概要
正しく・早く・簡単な方法はどれ?
「場合の数」の求め方を、教え合いながら見つけます
「はい、この問題はどのくらいの時間でできますか?」
社会に出たら締め切りのない仕事はないから、この課題にどれくらいの時間がかかるのか、考える癖をつけてほしい。そういった想いから、市川先生は子どもたちに問題を解くのに必要な時間を毎回尋ねます。
解き方を習っていない問題も、まずは自分たちの力で解いてみます。
問題を解くときは、他の人と話し合い、教え合ってもOK。
「友達だと気軽に聞ける」
「一人ひとり違うから、いろんな考え方が知れる」
と子どもたちが話してくれました。
任せて信じることで、子どもたちの可能性を伸ばす市川先生の算数授業をぜひご覧ください。
Q.今回の授業で児童に学び取ってほしかったこと
市川 寛先生(以下、市川) 理科はうまくいかなかったですが、算数では多様な考え方が出てくるだろうと予想していました。実際、出てきた多様な考え方はどれもが正解といえるものでしたが、時と場合に応じてその中から最もふさわしいものを選び取っていく。それが自分の考えではなく、友達のアイディアでも、良いと思ったら取り入れて、自分のものにしていく力をつけて欲しいと思いました。
Q.理科の授業の狙い
市川 理科も、色々な気づきがもっと出てくるかなと思っていました。一番大きいものは、「重さとその粒の大きさ」において出てくるのかなと考えていました。子どもたちがどのように思って、それがどうなるか?どうすればいいのか?どのように悩んでいくのかな?と予想していたのですが、それほど深まりませんでした。そこが今回の反省点です。
1つの答えには、そのままストレートに行くのではなく、いくつかの異なった考え方や見方があります。友達と対立とまではいかないですが、意見が分かれた時に、自分の頭の中の深い思考が生まれてくるのではないか、と思っていますので、そのような場面を出来るだけ作っていきたいですね。
Q.授業がうまくいかないことはあるか?
市川 うまくいかない時もあります。ありますが、僕の場合、算数を担当する機会が多くて、ほぼ教科担任のような立場になっています。
だから算数の授業ではほとんどの場合うまくいっています。子どもたちが活発に意見交換をする場面が多く見られますね。
Q.児童を学びに惹きつけるために工夫したこと
市川 算数を例にすると、今回は問題を3段階にしてみたのですが、最後の問題は少し時間が足りなかったかもしれません。1つ目では、色んな考え方が出ると予想される問題を用意してみました。
2つ目では、少しだけ難易度を上げました。それは、選び取ったものの中で、よりふさわしいものを選んでいくだろうと思ったからです。その分、やり方がちょっと狭くなるだろうなという予想もありました。
3つ目で、「そのやり方ではどうもうまく行かないのでは?」というところで悩ませることを考えました。1つ目で間口をバッと広げて、色々な考え方があることを学びます。2つ目でその中からふさわしいものを選んでいき、3つ目に、それでは通用しないからどうしたらいいか?と子どもたちが悩んで、ハードルにぶつかるような経験をさせます。
このようにして、一見すると難しい、でも手に負えなくもない。ちょっと頑張ればできそうだ、という問題を段階的に出すことが最近は多くなっています。
Q.段階を踏んでいく授業は毎回やっているのか
市川 3段階であったり、2段階であったり…。指導案を書いている先生には怒られるかもしれませんが私の授業はアドリブが多くて、子どもとのやりとりの中で、子どもの反応を見ながら、ああ、こうしよう、ああしよう、というのは、いくつか用意してあり、常に考えながら書いています。
Q.「何分でいこうか?」と児童に問いかける意図
市川 子どもたちには、与えられた問題に対して、「どのくらいあれば、この問題は解決できるか」を意識して取り組んで欲しいと思っています。世の中で期限がない仕事はたぶんないですよね。多くの仕事には期限があります。
将来、そういう時にも役立つようにという思いも込めて、この問題、この課題は自分ならどのくらいで終わらせられるか?を小学生の頃から常に考える習慣をつけさせたいと思っています。ですから意図的にこちらで「何分でやりなさい」ということはあまり言いません。もちろん、およその腹づもりはあります。
予想と大きく外れている場合は、誘導することもあります。どれくらいの時間で解決できるかを、子どもたち自身がわかるようになって欲しいという思いがありますからね。この方法は4年生くらいからやっているので、あまり大きく外れてきませんね。
今日もそうでしたが、「〇〇分でできる。」という予想もやはり自分で考えて欲しいです。実際のところ、当てずっぽうに、適当に時間を言う子が減ってきたので、「これなら〇〇分でできる」という予想を子どもたちが自ら考えられるようになってきたのだと思います。
Q.先生の予想と児童の予想が大きくずれることはあるか
市川 最近はあまりないですね。
Q.何度も何度も習慣化してくることで実現したという捉え方で合っていますか?
