概要
「高専」におけるアクティブ・ラーニングの実践
授業がわからない学生の本音と先生の「覚悟」の秘密
小テストを工夫したり、説明の仕方を変えてみたり、あれこれ考えて改善をしていっても、毎年、一定の割合で単位を落とす学生がいる。
この状況を、何とかしたい。
鈴木先生はそんな思いから、何か方法はないかと本やインターネットで情報収集する中で、今の授業方法にたどり着いたそうです。
「先生の話を黙って聞き、一人で問題を解く」という授業から、「学生同士で『学び合い』、しっかりと理解する」授業へ。
授業では、数学を理解すると同時に、生きていく上で重要な「人に相談する力」を、身に付けていきます。
鈴木先生が「人に相談する力」に着目するようになったのは、ある学生との対話がきっかけでした。
授業が分からないという学生の意外な本音とは? ぜひご覧ください。
Q.今日の授業はいかがでしたか?
鈴木 道治教授(以下、鈴木) 何人かの学生は、カメラが入っていることでうわずっていたというか、はしゃいでいるようでしたが、基本的には、いつもの通りの授業はできたので、それはよかったなと思います。
今年度を通じて、今日のクラスや他のクラスについても、自分だけや、自分と関わっている仲間だけがいい状態で満足している子が多いので、クラス全体でなんとかしようという凝集力というか、もうちょっと全体を見渡せる子が何人か出てくるとよかったなとは思っていました。
Q.先生の授業では「全員達成」を目的にはされてないのですか?
鈴木 彼らを縛り付けて、それに向かってガーッと行けみたいなことはあえて強くは言っていません。彼らは基本的に、卒業するまで5年間あのクラスで、組替えがないので、彼らのペースに任せようと思っています。こちらがギュッと押さえつけてやってできたものは長続きしないかなと感じているので、時々「全体を考えてやれよ」というようなことは言いますが、それを受け止めるかどうかは、彼らの選択に任せたいと思っています。
すぐ分かる子もいれば、そんなの俺には関係ないと思う子もいて当然だと思うので、ゆるい感じでやっています。私自身が、必ずしもそこを求めていないからかもしれません。いつも気をつけていることは、もし私が彼らの立場、学生の立場に置き換わって、先生に「全員達成がんばれよ」と言われたら、どう感じるかな?というと、自分だったら嫌だなと考えることがあります。
今の大人の立場で言えば、「全員達成」は彼らにとってメリットになるとは思うのですが、自分がもし彼らの年齢だったら反発するかもしれないなと思い、その反発する子のことも考えると、そこまで強く踏み込めないという感じです。
Q.高専での数学の必要性や学生に学んでほしいことは?
鈴木 数学という学問で言えば、エンジニアにとっては絶対必要なことだと思います。数学というのは自然現象を表すための言葉なので、学んでいく上で彼らには必要なものです。しかし、現状で言えば数学が苦手な子も高専に入ってきているので、数学を嫌いにならないでほしいという思いもあります。
イメージとして、数学は一人で解かなくてはいけないと思っている子が多くいます。ただ、本当に数学が好きな子は熱中して一人で頑張るというタイプもいますが、みんながみんなそうではありません。そういう子にとっては、エンジニアになるための道具として数学は使えなくては困るので、「どんどん周りの人に聞けよ」と言っています。
分からないことがあれば、人に聞いて分かるようになってもらいたいということを主眼に置いてやっています。人に相談できないで、留年したり中退したりする子を見ているので、どの子も「分かんないから教えて」と言えることが大事かなと思います。逆にいえば、それが身につくと、高専にいる5年間はずっとやっていけると思います。
そういう人に相談できない子がわりと留年したり中退したりする傾向があると判断しているので、人に相談できるような学生が育ってくれれば、僕としてはそれでもう十分かなと思っています。
Q.人に相談できない学生の存在に気づいたきっかけは?
鈴木 高専の特徴として、前の年に落とした単位を次の年、試験だけで取り戻すという制度があります。ある時、担任している子でなかなかできない子をたまたま「ちょっと話しようや」と呼びだしたことがありました。
案の定、テストも悪く「おまえ、本当に分かりたいの?」と聞いたら、「いや、本当に分かりたいんです」「でも分かんない」「テストができない」と言い、涙を流したのです。できない子でもやっぱり本音としては分かるようになりたいという姿に接してから、やはりどんどん相談できるような環境づくりが大事だなと思いました。それがきっかけです。
Q.当時の授業スタイルは今とは違いましたか?
