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ダイジェスト
茨城県立結城第一高等学校・棚谷克彦先生(高3・日本史) [1分24秒]
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インタビュー前編
棚谷克彦先生インタビュー 前編 [17分23秒]
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インタビュー後編
棚谷克彦先生インタビュー 後編 [14分37秒]
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授業1/4
"勉強嫌い"からステップアップ ~就職する生徒が多い高校でのアクティブ・ラーニング~ [7分14秒]
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授業2/4
"勉強嫌い"からステップアップ ~就職する生徒が多い高校でのアクティブ・ラーニング~ [5分01秒]
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授業3/4
"勉強嫌い"からステップアップ ~就職する生徒が多い高校でのアクティブ・ラーニング~ [4分40秒]
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授業4/4
"勉強嫌い"からステップアップ ~就職する生徒が多い高校でのアクティブ・ラーニング~ [5分]
“勉強嫌い”からのステップアップ ~就職する生徒が多い高校でのアクティブ・ラーニング~(日本史)棚谷克彦先生インタビュー 前編 [17分23秒]
授業を行う上での注意点や事前準備
この動画から学べること
○グループワークのファシリテート
○ふりかえりの取り組み方
○モジュール学習での取り組み(スクールタイマーの使い方)
概要
勉強に自信がなかった生徒たちが、1年間でテスト平均点を2倍にした!
学力には自信がなく、卒業後は就職を希望するという生徒が多い茨城県立結城第一高等学校。
しかし生徒たちは、棚谷先生が教える日本史については「勉強が楽しい!」と言います。
7つのパートで構成される授業は、生徒の“学欲”を刺激する工夫が満載でした。
棚谷先生が今の授業スタイルに変えたのは、ちょうど1年前。
それまでは、先生からの説明が中心の、所謂”一斉型”の授業をされていたそうです。
インタビューでは、当時の様子や生徒の反応についてや、なぜ授業を変えようと思われたのか、その背景の想いもお伺いしています。
ぜひご覧ください。
<Q, 生徒をどのように育てたいですか?>
棚谷克彦先生(以下、棚谷) 本校は、主に就職を希望する生徒が多い学校です。やはり自分の学力に自信がない生徒がたくさん入学します。一番なにが嫌いかというと、数学や英語自体よりも、自分の点数が嫌いという生徒が多いことが分かったのです。
(Q,点数というのは評価のことですか?)
棚谷 普段の定期テストや、中学までにやってきた実力テストなどを小学校から積み重ねている間に、だんだん点数が低くなっていきます。
小学校1年生の頃は100点を取っていたのに、いつの間にか20点や30点という点数を取っている自分が嫌になって、それを数学が嫌い、英語が嫌いと置き換えているだけなのですね。元々、本当は数学や英語を勉強したいという気持ちを持っているはずです。
しかし、心の中を吐くこと、表現することが出来ないので、「数学嫌いです。なぜならば、覚えるのが大変だからです」と言ってしまうのですね。ですから、まず取り組んだのは、点数を取らせようということです。
易しくてもいいので、少しずつ点数を取らせていく問題に変えました。このアクティブ・ラーニングを実施したのが昨年の10月からです。それまで1学期の間は、一斉授業をやっていました。
その一斉授業の中では、自分では嫌だなと思っていたのですが、50分間で、簡潔に、少しでも生徒に分かりやすい授業を展開していました。問題はそんなに難しくなかったのですが、結局平均点数が30点台、良くても40点くらいしか取れませんでした。
これをどうしたらいいかと考えた結果、アクティブ・ラーニングに変えて、まずは点数を取らせるような授業をしていくことになりました。
そこで分かったのは、やはり分からないことを聞けないという生徒が多かったのです。分かっている生徒は、「教えたいが、教えると自分が浮いてしまうのではないか」という気持ちを持ってしまうようでした。
バランスが悪い状態だったのです。それを1つにするために必要なのは、アクティブ・ラーニングだと思いました。そういうコンセプトから、まずは点数を少しずつ上げていくことにしました。
これによって、2学期の10月の中間テストは平均50点取れました。2学期の期末では、56点、3学期の期末では、なんと60点に平均があがりました。同じクラスを持っているのですが、1学期は62点、1学期の最後の一番新しいテストでは、なんと67点まで上がっていて、1年前とは倍近い平均点数を取っています。
(Q,去年の10月からずっと同じクラスで?)