市川 はい。そのように理解しています。
Q.1年間を100%とした場合の、先生が児童にインプットさせる時間の割合は
市川10%から20%ぐらいだと自分では思います。実際はインプットしているけれど、子どもたちからはそう思われないようにやっています。だから、僕が言いたいなと思うことが、子どもたちの中に見つけられたら、「〇〇君はこういう方法でやっているよ」という形で、間接的にインプットしようと心がけています。
それをどのように捉えるかによっても変わって来ますね。
「表を使ったらできるだろう」と言いたいところを、例えば、「〇〇君が表を描いているよ」と言ってみます。すると、知らない間に子どもたちが集まってきて、それがクラス全体に伝わっていきます。子どもたちは、自分たちの考えで問題が解決できたと捉えるので、もっと考えてみようという気持ちになってきます。
困ったら先生が教えてくれるから、という受け身の姿勢から自分たちで考えなくてはいけない。考えれば、分かってくるというサイクルを作りたいのです。それを間接的なインプットと捉えるのかどうか?その辺には意図はありますが、教師側からは出来るだけ言わないように我慢しています。実際は言いたくて仕方ないのですが。
Q.言いたい気持ちを堪えた先に得られたもの
市川 「楽しかった!」と授業が終わってからも、学び続けようとしているような子がいっぱいいます。それを見ると、「ああ、良かった)と、自分で折り合いをつけています。
僕の経験から言うと、授業が終わりに近づくと、多くの子どもたちは時計をちらちら見て、早く終わらないかな、おなかすいたな、給食まだかな~と思い始めます。ですが、授業の終わりの挨拶が始まっているのに、まだノートや教科書に食らいついている子どもがちらほらいるところを見ると、「ああ今日は一生懸命やっていたのだな)という満足感を、私なりに感じています。
Q.今の授業スタイルに至るまでの試行錯誤
市川『学び合い』という方法を実践している先生から見れば、違うのでは?と思われるところがたくさんあると感じます。「さあ、やりなさい!」という形で1時間を通すわけではなく、途中でいくつか区切りがあり、発表もさせます。
それは自分の中で柔軟に捉えています。全員が成長するという、目指すところは同じです。あとは、やはり子どもたちが自ら考え、自ら学ぶから出来るようになることがもっとも大切なことだと思っています。
教えてもらうから出来るようになるとか、教えたから出来たという考え方ではなく、子どもたちが学んだから、一生懸命頑張ったから出来たというベクトルの向きが逆になることを考えています。
本当にそうなっているのかは、常に考えています。初期の段階では子どもたちが、「ねえ先生、どうすればいいの?」と、取っ掛かりを求めて先生に教わって出来るようになる状況が見られました。
そこでうまく「ちょっとこの子と一緒にやってみようか」とか、もう1人を入れてみるとか。最初は先生も一緒にやって、そのうちスーッと引いて子どもたちだけでやる形にします。そのような形でやっているうちに、
「友達とやったから出来るようになったよね」と子どもたちを評価します。それは初期の段階で頻繁にやっていました。先生と友達と「どちらが分かりやすかった?」「どちらが聞きやすかった?」ということをよく尋ねます。
今日も、間違った答えを出している子がいて、他の子どもが「ちょっと先生。僕、どうして間違ってるか分かります」と言ってきた子どもがいました。なぜ、この友達は間違えているのか、分かると言うのです。
先生が教えると、正解をズバッと言ってしまいますが、子どもどうしだと、「こうやってやったんだよね?だから間違ったんだよね?」という形で、わかりやすく理解できます。間違った答えを出していた子も、自分のやり方を認めてもらえるから、素直に話を聞けるのです。
「うん、そうだね。」「でもさ」「こういうふうにやるんじゃないの?」「ああ、そっか」という場面は、やはり子ども同士のほうが良いと感じます。子ども同士のやり取りの中で、子どもの思考も深まっているのです。
間違えた子の、「なぜ間違えたか」を分析することによって、お互いがより深い学びに繋がっていくのではないかなと思っています。
Q.今の授業スタイルは何年前から始めたのか
市川 10年ぐらい前ですね。
Q.今の授業スタイルに馴染めない子はいるか
市川 やはり、勉強が良くできる子からは「僕にとってメリットはない。教えるばっかりだから」といわれることもありました。いくつものクラスでやってきましたが、多くのクラスでこのようなことを言う子どもが初期の段階ではいます。
ただ、その子たちも、深く理解しているか?というと、実はそうではなく、正解は出せるけど説明は出来ない。友達に教えるとなると、しどろもどろになり、「もうこんなの簡単じゃん。教えなくても分かるでしょっ!」となる。
結局、「なんでこんなのが分からないの?」という状態になります。それで、すごいことに、分からない子から馬鹿にされるのです。「おまえの教え方は下手くそだ」「もういい。もう用はない」「僕は〇〇ちゃんに教わるから」という展開になることもあります。
