概要
【授業プリント付き】『学び合い』を始めようとしている先生は必見!全ての教科で応用できる、『学び合い』授業開きのためのプリント4枚付き。なぜ学ぶのか?どんな大人になりたいのか?『学び合う』意義を3ステップで考えていきます。
『学び合い』を始めて10年の、坂田康亮先生の授業開きを取材いたしました。
『学び合い』をこれから始めようとされている先生、実践中の先生はもちろん、『学び合い』って何?という先生もぜひご覧下さい。
坂田先生が授業開きで使用されている4枚のプリントも、ご共有いただきましたので、以下「資料ダウンロード」ボタンよりご利用ください。
坂田先生に今回の授業の設計についてや、授業を通じての気づき、生徒とのエピソードなど、たっぷりお伺いしています。
・なぜ、授業開きでは理科の問題ではなく「なぞなぞ」にした方がいいのか?
・なぜ、坂田先生は10年前に一斉授業から『学び合い』へとシフトしたのか?
・一斉授業では15分で居眠りしていた生徒が、『学び合い』では50分間起きて授業に参加!授業後には「今日は頭を使って、疲れたー!」と言いに来た。その時、坂田先生が気づいたこととは?
・10点も取れなかった男子生徒が85点を取った!その時、クラス全員から拍手と歓声が上がったとき、ある女子生徒がとった行動とは?
などなど、ぜひご確認ください!
Q.本日の手応えは?
坂田 康亮先生(以下、坂田) クラスで『学び合い』のスタイルの動きが出来るようになるまで、どうしても時間はかかるのですが、1回目であそこまで出来れば、2回目、3回目の早い段階で確立できるのではないかという可能性や手応えは十分に得ることができました。
Q.坂田先生の予想は?
坂田 5割です。どうしてもグループで固まってしまうのではないかとかいう予想はしていました。ただ、今日の動き方はかなり流動的だったので、子どもたちはなんとなく、「なんでこういう授業をするのか」という価値観のようなものは、少しは分かってくれたのかなという感触はあります。
Q.先生としては合格点?
坂田 合格だと思います。
Q.今日の授業で一番学び取ってほしかったことは?
坂田 学校で学ぶものとしては、もちろん理科の知識や技能などはあります。しかし、学校では、やはり友だちとの人間関係や集団をどう作っていくのかを踏まえて、仲間の大切さや、自分も含めた自分と他者の存在の重要性、大切さを学んで欲しいと思っています。
Q.生徒たちには届いたと思いますか?
坂田 おそらく、頭の中では分かったと思いますが、それを実感というレベルとなると、まだまだだと思います。ただ、今日はそこまでは至らなかったかもしれませんが、今から回数を重ねていけば、早い段階でそれは得られるのではないかと思います。
例えば、自分が困った時に、誰か友だちがサポートしてくれる、逆に困っている友だちをサポートすることで、「ありがとう」と言ってもらえるような経験をいくつも積み重ねていく中で、実感していくのかなと思います。
Q.ワーク時間の設定の意義
坂田 15分という時間を設定したのですが、正直、最初は15分ギリギリかかるかなと思っていました。もしかしたら終わらない子も出るかなと思っていたのですが、今回はかなり子どもたちの動きが良かったです。
やはり、みんなで1つのことを成し遂げる達成感は、個別の授業だと得られないものなので、あのような経験は大事だなと思います。それを何回も経験させてあげたいなと感じました。
Q.小さい達成を経験させる意味
坂田 例えば今日の演習も、理科の課題でもよかったと思うのですが、あえて取っ付きやすい謎解きのような演習問題にしました。
どうしても理科が苦手な子は、先入観で苦手と思っている子が多いので、こうして仲間と協力すれば、どんな分野の難しい問題でもクリアできるのだという経験を最初にさせたかったという意図はあります。
次回からは、実際に理科の内容になっていくので、前回と同じように、みんなで達成していこうという授業に繋がっていけばいいなと思います。
Q.なぜ理科の課題ではなく謎解きにしたのですか?
坂田 謎解きにしたのは、まず第1回目で教科書が進んでいなかったからです。どうしても問題を出すとなると、既習事項に振り返るような形になるので、今回はそうしました。
ですが、その既習事項を出した時に、そこがたまたま分からなかったり、まだ理解できていない子がいた場合、その時点で「やっぱり理科難しいよね」という感触を味合わせてしまうのではないかと思いました。
そうではなく、1回フラットにしたかったので、理科の課題ではなく、謎解きの形で問題を出しました。
Q.『学び合い』による授業を行う頻度は?
