概要
現役の映画監督が教える特別講座「シネマ・アクティブ・ラーニング」。下北沢成徳高校の生徒たちが、映像制作を通じて「学ぶ楽しさ」やコミュニケーション力を養います。
映画監督の古新舜氏が独自で開発・提唱し、多くの学校から注目されている「シネマ・アクティブ・ラーニング」の授業を取材いたしました。
下北沢成徳高校で行われている特別講座の第9回目である今回は、「はじける」をテーマに、班に分かれて物語を作り、撮影、編集、上映会まで行います。
映像制作を通じて、自由に、そして楽しんで学ぶ生徒の様子をぜひご覧ください。
(生徒の感想)
「自分の意見は間違っているんじゃないか、という気がしてなかなか話し出せないことがい多いのですが、本当に自由な授業だと思うので、どんどん自分の意見が言えるようになりました。たくさん意見を言えるというのは、すごく良いなと思いました。」
Q.今回の授業の感想
映画監督 古新 舜氏(以下、古新) 今日は2チームで人数もバラバラだったのですが、3人でも4人でも、お互いにすごく想像力を働かせて役割を決めたり、前回のクレイアニメの時のコマ撮りの手法を使ったり、水筒にカメラを立てたりと、とても工夫していた点に驚きがありました。
Q.授業の構成について
古新 やはり、答えが決まっていないことを限られた時間の中で試行錯誤しながら、お互いに知恵を出し合い、助け合っていくというところを毎週大事にしています。今回は実写ということで、外の空間に出て撮影しながら、彼女たちがどう考えていくかというところを組み立てていこうと思って構成しました。
Q.授業で大事にしていること
古新 1年前のものが、実はもう古いというほどの情報化社会となり、時代の流れが本当に激しくなりました。20世紀から21世紀へと変わっていく中で、あることを受け入れていくことは大事ですが、それ以上にその情報をいかに自分たちで組み立てていけるかという能力が必要です。そのために、インプットだけでなくアウトプットをし、さらにそれをフィードバックするという三位一体の考え方が重要だと思っています。
私も長らく大手の予備校で10年間指導していた経験もあり、社会において大事なことは、きっとその情報を受けるだけではなく、吐き出してそれを揉んでいくことではないかと考えています。それをこの授業では大事にしています。
Q.意識していること1
古新 このワークはもちろん、アクティブラーニングをキーワードに約10年やってきまして、自分自身もアクティブラーナーだと思っています。
いつもの授業構成では、実写の制作、次にクレイアニメ制作、そしてプログラミングという順番だったのですが、今回は順番を逆にしてみました。そうすると彼女たちに「ああ、前回クレイアニメを勉強したから、今回の実写で生かせるんじゃないかな」という気づきがあり、私自身も勉強になっています。
このように、自分自身が常に柔軟でいたいと思っていますし、内容も何かあった時に「だめだ~」と諦める、投げてしまうのではなく、「いや、これ良いよね」や「こうでも良いよね」と、ある一定のルールに則りながらも、そこだけに縛られないような柔軟な考え方を大事にしています。
それを生徒と私とでお互いに見せ合っているところが、今回の授業の組み立てで大事にしているところです。
Q.意識していること2
古新 私は会社の経営者でありながら、色々なご縁でこちらの特別講師もさせていただいています。そして、映画監督としてクリエイティブなこともしています。様々なジャンルに携わっていると色々な人がいて、価値観が違ったり、世代も違えば物事の考え方も違ったり、背景も違うということが分かります。
今までなら、同じ組織の中で同じ方向を向いていた時代でしたが、これからは、時間の使い方や生活スタイルも違うような方々と、どんどん一緒に創造的なものを組み立てていく時代です。
このような時代において、多種多様な人たちと心のキャッチボールをしていくことが大事だと思っているので、私の授業では心の授業というものを基本ベースに置いています。
Q.なぜ映像を使おうと思ったのか
古新 私は、22歳から32歳まで大手の予備校で物理を教えておりました。自分自身も幼稚園からずっと英才教育と言われるような、偏差値が高い学校が良いという価値観の下に勉強してきました。
ですが、実はちょうどその駿台予備校の講師をやっている時、映画の助監督として現場に行き、そこで自分のノウハウが全く通用しなかったことがあったのです。これは、別に学校で勉強していることが無意味だったということではありませんが、ある特定のジャンルにおいて、価値観として通用しないことに愕然としました。