これはまず、普通の授業ではありえないと思いますね。成績の良い子たちが、成績の悪い子たちから、「おまえは役に立たないからいらない」と言われるわけです。そして、やや成績が低くても教え方がうまい子どものほうが尊敬されるという状況です。
これはすごいなと思います。社会に出てもきっとこういうことはよくあるでしょう。いくら能力が高くてもそれをみんなの力に出来ない人たちは、集団から認められません。やはり集団の中でジャッジをされるというこの仕組みがすごいなと思います。
そして自分の能力を皆の力にできるような子たちが、集団の中で評価され続けることによって、クラスの雰囲気や学びの姿勢も変わっていきます。親御さんの中にはそれをちょっと不満に思う方もいますが、学級通信などで、その勉強の様子をどんどん伝えていきます。
それをもとに、家庭で話題にしていただいて、子どもたちにとってはどちらのほうが楽しいか。楽しく学べているか。身についているか。テストの成績がどう変化していったか?ということを初期の段階では学級通信にこまめに載せていきます。
そして、おうちの人たちには「分からないことがあったら、いつでも見に来てください。何でも質問してください」と伝えています。親御さんたちからも「授業を見せてほしい」と言われることがあります。学校の授業をできるだけオープンにしていくことで、親御さんたちの理解も深まっていきます。
これらは、アクティブ・ラーニングに慣れていない初期の段階ではよくやっています。
Q.授業で失敗したことは
市川 子どもたちから「課題が難しすぎる。どうしようもない」という声が上がることもあります。とても難易度が高い中学受験の入試問題をドーンと出したこともあるのですが、誰も出来ませんでした。出来るだろうと思っていたのですが。
逆に、簡単すぎる問題でも失敗がありました。初期の段階ですが、参観日にみんなが分かるようにと思って比較的易しい問題を出しました。そしたら、全員ができてしまって…、何にも起こらないですね。
そういう失敗はあります。だから、僕はアクティブ・ラーニングで使うのは教科書の課題で十分だと思っています。子どもたち同士の『学び合い』の中では、先生たちは授業にあまり関わらないと思う人もいるかもしれませんが、僕はちょっと立場が違って、その子どもたちに応じた適切な課題が、とても大事になってくるのではないかと思っています。
Q.「適切な課題」を見極める方法
市川 やはり、従来の授業方式のように黒板に張り付いて、書いたり話したりしてない分、子どもの中を歩き回ることが出来ます。そして少し離れて、子どもたちを俯瞰することも出来ます。
その間に、子どもたちの様子を常にリサーチして、どんなところでつまずいているのか、どういう声が聞こえてくるか?ここが分からないという情報を出来るだけ頭に入れて、整理します。そうして得られた情報に対して、手を打っていき、それを記録し、次からの授業にフィードバックしていきます。
記録していくと、なんとなく傾向が見えてきます。蓄積していくと、そのような時の対応の仕方や引き出しが増えていくのかなと思います。だから、これはやはり教師の仕事ではないかと僕は思います。
良いところは、授業をしながら子どもたちの反応を見ることが出来る。これはものすごく大切なことです。それによって、深まりや広がりが生まれてきます。
それから逆に、うまくいってない、どうしようもない、何か困っている子が置き去りになっていないか?様子を見ながら授業の中で修正し、流れを変えていくこともできるのでは?と考えています。
なので、子どもたちが主役のように見えても、全体の流れ、その場は教師がマネージメントしています。それはもう絶対です。そこを勘違いしてしまうと、とんでもないことになるのではないかと思います。
Q.アクティブ・ラーニング型授業を成功させるために普段からやっていること
市川 できるだけ教育に関する情報雑誌をたくさん買っています。丁寧に読む時間がないので、流し読みですがザーッと読むようにはしています。そして、できるだけ多くの情報を得るようにしています。
その中から使えそうだと思うものは、具体的に授業の課題や発問ベースまで色々なものを作って、常に用意しています。今日の授業をやるにあたっても、今回の単元の中で、いくつかこれは使えそうというネタの中から、一番良いものを引っ張り出してきます。
そのネタ(課題)のストックだけは常に、出来るだけ色んなパターンを用意するようにしています。それらは、自分で考えることもありますし、首都圏の塾や受験塾で出されるような問題から、パズルのような問題、ときには東大の入試問題など、色々なものを使います。これを小学校の授業に使ったらどうなるだろうか?ということは、常に考えています。ほとんど趣味のようなものですね。
Q.アクティブ・ラーニング型授業を始めてから、児童の学びに変化はあったか