棚谷 そうです。今日、お見せしたのは同じクラスです。最初は寝ている生徒や欠席をしている生徒、やはり自信がない生徒が多く、赤点30点以下を取っていた生徒がいました。
しかし、このアクティブ・ラーニングをしてから、2回目くらいで赤点がゼロになりました。先生に点数を聞く時に、今までは「先生、赤点?」と言っていましたが、今は「先生、何点取れた?」という言葉に変わりました。
つまり、「自分は勉強して、どれだけ点数取ったのだろう?楽しみだな」という気持ちに変容していったということです。これが、やはりアクティブ・ラーニングをした大きな理由かなと思います。非常に良い顔つきになってきましたし、テストを楽しみにしています。
それから、授業があっという間に終わってしまう、居眠りするのがもったいないという気持ちになっている生徒がたくさん出てきました。
<これから目指していく生徒の姿>
棚谷 4,5年前は、服装指導や学習指導などの面で非常に大変だったのですが、今はそういうこともなく、非常に落ち着いた学校になっていると思います。今はそれをさらに上げている段階です。
今度は学力を上げ、その上げた生徒には、とにかく自信を持って就職で面接を受けさせたいです。その後社会に出ても、自分はアクティブ・ラーナーだという気持ちを持って、会社を辞めないでほしいです。
自分の存在をしっかりアピールしていける人間作りを考えています。やはりどうしても、就職してもやはり高卒だときつい、コミュニケーションが取れないと言って、辞めていく生徒がいるのです。
将来、社会に出ても、自信を持って生活できる生徒を育成したいなと思っています。
<生徒の現状>
棚谷 今は、授業が楽しい、人と意見を交換することに違和感がなくなったというところまで来ていると思います。言葉遣いを正したり自分の気持ちを伝えたりというのは、まだまだ難しいと思うのですが、少しずつ慣れてきました。抵抗がないという段階かなと思います。
<目標に向かって具体的にやっていること>
棚谷 授業だけでは少し難しいので、道徳の時間や総合的な学習の時間を利用して、今体験・仲間作りゲームなどをやっています。実は私は、社会教育主事の資格を持っていまして、国立のほうに3年間出向していました。
そこで、子どもたちに自然体験をさせたりしていたのですが、私はティーチャーではなくファシリテーターとして、生徒に「学びたい力」をつけることをずっとやってきました。「学びたい力」というのは、おそらく造語だと思いますが、「がくよくりょく」と言います。
(Q,どういう字を書く?)
棚谷 学ぶ、欲する、力。おそらく辞書には載っていないと思いますが、社会教育の中では、「学欲力を上げる」などと言ってよく使う言葉です。これが今のアクティブ・ラーナーかなと気付いたのですね。
ファシリテーションをすることによって、学欲力を高め、その自然体験の中で変容が見られます。ファシリテーターというのは、ティーチャーのように、一から十まで教えません。
例えば野外炊飯は、まず火起こしから始めるのですが、「火を起こすには、上から下?下から上?」としか教えないのですね。「どっちだっけ?」と言うと、「下から上」と言うので、「そうだね。じゃあ、みんなで考えて火を起こしてみよう」と言います。
これはまさにアクティブ・ラーニングかなと思うのですね。そのファシリテーションをどうしても学校のこの教室で、授業としてやりたいと思っていたのですが、先生方の流れが一斉授業だったので、どうしても出来ませんでした。
ですから、この学校に赴任してから5年、道徳の授業や総合で、アドベンチャー系の仲間作りゲームをさせたり、南山大学の津村先生が考えたラボラトリー方式の体験学習で今ある自分を知る体験をさせたりしました。
それから、ツリーイング、木登りを通した人間関係作りを行ってきました。そのたびに、生徒が楽しそうな、良い表現をするので、出来るではないかと思ったのですが、いざこれが教室に入ると、別人になってしまいました。
自分にもジレンマがあり、これをなんとかくっつけたい、ファシリテーションをなんとか使いたいと思っていました。その矢先に、アクティブ・ラーニングを昨年知りまして、「これだ!これだったら、自分がやりたい授業ができる」と思ったのですね。
