概要
聞く、話す、読む、書く、の4技能を1時間で網羅!タブレットを使いながら、自分たちで学び進める英語授業
文法を教えることが、英語科のゴールではない。
高校進学が、ゴールではない。生徒たちの人生は、その後も続いていくのだから。
卒業後も、何か壁にぶつかったときには今の仲間を大切にしながら前に進んでいってほしい。
そんな思いで木花先生が行う授業は、先生が教えなくても生徒たちが自分たちで学んでいける授業でした。
生徒たちへの想いや、授業のポイントについてお伺いしましたのでぜひご覧ください。
Q.授業の流れ
木花 一則先生(以下、木花) 英語の場合、教科の特性があるので、聞くや話す、読む、書くという4技能を基本的には網羅して進めていかなければいけません。なので、私の授業の場合は、基本的にその4技能が課題として入った、3時間もしくは4時間分の課題を子供たちに先に渡して、授業を進めていくという形になっています。今日はその4時間目ということで、本当は全員達成できればよかったと思っています。
Q.生徒間の進度の差について
木花 学ぶ内容は、自分たちで好きなところを選択して始めているので、個々に違います。ただ、今日などもある程度こちらで誘導しているところがあるので、最後に音読をするという流れにはなりましたが、基本的には個人個人が選択できる、選択を子供たちがするということが、けっこう重要に思っています。
Q.授業で扱う英語の技能と学び方
木花 聴く課題ということで音楽を聴いて、それに答えていくことをします。
インタビュアー 音楽を聞いて?それは何かプリントがあるのですか?
木花 はい。スキャニングと言って、基本的に大事なところの単語を聴いていくという穴埋めのプリントですけれども、それを聞き取りの練習ではやっていました。今回は、誰か一人が全問正解するまでやっていくというものです。
4時間の授業の中で、これが3曲目ぐらいのものですが、授業の入りはモチベーションを上げる意味でも、リスニングから入っていくケースが多いです。3年生になると、だいぶ知っている単語も多くなってくるので、音楽を聴いて、授業を始めるという流れは、2学期3学期、非常に多かったですね。
その後も各自で、終わっていないところを潰していった感じになったので、スピーキングをやっている子たちもいましたし、あとは音読や、英文を書かなければいけない書く課題に取り組む子もいました。
また、今日はマララズ・ストーリー(Malala's story)という読み物でしたが、内容理解はすでにけっこうやってきているので、各自でその部分をする子は少なかったかもしれません。
Q.リーディングは教科書を使う?
木花 そうですね。本来は、そのページをしっかりできているかどうかをチェックしていきます。今回も読み物ということで4ページ一気にやっていきましたが、その全てをチェックしていくのは大変だったので、トランプを使って、生徒はどのページが出ても自信をもって答えられるように、しっかり読めるようになってからチェックに来させるようにしました。
ただ、今回はいろいろと課題などの状況もあって、私一人でチェックが終わりそうになかったので、普段はあまり行いませんが、課題を終わらせた生徒に手伝ってもらいながら、チェックをしていった感じです。
Q.ライティングはどのような課題?
木花 1学期の終わりぐらいから、受験を意識して50文を書いていくというものです。新潟県の高校入試の問題ですと、テーマが充てられて、それについて5文章の英文を書いていくという問題があるので、それに対応できるように様々な種類の英文を書いていきます。
学習してきた文法事項などもいろいろ入ってはいますが、これまで練習してきたものを入試までの最後5週間で、1週ずつ10文に区切ってチェックをしている状況です。ただ、ここ最近から始めたものではないためある程度は書けるのですが、細かいところを忘れていたりするので、その点も確認しながら実施しています。
Q.選択できるのがいいという気持ちに至った経緯
木花 基本的に人生を生きていく上で、自分で何かを決定していかねばならないことが、年を追うにつれてけっこうあります。ただ、小学校や中学校の義務教育課程の中で、子供たちが何かを決定していく場面は、実はやはり少ないというように思っているのです。
そんな中、自分で自主的に考えて選択していく、というその経験を授業の中で多く積んでいくことで、これから先、何かあったときに自分で決定していける。そんな決断力のある人を育成していきたいなというのがベースにはあります。
なので、言われたことをやるではなくて、自分で考えたことをやる。でも、そこには責任が生じるので、実際そこに向かっていく時に責任が生じると、「自分でもやらなきゃいけない」という意思や意欲に繋がっていきますので、それが、アクティブな活動にも繋がっていくのではないかな、と考えています。
Q.教室の後ろに英単語プリントを置いておく意図
木花 あれは、課題が終わった子たちのために、暇にならないよう各自で単語を勉強できるようにしておくもので、プリントを用意したりもしています。
Q.課題が終わった生徒が余った時間に取り組むもの?
