反対の一斉授業型の講座、講演に参加して、自分はどういう位置にいるのかなども考えながら、日頃勉強しています。
Q.AL型授業に取り組もうと思ったきっかけは何ですか?
鈴木 きっかけは、私は大学時代ずっとアメフトをやっていて、「このまま教員になっていいのかな」「もっと勉強したいな」と思っていた時に、上越教育大学の西川純教授に出会い、『学び合い』と出会いました。
西川先生のことは、大学の時に本で読んで知っていて、その時に、本当に『学び合い』をできるのかなと、初めは懐疑的な目で西川研究室に入りましたが、学べば学ぶほど、『学び合い』の魅力に取り憑かれました。いま私は4年目になるのですが、毎年、『学び合い』で学級運営をしています。
Q.AL型授業に取り組んで最初は周りの目はどうでしたか?
鈴木 私が教員になってすぐの時は、「アクティブ・ラーニングの授業は、やはりなかなかできないのかな」と思っていたのですが、ゆっくりではありますが、1年目から実践させてもらえました。
初任者研修と言って、指導者が入って授業を見るのですが、「鈴木さん、初めからこんな授業じゃなくて、まずは一斉指導をきっちりできないと、こういう授業はできないよ」と、色々言われていました。
ただ私のほうは、アクティブ・ラーニングや『学び合い』をしたいとずっと思っていましたので、色々な形で実践してきました。
例えば、学級便りを毎日出したり、職員室で子どもたちの様子を話したり、校長先生に、「こういう『学び合い』を今まで学生時代やってきたので、やっていいですか」などを尋ねたりしました。
また、子どもたちの会話を全部記録して、指導教員の方に「こういう会話してるんですよ。『学び合い』でこんな深い学びができてるんですよ」と伝えながら、多様な方法をとることによって、『学び合い』が実践できるようになってきたという過程があります。
最初は、『学び合い』をいきなりやると周りの人から「何やってるんだろう?」と思われるかもしれませんが、柔軟に色々な方法で「実践するためにはどうすればいいか」を考えてやっていったという経緯で、1年目2年目3年目4年目と経るにつれて実践できるようになっていきました。
初めから、いきなり『学び合い』はなかなかできなかったのですが、社会的にアクティブ・ラーニングという言葉が出てきて、だんだん認められるようにはなってきたと思います。
Q.AL型授業を行うには自分自身がパイオニアにならないとダメ?
鈴木 その当時はそうでした。しかし今、アクティブ・ラーニングという言葉が色々言われてきているので、アンテナの高い人がけっこう増えてきました。本屋に行ってもアクティブ・ラーニング関連の書籍が増えたり、職員室でも「アクティブ・ラーニングって何なんだ」など話題になっています。
おそらく今「こんな方法でアクティブ・ラーニングをやってますよ」とお話したら「え?どうやるの?」「話を聞かせて」となるのが、今の学校現場なのかなと思います。ですので、今、多くの色んな先生に言うと、興味を持って聞いてくれるのではないでしょうか。
Q.児童から学んだことや先生自身が成長できたことはありますか?
鈴木 子どもたちから学んだことは、よく先生を見ているなと思ったことです。さきほど男の子2人が、「お母さんが2人で話してる時、友だち同士で話してる時は、俺たち何やっても怒られないよね」という話にもありましが、それぐらい子どもたちというのは、大人を見ています。
ですので、子どもたちの目の前に立つ時は、中途半端な気持ちで立てないなと思うことがあります。
Q.中途半端ではなく、どういう気持ちで児童たちの前に立っていますか?
鈴木 この子たちには、この1単元、1時間の授業で、その授業の目標達成をするということではなくて、一生涯に通じる幸せを得てほしい、この子たちが将来大人になった時も、幸せに生きていけるような大人になってほしいと願っています。
子どもたちには通じているか分からないですが、大人になった時に「ああ幸せだな」と思えたらいいなと思いながらいま実践しています。
Q.先生自身が児童・生徒だった時、先生のことをどう思っていましたか?