坂田 毎回です。どんな単元であろうと、どんな内容であろうと、『学び合い』のスタイルや考えに基づいて、基本的には自由に動いて、みんなで課題を1つクリアしていくやり方を年間通してやっています。
Q.『学び合い』の授業はいつから?
坂田 もう10年前からです。
Q.10年前まではどんな授業をやっていましたか?
坂田 10年前までは、一斉講義型の授業でした。なので、例えば最初に、演示実験みたいなものをやって、子どもたちの興味関心を引いてから、理論的な内容をレクチャーしていくスタイルを取っていました。
その時は、最初の演示実験でみんな盛り上がります。「うわあ、なんでやろ?なんでやろ?」となるのですが、いざ「理屈はね」となった瞬間、理科が苦手な子は、諦めてしまうのです。
ですので、授業では手応えがあったのに、テストをやってみると全然結果が出てこなかった、ということはたくさんありました。
Q.10年前に感じた問題意識
坂田 その10年前に3年生を担当していて、子どもたちは一生懸命やっているのに、希望する進路先に行けなかった子たちの姿を見て「このままじゃダメだな」と思いました。
「子どもたちの将来のことを考えたら、なんとかしないと」「このままの授業をやっていたらダメだな」ということは、常々感じていました。
Q.今のやり方になった経緯は?
坂田 たまたま同じ学校の先輩の先生が、「面白そうな授業がある」と、西川純先生の『学び合い』を紹介してくださって、「2人で一緒にやってみないか」ということから試験的にやり始めました。
その先生は数学の先生だったのですが、西川先生のホームページを見て、手引き書を見ながら、本当にどうやっていいのか分からないまま、とりあえずやり始めたのが最初です。
Q.最初はどうでしたか?
坂田 最初は怖かったです。教師の話す時間を極力短く、子どもたちの活動時間を長く、そして、学び方を自由に子どもたちに委ねることに対して、果たしてそれで、学習が成立するのかという不安がまず1つありました。
教師が基本的には教えないということになっているので、「どう子どもたちを動かしたらいいのか」「教師の立場はどうなのか」「役割は何なのだろうか」というのは、色々感じました。
しかし、実際にやってみると、子どもたちは動くのです。今まで一斉型の授業をしていた時、15分ぐらい経つと居眠りし始めていた子が、50分間起きて、授業が終わったら私のところに来て「先生、今日は疲れた」「頭使ったもんね」というそのひと言を聞き、「あ、これだな」と思いました。
今まで自分の中で、「この子は居眠りしても仕方ないや」と、どこかで切り捨てていた部分があるのではないかなと思いました。ですが、その子たちが生き生きと授業に参加して、友だち同士の関係もどんどん高まっていく姿を見ていると、「このやり方は有効だな。極めていきたいな」と感じました。
Q.年度の途中から始めた?
坂田 途中でした。2学期の途中から始めました。
Q.子どもたちの変化はどうでしたか?
坂田 もちろん私も色々、手を変え品を変え、工夫しながら色々やっていましたが、子どもたちは、それについてきてくれていました。その中で、私は授業中に人間関係をどう繋げるか、学習をどう成立させていくかということに集中していました。
その学年の3学期の終わり、修了式の2日前ぐらいに、掃除時間中、一生懸命頑張っている子とサボっている子がいて、そのことを帰りの会で指導したことがありました。「もう2年生が終わろうとしているのに、こういう状況でいいの?」というような話をして、その翌日に、ある女の子から手紙をもらいました。
その手紙には「昨日、私は夜、家で泣きました」と書いてあり、読み進めていくと、「理科の授業であんなにみんなで1つになって協力できているのに、掃除で1つになれないのは、ものすごく悲しかったし、悔しかったです」と書いてありました。
私は理科の授業だけで考えていたのですが、子どもたちは、この『学び合い』の価値を私以上に感じていて、日常生活、学校生活の中で仲間を大事にすることや、協力することの大切さをすでに見抜いていたのです。
おそらく、1学期の最初の頃からやっていた講義スタイルで1年間やっても、そうはならなかったと思います。『学び合い』のスタイルの授業をしていく中で、子どもたちは仲間の大切さを感じ取り、それを授業の中だけではなく、日常生活の中にも見出したことが、私の想像を超えた一番大きな子どもたちの変化でした。
Q.その後どうなりましたか?
坂田 それが3学期の修了式の前日でしたので、その後、彼女に承諾を得て、その手紙をみんなの前で読み、「3年生になった時、授業だけじゃなく、24時間仲間のことを大切に出来るような行動を取っていこうね、意識を持っていこうね」と伝えました。
そう言いつつ、私自身が学校生活全体で常に意識しながら、子どもたちに指導していかなければいけないなと感じてきました。
Q.先生の意識が変化した?