そこから、自分はなんてプライドが高くて、すごく視野が狭いのだろうということに気づかされたのです。ですので、その狭い視野の中で答えがどれかということより、色々な人がいて様々な価値観があることを知った上で選択肢を広げていくことが大切で、それがまさにこの21世紀に必要な能力なのだと思います。
私は自分自身が映画の現場と教育の現場という、ある意味真逆なようで、しかしチームで一緒に何かを組み立てるという部分ではとても近しいジャンルでもあると思っています。
自分自身が今まで一斉方向で答えだけを出すことが大事だと教わってきたのとは真逆な発想だという気づきがあり、人生において答えがないことに対して、自分の答えを提案していくということを映画の現場で学びました。このようなカルチャーショックを受け、そこから1個1個築いていったのが、今のシネマアクティブラーニングになっています。
Q.苦労したこと
古新 私は元々大学の受験生を対象に教えてきたのですが、今はこうして、高校生や昨年は中学生や小学生、あるいは40代、50代、60代の社会人の方々というように幅広い世代と接してきました。
その中にいると、ある特定の人たちのジャンルだけではなく、社会人向けに工夫したり、中学生向けに言葉を工夫したりすること必要になってきます。昨年、聖徳学園で講師をさせていただいた時は、中学1年生に対して高校で使う言葉がほとんど通じず、授業中に少し壁ができてしまったことがありました。
そこで「ああ、そうなんだ。中学1年生は小学6年生と同じような気持ちなんだな」ということに気づかされた時、私自身が変わらなければいけないと思いました。
そこで、例えば「葛藤」という言葉を「モヤモヤした、ちょっと複雑な気持ち」と言い換えることで、彼らも分かりやすくなったり、さらにイラストを使って可視化したりすることで、「ああ、なるほど」と理解してもらえるようになりました。
このように教え方というのも、一方方向で生徒にだけ向くのではなく、自分自身も振り返っていくことが必要です。これが本当に教師の学びであり、共に学んでいく教育なのかなと思っています。
Q.努力していること
古新 常に自分自身がアップデートしていくことですね。それは考え方だけではなく、心のアップデートも含め、色々な人と出会っていくことです。やはり人間力はとても大事だなと思っています。
これまで自分自身がいた空間は、いつも同じ人たちで価値観も大体分かってきます。しかし、今、全国に行くことでよく分かるのは、色々な人たちと出会うことの大切さです。
地域によっても違いますし、可能な限り日頃自分の会わないような人と出会うことが自分自身の大きな財産になります。もちろん、本を読む、勉強することも大切なので毎日していますが、人と会ってたくさん語り合い、生の情報を頂くことは本に勝る経験則になると思っています。
Q.他者を受け入れるということについて
古新 今まで自分自身を紹介する際は、出身大学や自分の持つ考えについて話していたのですが、それでは相手に対して壁を作っていると思いました。
私は自分で会社を経営しながら、色々な人と出会い、時に頭を下げ、色々なことをお願いしていく中で、このように学校とも対等にお互いリスペクトしながらお仕事を頂いています。
その時に大事にしていることは、相手に対して「どうですか?」と問いかけをするということです。もちろん、自分から自己紹介をして挨拶をするのは当然ですが、「今日持っている機材、どうですか?」や「今日、どんな気持ちですか?」「ええ、なんか面白そうですね」といった問いかけです。
今日も実は午前中に浜松町で打ち合わせをしていたのですが、そこでも「社長さん、面白そうですねその話」や「あれ?なんかそれ、兵庫の方言に似ていますよね?」「よく分かりますね。僕、兵庫なんですよ」と、相手のちょっとしたエッセンスを拾うように習慣づけています。
それを毎日続けていると、「ああ、なんか私に興味ある」「この人に話してみたい」というように、パズルのように繋がっていくと思っていて、それは教育にもとても通ずることだなと思います。
ぜひ皆さんには、この「相手の関心事を引き出してあげる」という発想を持っていただきたいです。これはまさに教育の元来大切にしている、相手の持っているものを「引き出す」ということに通ずるのではないかと思っています。
Q.欠かせないもの
