概要
すぐできる!ディベート授業でタブレット活用
文教大学付属高等学校1年生の国語授業を公開スタート!
今回は羅生門のまとめの授業。
「下人は有罪か無罪か?」をテーマに激論を交わします。
論理的思考力を鍛え、難関大学への合格者数を増やしている荒木泉子先生の国語授業のポイントは何なのか?
ぜひご覧ください。
Q.今日の授業を終えた感想
荒木 泉子先生(以下、荒木) 生徒たちに結構前もって言っておいた甲斐もあり、一生懸命考えてくれていたなと思います。今日の発表では、私と一緒に授業で読んできて気付いてきたことを彼らなりに捉え、「ここがキーワードだな」「大事だな」と思う言葉をインプットしてくれていたと思います。
例えば、「正当化」という言葉や「社会状況がそうさせた」など、こういうのはやはり授業の中でも一緒に気付けていけたところだったので、それは分かってくれていたのだなと感じます。
Q.アクティブ・ラーニングを取り入れた経緯
荒木 高校2年生対3年生で「ディベート杯」ということをやっており、優勝カップを作ったりもしています。あとは、生徒たちを外へ取材に行かせて、色々なところで取材した内容を発表させたり、外部から講師をお招きし話を聞いて、それをプレゼンさせたりもしました。
実施するのにこちらも大変ですが、生徒も大変という授業をずっとやってきましたが、なかなか生徒たちが話をし始めないので、本当に試行錯誤でした。生徒たちは、人前で立つのも話すのも苦手ですし、最初自己紹介をやらせることも結構大変で、何度も何度も練習させて少しずつうまくなっていったという感じです。
Q. アクティブ・ラーニング型授業の頻度
荒木 今、私が受け持っている時間は週に2時間しかないので、単元が終わったら1つ行うという感じです。少し学年が上になると、国語の授業のコマ数がもう少し増えてくるので、より頻繁に行うこともあります。
Q. ディベート型ではない授業でもアクティブ・ラーニングを取り入れていますか
荒木 そういうときもあります。ですが、まず時間が少ししかないということがありますし、量も読まなければならないということもあり、毎回毎回アクティブだとなかなか生徒の理解も深まらないので、結局私が説明するところもあります。
今回の『羅生門』などは、小説だから比較的自由が効くので、生徒に意見を書いてもらい、その意見を集約して投げかけていくといったことを途中入れながらやりました。
Q. アクティブ・ラーニングへの感想
荒木 アクティブ・ラーニングを随所に入れていき、生徒たちが自分たちで「この授業って面白い」や「国語って面白い」などと思ってくれるようになることが一番大事かなと思います。
でも高校生の教材は抽象的な文章が多いですから、言葉の意味を取り違えて勝手に自分達の意見をうまくかわせても、最初のところが違っているといけないので、そこはこちらでしっかり言葉の意味を教えてからがいいのではないかなと思います。
例えば、本校では総合学習の時間で、何か職業に関して調べ物をしてプレゼンをするという、職業教育のためのプログラムを1年間通して行っています。これは全部アクティブ・ラーニングの形になるはずですのでとても有効であり、やはり高学年のほうがプレゼンは上手になります。
Q. 以前から今回のような形態で授業されたことはありますか
荒木 有罪か無罪かを話し合う授業形態は何回かやったことがありますが、タブレットを使ったのは初めてです。やはり今の子だなという感じで、機器の扱いは彼らのほうが早いですし、この機材を1つ入れるだけで、同じ作業をノートでやるのとは少し違う楽しみが生まれるなということは感じます。
Q. 通常授業でもグループワークを取り入れていますか
荒木 グループの形にするときもありますが、基本的には個人で書いた紙を私が集約し、いくつかの意見を抜粋してプリントで配るような形を取ります。
Q. 他教科への影響
荒木 影響があればありがたいなと思っていて、大抵場合にもよりますが、確かに今までにとてもいい感じで他教科に波及するような子もいました。
やる気スイッチのようなものが入り、「一生懸命やると勉強って面白いな」「じゃあ他の教科もやってみよう」と考えるようになった男子生徒がそうです。でも、自分の好きなものは好きなもので完結してしまう生徒もいますので、それは本当に人によります。
Q. 周囲からの評価
荒木 本校の国語科の先生方は皆さん非常に寛容的で、「一緒にやってください」と言うと、結構何でも面白がってやってくださいます。そこでご自身の視点を教えてくださるので、私もとても勉強になります。先生方といい関係でいい授業を作っていけているかなと思います。
Q. 保護者からの反応
荒木 保護者の方からは、「子どもが楽しんでやっています」とよく仰っていただけます。子どもが「国語での表現の授業が楽しい」「ディベートが楽しい」など言ってくれているようで、その準備のために徹夜をしたり、一生懸命何かをやっている経験というのはなかなかテスト勉強では得られない、と声を掛けていただきます。
Q. 成績評価の仕方
荒木 アクティブ・ラーニングの評価は、教員の評価もあるのですが、友達同士の相互評価が結構ポイントではないかと思っています。例えば、国語の表現をやったときも必ず全員に振り返りを書かせて、全員の評価を全員分書かせていました。
すると意外なことに、どんな生徒が書いてもその評価が妥当で、私の評価とほぼほぼ変わらないのです。
やはり生徒たちは、「これは授業だ」という姿勢で人の発表を聞き、きちんと評価しようとしており、全部同じ数字を書くなど乱暴なことはあまりしないので、そこは有効ではないかと思います。
ただ、それを成績に入れるとなると、どうしても提出物や生徒の授業に対する姿勢をある程度数値化しないといけません。でもそれで評価が付いて何か生徒から納得がいかないと言われたことは今までなかったので、しっかり生徒たちも分かっているのだなと思います。