木花 そうですね。もちろん、他の子たちの支援などにも回るのですが、できる限り、早く終わって暇にしているのではなくて、自分がさらに英語を学んでいけるよう、そういった意思や意欲をとても大事にしています。
ですので、あのプリントを絶対に使えというのではなく、それこそ課題さえ終われば、塾のプリントや英検の勉強など、なんでもやってくれていいと思っていますので、その中の一つとして用意しました。
Q.英語を学ぶ意味と英語を学ぶ上で必要な能力
木花 英語を仮に話せても、話そうという意思がなければ意味もないと思いますし、逆に話すスキルがなくても、「あの人と繋がりたい」「コミュニケーションをとりたい」など、その気持ちがあれば実はけっこうコミュニケーションをとれたりすると思っています。
私はどちらかというと、その知識や技能的なところを授業の中で身につけてほしいということもありますが、私の授業の中で、英語を通して人との繋がりを大事にできる、そんな人を育成していきたいなというように思っています。
特に英語ですので、みんながみんな同じではありません。男女というところも違うし、国だって違うし、住んでいる場所が少し違えば、もしかしたら日本人同士でさえ違うかもしれない。
でも、その違いがあっても、それが普通なのだという感覚は、この英語を学んでいく上で必要なギャップだと思っていて、そういったことをなんとなく肌で感じてもらえればいいなというのが、私のベースには常にあります。
Q.今回の授業でうまくいったこと、うまくいかなかったこと
木花 最終的に課題は全員終わりませんでしたが、すごく終わらせようと努力している、すごくみんなの気持ちがここにいても伝わってきたので、あの集団の雰囲気というか、みんなで頑張ろうという雰囲気ができたというところは、すごく良かったなと思います。
もちろん、色んな出来事の中でそれが成功に繋がっていけば良いのですが、逆に終わらなかった、失敗したことで、努力したけどできなかったという経験からも得られることはあると思います。
ただ、そもそも3時間が終わった段階で、私は今日、全員終わるというのはたぶん難しいだろうと思っていたので、そこはやはり彼らの計画性のなさかなと思っています。
でも逆にいうと、そういったことは彼ら自身に学んでほしい部分でもありますし、特に授業において、学習は自分のためでもあるのですが、やはり学びはみんなのためという意識を大事にしてやってきているので、そこが残念ではあったかなとは思っています。
Q.今回の授業で生徒に最も学び取ってほしかったこと
木花 自分の学びに対してまずしっかり向き合っていくことと、自分だけではなく、周りのことも考えていける。要するに、個があって集団があってという、どちらもやはり意識できる人が、社会人になった時にもうまくやっていけると思っています。
自分のことだけ考えている人はなかなかうまくいきませんし、だけど、人のことばかり考えていても、やはりなかなかうまくいかない部分もある。それを常に同時に考えていける、そういったことが授業の中で必要なのではないかということを私は常日頃、考えています。
そこを掴んでほしかったというのが、今日の授業の一番のポイントです。
Q.生徒たちを学びに惹きつけるために創意工夫していること
木花 英語には「聞く」「話す」「書く」「読む」の4技能あるので、その4技能をまずバランス良く授業の中で構成していくことと、あとは、できる限り子供たちに見通しを持ってもらえるような授業構成にしています。
ですので、月予定を先に子供たちに渡したり、3時間分の課題を渡したりなど、常に次なにをすればいいか分かる状態にしています。そうすると結局、子供たちは先が分かりますので、今やるべきことも分かってきますし、それが家庭での学習や準備に繋がっていくので、そこを大事にしています。
Q.タブレットを使ったり、歌を流す意図
木花 基本的には、授業を構成していく上で、子供たちが自分で選択して色々学び始めます。なので、私自身が全てを掌握していくことが難しいため、私がいなくても彼らが自ら学んでいけるといった環境の設定を重要視しています。