古新 感動でしょうね。私は大学まで詰め込み教育でしたし、ひたすら「覚えろ、覚えろ」で、これをやればなんとかなるというような結果を求められていたのですが、映画の現場を通じ、作品という創造を通じて、感動というものがすごく印象に残るのです。
脳も、「これを覚えなさい」と言われると、その瞬間は覚えているかもしれませんが、「じゃあ10年後覚えてますか?」と言われると、「いやあ、分かんないよね」となります。しかし、感動があると「この人と会ったよね?」と覚えているものです。
感動から、「ああ、だから私はこれを勉強したい」「それに興味がある」「もっと深めていきたい」となっていくので、すごく大事にしていることは、テンション、モチベーション、パッションという考え方の中で、最初はテンションです。「ああ、楽しい、楽しい、楽しい」と。これは小学生がそうですよね。
「ああ、なんか楽しいから一緒にやろうぜ」というテンションからは、モチベーションへとつながります。今日授業を受けた彼女たちはモチベーションの段階に来ていると思います。さらには、自分から「この授業受けてみようかな」「この授業ってこういう意味があるんじゃないかな」と、どんどん深めていくとその先のパッションになります。
「私ってこういうことができるんじゃないかな」「この授業を超えても、このことって生かせるんじゃないかな」というように、私自身も大人になって気づきました。それまでは「大学受験って、良いんですよ」という認識でいて、「本当かな?」というように気づいたのが20代でした。
もちろん、大学に行くことが悪いことではありません。ただ、そこに対して「なぜ大学に行くのか」ということを考える必要があります。「その大学に行く意味ってどんなことなのかな」という疑問に対して、自分なりの答えを導いていくことが、社会において自分自身の役に立ち、それが仕事に仕えるということだと思います。
ですから、ただお金を頂くだけでなく、人様に対して何か奉仕をしてあげることでお金を頂く。これがまさに、自分が会社でやっていることでもありますし、今回全国でシネマアクティブラーニングのお仕事を頂いていることも、きっとそういうことなのかなと思っています。
私は、学ぶということを誰かがいないと自分がいないという考えの下、今回のこの協働というワークの中のシネマアクティブラーニングでも大事にしています。
Q.生徒から教えられたこと
古新 今まで、例えば予備校時代であれば、「このテキストを教えてください」だったのですが、今はテキスト自体を自分で作るわけです。様々なものをミックスしたり、自分なりに工夫したり、色々と試行錯誤しながらこのワークを組み立てています。
先ほどの言葉の使い方もそうですが、小学生には柔らかい言葉や擬音語や擬態語を使ってみる、大人に教える時には、熟語など少し固いフォーマルな感じのものを使ってみようなど、土台がない中で「じゃあこういうことをやれば良いんじゃないかな」と試行錯誤しています。
私の場合、今までの対象が高校生や浪人生だったのですが、今は幅広い世代の方々に、ある意味トレーニングができるわけです。
中には意固地な人もいて、「いやあ、若いお兄ちゃんなんかに教わりたくないよ」と言われたりもするのですが、やっていくうちに自然と一体感が生まれ、「もうちょっと時間が欲しい」というように変わっていくこともあります。
このように、大事なことは答えを決めつけないという発想と、自分自身がその状況を上手に受け入れてあげることです。そして、自分の中でうまくトレーニングをすると、発想は自然と川の流れのようにスムーズに行き、みんなと共有できる空間づくりができるのです。
また全国の学校を回っていると、この発想のマインドがどんどん広がっていき、常勤の先生方にも少しずつ影響を与え、「あ、なんかこの発想って良いかもしれない。私も真似してみよう」という良い輪の循環、点と点が線となり面になっていく。このような輪の広がりは良いなと思っております。
Q.ワーク2について
古新 ワールドカフェなどでよくやる手法ですが、今までは紙に書いていき、上から順番に時系列に書く方法でしたが、今回のワークで大事にしたいことは、答えをいっぱい出すことでした。
例えば、とある学校で私立の学校の先生にあのワークをやった時、答えが1個しか出ないことがありました。「あれ?先生、もっと出してください。アクティブラーニング、やっていますよね?」と言っても、答えが1個しか出せないのです。
これはなぜかというと、「他の答えは自分の中で違うかもしれない」や、「1個だけが答えだ」という先入観を持ってしまっているからだと思います。