Q. 成績への反映
荒木 AO入試などでは効果てきめんです。国語表現の授業を受けていた子から難関私大などに受かっていく子も多数いたためです。
まずプレゼンテーションがそうですが、プレゼンのためにパワーポイントを使っていいという大学が結構あります。あとはやはりディベートで論理的な思考力が身に付くので、小論文には非常に有効です。
Q. 今の生徒の特徴
荒木 今日やったのは高校1年生で、まだ私との関係性が浅いですから、もう少し長く一緒にいて私の言葉などが浸透していけば、多分できるのではと思います。
Q. 過去の生徒の特徴
荒木 この前卒業した生徒は、ディベートばかりやった授業もあったので、恐らくすぐに自分の意見など言えると思います。
Q. アクティブ・ラーニングをした生徒の変化
荒木 やはり人前で話すことが苦ではなくなっていきます。ただ最近の生徒は昔に比べると話すことが上手です。
恐らくここに至るまでに小学校、中学校といろいろやってきて、ここに来たときはすでにできあがっている子はできあがっているといった感じでしょうか。
あとは今回みたいに立場を明らかにして考えると、自分と違う意見をどうしても考えなければいけないので、論理的に思考するときに自分の意見の反論を予想することができるようになる、ということはあるかもしれません。
Q. 生徒が変化した瞬間
荒木 理系クラスでディベートをしたときです。理系クラスの生徒は、とにかく論理的に物事を考えて根拠を述べることがよくできるのですが、国語があまり好きではなく、話すのもどちらかというと得意ではない生徒がたくさんいます。
その子たちがディベートのために、「放課後残りたい」「調べて学習のために残りたい」と言い始め、とても分厚い資料を持ってきて、いろいろな根拠を出し、それを全部潰すということを彼らが勝手にやっていました。その時、「あ、もうこれで私の手は離れたな」といいますか「彼らが自分たちでやりたいようにやっているのだな」と感じたことがありました。
Q. 先生の授業を再現する3つのポイント
荒木 あまり奇をてらったことではなく、生徒の言葉が出やすいようにちょっとまめに声掛けをすることです。
あとは勝敗という言わばゲーム性が生徒には大事です。今回の場合、勝ち負けというのをそのまま手を挙げるという、敢えて非常に古典的な方法を取り入れたのですが、勝敗をはっきりさせてあげると意外と盛り上がるのです。人の話を聞くことです。自分以外の発表もしっかりと聞くということを普段から教えていく必要はあるのかなと思います。
Q. 1つの単元にかける時間
荒木 例えば、今回やった『羅生門』はかなり長いものなので、やはり6時間くらいはかけます。ですが説明文の場合は、2、3時間で終わったりもするので今の半分の長さで1回くらいはできます。
Q. 生徒が授業をする前にする準備
荒木 それは生徒によります。グループがあったらグループの中に1人くらいはそういう一生懸命やる子がいたり、また茶々を入れるような子もいたりします。なので、どのぐらい一生懸命やるかはそのグループによりますので、結構メンバーは考えます。
ディベートなど何でもそうですが、プレゼンテーションの場合、骨格はみんなで話し合わないと決められません。自分はここを担当するといって決まったら、そこからは自分で調べないといけないので自分の家などで調べることになります。
Q. 生徒に発表させるための準備
荒木 生徒に「手を挙げてもらうよ」と、今日初めて言いました。「発表するよ」とは、3時間くらい前に言ったと思います。恐らく発表するという前提で今日はやっていたと思います。なので、最初から分かりやすくタブレットに書こうとしていたり、色を変えるなど彼らなりに発表を意識して書いていたようです。
Q. 発表者の決め方
荒木 生徒が自分たちで決めたので詳しくは分かりませんが、パッと見た感じ、比較的人の前に立ったりする学級委員の子だったりしました。つまり人前に立ったり、何か引っ張っていったりすることが苦じゃない感じの子が選ばれるのかなと感じました。
ただ発表した1人に普段はそんなに授業で話したりしない子もいたので、その子にはこんな力もあるのかという驚きもありました。
Q. 先生からみた今回の生徒の発表への感想
荒木 必ずしも紙に綺麗に書けている班が、上手く話せるというわけではないと思いました。これは何の世界でもそうですが、本当に人それぞれで、やはり話すことが得意な子というのは班員の思いを自分で汲み取ることができます。今日の生徒の場合は意外としっかり中身を聞いていたなと思います。
Q. 今の課題
荒木 課題はクラスによって異なります。どのクラスでも同じようにというのは難しく、そのクラスに合わせて細かく色々なところを変えていく必要がありますが、時間に制限もあるので100パーセントカスタマイズすることはできていないと思います。
Q. 今後の展望
荒木 私の教科だとこれ以上形が発展するとしても発表の形が少し変わるくらいだと思います。やはり表現すること自体、相手の言葉を聞いてから自分の言葉を出し、それを話すか書くかというような形になるからです。
ICTを使うという点に関しては、これからまだまだ課題が山積みです。例えば、本校にはタブレットが40台あるのですが、その数だと他の教員がすぐに使えず、生徒も日常的に使えていないので100パーセントその機能を使いこなせるところまでいっていないと思います。
最終的には本校にタブレットをもっと全面的に導入し、それが日常的に上手に使えるように私たちももっとたくさん使う頻度を増やしていきたいと思います。...
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