授業を行う上での注意点や事前準備
この動画から学べること
概要
大学1年次の導入教育で、将来につながる学びの土台を作る! 卒業後に働く自分をイメージすることで、逆算して身に付けるべき知識やスキルを明確にし、濃密な4年間の下地を作るアクティブ・ラーニング型基礎セミナー
県立広島大学では3年前から「大学基礎セミナー」という授業を実施しています。
全部で15コマの当セミナーでは、前半の7コマで、大学の授業を受ける上で必要な基本的スキル(レポートの書き方、ノートのとり方など)を身につける授業を実施。
そして後半の8コマは、学科ごとのオリジナル授業です。
今回は、当セミナーの後半、環境科学科オリジナルの授業を取材いたしました。
「授業と卒業後の仕事が結びつかない」
「各分野の専門家としての技術教育をしているのに、全く関係のない企業へ就職していく」
そのような状況を受け、環境科学科では、卒業後の働く姿がイメージできるように環境関係の職業についてグループに分かれてリサーチしていきます。
Active Learning Online (ALO) について
Active Learning Onlineは、文部科学省の大学教育再生加速プログラムテーマI「アクティブ・ラーニング」に採択された全国の9つの大学が、連携して情報や成果の発信を行うポータルサイトです。
採択校である本校の授業動画については、以下からご覧いただけます。
>> 授業動画を見る <<
Q.生命環境学部とは
松本 拓也先生(以下、松本) 生命環境学部は、生命科学科と環境科学科の2学科で構成されています。私が所属するのは、環境科学科です。
環境科学科は12の研究室があり、私のような生命系の水産や海洋を専門とする先生から、環境衛生や土壌を専門とする方、有機化学や光エネルギーの太陽電池の研究をされている方など、色々な研究室があります。
かなり広範囲な学科のため、実際に入学された学生が、自分の環境科学科はどういうところなのかが分かりづらいということがあり、今回の大学基礎セミナーでは、自分たちの研究分野はどのようなところに展開しているのかを学べる授業を行なっています。
もう一つの生命科学科は、細胞工学、植物、畜産関係、食品科学など様々な分野の生物科学、生命科学の研究をしています。
Q.学びを通じて身につけてほしい能力とは?
松本 この大学基礎セミナーは全学共通科目であり、県立広島大学のどのキャンパスでも1年生が必ず受ける授業です。全部で15コマあり、そのうち前半の7コマは、大学の授業はどういうものか、さらにレポートの書き方やノートのとり方などの基本的なスキルを身につける授業を行います。
後半の8回は、学科ごとのオリジナル授業になっています。今回の大学基礎セミナーのオリジナルの部分ですが、8回の授業を通じて、1年生自身が学科でどのような授業を受けるのかを調べてもらいます。
それから大学の新入生の導入教育として、これからの出口について、卒業後の自分がどうなっていくのかを考えた上で、どのような進路に進みたいのかを自主的に勉強することにより、将来に向けた夢を持ってもらうという授業になっています。
Q.今日の授業で最も学生たちに学び取ってほしかったことは?
松本 今日の授業では、社会の中で自分たちにはどんな仕事があるのかを調べてもらったのですが、各グループが様々な職業や職種について、色々発表してくれました。今回挙がったどの職業も、私たちの社会インフラを維持する上で重要な仕事だったと思います。
環境科学科で学ぶ分野の職業は、テレビコマーシャルなどで出てくるような企業ではないので、1年生で入ってきた学生たちには、今まで調べたことがない職業や業種が多く、知らなかったものが多かったと思います。
この授業を通じて将来の職業を知ることにより、自分たちがどういう分野で活躍できるのか、これから4年間学ぶ上でどのような授業を取って、どのようにスキルを身につければ社会に出て活躍できるのかを理解してもらえればと思います。
もう一つ、自分たちが調べた内容を正確に分かりやすく相手に伝えるというプレゼンテーションスキルの向上です。学生たちにとってプレゼンテーションを使った授業は初めてだったと思いますが、今後もプレゼンテーションを使う場は増えてきます。
そのため、自分たちの身につけたものをアピールすることや、卒業研究で自分たちが行なった研究を相手に分かりやすく伝えるといった能力を早いうちから身につけてもらいたいと思っています。
Q.どのように調べものの指導をしていますか?