坂田 私よりも、子どもたちの意識がどんどん高まっていったと言ったほうが正確です。
Q.授業のやり方が確立でき始めたのはいつ頃?
坂田 大体先ほどの時期です。その次の年ぐらいから、自分が学校生活全体を『学び合い』として捉え始めました。今私は生徒会を担当しているので、例えば生徒会の全体目標を決める時にも、その『学び合い』の要素が入ってきたりしていました。
実際に私の授業を経験した子が学習委員長になった時、委員会レベルで「授業の中で友だち同士、どうやったらうまく関わっていけるか」を考え、「『学び合い』新聞」のようなものを出して、アンケートを採ったりしながら進めていったのが、ちょうど7~8年前ぐらいです。
その時期は、もうある程度、学校全体でやっていこうという時期でもありましたので、確立されたとすればその辺りかなと思います。
Q.教えたくなるのを我慢することは?
坂田 やはり最初の頃は、どうしても教科書に載ってない内容、例えば「自然界にはこんなことがあるよ」など、たくさん伝えて、興味を引きたいなという想いがありました。
ただ、それよりも、子どもたちが教室の中で色々な発表を授業中にしているのです。例えば、地球の自転と星の動きの関係についての授業の時、私が指示を出したわけではないのに、子どもたちが社会科の地図帳を持ってきたのです。そして、最初のほうのページにある世界地図を裏返して、輪にして回し始めました。
それを見ながら、地球の自転と星の動きの相関関係などを色々話し合っている場面を見ると、教師が時間を割いて色々見せるよりも、子どもたちに時間を与え、色々なことを工夫させる時間を確保してあげるほうが、私は嬉しくなってしまうのです。
もちろん最低限のことはやりますが、それ以上のことは、子どもたちに委ねたほうが、独創的なアイディアで教具を作ったり、黒板に図を描いたり、色々なことをやります。教えたい気持ちがないわけではありませんが、それ以上に得るもののほうが大きくなってきたので、最近はその葛藤で悩むことはないですね。
Q.より良い授業にするため普段から意識していることは?
坂田 意識的にやっているといえば、例えば、子どもたちの集団は日々刻々と変わるものなので、今どういう状況にあるかということは把握できるようにしています。
例えば、気になる子がいたら、ホームルームの終わりに声をかけて、「何かあったんじゃない?」というようなことを聞いたりしています。何かお家で昨日思いっきり叱られたなど、そういうことがあれば、その子にとって一番近い、ベストな相手を呼んだりします。
「実はあいつ、トラブルがあったみたいなんだよね。だからちょっと様子を見てあげてくれないか」といった感じで、子どもたち同士のコミュニケーション、助け合い、支え合いが出来るような関係性を見抜いていこうと思っています。
やはりアクティブラーニング型の授業をする時に、課題の難易度の設定が、おそらく一番難しいと思います。これはもう、子どもたちの実態を見ながら、制限時間内に全員終わるよう、「難易度が高すぎたかな」「量が多すぎたかな」と調整して、課題設定をしていくようにしています。
Q.生徒とはどんな距離感を意識していますか?
坂田 私は気づかなかったのですが、他のベテランの先生から、「普通、教師が立って、上から生徒を見下ろすような関係性で話をする先生が多い中、あなたは座って話をするよね」と言われました。
おそらく、自分は無意識のレベルで、子どもたちと同じ目線で話をしているのかなと感じました。私自身、威厳を張って接することがあまり好きではないので、子どもたちと冗談を言って話したりしています。
ただ、締めるところ、絶対にこれは許さないことなどはありますので、しっかり叱るところは指導しています。しかし、それ以外の場所では、みんなと楽しくしていこうと思っていますので、クラスのメンバーの1人に加えてよ、といった感じで話をします。
Q.教師間で努力していることは?
坂田 取りかかった頃に勉強会を開きました。福岡で実践されている先生方がその当時ほとんどいなかったので、小学校の先生も含めて色々工夫しながら、実践されている先生方数名が集まって、情報交換をしていました。
土曜日などにやっていたのですが、最近はどうしても部活があって出来ないことがあったため、勉強会自体はできていません。ただ、インターネットに自分の実践をアップして、それを皆さんに見ていただいたりなど、情報発信をなるべくしていこうとしています。
Q.授業準備の仕方に変化はありましたか?