ただ、当時の時代の流れもあったと思うので、今の21世紀ではまず答えを1回出し、そのアウトプットを出来るだけ多くして、それを今度はまとめながら絞っていくということが大切です。
今の情報化社会においては、たくさんの情報が溢れている中でインプットだけでは駄目なのです。日本人はどちらかというと、受け入れるのは得意だと思うのですが、自分から話していくというアウトプットが苦手だと言われます。
ここでは、そのアウトプットの時に答えが決まっていないからこそ、どんどんペタペタ答えを貼っていけます。それは、すごく子どもの時の遊びのような感覚もありますし、トレーニングしていくと、「あ、答えは何でもいいんだな」と、まずその答えに対する心の風呂敷を広げることができます。
そのトレーニングを毎週毎週繰り返していくと、今日のように模造紙にどんどん貼れるようになります。このアイディアの発想法は、定期試験や大学受験、もちろん社会に出てからも「あ、答えこれだけしかない」ではなく、「こんな発想もあるよね」というような柔軟性を持つことができ、とても生かせると思います。
Q.怖いと思う気持ちを払拭させるためには
古新 そもそも払拭させるという考え方を持っていません。例えば今日も、「こうじゃなきゃいけない」ではなく、自然と「ああ、そうなんだね。なるほど。きっとなんか、そういう気持ちあるよね」というように、こちらが変わってあげるという姿勢を持っています。
きっと「何かじゃなきゃダメだ」という発想を持った時に、お互いに「あ、この先生はこういうふうに思ってるんだ。じゃあ、私も意固地になっちゃおう」となってしまうと思います。
その時に、「あ、それもいいよね」と、こちらが少し演じてあげて、子どもたちの目線に自分を合わせてあげるような感覚、あるいは「自分も昔、そうだったよな」という気持ちを持つことです。
昔、自分が子どもの時に同じことを言われたら嫌な大人だなと思うように、その童心を忘れず、互いにフラットな関係を築きます。ただ、規律性は大事なので「ここはこうしようね」というところだけはきちんと示すという、そのバランス感を大事にしています。
Q.授業で音楽を使用することについて
古新 クリエイティブな発想において、聴覚はとても脳を刺激させますし、特に女の子がリズムに乗っていくと、ポンポン発想が出てくると言われています。ですが、音楽を使い過ぎると逆に依存してしまうかもしれないので、そこの部分もバランスかなと思っています。
ただ、最初の慣れないアイディア出しの時は比較的心を閉ざしがちですので、音楽を聴いて、普通にダンスをするのと同じように頭のダンスのトレーニングをしてもらいたいというのがあります。
そして、その音楽は1曲が4~5分であることがとても良いと思っています。アイディアを出すのに10分だと長過ぎで、30秒だと短いなと考えると、音楽の1曲分はとても脳の刺激になります。その上、頭の電気信号が刺激されて活性化し、アイディアが出てくるというトレーニングになるのではないかということで実践しています。
Q.生徒に身につけてほしいこと
古新 コミュニケーション能力など、色々あるのですが、一番は「学びって楽しいな」ということです。自分自身はかつて、学びはつまらないもの、苦しいものと思っていたのです。
しかし、大人になって楽しいと思える学びが本当に社会で役に立ちますし、人の為にも役立つと思います。実際にこのワークをやって、チームの結束力が高まったり、他の勉強もすごく成績が上がったなど、様々な実績があります。
さらに大人でも、「いやあ、こんなふうに身体を動かしたことないから、今までこんなふうに人と目を合わせられなかったけど、ちょっと人と目を合わせることに慣れた」というような、色々な効果があります。
大事なことは、学びは死ぬまで続けていくもので、日頃から日常における柔軟な発想を持ち続けることです。だからこそ答えを1個に決めず、色々なことを吸収していくことが、学ぶ知恵を授かる時に大事なことだと思っています。
その姿勢が今の時代にはとても必要で、道徳教育や心の教育というのは、「ルールをしっかり守りなさい、挨拶しなさい」ではなく、「自然と自分から挨拶したいよね」というように、自然と自分の内側から出てくるものだと思っています。
今回のワークではその自然な感情を大事にしていて、それが今回の9回目でもすごく見えました。1年間を通して彼女たちが体感した時に、人生において役立つ発想法が絶対に身につくと、自信を持って向き合わせてもらっています。