市川 今日の授業でもそうでしたが、あまりうるさく言わなくても、きちんと座って話を聞く、必要に応じてちゃんと動けるようになりました。
「今から、全体で共有する時間だよ」「じゃあ、始めるよ。座って」という一言二言でみんなサーッと座っていきます。「じゃあ、この問題、みんなで出来るようになろう」と言ったら、バーッと動きます。言われたからやっているというよりも、何をやればいいか?何が必要か?子どもたち自身が分かってきているのではないかと感じています。
それから、学級会などでは僕がいなくても、司会が出てバーッと全部やってしまう。そして学校全体に関わるようなことなら決定する前に、「先生、ここまで進んだけど、この先まで、僕たちで勝手に決めちゃっていいですか?」と僕のところに聞きに来ます。
この教室の中だけで済むことなら「もう全部決めちゃいました」と子どもたちだけで判断して持ってくるようになりました。これには最初すごくびっくりしました。ああ、自分たちで何をすべきかを考えているのだなと思いました。
クラスの子どもの2割くらいがリーダー的な子どもとして育ってきていて、何をすればいいのか?と気づいて来るようになれば、周りの子どもたちも良い影響を受けます。そんな子たちに引っ張られてきて、段々育ってくるのかなと期待しています。
頭が良いとか悪いとか、テストの成績が良いといったことだけじゃなくて、本当に色々なタイプの子どもたちが、自分なりに何が出来るかを考えて、行動するようになってきました。
男女の分け隔てがなく、ガチャガチャ楽しそうにやっています。こういう勉強の場では男女あまり関係ないですね。時には友達どうし固まることもありますが、全体としてクラスの雰囲気がすごく柔らかくなってきますね。
Q.アクティブ・ラーニング型授業を通じて、児童から教わったこと その1
市川 たくさんありますね。
Q.いくつか教えてください。
市川 大人では思いつかないような子どもの視点があります。子ども同士がお互いを思いやりの目で見ている。気分が乗っていない子どもがいて、その子に、僕が「ちゃんとまじめにやれ!」と怒ったら、別の子が「あの子は、今日は気分が乗ってないんだ」というので、話を聞いてみたら、前の休み時間に、ドッジボールで顔面にボールを当てられたけど、ぶつけた相手に謝ってもらえなかった。それを根に持っていてなかなか素直になれない。
そのようなところまでしっかり見取っているのです。普段だったら、サボっている子どもに「ちゃんとやれよ!」という子どもたちも、「先生、先生、今日はいいんだよ」「今日はそっとしておいてあげてよ」など,言ってくるのです。ああ、子どもたちはこのようにしてお互いを思いやっているのだなあと、子どもたちから教わりました。
だから、私たち教師も、サボっている子どもたちに対して、いきなり頭ごなしに「なんだよ!ちゃんとやれ!」と怒鳴りつけるのではなく、「なんかあったんか?」と聞くようにはなりましたね。
5-6年生だけじゃなく、4年生くらいでもしっかり状況を見て思いやりの気持ちをもって友だちの状況を教えてくれるので、へえ~と思って感心したこともあります。
このように、勉強だけじゃない、その場だけじゃない、目の前の場面だけで、子どもを評価するのではなく、子どもたちの背景まで見られるというのはアクティブ・ラーニングの授業で子ども同士の関わりがよくわかるからだと思います。
一斉授業をやっていると、先生が1人で「静かにしなさい。私語をしてはいけません」と言いますよね。この場合、子どもたちは「先生、それ無理無理」って言いたくても、静かにしていないといけないわけです。
静かにできない理由がある子どもの事情を釈明してあげるような、友達が代わりに言ってあげるような場面はなかなかないでしょう。でも、今の授業なら子どもたちが本当に先生ではわからないところまで語りながらやってくれます。
子どもたち同士で色々な配慮をしながら進めていくと、やがてその子もうまく中に入ってきます。教師では見取れないようなところまで、子どもたちはお互いに配慮しながら、考えながら生活しているのです。そこに気づけたことはすごく勉強になりました。
それは私も、分かりません。限界があるので。分からないのですが、分からないなりになんとか、今まで通りのやり方ではなく、リサーチしながら、子どもたちと対話しながらやっていかないといけないとは、強く感じます。勉強になります。
Q.アクティブ・ラーニング型授業を通じて、児童から教わったこと その2
市川 任せればやれるものだということですね。子どもたちでも責任をちゃんと与えて、任せて信じてあげればできるのだと教わりました。
逆に信じてあげないとやりません。これはものすごい。口先だけで、その場だけで「任せたからやってごらん」と言って、実は最後(結論)をこちらが作り込んでしまうと、もう二度とやらなくなりますね。だけど、最初から最後までちゃんと信じて任せてあげると、どこまででもできるのだということをすごく感じました。
Q.それは、先生がそうお感じになる前は、どちらかというと任せてなかった?