例えば、音読練習を自分でしたいとなった場合には、一人で音読できるという環境が必要になるので、タブレットにその教科書の音読データを入れてあげたりして、分からなければ何度も聴けるなど、自分たちで学べるようにしています。
英作文に関しても、まとまった英文を書くというのは、けっこう苦手意識を持つ生徒もいるのですが、翻訳アプリを8種類ほど入れているので、それを使いながら英作文をやったりもします。
やはり、課題に対して「難しいな」や「面倒くさいな」と感じてしまうと、アプリなどあっても使いませんが、でも「これがあればできる」という意識を持ってもらえるよう、ツールやアプリをしっかり準備していくことで、「英語べつに難しくないな」といったそんな気持ちになってくれたらいいなと思っています。
Q.先生からのインプットの時間について
木花 私のほうから投げかけることはほぼないですね。
Q.ゼロですか?
木花 ゼロですかね。課題が主に、私のアプローチになっていますので。あと、最近は授業の最初と最後に少し英語で話をしています。
ただ基本的には、ティーチャーではなく、ファシリテーターになりたいと思っているので、どちらかというと、何かを教えてあげるとかではなくて、子供たちの学びを促進していける存在でありたいと思うので、あまり出しゃばらず陰ながらサポートしていきたいという気持ちがあります。
Q.教えたいな!と思う瞬間はあるか
木花 ものすごくありますね。ありますけど、生徒がやっている時に「そこ違うよね」など、そういった指摘でその子の気持ちを台無しにしてしまうのももったいないと思っています。
ただ、自分が生徒の間違いに気づいた時には、全体にフィードバックしていくようにしています。その子に直接「これ違うよね」と言うのではなくて、最後に「ここはこうだよ」と、全体に還元していくことでその子にもフィードバックできますし、できる限り、子供たちのモチベーションは常に上げていきたいと思っています。
Q.アクティブ・ラーニング型授業を始めたきっかけ
木花 今から6年前に、研修の一環として大学院に2年間行かせていただきました。そこで、このアクティブ・ラーニング型の授業形態があるということを学ばせてもらい、それからほぼ丸4年間になりますが、こういった授業を進めているというのが簡単なきっかけになります。
Q.大学院に行こうと思ったきっかけ
木花 これまで私の授業は、英語が得意な子であったとしても、結局、私から出された課題をみんなでやっていくので、自分が終わっていてもみんなを待ってなければいけないですし、逆に苦手な子は、遅れていたりすると「早くついてきて」「みんな待っているから」と私に怒られるわけです。
なので、下の子も上の子も救えていないという授業に、もう限界を感じていたというところが、大学院に行きたいと思うきっかけだったとは思います。
Q.アクティブ・ラーニング型授業を始める前はどんな授業をしていたか
木花 私が授業をコントロールしているというか、英語の授業なのにペア活動すらしていませんでした。
中学生の最終的なゴールというのは、けっこう高校進学というところが多くて、英語はどちらかというと、言語というより一教科としての要素が非常に強く、隣と話す(ペア活動)とかよりも、自分と向き合って学んでいくという要素が強かったです。毎時間、指導案を作っていたので、その指導案通りにとにかく進めるということだけを考えた授業でしたね。
Q.アクティブ・ラーニング型授業での失敗談
木花
子供たちのほとんどは、先生から教えてもらいながら、その通りに進めていくというスタイルが普通だと思っていましたし、私もそういうものだと思っていました。
やはりそのような子たちが多い中で、急に授業のスタイルが変わるというのは、子供たちにとっては違和感になると思いましたし、その子たちに、私の想いというか、そういったものを伝えるのにすごく時間はかかりました。
加えて言うと、自分の学級は、授業の中でも伝えていけるし、学級でも伝えていけるので、私の想いは伝えやすいのですが、そうでなく、自分が学級担任をやっていない学年や違うクラスの授業では、けっこう手こずったりした経験はありました。
Q.手こずったというのは、生徒を戸惑わせてしまった?
