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ダイジェスト
ダイジェスト [1分20秒]
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インタビュー前編
福島哲也先生インタビュー前編 [18分19秒]
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インタビュー後編
福島哲也先生インタビュー後編 [18分8秒]
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授業編1/4
01.『学び合い』集団を作るアクティブ・ラーニング [4分28秒]
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授業編2/4
02.『学び合い』集団を作るアクティブ・ラーニング [4分51秒]
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授業編3/4
03.『学び合い』集団を作るアクティブ・ラーニング [4分41秒]
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授業編4/4
04.『学び合い』集団を作るアクティブ・ラーニング [3分12秒]
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ダイジェスト
集団を作るための考え方 [1分7秒]
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先生編1/4
05.集団を作るための考え方 [4分24秒]
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先生編2/4
06.集団を作るための考え方 [3分29秒]
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先生編3/4
07.集団を作るための考え方 [4分48秒]
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先生編4/4
08.集団を作るための考え方 [5分30秒]
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ダイジェスト
最後のひとりまで大切にする集団へ [1分43秒]
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生徒編1/3
09.最後のひとりまで大切にする集団へ [4分45秒]
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生徒編2/3
10.最後のひとりまで大切にする集団へ [3分40秒]
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生徒編3/3
11.最後のひとりまで大切にする集団へ [5分16秒]
福島哲也先生(現・追手門学院大手前中高等学校)/撮影校:東大阪市立花園中学校福島哲也先生インタビュー前編 [18分19秒]
概要
生徒が先生となり、
クラス全員が理解するまで
必死で教え続ける公立中の数学授業
福島哲也先生の数学授業動画を公開!
何と、先生ではなく生徒が教えます。
先生は4月から一度も数学を教えたことはないそう。
「自分よりも生徒のほうが教えるのがうまいですから」と のことですが、果たしてその真意は?
先生は授業中何をしているのか?
ぜひ動画でご確認ください!
Q.アクティブ・ラーニングを始めた経緯は?
福島 哲也先生(以下、福島) 僕の関わる子たちを、一人も見捨てず社会に通用する力をつけてあげたい、と思っていて、そのために、数学の力や人と関わる力を、一人も見捨てずつけてあげようとしていたら、とんでもない時間がかかっていました。
数学だけであれば、放課後に残って一緒に勉強したり、つきっきりで面倒を見たり、特別な課題を出したり、いろいろなことができますが、自分一人では絶対無理で、教師の力の限界を感じつつありました。そこで、何かいい方法はないかと思って、西川先生の提唱する『学び合い』に出会い、現在にいたるという流れです。出会ったのは3、4年ほど前です。
僕は教師を始めて今13年目ですが、10年目弱くらいまでは残念ながら、なんとかしてあげたいが、それができずに卒業していったり、僕の言い方では変わらなかったり、僕の考え方が伝わらなかった子がいました。
あらゆる教育書を手探りに読みあさり、『学び合い』以外でも色々な考え方があると勉強しました。その中で本当に偶然、『学び合い』に出会い、自分の中でストンと納得ができる、あるいは「自分もそう思っていた」と共感ができることが多く、スタートからとても取り組みやすかったです。
Q.出会ってすぐ実践をされたのですか?
福島 まずはかなり本を読みました。本だけで実践することは割と珍しいらしく、大体は人がやっているのを見てやってみたり、噂を聞いてやってみたりする方が多いようです。僕みたいに本からここまでやるというのが結構珍しいようです。
一次情報による『学び合い』と言われるらしいのですが、西川先生の本の再現性が高く、本を読むだけでここまでできるというのはすごいと思います。
Q.授業の工夫点を教えてください?
福島 授業の工夫は、やはり課題の難易度ですね。簡単すぎると、ラスト15~20分ほど時間が余ってしまい、全員の名前が青で書かれて「さあどうする?」となってしまいます。やはり子どもたちのことを考えた上で「どの課題のレベルにするか」に時間を使って教材研究します。
Q.教材の難易度の指標はありますか?
