概要
2種類のグループ学習で国家試験合格率がアップ!
日本医学柔整鍼灸専門学校柔道整復学科 2年生の授業です。
ただ国家試験に合格するだけでなく、様々な患者さんに選ばれる人になってほしい。
こんな思いから、住吉泰之先生はグループ学習を中心に授業を展開しています。
入学してくる学生の7割が、社会人経験者という当校。
学生の多くは、「国家資格の取得」を目標にしています。
試験の合格を目指していると、
「これさえ覚えれば合格できる」という
最小限の知識を効率よく学習したいという
思いにとらわれがちです。
しかし、実際の医療の現場で大切になってくるのは、試験に合格する力だけでなく、患者さんの話を聞く力や、試験に出ないような広い知識。
住吉先生は、「選択発表型グループ学習」と「問題抽出型グループ学習」の2種類のグループ学習を通じて、「聞く力」と「広い知識」を養い、10年後、20年後も活躍できる医療人を育てています。
Q.自己紹介をお願いします
岸本 光正先生(以下、岸本) 我々は柔道整復師と鍼灸師を輩出する学校です。私は副校長という役割をしていて、主に学校運営全般と、生徒募集、それから教育の質の向上のための取り組みを担当しております。
柔道整復師や鍼灸師を輩出する学校はたくさんあるのですが、我々は出来て14、5年の、まだ伝統の浅い学校です。
ですから、若い学校ならではの特色を持ちたいと思っていまして、学生に、10年後20年後にそれぞれの場面で活躍できるような教育をしようと考えています。
Q.なぜ専門学校でアクティブ・ラーニング型授業に取り組まれるようになったのですか?
岸本 先ほど言いましたように、我々の学校は柔道整復師と鍼灸師を輩出する学校ですが、柔道整復師も鍼灸師も、患者さんがいらっしゃった時に、その方がどんな症状なのかということを、柔道整復師、鍼灸師自身が判断しなくてはいけません。
患者さんの「どこが悪いんだろう」ということを自分で発見した上で、施術をするということになります。つまり、自分自身で考えて、問題や課題を発見する能力が問われると考えています。
そういう考えのもとに、我々は教育目標として、「自ら考え行動する医療人」を掲げています。ですから、それを実行するにあたって、このアクティブ・ラーニングという手法がぴったりと当てはまると考えました。
お話をお伺いした時に、ぜひ我々の中で積極的に導入したいと思いまして、昨年あたりから少しずつ導入し始めているという状況です。
Q.学生にどんな力を付けてもらうことを目指していますか?
岸本 今申し上げたように、「自ら考え行動する医療人」ですので、やはり課題や問題を発見する力を身につけてもらいたいと思っています。これが第一番ですね。日本医学柔道鍼灸専門学校に入って卒業すると、素晴らしい信頼される医療人になるような学校にしたいと思っています。
そのためには、知識と技能に加えて態度、この3つをきちっと兼ね備えて、卒業してもらおうと考えているのです。信頼される医療人になってもらうために、知識、技能、態度の3つの力を身につけてもらおうと考えています。
Q.先生が認識している入学時の学生のイメージとは?
岸本 我々の学校は、高校新卒で入ってくる方ばかりではありません。むしろ今は、7割くらいは1回社会に出ていたり、大学を出たりした後で、学び直しで我々の学校に入ってきた方です。中には50代の方や60代の方がいます。
ですから、そのいろいろな方々をどうやって我々の考えている医療人に育て上げるかということは、頭を抱えてしまうくらい非常に難しい問題だと思います。
Q.社会人経験のある学生にアクティブ・ラーニング型授業をどうやって認識してもらいましたか?
岸本 今まで、アクティブ・ラーニングのような、例えば隣の人と話し合うようなグループ学習を全くやっていなかったわけではないと思います。学校ではやっていなかったかもしれませんが、職場などではやったことがあると思うのです。
ですから、まず、その手法を思い出してもらうために、入学時にオリエンテーションをやっています。その中で、合意形成をするコンセンサスゲームというものを行っており、グループで1つの回答を見い出す活動をします。これが、アクティブ・ラーニングの手法を取り入れたオリエンテーションです。
これが、アクティブ・ラーニング型授業の導入としての役割になっていると考えています。
Q.アクティブ・ラーニング型授業を取り入れる難しさや苦労を教えてください
岸本 今アクティブ・ラーニング型授業に取り組むプロジェクトを立ち上げて、具体的に動き始めました。その中で教員から聞こえてくる悩みとして、特に学生に知識を身につけてもらうような授業の中でアクティブ・ラーニング型の授業をやると、どうしても定められた教科書の範囲が終わらないというものがあります。
アクティブ・ラーニング型授業をすることで、知識もきちっと伝達できて、学生が理解できるような非常に中身の濃い授業が出来るのですが、なかなか扱う内容の範囲が狭まってしまうようです。これを解決するには、学生の学習スタイルも変えていかなければいけないだろうと考えています。
つまり、授業で一方的に聞く、あるいは授業だけで学習するというのでは、なかなか学習内容が完結できないのではないかなと思っています。だから、学生も事前学習をして授業に臨み、授業後には事後学習をするというように学習スタイルを変えてもらいたい。そこにアクティブ・ラーニングを重ねることによって初めて、効率的で有効な学習が成り立つのではないかと考えています。
その辺がまだうまく構築出来ていないところで、今後の大きな課題だと思っています。
Q.構築出来ていないという問題に対して具体的に策はありますか?
岸本 来年度の新しいオリエンテーションの中に、導入プログラムとして具体的に「学習スタイルをこんなふうに築いてください」と示すことを考えて、話し合って検討をしている段階です。
Q.アクティブ・ラーニング型授業の現在の手応えと今後の期待をお聞かせください
岸本 例えば成績が全体で上がったというような具体的な数値としての手応えは、まだ表れていません。ただ、学生の反応というよりも、教員の反応のほうに、私は手応えを感じています。
ですからまず、教員の授業展開力や、授業での様々な工夫に、今はスポットを当てようと思っています。
このアクティブ・ラーニングの導入によって、一つ一つの授業にどんな工夫をしているかということを、学校全体として、もっと他の先生にも広めたいと思っているのです。
それによって教員全体が、自分たちのやっている授業を、「いろいろな人が見てくれる。だからもっと頑張ろう」と思ったり、さらに、良いものを情報共有することで、「もっと良くしなければ」と思ったりする。そのようなプラスの循環を生み出せるのではないかという手応えを非常に感じています。
実際、教員が授業で感じたことや授業の工夫、学生の反応などを、ほかの教員にフィードバックするようになってきました。
このような互いのフィードバックが学校全体の教育の質を上げる、非常に良いスパイラルになっていくのではないかと考えています。...
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