市川 ええ。都合良く切り替えていたところもあったと思います。振り返ってみると、参観日や研究授業では任せた顔をしながら実は任せ切っていないという状況でした。完全に任せてしまうのが怖くて、先回りして、用意して、誘導してという流れは、確かにあったと反省しています。
でも、いざ、任せてしまったなら、それ以上になるということがわかってきました。こちらの期待以上のことをやってくれるものだなあと感じています。そして大人の世界でも一緒だということを、子どもたちの姿から思いました。
Q.基礎学力が高くないとAL型授業はできないという意見について
市川 これは、卵が先か,ニワトリが先か?みたいなもので、同時に育てていくものだと思っています。アクティブ・ラーニング型授業が出来なかったら出来なかったで、出来ないのはなぜか?と、その場で考えさせればいいのです。
その基礎学力をつけるためのアクティブ・ラーニングで良いのではないかと思います。自分たちで、どうすれば、この問題が解けるようになるか考えてみよう。考えてみたら、どうも計算力がないのではないか?ということがわかった。
では、どういう計算力をつければいいのか?を考えよう…。このように自分たちで考えさせて、プリントを作らせて、やっていけば、ものすごく力が付くと思います。
自分たちでリサーチして、1年生の時のドリルから引っ張ってくるなり、色々な工夫をして、自分たちの課題解決のためにやっていけると思います。アクティブ・ラーニングというのは形ではありません。子どもたちが必要だと思うことを深く考えて、試行錯誤をしながら、自分たちの課題やミッション達成のために、ああだこうだやっていけばいいのです。だから、基礎学力をつけることも、アクティブ・ラーニングで出来るのでは?と、思っています。
Q.これから挑戦してみたいこと
市川 子どもたちにテストを作らせたいと思っています。やっている先生もいるようですが、平均点80点になるようなテスト問題を作らせたら出来るのではないか?と思います。
あとは、これは私の野望のようなものですが、全校が寺子屋のような、私塾のような学校を作ってみたいと考えています。
具体的にいうと、1つの課題にいろいろな学年、いろいろな学力の人が集まってきて、その課題を解決していきます。単位取得制のような学びの場を作ってみたいと考えることもあります。
それが、本来の学びの場だと思っていますので、どういう形であろうとおそらく、その中は常にアクティブな状態になるでしょう。
Q.アクティブ・ラーニング型授業を始めてみたい先生へのメッセージ
市川 まず、アクティブ・ラーニングを行っている先生のところに問い合わせをして、実際に授業を見学させてもらうのがいいでしょう。おそらく、これなら出来ると思うでしょう。やってみたら意外に簡単なのだと感じると思います。その後はアクティブ・ラーニング型授業を実践している先生たちと繋がりを持っていけば、怖くないと思います。
是非、多くの先生方と繋がりを持ってください。ウェブのコンテンツにある情報を色々と見てみるのも良いでしょう。
まずは、これなら出来そうだというところから、真似をしてもらって、授業に取り入れていけばいいのかなと思います。そして、壁にぶち当たったら本を読んでみる、さらに深いところへ相談に行くのも良いでしょう。
アクティブ・ラーニングはとにかく子どもが変わります。その様子を目の当たりにすることは教師にとってこの上ない喜びになると思います。是非、挑戦して欲しいですね。
※市川先生の算数の授業は、学校導入版で視聴できます
学校導入版の詳細はこちらをご覧ください...
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