木花 戸惑うというか、結局全体にアプローチしていくので、個人の学びとみんなの学びが大事なのだという考えがないと、授業が成立しません。
そこを浸透できるまでに、やはり多くの時間と失ったもの、例えば得点が下がったりすることもありました。得点が下がれば、中学生としてもこの授業は自分にとって合っていないのではないかというように捉えますので、その部分は相当しんどかったですね。
Q.失敗を乗り越えた方法
木花 諦めないことですね。結局、そのクラスの授業が軌道に乗るまで半年くらいかかりましたが、まったくうまくいかなかったわけではありません。ベースとして、自分を大事にするとか、人を大事にするということが間違いだというように思っている人はいないと思いますし、それが授業でも生きていく上でも大事なことだ、ということをいずれ理解してもらうために、諦めずに訴え続けていくことが大事だと思っています。
Q.保育園から同じメンバーであることのメリット・デメリット
木花 やはりこういう小さい小中学校だと、スクールカーストではないですが、ずーっと固定化された人間関係が序列に繋がっていきます。つまり、もう誰かはできない。誰かはできるということで序列化が進んでいるので、そこが打破できない状況にありました。
ただそれは生徒の一面でしかなく、本当は何かが得意だけど、何かが不得意。例えば、英語は不得意かもしれないけど、数学は得意かもしれない。全部勉強が苦手かもしれないけど、スポーツが得意かもしれない。スポーツや勉強が不得意かもしれないけど、音楽にすごく精通しているかもしれない。
だから、そういった自分との違いというところを優劣に捉えず、違って当たり前なのだというところの違いを受け入れていく姿勢を一人一人に持ってもらう。
そうすることで、ずーっと作ってきた序列というものを少しずつ壊していって、「みんなで何かやっていこう」、「一人一人違うけど、みんなでやっていけば新たなものを作れるよね」というものに変換していきたいです。
Q.このクラスは、今どの段階まで来ている?
木花 非常に良い雰囲気というか、ムードでできていると思います。授業でももちろん協力できますし、自然にやっていますけど、こんなに男女が仲良くやれるというのは、やはり思春期のこの子たちにとっては非常に難しくハードルが高いはずなのです。
でも、男女だからということでこの子たちは壁を作らないので、そういったことが当たり前にできるということは、集団として非常に質が高いなというように担任としては思います。
Q.この先、高校・大学と上がっていくことに不安はあるか
木花 不安といいますか、これは彼らが生きていく環境次第だと思います。その中で、どんな環境にあったとしても、生き抜いていく「生きる力」などは一人一人身につけてほしいと思ってはいますが、まだ15歳という成長段階でもありますので、もちろん不安もあります。
ただ一方で希望もあり、少なくとも、何か壁にぶち当たった時には、今のこの仲間を大事にして前に進んでいってほしいなという思いはあります。
Q.より良いAL型授業のために日頃努力をしていること
木花 まず、ブレずに学級で大事にしていることや授業で大事にしていること、部活動で大事にしていること、清掃で大事にしていることが、全て同じであるべきだと私は思っています。
その点うちの学校では、特に「自主性」という部分を重んじていますので、授業でも清掃でも部活動でも学級でも、そういったことを大事にしていくことをずっと訴えています。
もちろん自主性だけではありませんが、そういった部分の一貫性を持っていくことで、少しでも子供たちや保護者の方も含めて信頼してもらえるように、誠心誠意努めているところはあります。
Q.研究会や勉強会に参加することはあるか
木花 そうですね。研究会への参加や論文・本の執筆など、そういう話は、大学院時代の私の教授を通じて来ますので、そういった仕事が来たら、断らずに全部積極的にやっていこうというところはあります。