鈴木 違います。10年前ぐらいだと、いわゆる先生が黒板に書いて、「こうだね、ああだね」「はい、だれそれ君分かった?」とか「分かる?」とか、そのような普通の授業でした。その時は、勉強ができないのは、生徒側の怠慢だろうと、勉強をやってないだけだろうと思っていました。
Q. その経験がAL型授業を始めるきっかけになったのでしょうか?
鈴木 そうです。自分としても、講義型の授業をやっている時も、「小テストを工夫しよう」とか、「説明の仕方を工夫しよう」とか色々と考えてやってはいましたが、いざテストをやると、毎年、単位を落とす子が何割か出てきて、一向に改善しないわけです。
そういうのを目の当たりにして、何か良い方法はないだろうかと本を読んだり、ネットサーフィンをしたりして探し、その中でたまたまその1つとして『学び合い』を見つけました。その『学び合い』以外でも、学びの共同体など、他の方法もそれなりに本を読んだりして、情報収集はしていましたが、その中で、一番自分にフィットしたのが今やっている『学び合い』です。
Q.AL型授業を始めてみて、最初はどうでしたか?
鈴木 最初は、「失敗したら、また元に戻ればいい」という軽い気持ちでいました。全体としては、それなりにうまくいっていて、「まあ、こんなもんだろう」という感じの授業はできています。学生からの受けも悪いわけではありませんし、もし不都合なことがあれば、元に戻そうというぐらいの覚悟で「ちょっと試しにやってみる」という気持ちで始めました。
そして、始めたところ、たまたまそのクラスが良かったのか、最初から「おい、これ教えてよ」みたいな動き方を本当にしたので、「これはもうちょっとやってみようかな」というように、どんどんやっていった感じです。もし、そこでクラスが凍りついて何も交流が起こらないようなクラスだったら、ひょっとしたらやめていたかもしれません。
Q.そんな凍りつくようなクラスでも今であれば授業はできますか?
鈴木 今となっては、できるできないではなくて、これはやらないとダメだろうと思っています。なぜなら、社会に出た時に、やはり相談できないと物事が動かないので、こういう形の授業に触れるのが早ければ早いほどいいと思っています。高専で受けるよりは中学で受けたほうがいいし、中学で受けるよりは小学校のほうがいいでしょう。
しかし、たまたま育ってきた環境によってそれは選べないので、高専でたまたま僕が授業を受け持つ学生に対しては、社会に出る前に触れたほうがいいだろうと思ってやっています。幸い、他の講師の先生方に比べれば、高専だとAL型授業ができる環境にあるので、実践しています。
Q.高専と他の学校の違いはどこにあるのでしょうか?
鈴木 それは高専が高等教育機関といって、基本的な学びとして、教師から教えるというよりも、学生が自分から学んでいかなくてはいけない場所です。なので、AL型授業を実践する場としてもやりやすいと思っています。
Q.AL型授業を行ってきて、失敗と思うことはありましたか?
鈴木 基本的にはありません。ただ、学生がちゃんと受け止めてくれているかなど、いろいろ心配な面があるので、定期試験ごとにアンケートは取っています。そうすると、始めた時から今日に至るまで、全体で延べ50クラスぐらいはやっていますが、50クラスのほとんどは普通の授業をやるよりもこちら(アクティブ・ラーニング型授業)のほうがいいと答えてくれます。
ただ、一斉授業とアクティブ・ラーニング型授業を比べた時に「そんなに変わらない」「どっちでもいい」というように回答するクラスも何クラスかはあります。その時は、「なんでだろう?」と、自分のどこに原因があるのか突き止めたくなります。
しかし、その答えがまだなかなか見つかっていないで、自分としては「こっちのほうが本当はいいのにな」と思いながらも、そういうクラスに出会うとすごく悩みます。考える材料を彼らが僕に与えてくれているのだなと思っているのですが。
Q.そういう学生の意見から何か対策を講じたりしましたか?
鈴木 あまり講じていなかったかもしれません。これは自分にとって都合のいい話かもしれませんが、もし彼らが3年生とか、上級生になってこの授業を受けていたらフィットしたかもしれません。たまたま今のその学年と僕の授業のそりが合わなかったり、彼らの波長と合わなかったこともあるのではと思ったりもします。
あとは、アンケートの結果を見て、彼らはこういうことを欲しているなということがあれば、それを取り入れてやる場合もあります。たとえば、「もうちょっと説明してほしい」という箇所があれば、ではちょっと取り入れてみようとか、今よりちょっと増やそうといった形で対応しています。
実際には、増やしてもあまり成績は変わらないですが、せっかくアンケートを取って、何にも反応がなければ、彼らも「なんだよ」と思うかもしれません。なので、その辺は彼らとキャッチボールをしつつ、「今どうしたいの?」とか「じゃあこうやってみるよ」ということで、少しずつ入れてみたり、あるいは逆に「俺はこう思うからこうやるよ」のように双方向のやり取りは気にしています。
Q.アンケートはどれぐらいの頻度で取られるのですか?