福島 「指標」と言われたら答えるのは難しく、実際は目の前の子どもに合わせて変えていきます。今日は、第3章「二次方程式」の3時間目を行いましたが、次の4時間目の授業準備も既にしてありました。でも今日の授業で次の授業内容を変更しようと思っています。
「ここまで水準を下げとかなあかん」とか「問題数を増やそう」とか、問題数に至ってもその時の状況で変えていきます。感覚も必要ですから「一般論で指標はこう」と説明するのは難しいです。
Q.意識しているポイントを教えてください
福島 まず1つ目は、「子どもたちは有能である」ということですね。子どもたちは意外とできます。一人ひとりの「子ども」は有能でないかもしれませんが、「子どもたち」になるとこちらが思っている以上の力を発揮しますから、子どもたちに任せてみると想定以上の結果が出ます。僕は子どもたちを信じています。
今日も僕の目の前でミスをした子がいました。そういう解き方をするのかと思い、指摘したかったのですが、いや、誰か助けてくれるだろうと考え直し指摘しませんでした。「できるようになること」より「できるようになる過程」を大切に思っているので、子ども集団を信じた結果、その子も修正できました。
子どもたちが「よしやってみよう」と思う1つのきっかけは、我々教師が「子どもたちの力を信じる」ことです。
また、2つ目に、教師の限界を認めるべきと思います。僕が一斉授業した時に、教師ひとりが、今日のアクティブ・ラーニングの授業と同じくらいに、あれだけ一生懸命生徒に取り組ませることが本当にできるかとか、脳みそに汗をかかせられるかというと、僕には多分無理です。
僕は一斉授業がとても好きで、プリントに仕掛けを作ったりしていましたが、全員を分からせることはできませんでした。ほとんどの子は楽しく感じてくれ、「分かった」と言えても、全員ではありませんでした。
「私、そこでつまずいていません」とか「次の次まで僕できますよ」という「できる子」も含めての一斉授業でしたので、全員に満足をさせるのは無理だと思っていました。
ですから、一斉授業の限界を認めるというか、正直に感じるというのが、アクティブ・ラーニングを始めるきっかけになりました。
3つ目ですが、「学校って何の意味があるのか?」「家で勉強せずに学校で勉強する意味は何なのか?」という学校観です。
子どもたちが自分の課題を他者と折り合いをつけながら解決していくところに意味があります。「自分はここがわからない」、「そこなら私教えられるよ!」というように解決することに意味があると思っています。
中には、どうしても一方的に説明してくる子もいて、そういう子に対しては「こういう子もいるんだ…」と捉えて、ありがとうと言いつつ他の子に聴く、というように色々な解決方法、社会性を学ぶことも50分の中でできるわけです。
「学校は何のためにあるのか」を一度考え直したとき、僕は一斉授業の限界を感じていたので踏み出しました。もし、やってみようか悩んでいる方がいたら、「学校は何のためにあるのか」を自問自答してもらいたいと思います。
Q.生徒の変化はありましたか?
福島 この学年は、グループ意識とか縄張り意識が低くなっていますね。中学生、とりわけ女子はグループを作りたがりますが、「課題を解決することが大事。絶対に一人も見捨てない!」をずっと伝えています。すると、「私たちのグループは皆できているけど、あの子大丈夫かな?」と声をかけたりします。
数学の授業以外ではしゃべることが無かったり、接点が少ない子でも、「大丈夫?」と声をかけたりする光景が見られます。そういった教科の伸び以外のことでも成果があるのではないかと思います。
また「男女の違いを気にしない努力をしなさい」と言っています。僕ら大人が社会に出て、「この問題解決したいけどあの女性の先生に聞くくらいだったら解決しないほうがマシだ」とはなりませんよね。
問題を解決するためには性別の差は超えなければいけないと思っています。大人になったら性別の差なんて気にしていられないと言うと、「まあわかっちゃいるけど…」みたいな感じにはなりますが、「数学の課題が、もし、命に関わる課題だったらどうするの?それでも同じ行動するか?」と言ったりします。
教師が言って動かせる子は、西川先生の本にも書いてある通り「2割」ですね。2割の子は「確かにそうだ」と思って動き出し、「その2割の子が動くなら、自分も動こうか」という子が6割です。6割の子がサイレントマジョリティーとか物言わぬ多数とか言いますが、その子らが動き出すと「文化」ができます。教室の中に数学の授業という文化ができるので、伸びていくのではないでしょうか。
Q.『学び合い』の実践に必要なことは何だと思いますか?
福島 大学生や初任者や色々な年齢層の方がこの授業を参観に来てくれますが、大学生が来た時に「来年4月から、どこかの現場で勤務すると思うので、『学び合い』でがんばっていきます」などと聞いたら、僕は危機感を感じます。うまく言えませんが、指導の軸というか柱があるから『学び合い』によるアクティブ・ラーニングは成立しているからだと思います。
何も柱やベースが無い人がやってしまうと、たぶん生徒間で世間話のオンパレードになって、ひどい場合、教室からいなくなってそれに気づかないことも起きると思います。
今日の授業では話していない「核」のようなものが、これまでの関わりで子どもたちに身についているので、あの授業が成立すると思っています。ですから、僕の教材を誰かに渡して同じセリフを言って同じことをしてもうまくいきません。その部分がたぶん本当に大切な部分なのだと思います。
それは何かいうと、教師の考え方だと思います。僕は子どもらの力を伸ばしたいのです。子どもらに幸せになってほしいのです。そういう思いが他の教師より強いと自信をもって言えます。それを子どもらも感じてもらっているのではないかなと思います。
たとえば、今日の4時間目のクラスで僕が言った、「青で名前を書けていない仲間に対して、「あと一人誰やねん」と笑い者にするクラスじゃないやんか、そんなクラスに先生はしたくないと思う」という言葉は、僕は本気で思って言っているわけです。
誰かの本に書いてあったから、そのまま使っているわけではありません。「分からへんかったら、分からへん、って、最後まで言えるクラスって、なんかいいと思わへんか?」もそうです。
あのクラス、一人だけ青字で名前をかけませんでした。「書いてへんの俺一人や。恥ずかしいな」と思って、ウソついて青で名前書いてもバレません。しかし、「そんなことをするのではなく、俺、分からへんから書かれへんって堂々としているクラスが、先生は好きやな」と今まで言ってきています。
最後の一人が誰なのか、みんなわかっています。のぞいても半分くらいしか終わっていませんでした。でも、「分からないことを分からないと正直に言える、そんなクラスでいいやんか」という思いを共感できているという部分があると思います。
Q.生徒からはどう評価されていると思いますか?