松本 授業の最初に、ルーブリックという形で私たちから調べ方のお手本となるようなものを配布します。まずは4~5人のグループでどのような職業について調べるのかを議論してもらいます。
そのグループ内でそれぞれ興味を持った職業について役割分担をし、コンピューターを使ったり、図書館に行ったりと、色々な方面からリサーチをかけていきます。各グループには教員が一人ずつつくので、ある程度のアドバイスをしながら調査をするという形です。
Q.授業で工夫されていることは?
松本 学生たちは入学したばかりで、お互い知り合いではなかったりしますので、最初は雑談も含め、グループで親睦を深めていきます。また、彼らが調べものをしている様子を我々教員が定期的に確認しながら授業を行なっています。
Q.試行錯誤されてきたことについて
松本 この大学基礎セミナーの学科のオリジナル部分は今年で3年目ですので、まだ試行錯誤をしている段階です。最初に立ち上げる時には学科の教員で小さなワーキンググループを作り、少人数でまずどのような授業にするのかを話し合いました。その後それを学科全体の教員で共有をし、授業を始めたという流れです。
そして、授業を一度実施した後に教員向けのアンケートをし、教員全員からどのようにしたほうがいいのかという意見を集めました。それを踏まえて、今後の授業の改善点などを詰めていくような形で、学科単位のフリー研修会などを年に数回開き、これを毎年行っています。
その中で、1年生の前期の授業で調べただけで終わってしまわないように、後期では実際に企業の方を呼んでお話を聞いたり、こちらから企業訪問をしたりもしています。さらに、どのような職業の人が、どのような仕事に就いているのかを見に行くような授業を立ち上げようという意見があり、これは今年の後半から実際に始める予定です。
Q.これまで授業を受けた学生の変化について
松本 現在、大学基礎セミナーの1回目を受けた3年生が研究室に入ってきています。本学の生命環境学部では3年生から卒業研究が始まるのですが、大学基礎セミナーを初めて受けた学生とこれまでの授業を受けた学生では、明らかなプレゼンテーション能力の違いを感じました。
環境科学科の卒業研究では、12月に中間発表会という形で3年生が卒業研究のポスターを作成します。そのポスター作成も、以前の学生に比べて格段に仕上がりが良くなっていると思います。
授業の中で自分がなりたいものを見つけた学生はそこを目指します。実際に私の研究室でも、MRになった学生や製薬会社の技術系の職員になった学生もいますし、高校の教員になった学生もいますので、かなり自分の理想に対して忠実に就職活動をするようになったと思います。
Q.欠かせない準備はありますか?
松本 立ち上げ時は授業の準備として、まずどのような授業をするのか、どのような指導の仕方をしていくのかを色々と話し合ったのですが、今はそれから3年が経ち、各教員も徐々に慣れてきました。
各研究室に学生を呼んで話をする機会においても、学生に対する接し方にも慣れてきましたので、現在は立ち上げ時に比べて困ったことはないような気がします。
Q.授業の手応えを学生から感じる時は?
松本 1年生の後期で科学実験のレポートを見るのですが、レポートの書き方も以前よりも丁寧になったと感じています。
Q.学生から教えられたことは?
松本 学生たち自身が様々な企業について色々と調べものをしてまとめてくるのですが、私たちが研究している分野以外の企業の職業についても調べるので、私たち教員にとっても、様々な企業について改めて知る機会になり、大変良かったです。
Q.今後挑戦していきたいことは?
松本 大学基礎セミナーの授業では、自分たちが調べたものを発表する形を取っていますが、後期からは企業を呼んで実際にお話を聞くという授業を予定しています。さらに学生たちの刺激になり、自分たちの将来の職業に対する具体的なイメージがつくような努力をしていきたいです。
Q.全国の高校の先生方へのメッセージをどうぞ!
松本 私たち県立広島大学の生命環境学部では、3年生から卒業研究をしています。そして、実際の就職活動は3年の後期、4年生になる前の春休みぐらいから始まるのですが、その卒業研究で身につけたプレゼンテーション能力が就職活動でも生かされ、自分の研究に対してうまくプレゼンをする機会にもなります。
そのため、他の大学生よりも自分の身につけたものをアピールできますので、比較的就職活動が短く終わることもあります。ですので、ぜひ私たちの大学に生徒の皆さんを送っていただければと思います。よろしくお願いいたします。...
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