坂田 基本は変わらないです。ベースは変わらないのですが、子どもたちがどう動くかということは、具体的に想像できるようになったかなと思います。
例えば、この課題を出した時に、自分のクラスだと誰が最初に理解して、この子がどう動いていくかなど、そういうことが自ずとイメージできるようになってきました。
プリント学習に関しても、なるべく情報量を少なめにしたり、課題をクリアするために必要な科学的知識などを別プリントで準備したり、必要な人が必要な情報を取れるような状態にする工夫に変わったかなと思います。
いわゆる教師が話そうとしていることは、全部プリントに書いている状態です。そのように準備は変わりました。
Q.ICTについての考え
坂田 それこそインターネットで色々な情報が検索できる環境は、早く作りたいなと思ってはいます。ただ、学校の設備上、出来ていないのが現状なのですが、その代わり、例えば、資料集などの準備はしています。できれば、そうした必要な情報をすぐに得られる環境が欲しいです。
どうしても資料集に書いていないという時には、私が持っている端末で調べて、それを生徒に見せて情報提供をすることは、必要に応じてですが、時々やったりはします。
Q.宿題など学外ではどうですか?
坂田 私の携帯にアプリも入れていますので、例えば、理科に関するアプリを紹介したりはしています。しかし、子どもたちによっては家庭環境が様々ですので、「こういったアプリもあるよ」と紹介だけして、時々は教室で見せてあげたりしながらやっています。
Q.3年生はどのくらいアプリを使いますか?
坂田 インターネットが使える環境は、ほぼ全員にあると思いますが、実際に、「授業中に紹介したものを見て来ました」「やってみました」と言ってくる子は、クラスの半分ぐらいになります。
Q.基礎学力が高くないとアクティブラーニングはできない?
坂田 逆に、基礎学力がない子たちにとって有効だと思っています。というのは、実際にあった話として、学習を進める際、教科書の漢字が読めない子も多いです。そうした時、教師がそれを読んで説明しても、もちろん子どもたちは理解できないのですが、『学び合い』のスタイルであれば、友だち同士で「これ、何て読むの?」という感じで、すぐに解決してしまいます。
ですから、本当に基礎基本がまだ足りていない、十分でない子に対しては、非常に有効な学習ではないかなと思います。もちろん幅はありますので、片や漢字がよく分からなくて説明を受けている子もいれば、分数の計算が出来なくてやっている子もいれば、本来の課題を直接的に解決しようとしている子もいます。
そのような状況が、教室の中では同時進行で生まれます。私は、必ずしも、アクティブラーニングを行うには基礎基本の力が必要とは考えていないです。
Q.アクティブラーニング型授業の教科書の進み具合は?
坂田 講義型よりもむしろ早いペースで教科書が進みます。というのは、子ども同士が時には先生、時には生徒という役割になり、教える役の教師が私一人ではなくなりますので、理解するペースも早くなるのです。そのため、教師一人が教えていた時よりも、早くなった気がします。
Q.入試への対応は?
坂田 私も3年生を何回も受け持ったことがありますが、子どもたちは十分入試に対応できていると感じています。知識レベルの部分で欠落することはもちろんありません。それこそ今の3年生は、大学入試の改変の第1期になるわけですから、先々を見た時に、今のやり方は必要だと思っています。
Q.評価の仕方について
坂田 基本的には、私は定期テストだと思っています。色々なやり方があるとは思うのですが、全員が1時間の中でクリアしなければいけないことがあり、そこで評価すると、全員同じ評価になってしまいます。しかし、それを今の教育システムの中で評価するとなれば、やはりテストしかないと思います。
もちろん、毎時間テストするというやり方もあるとは思うのですが、基本的には定期テストで評価を付けます。ただ、定期テストになると1~2ヶ月のスパンが開きますので、単元が終わったら単元末テストをやったりすることで、評価をつけています。
Q.今後の展望は?
坂田 何回かはやってみて、まだ自分で満足できるレベルまでいってないのですが、道徳の授業で様々な題材、教材を使い、アクティブラーニングを確立したいなと思っています。
Q.具体的には?
坂田 道徳になると、答えは1つではありませんよね。ですので、多種多様な意見が出ていいと思うのです。そこで、「世の中、こんな考え方をする人もいるんだ」という人間関係や相互理解が深まればと思っています。
建前ではなく、子どもたちの本音をどういった形で引き出すかというところと、意図した視点で教材などを考えてもらうための工夫や研究が足りていない部分があるので、色々チャレンジしながら確立したいなと思っています。
Q.全国の先生方に伝えたいこと
坂田 アクティブラーニングや『学び合い』は、全く難しいものではないと思います。大事なことは、子どもたちを信じ通すことだと思います。1回やってうまくいかないということは、私も何回も経験していますし、やはり最初は子どもたちもどう動いていいか分からない、教師もどう振る舞っていいか分からない状態でスタートを切ると思います。
ただ、子どもたちは本当に力を持っているし、子どもたちのほうがむしろ柔軟に環境に対応していくので、粘り強く、子どもたちを信じ通して、その思いを子どもたちにどんどんぶつけていくことです。「あなたたちは、こういったことができるはず」という気持ちさえ持っていれば、必ず子どもたちは結果を返してくれるのではないかなと思います。
Q.アクティブラーニングは「疲れる」と授業でおっしゃっていましたが?