福島 これは、生徒は評価してくれていると信じるしか無いと思っています。僕は子どもたちの機嫌を取る行動はとっていません。子どもたちが僕の印象を決めることですから、生徒たちが評価してくれるかどうかは僕の課題ではないと思っています。ただ客観的な評価として、クレームは一度も来たことがありません。
僕が何もしていないことを、子どもらは全員知っています。僕は普段、気がついたことをノートに書いています。ノートを開きながらずっと見ています。多い日は、ずっとノートを書いています。
先生は授業中教えてくれないし、ずっと何かノートに書いていることを、きっと家で保護者に話していると思います。でも「どういうことですか?」という保護者からのクレームはこの3年間、一度もありません。
家でのその話の続きに、たぶん「先生は何も教えてくれへんけど、めっちゃ数学おもろいねん」とか、「数学の点数上がってきた」とか言ってくれているので、親としては「あんたが良いって言うんなら良いんちゃう」、「しかも伸びてきてるやん!」となるのでしょう。
しかも、数学の度数分布がぐっと上に上がってきているので「これ、あんただけちゃうの!?みんな上がってきてるのすごいな!」、「先生ほんまになんもしてないの?」となるわけです。
でもあくまでこれは感覚の部分だけで、集団を作ることに一番力を注いでいるので、生徒からの評価というのはあまり気にしていません。
Q.世間のアクティブ・ラーニング型の授業に先生から意見はありますか?
福島 個人の意見ですが、強制することは嫌いです。「○○しなさい」「やめなさい」と強制されるのが嫌いです。だから人にも一切強制しません。学年の中に違う教科で一斉授業をしている先生もいます。でも一切否定する気はありませんし、僕の『学び合い』でのアクティブ・ラーニングの授業を見に来ない教師を怠慢だとか勉強不足とか言う気もありません。
僕は、自分のやっていることに懐疑的で、「もっと良い方法があるのでは?」とか「もっと改善点があるのでは?」とか、色々考えています。だから色々な方法があって良いと思っています。
Q.周囲からの評価はどうですか?
福島 子どもらが、「先生も『学び合い』しないの?」と他の教科の先生に言っているようです。すると「いや、先生が説明するから」と押し通す先生もいるし、「みんなほんまにできるの?」「先生の教科書みせてや」とか「先生のノートみせてや」とか聞いてきて同じようにやっている先生もいれば、「いったい『学び合い』って何なのですか?」と聞いてくる教師もいます。
でも、やはり、動かぬ証拠と言いますか、府のチャレンジテストや全国学力テストで、数学は平均をずっと超えているわけです。結果として、伸びているのです。この部分が担保になっていると思います。では、「一斉授業にしたら平均を下回ってしまうのか」まではわかりません。成績面での結果と子どもらの納得があるので、周囲の評価は気になりません。
Q.現時点で自分の課題と展望?
福島 同じ年代の子どもたちだけで解決するのはもったいないと思っています。『学び合い』をやっている先生もよく見学にきてくれることがあって、僕の授業を見て、「単元丸ごと『学び合い』したらどうや?」と言われます。
今日から1ヶ月間で3章やると僕は区切っています。「今日はここまで、今日の目当てはここ」を、「今週の目当てはこことして、プリント3枚仕上げる」などとアドバイスをいただくことがありますが、僕はむしろ異学年合同でやってみたいです。
結局、僕らは、大人になると仕事で同い年の人がいないことの方が多いですよね。なので色々な年齢の集団と関係をつくる力をもっとつけてあげたいと思っています。中学生は、プライドなのか一個違いなだけで距離のある関係性があるので、歳の差を気にするより、もっと大切なことに気づかせたいです。
尊敬できる後輩っていますよね、子どもたちにも「この後輩すごいな」と気づかせていきたいわけです。『学び合い』でアクティブ・ラーニングをすることによって、それは可能ではないかと思います。...
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