鈴木 基本的には、定期試験ごとです。うちの学校でいうと、6月に前期中間があり、今だと8月頭に前期の期末テストがあります。それから、12月の頭に後期中間があり、2月の頭に学年末があり、その度ごとに取っています。1年間トータルすると「良い」という答えのほうが圧倒的に多くなるので、実はあまり悩んでいないかもしれません。
Q.学生たちにアンケートをとるのは先生のこだわりですか?
鈴木 一応、普通の先生と違うことを試みているので、記録として残しておく必要はあるだろうという目的が1つあります。あとは、彼らとのキャッチボールのためです。項目が10個ぐらいある記述式で、書く量も多いのですが、彼らはそれをやってくるので、こちらもそれをクラス40人分打ち込みます。量としては1万字(原稿用紙約25枚分)を超えてくるくらいですが、それを全て打ち込み印刷して返します。
そうした真剣な姿勢を見せないと、彼らもまともに答えてくれないと思うので、そういうこだわりはあります。
Q.1年生の1回目の授業の時は、どういうふうに説明しますか?
鈴木 1回目の授業では、なぜこういう授業をやるのかというプレゼンをします。パワーポイントで、だいたい10分から15分ぐらいのスライドを見せて一通り説明をし、最後のほうには、「じゃあこの問題やってみようか」と言って問題を出します。
1つは、「口っていう字に、2画加えて、別の漢字にしなさい」という問題です。例えば、田んぼの田とかです。それを「今から1分間測るから、できるだけ思い出してね」と言ってまず1人でやります。そうすると、1人だとなかなか10個にはいきません。
しかし「もう1分あげるので、隣近所と相談して、10個になるようにしてごらん」と言ってやると、「え?そんな漢字もあったの?」というようにして、最終的にはクラスのほぼ全員が10個を達成するわけです。そうすると、「1人でやるより、仲間とやったほうが効果あるな」ということがなんとなく実感として分かるようになります。
あと最近やっているのは、だまし絵です。典型的なのは、おばあさんと若い人に見えるだまし絵などを何枚か見せて、「これ何に見える?」と聞きます。そうすると、2つとも分かると答えられる人はなかなかいないわけです。
それを人に説明する時に「こう見えるじゃん」と言っても、分からない人にはなかなか分からないわけで、物事というのは分かる人には当たり前でも、分からない人にとっては本当に分からないということを実感させます。
そうすることで、やっぱり人と話し合うことは大事なんだということを感じてもらうような、そうした活動をするのが第1回目の授業です。
Q.最初の頃の学生たちの反応はどうですか?
鈴木 最初の頃は中学までの習慣があるから、1人で黙々とやる子が多いです。それでも40人もいれば待てずに、「もう1人でやるのは耐えられない」という子が出てきて、「ちょっと」という感じで始まるわけです。
そうなったら、「ああ、それでいいんだよ」「隣じゃなくてもいいよ」「立ち歩いてもいいんだよ」などと最初の頃は声かけをしたりします。そうすると、徐々に話し合う学生ができてくるようになります。
Q.そういう形になるにはどれくらい時間がかかるのですか?
鈴木 わりとは早く、ひと月も経てば十分できると思います。
Q.授業の流れを教えてください
鈴木 例えば、典型的な例で言うと、最初に10分間ぐらい前回までの内容のテストをやります。それを互いに黒板に答えを書いて、隣同士交換して、マル付けしてもらって、回収します。その後から授業です。授業で最近多いのは、10分から15分くらい「今日はこういうことをやるよ」と言って始めています。
例えば、「三角関数だったら、サインとコサイン、タンジェントはこういうふうに定めます」など、ごく簡単に説明をして、「では今日は、教科書の問い何番から何番をやってください」っていう紙を配って、「やってください」「時間は何分までですよ」と言って解いてもらいます。
高専の場合、90分授業なので、最初の小テストで10分プラス答え合わせをして、説明するのが最大15分ぐらい、合わせてだいたい30分ぐらい使い、授業には約1時間残ります。
Q.最後の振り返りは毎回やっているのですか?