坂田 要するに「受け身ではダメだよ」ということですね。苦手な教科でも、50分とりあえず座って我慢すれば終わるというようなことは、普通の授業だとあり得るかもしれません。ですが、アクティブラーニング型の授業の場合、それでは何も進みません。脳も使いますし、目も体も動かすので、疲れるという表現をしています。
Q.子どもたちはいつから「疲れ」を感じますか?
坂田 早い子は、今日もうすでに疲れているかもしれません。ですが、近い将来、意味は分かってくれると思います。
Q.子どもたちの「疲れ方」は変化するのでしょうか?
坂田 疲れ方というより、仲間に対する考え方や接し方は大きく変化します。どうしても、教える、教えられるという関係性だと、子どもたちは上下関係として捉えてしまう子が多いのですが、それが段々と日が経つにつれて、並列になっていきます。
分からないことは恥ではないし、教えることが偉いことではなく、どちらも当たり前のことになってくると、横の関係になってくるので、この変化の様子は見ていて面白いです。自分の授業が成立しているか否かの判断基準は、そういったところでも見ることができると思います。
Q.坂田先生は疲れますか?
坂田 そうですね。疲れるときもあれば、嬉しくて鳥肌が立って、1日ニコニコしている時もあります。
Q.鳥肌が立ったお話を聞かせてください
坂田 本当に忘れられない瞬間がありました。このスタイルの授業をやっていても、なかなか学力が上がらず、勉強のほうに目が向かない3年生の男の子がいて、その子と仲の良い女の子がいつもサポートしているのです。
もちろん、勉強を教えているのですが、「一緒に頑張ろうよ」というようなアプローチをずっとしていました。そのうち男の子が根負けして、恥ずかしながら勉強していたのですが、その男の子は定期テストを受けても、やはり10点取れればいいかなというレベルでした。
ある日、定期テストが終わって、答案を返す時に、その男の子が取りに来て、その女の子も不安になって、横まで歩いてきたのです。そして、男の子に答案を返すと男の子はニヤッと笑って、「何点だった?」と女の子が聞いてきたところに、何も言わずその答案だけを見せたのです。
その瞬間、女の子が泣き崩れたんですね。85点取っていたのです。あの10点も取れなかった男の子が85点取ったのは、私の力ではありません。私の力では絶対取らせきれなかったと思います。
彼女が粘り強く、本当に彼の気持ちになって、ずっと根気強くアプローチしてくれたから、彼が85点取れたのだと思うのです。だからこそ、仲間の85点という喜びを彼女が共有できて泣き崩れた瞬間、教室から拍手がワーッと起こりました。
あの時、「ああ、この教室は一つになった。この学級は一つだな」「きついことも、楽しいことも、みんなで共有できる、本当に素晴らしいクラスになったなあ」と実感しました。
Q.OB、OGとはどんな話をしますか?
坂田 高校などに行った子たちは、「あの時の授業はよかった」と言ってくれます。「やっぱり今、分からんもん」というような感じで、中学校に来る子はいます。「まあでも、それも、1つの試練だよね」と言っていました。
「授業のスタイルは違うかもしれないけれど、友だちを大事にすることは、いつになっても変わらないことだから、勉強で分からないことがあれば友だちに聞けばいいし、分からない友だちがいたら、休み時間に教えてあげればいいじゃない?そういう関係を作っていくことは可能だよ」という話はしています。
Q.OBやOGはどんな様子ですか?
坂田 就職している子も多いのですが、夢を諦めずに持っている子が多いかなと感じます。男の子で1人、教師になる夢を持った卒業生がいたのですが、大学入試に失敗した時に、ここに遊びに来ました。
その時彼は、「俺、諦めないよ。今バイトしてお金貯めて、勉強して、先生になるために大学行くから」と言っていました。そのように、未だに頑張っている子がいるので、自分がこうありたい、こう生きていきたいというものを持って生きているような気がします。
※坂田先生の理科の授業は、学校導入版で視聴できます
学校導入版での詳細はこちらをご覧ください...
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