Q.生徒の撮影中に意識していること
古新 学校の空間ですので、生徒の動きを気にする上でこうしてほしい、こういう流れで、という気持ちもあるのですが、このワークで大事なのは「組み立てていく」ということです。私も思ったのは、結局社会において「こうすれば正しい」というルールはありません。
ですから、「こうでなければいけない」と思ったことばかりになってしまうと、彼女たちの発想が乏しくなってしまうので、そうならないために、自由な発想ができる環境を整えることが大切です。
その後の振り返りの時に、「ここ、こうしたほうが良かったよね」や、「実はこういう発想もあるよね」と、彼女たちが実践した後でやると、「あ、そうだよね」と彼女たち自身が実体験的に覚えていきます。ですので、最初に答えを教えず「失敗をしてもいいよ」と言って実践し、その後で振り返ります。
そこで失敗を共有するという発想をすごく大事にしていますし、自分自身が映画の現場や社会に出て本当に学んだことは、失敗をたくさんすることは素晴らしいということです。
Q.映画と教育を繋げたきっかけ
古新 23歳になった時に、ちょうど予備校の先生と助監督を同時にやっていました。助監督では、「おい!」「なにやってんだ!」という感じに扱われるのですが、片や先生はお茶を出されたりします。
その両方をやる中で、そのギャップにカルチャーショックがありましたし、同世代で頑張っている人たちを見て、お茶を出されるのは嬉しいですけど、自分は謙虚にならなくてはいけないなと思いました。そして、23歳の時に色々な世界を見ないと、恐らく自分はこのまま井の中の蛙になってしまうという気づきがありました。
そこからデジタルハリウッド大学院に行くことになり、アクティブラーニングの手法で4人グループになって会話をして、「じゃあ一番面白かった人、決めてみようか」や「この発想ってどう思う?どんどん出してみよう」というような授業を受講していました。
「今まで1度もこの授業を受けたことがなかった」と最初に感じたのがデジタルハリウッド大学院でした。デジタルハリウッド大学院と聞くと、ちょっとへんてこりんな大学と思われるのですが、私は逆にそれが誇りに思います。今までは、東大、早稲田、慶応のような偏差値の高い学校が素敵だと育てられてきたのですが、今はそう思っていません。
大切なのは、その中で自分自身が何をやるか。あるいは、どんな先生がいるか。どんなワクワクする授業があるか。そこで得たものが結果として、卒業後に残っていく財産だと思います。
今、私が全国を回っていて、こうした考えに共感していただき、学びというものが数字だけではなく、心の質の部分にフォーカスを当てた教育としてどんどん広がっていくと、子どもたちも大人も、共に成長していけるのではないかと思っています。
Q.生徒たちが楽しそうにやっている理由
古新 もちろん、私が意図して「楽しくしろ」なんて言っていません。私が「これどう考える?」とパーツを渡し、彼女たち自身が自分たちで試行錯誤しながら粘土のように組み立てていき、それを楽しんでくれていることはすごく嬉しいです。
私自身が学んでいた時、「なんで、授業って面白くないのかな」「なんで、こうやって押しつけるのかな」と苦しかった思い出があります。
「もっとワクワクした授業ってできないかな」「そんな教え方をしてくれる先生、いないかな」と思った時に、まずデジタルハリウッド大学院に行き、そこから「あ、こういう学びのあり方があるんだ。じゃあ、色々なところの先生に出会ってみよう」と思い、何百もの色々な先生のところに行ったことがきっかけになっています。
そして、「あ、これ、映画の教え方にも使えそうだな」と思い、少しずつ積み重ねて出来上がったのが今のワークです。必然的に場数を繰り返してきましたし、色々な人たちの千本ノックを受ける中で、「教える」ことや「相手を引き出す能力」を学んできたと思います。
これからも毎回毎年アップデートしていきますし、去年教えたことと今年では全く同じことをしていません。毎回心がけていることは、同じ授業を1回もしないということです。
少しずつ工夫していき、「実は前回やれなかったことを今回やってみよう」「去年やれなかったことをこうやってみよう」というようにアップデートを繰り返していきます。そのほうが生徒もすごく盛り上がりますし、生徒の「楽しんで学ぶ」気持ちが実感として感じられた時、自分はすごく幸せだなと思えるのです。
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