鈴木 あれは、後期に入ってからです。それは何故かというと、「ただ解いただけじゃダメだよ」「人に説明するまで分からないと、ちゃんとものにならないよ」と言っているので、振り返りをやるようになりました。だから、「問い3番が分からない仮想の相手を想定して、ではその子に説明するように書いてください」と言っているので、いろいろ書いてくれます。
どうしてこれを始めたかというと、たまに学生のノートも見ていたら、問いを解いた時に式だけしか書いていませんでした。どういうふうに考えたかという過程が分からず、式だけ羅列されているだけで、「仮定なになにを使ってこれがこう成り立つ。だから、、」という流れが見えない。しかもイコールがなかったり、こっちからこっちに飛んでいたりするなど、彼らが本当に分かっているのかなと思い、今年から始めるようになりました。
そうすると、「これ、分かってないんじゃないかな」と思っていた子でも、書かせてみると「これこれこうだからこうで」と書いてあるので、「意外に学生は分かっているのだな」ということが分かりました。逆の意味で安心しましたし、これは自分自身にとっての新しい発見でした。
Q.『学び合い』が60分間もあると学生たちの集中力は切れませんか?
鈴木 切れると思います。今日もたぶん、録音された音声にもいろいろ関係ないこと言っている声が入っていると思います。実際の授業をやっている時も、数学の問題から脱線して「昨日どこそこへ行って、なんたらかんたら」とか、「テレビがなんたらかんたら」といった話は聞こえてきます。
もちろん度が過ぎれば注意することもありますが、コミュニケーションというのは、そうした雑談など、膨大な無駄も含めて大事かなと思っているので、極端に悪くなければそれもOKにしています。
今日は5,6時間目の授業でしたが、昼休み後のこの時間というのは魔の時間で、普通の授業なら寝る子が続出するはずです。でも、今日はカメラが入り、皆さんもいたということもあって、寝る子はいませんでした。
他の学年でやっていても、5,6時間目は魔の時間だから、普通の授業ならば寝る子は出るはずですが、AL型の僕の授業だと出てこないのです。これはもう確実なことなので、やはり寝たら分からないままになってしまうという意味でも、このやり方のほうが意味はあるなと思います。
Q.学生たちへの声かけについて意識していることはありますか?
鈴木 僕も色んな実践者の方と話すことは多いですが、声かけは少ないほうだと思います。自分自身があまり言われると、うるさいなと思う性格だからか分かりませんが、あまり褒めたり、「そこ良いね」といったことは言わないかもしれません。僕自身、しゃべるのが苦手ということもあるのですが。
また、学生から聞いてくれば「こうだよああだよ」と答えますが、こちらから先に言ってしまうと、せっかくの彼らの芽を摘んでしまうことになるとも思っています。分かろうとして、誰かに声かけようかなと思っているところに、「おい、これ分かった?」「教えてあげようか」と言ってしまうのはまずいですよね。彼らが自分から立って行動するのが一番だと思っているので、余計なことは言わないようにしています。
Q.AL型授業を行うために普段から努力していることはありますか?
鈴木 僕の場合、各地で行われているアクティブ・ラーニング型授業の研修会の案内があると、都合が合えば行くようにしています。東京や神奈川、東北、関西、長野のほうでも、これはちょっと使えそうかなと思う場合は出かけるようにしています。
Q.AL型授業を行うにあたって欠かすことのできない準備は?
鈴木 私がやっているアクティブ・ラーニング型授業の場合は、基本的には準備は要りません。ただ、自分自身の興味として、あるいは数学が好きな学生もいるので、そういう子たちの質問にも答えられるように、数学の勉強はしています。どちらかというと、準備というより覚悟のほうが大事だと思っています。
「今、彼らにとって何が必要か」や、「将来にとって何が必要か」ということを数学という材料を使って学ぶという思いのほうが強いです。彼らはエンジニアになる子がほとんどですが、いま習っている数学自体を使うことはおそらく無く、全然関係ないことをやると思います。
ですから、知識云々よりも、どう考えるかとか、こういう時はどう対処するとか、困った時どうするとか、そういうほうが大事だと思っています。
Q.AL型授業を行って学生たちの学ぶ姿勢に変化はありましたか?