最初は小講義で、ほんの少し触りだけを教えて、「あとはプリントを使って、みんなで考えてごらん」と言いました。これはまさに自然体験と同じタイプの持って行き方です。そうすると、本当に生徒は「やりきった。みんなで乗り切ったよね」という充実感があったようでした。
これをスパイラルのように、コルブの体験学習のように、どんどんレベルアップしていきました。さきほど点数が上がっていったと言ったのですが、最初の定期テストは易しい問題でも今はかなり難しい問題になっています。
それでも、難しい問題でも平均点は上がり続けています。これはやはり、最初に申し上げた通り、「生徒はその教科が嫌いなのではなくて、点数が嫌いなのだ」というところにたどり着くのですね。
これからもっと、手法などいくらでも使えます。今日は、触りだけのペアワークのアイスブレイク、シングルワークで集中、グループワークで自分がやったことの確認、最後振り返りのシングルに戻る、という色んなバリエーションをしていましたが、あれは1つのツールにすぎません。
本当のアクティブ・ラーニングで一番大事なのは、先生が上から目線と下から目線の両刀遣いになることかなと思っています。
やはり、先生はどうしても教えたいと思いますので、ほんの5分か10分の時間で、生徒に投げかけをして、その後は徹底的にファシリテーションをしていきます。下から目線で支えていくということで、生徒がもっと勉強したい、もっと学びたいという気持ちになっていくのではないかと思っています。
それは、自分が社会教育をずっとしてきたという、少し変わった視点から発見出来たことで、もしもずっと教員だけをやっていたら、ここまでたどり着かなかったのではないかと思っています。
<生徒の変化はいつ頃から出始めたか>
棚谷 2回目ぐらいですね。最初は戸惑っていたのですが、2回目からは楽しいという言葉が出てきて、あっという間に時間が過ぎました。心の中で「授業って50分間こんなに長いのか」と思っていたのが、「50分間があっという間に終わってしまった」というパラダイムシフトが起こったのですね。
「あれ?もう50分経ったのですか?」というくらいでした。今日は最後、振り返りの時間がなくなってしまったのですが、やる気がない時に鐘が鳴ったら、途中で「はい、終わり」と終わってしまうところ、最後まで書ききろうと気持ちになっていました。
今は授業の内容について、振り返りに「深く考えた」「ここが理解できた」と書くのですが、最初の頃は「楽しかった。こんなに授業が面白いなんて久しぶりだった」という感想がたくさんあって、出来たなと思いました。
(Q,2回目から?)
棚谷 2回目です。一方的に教えるのは、もう完全に止めて、小講義を少しだけして「あとはみんなで考えてごらん?」と言うだけです。
あとは、グループを見ながら「良い答えだね」「それをみんなに共有しようよ。シェアリングしようよ」と言っておだて、乗らせます。
ファシリテーションをやっている人でないと、なかなかそういった変容が分からないのですが、掴みでそういうことをやっていきます。
(Q,それが下から目線ということ?)
棚谷 そうです。ですから居眠りをする生徒がいたら、「どこか具合悪いの?」と、まず体調を確認して、「もしも、いま体調が悪かったら保健室に行っていいよ」と言います。
今日固定していますが、「どうしても、このグループの中で出来ないなら、別のグループでも構わないよ」「自由に移動してもいいよ」と言っているので、ほとんどの生徒は誰とやっても溶け込める状態です。
最初の頃は、居眠りをする生徒が少しいたのですが、グループを別のところに移してもOK、と言うと、生徒は安心して、「じゃあ、あっちに行っていいですか?」と言います。
「いいよ」と言うと、そこで眠るということはなります。少しの気遣い、そのシグナルを絶対見逃さないことが大切です。どうしても先生だと、生徒が寝ていれば、「なに寝ている、ちゃんと起きろよ」と叱るのですが、そこは違う切り口から、生徒をアプローチしていくことが大事ですね。
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