Q.一斉型授業からAL型授業への変化で変わったこと
木花 私はもう20年以上、教師の仕事をしています。そうなった時に、これまで黒板が命だというように教えてもらっていて、どちらかというと、黒板一面で、その日に学ぶこととかが全て伝えられる板書計画、というものをすごく綿密に作ってきました。
ですけど、今日の授業もそうですが、私の授業では、新出文型などの説明もしなくなったので、そこがこれまでと大きく変わったというか、大事にしてきたものを全て捨てたということがあげられます。そうすることで、最終的に子供たちにゆだねるという今の形になっていったのですが、要するに、私が板書したものをノートに取るのでなく、子供たちが今、自分たちでノートを書いているという状況です。
そうなると子供たちは、「え?自分たちで作るの?」「先生、黒板書いてくれないの?」というように、はじめはハードルもありましたが、自分たちで考えてノートを提出するということへ変わりました、
例えば、ノート評価を入れない教科はないと思うのですが、先生の黒板を写しただけのノートは、子供の自主性によるものかと問われればそれは違うと思います。自分たちで考えて、ノートを作っていく。だから、形として残るものとして、ノートへの捉え方がものすごく変わって、私自身、板書にすごく意識を向けていたものを、違うところに準備を割くようになったという感じです。
Q.大事にしてきたことを全て捨てた時の気持ち
木花 そうですね、ずーっと書き溜めていた板書計画ノートは8冊とかそれ以上あったと思います。それはもちろん、毎回マイナーチェンジしていきながら、それに基づいて授業を進行していったので、授業ノートを使わないということは私もやはり怖かったです。
でも結局、最初に戻るのですが、文法を教えることが英語の授業ではありませんし、全てを背負い続けてはやっていけないので、そこから、何かを新しく作っていくためには、大事な何かを捨てていかねばならない、仕方のないことなのだと割り切りました。
Q.大事にしてきたことを全て捨てた後の気持ち
木花 私よりも子供たちのほうが良いノートを作るので、全然それで良かったなと思っています。
Q.アクティブ・ラーニング型授業を始めて生徒たちの学ぶ姿に変化はあったか
木花 この学校に来てまだ1年経たないのですが、3年生の授業をずっと見ていて、最初からけっこう意欲的にやってくれていたのでそんなに大きな変化はありません。ただ逆に、一年間ずーっと努力し継続してくれながら、さらにブラッシュアップしてくれたというところに、すごく敬意を表したいなと思います。
Q.生徒たちの変化を見て先生が学んだことはあるか
木花 それはたくさんありますね。今日の授業もそうですけど、あまり私のところに生徒が来てくれません。基本的に私は、「何か質問や分からないことがあったら聞いていいんだよ」と言っているのですが、生徒たちは自分たちで学んでいるので、あまり私のもとには来ないのです。
なので、自分の役割はその程度なのだということは思いましたし、それと同時に、自分たちでもやれる、意欲的にできるのだということを子供たちから教えてもらいました。
教えなければ学ばないし、子供たちだけで学べるなんて思ってもいませんでしたが、自分たちでやれるということを毎時間彼らが証明してくれるので、私にとってはそれが非常に信頼にも繋がっていきますし、「ああ、私が間違っていたな」ということをすごく感じています。
Q.生徒たちをよく褒めるのは意図的にやっていることなのか
木花 そうですね。「できない」と言われるよりも、「頑張ったね」やうまくいかなくても、その頑張りなどは認められるべきだと思いますし、少しでも彼らがまた頑張っていこうと思ってもらえるように励ましています。
逆に言うと、そんなことぐらいしか、私にできることはないかなと思うところもあります。