鈴木 アンケートの答え方や回答を見ていると、変化はあるなと感じます。例えば、「この数学の知識以外にどんなことが身につきましたか?」という設問があると、それに対する彼らや彼女たちは色んな答え方をしてくれます。
例えば、「予習しないとやっぱダメだ」や、あるいは「仲間と相談したほうが先生に教わるより、よりよく分かった」など、そういう答え方を見ると、これは講義型の授業ではなかなか答えられないものではないかな、という実感はあります。
Q.先生自身が学生たちから教えられることはありますか?
鈴木 前でしたら、こいつはダメだろうと、授業中もチャランポランだし、と思っていたのですが、仲間と一緒にやると、それなりにやれると、やればできるということがよく分かりました。また、僕が思いつかないような発想で解決したり、しかも簡単なやり方で解いたりするのを時々目にするとやっぱり「おお!」とか「すごいなあ!」というような場面に出会います。
Q.AL型授業と試験勉強の両立についてはどうお考えですか?
鈴木 高専は、他の高校までの先生方と違うと思います。他の講師の先生方は入試があるので、より厳しい立場だと思いますが、高専は別に普通の大学入試はありません。大学編入試験などはありますが、またちょっと違います。
高専では、定期試験と授業になるのですが、僕は授業で学んで身についたことを試験にしてリンクさせているので、普段の授業をちゃんとやっていれば、そのまま結果が出るテストになっています。むしろ試験勉強はしなくていいという形です。
授業の中でも、教科書の内容はだいたい試験より早めに終わりますし、残った何回かで、去年の問題を解いてみようという演習にします。その中でまた、去年の問題をやってみて、分からない問題があれば、仲間に聞くことができる時間があるので、分からない部分が、より減っていきます。そうすると、当然、試験の結果もだいたい良くなります。
Q.AL型授業でも教科書の内容を終えることができますか?
鈴木 高専の数学の教科書もかなり厚いので、彼らにとってはやはりハードだと思いますが、その中でもなんとかできています。例えば従来の講義型授業をやった時に教えきれるか、もしくは教えたからと言って彼らは身につくかといえば、身につかないなという体験をしてきているので、そういうことを考えると、彼らが困った時に、僕が答えてあげるやり方のほうが、ずっと教えっぱなしよりはいいと感じています。
あとは高校以上になると、基本的に学校の授業の中で全てを賄いきれると僕は思ったことはありません。やはり、それ以外で、学生自身もやらないと、とても学びきれるものではないような量をやっているような気がします。基本的には、教えたからできるというのは幻想かなと思っています。
Q.AL型授業だからこそできていることはありますか?
鈴木 なかなか理想とするところまではいかないような気がしますが、1つは、やはり教科書が読めるようになってもらいたいなという思いがあります。今の学生は、教科書を読めないのです。例えて言うと、漢字を抜かして読むみたいなことです。コントで、志村けんがやっているようなイメージです。
「今日の問題はこれです」と課題を出して、学生が解く時に、「分かりません」と言うわけです。「どれどれ?どこが分かんないの?」と聞くと「これこれです」「おまえ、教科書ちゃんと読んだ?」「書いてあるじゃん」と言うと、初めて「え?どこどこ?」と言って、読み出すと、「あ、ここだ」と気づくような場面がよくあるのです。
ということは、彼らは今まで教科書をあまり読んだ経験がないので、教科書から必要な情報を抜き取るという経験もあまりないということです。それをアクティブ・ラーニング型授業でやると、設問として出しやすいので、最近やっているのは、教科書の例題の数値をちょっと変えるやり方をしています。
数値を変えると、答えは載っていないわけですが、やり方としてはこういう流れで解けばいいということは分かるはずなので、彼らとしても「じゃあちょっといじって、真似てやってみよう」という気になります。
そうすると、教科書の例題の解答を参考にしながら読むようになると思います。ですので、AL型授業だとそういう工夫がしやすいというのはあります。そういったことは最近よくやるようになりました。
Q.今後、挑戦してみたいこと、野望はなにかありますか?
鈴木 究極的には、僕はもう手を出さないで、彼らだけで教科書を全部学ぶというような授業ができれば一番いいかなと思います。そういうことができるクラスが理想でしょうが、まだ、なかなかいかないと思います。
Q.AL型授業に取り組もうとしている先生方へのメッセージ
鈴木 僕自身、授業があまり上手ではないので、色んな先生方と繋がるのが一番だと思っています。小学校、中学校、高校、大学含め、素晴らしい先生がいっぱいいて、その先生方といろいろと繋がっていきましょうというのが、エールに代わる言葉です。僕も加わりたいですというより、むしろ、加えてくださいとお願いしたいくらいです。...
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