鈴木 私はやはり先生が怖かったので、何も聞けなかったです。小学校、中学校の時は、分からない時は友だちに陰で聞いていたかもしれません。それか、分かっているふりをしていたのかもしれません。
Q.先生が経験した学びのあり方と先生の授業とは何が違いますか?
鈴木 私が子どもの頃は、先生から言われたことをきちんとやる、言われたことを一生懸命やるというのが学びのあり方でした。このアクティブ・ラーニング、『学び合い』は、自分から学びを見つけて友だち同士で協力し合い、どんどん学んでいくというのが大きな違いです。
Q.先生は今、先生をやっていてどうですか?
鈴木 先生をやっていて楽しいです。毎時間、子どもの様子をきめ細やかに、授業を通じて見られるので、子どもたちに異変があればすぐに気づくことができます。
「あれ?昼休み、子どもたち帰ってきたけど、なんか雲行き怪しいな」や、「ああ、なんかこの子とこの子、昼休み前は仲良かったけど、戻ってきたら口聞いてないな。なんかあったのかな」というように、やはり子どもの顔色をよく見ることができて、子どもの変化に気づくことができます。
そして、子どもの良さにも気づけますし、子どもの可能性にも気づけます。子どもをあんなにきめ細やかに見られるのは、アクティブ・ラーニング、『学び合い』だからではないでしょうか。
Q.今後やっていきたい挑戦や野望は何かありますか?
鈴木 私はいま単学級でやっているのですが、同じ学年で一緒にやれたり、あと他学年とも一緒にやれたら楽しいだろうなと感じているところです。あとは、もっと先生がやっていることを子どもに任せてみても、もっと子どもたちは楽しいと思うかもしれません。
特に子どもが、例えば研修会や授業研究会に参加するような機会があると面白いと思います。私が授業前に前回の『学び合い』の姿などを子どもたちに見せたりするのですが、そうすると子どもたちは、「もっとああしたほうがいい、こうしたほうがいいよね」と意見を出してくるのです。
ですので、もし『学び合い』で研修ができるとしたら、ぜひ子どもたちを大人と一緒に参加させて、色々と言いながら研修ができたら、子どもたちはもっと楽しく、もっと学びが深まるのかなと思います。
Q.児童が自分たちの姿を客観的に見ることで出てくるのですか?
鈴木 私たち教師が授業した映像を、自分たちで見るのは苦しいと思います。それを子どもたちがするとなると、子どもたちも苦しいのかなと思うのですが、けっこう楽しくビデオ見て色々意見を言っています。
なので、私たちだけで研修会をするよりも、子どもたちも混ぜてやったほうが、より良い『学び合い』、アクティブ・ラーニングになるのかなと思います。
Q.今回の取材の映像ができたら、上映会なんかもできそうですね。
鈴木 それは面白いですね。それなら先生が考えていることが子どもたちにきっと伝わりますし、是非この映像ができたら子どもたちに見せたいです。
Q.保護者の方にも見てほしいですか?
鈴木 見てほしいです。親が『学び合い』という言葉を知っているか分からないですが、子どもが家に帰ってきて、「こんな授業してるんだよ」と言っていると思います。それをやはり受け入れてくれるのは、子どもが「『学び合い』って授業楽しいんだよ」とポジティブに親に言っているからなのかなと思います。
例えば、「『学び合い』が嫌だから」というように家の人に言っていたら、たぶん「先生、『学び合い』、アクティブ・ラーニングやめてください」と言われると思うのですが、今のところそれがないので、やはり子どもたちは本当に『学び合い』が好きなのだなと感じています。
Q.AL型授業の今後の展望や先生なりの課題などはありますか?
鈴木 色々なアクティブ・ラーニングがあって、その中の1つに『学び合い』があると思いますが、私もどんどん色々なアクティブ・ラーニングの手法や授業方法を学んでいきたいです。
まだ私の教員人生は長いですので、多様な人と学び合いながら、良いものがあれば、子どもたちが学び続けているように、どんどん私も変わっていきたいです。
※鈴木先生の国語の授業は、学校導入版で視聴できます
学校導入版での詳細はこちらをご覧ください...
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