子供たちと一緒に授業を作っていきたいので、それは私だけでもできないし、子供たちだけでもおそらく授業はできないと思いますから、そのためにやれることはあるかなと考えて、声かけをしています。私のためでもありますし、子供たちのためでもあると思っています。
Q.受験生にAL型授業をおこなうのはどのように感じるか
木花 むしろ3年生こそアクティブ・ラーニング型授業だと思っています。例えば、高校3年生になって大学受験になった場合に、自分で行きたい大学や学部、学科を決め、それに応じて異なるテストを受けるようになります。
そこを自分で調べ、それについて過去問や色々な教材などを自分で揃えて、自分で受験の準備をしていくわけですよね。
その気持ちというか、そういった力を今のこの時期からしっかりつけさせていくということは、とても重要だと思っていますし、そういった育成をしていくことで、どんどんその子の幅というか、可能性を広げていけるのではないかというように私は思っています。なので、3年生こそ、こういった自主性の高い学習形態はぴったりなのではないかと個人的には思っています。
Q.これから挑戦してみたいこと
木花 そうですね。最近、オールイングリッシュのような、英語をどんどん使った授業をしていきましょうという流れが、学習指導要領や文科省などから下りてきていますが、まず、私が生徒たちに分からない英語で話をしても意味がないので、自分の想いを英語で伝えられるように今少しずつチャレンジしています。
なので、そのためにはどんな表現を使っていけばいいのかなど、色々考えながら、できるだけ英語を使って、彼らとも繋がっていけるような授業ができたらいいなというところを目指して頑張っています。
Q.アクティブ・ラーニング型授業を始めてみたい先生へのメッセージ
木花 エールかどうか分からないですけど、子供たちのためにという思いを持って教師になられる方は非常に多いと思っています。お金が欲しいとか、安定感だとか、そういったことよりも、じゃあ子供たちのためにできることはなんだろうと。
それって目の前のことを考えれば受験だったりするのですが、でも、彼らの人生はそこで終わりではないので、そうなった時に、では授業で大事にしていかなければならないこととはなんだろうと考えていくと、やはり、これから私たちが目指していくべき授業のあり方という部分を、見直していく必要があると思っています。
つまり、英語の力を身につけるのではなくて、授業の中で、「人間形成」というところも求めていかなければいけない。その原点から、やはり逸れることなく、授業を構成していくということは難しいし、私にもまだ答えはない状態ですが、とても大事ですので、そんな授業をこれからも考えていきたいなと思っています。
Q.最後にひとこと
木花 「ゆとり世代」という方たちがいらっしゃいますよね。ちょうど私が教師になりたての頃が、ちょうどその変革期でした。
今やはり、その時代の人たちが「あ、ゆとりの世代だ」というように周りから言われて、中学校や小学校で学ぶことを削られて、あまり勉強しないできた世代だと言われていますが、それって、その人たちが悪いのではなくて、その時代の教育や社会といった色んな背景があって、そう言われていることです。
そう考えると、私自身も今のアクティブ・ラーニングが、そういった「ゆとり世代」のように今後言われないようにしていきたいと思っていますし、少し分かりにくい言い方かもしれませんが、20年後などに、「あの時、みんなでとりあえず勉強し合うみたいな、失敗の時代ね」というように言われないようにしていきたいと思っています。
なので、私にできることは少ないかもしれませんが、それでもまず、目の前の子供たちのために何ができるかというところを常に考えて、その子たちにとってより良い時間というものをクリエイトしていけたらな、というのは常日頃から考えています。
※木花先生の英語の授業は、学校導入版で視聴できます
学校導入版の詳細はこちらをご覧ください...
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