授業を行う上での注意点や事前準備
この動画から学べること
概要
患者さんに信頼してもらいながら、的確に症状を聞き取っていくためのコミュニケーションを練習します。
Active Learning Online (ALO) について
Active Learning Onlineは、文部科学省の大学教育再生加速プログラムテーマI「アクティブ・ラーニング」に採択された全国の9つの大学が、連携して情報や成果の発信を行うポータルサイトです。
採択校である本校の授業動画については、以下からご覧いただけます。
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Q.徳島大学のFD活動について
川野 卓二先生(以下、川野) 徳島大学のFDには少し長い歴史があると、私たちは自負しています。大学でのFDの義務化が行われる7,8年ぐらい前から、組織的なFDとして、全学のFD活動を立ち上げていました。
先生方のFDになるわけですが、私たちは、今「教育改革推進部門」として存在しています。最初は「大学開放実践センター」という部局に私たちはいました。そこは公開講座を通じて、一般の方々や市民の方々に大学の教育資源を開放するという部局でした。
その私たちの部局に、FDが舞い込んできたのです。そこでの私たち自身の役割は、学外へ向けての大学開放から、学内に向けての教育資源の解放でした。先生方の生涯学習のお手伝いという意味合いで、私たちは、今FDを行っています。
Q.FDを推進するにあたって苦労したこと
川野 どこの大学でも感じていると思いますが、先生方がその場に揃っていただく「出席率」の低さがあるかなと思います。
確かに歴史が少し長くなりましたが、FDの活動に参加される先生方が、毎回同じ顔ぶれになってきてしまっているところが、気になっていることです。授業に対する先生方の色々なお考えがあると思いますが、FDを通じて自分たちの授業を自分たちで変えていこうという気持ちについて、少しまだ理解が低いのかなと気にしています。
Q.FDによる効果を感じられる部分を教えてください
川野 以前は大学開放実践センターで、今はどちらかと言えば本部機構の中に属してという形で、総合教育センターとしてFDを行っているのですが、全学の先生と接することによって、先生方の受け止め方が少し違ってきているかなという気がしています。
以前は学内のある一部局でしたが、本部に属する部局という位置づけに少し変わったことで、先生方の受け止め方も変わってきています。また、長年のFD活動がありますので、先生方にとっては少し諦めの部分があるかもしれませんが、FDがそこまで抵抗なく受け入れられてきているのかなと思います。
実際にAPの活動を通じて、今回私たちが採択を受けたのは、APのテーマ1のアクティブ・ラーニングという領域なのですが、この領域でそれぞれ色々な狙いを持って先生方にこのプログラムを行っています。その狙いにおいて、学生に対する狙いと教員・先生方に対する狙いの2つ持っているところが、徳島大学のAPの1つの特徴かなと思っています。
Q.APについて教えてください
川野 APは「大学教育再生加速プログラム」という意味ですが、再生加速(Acceleration)という言葉のAが使われています。これまで大学が取り組んできたFDのペースを、APの活動を通じてさらに加速しようということです。
これまでの実際のFD活動では、FDをする側とされる側というと、「先生方に対して」が中心だったかと思います。しかし、APの活動を通じて、SIH道場などの学生に対するFD活動を行うようになりました。
それと同時に、先生方がプログラムに参加することを通じて、アクティブ・ラーニングについて実際に体験していただけるので、教員にとってもFD活動になっているところが特徴だと思います。
Q.APの取り組みについて感じていること
川野 徳島大学でのFDの歴史は長いのですが、大学で行っているFDが組織的なFDという点、最初から行われている点が徳島大学の特徴です。
大学の執行部から私たちに対して、「FDを」という声があったわけですが、実際にそれを組織的にという形で学部のFD会、同時に全学的なFDが、最初は専門委員会という形で発足していました。数年前に、その委員会は専門委員会の「専門」が取れました。
単に「FD委員会」という形ですが、学内の大学教育委員会や学生委員会と同等のレベルに上がっているのです。これは、大学側がFDに対して、力を入れている証拠かと感じています。
つまり、執行部の理解もあるということです。私たちは、そういう教育がどれほど大切なものかを執行部自身が理解し感じていらっしゃることを、学内の先生方にも伝えることができたらと思っています。
Q.APの今後の展開について
川野 徳島大学の大きな特徴の1つは、理系中心の大学であるところかなと思います。今回、撮影した蔵本キャンパスでは、医学・歯学・薬学という健康系の学部が存在しています。その3つが1つのキャンパスに揃っている大学は、日本でもとても珍しいと思っています。
もう1つのキャンパスがあるのですが、そちらでは理工学部・生物資源産業学部・総合科学部という3つの学部が存在します。その中でも、総合科学部のみが、ある意味文系です。それ以外は全て理系の学部であることが、徳島大学の構成の1つの特徴かなと思います。
理系での学びは数学が中心なので、何かスパッと答えを出して割り切れるという特徴をイメージされるかもしれませんが、段々と大学での学びの中にファジーな部分が存在しています。
先生方の授業で、今はスパッと答えを出すのではなくて、学生との絡み合いやインタラクションを通じて、授業を作り上げていく部分がとても重要になってきているかなと思っているのです。
大学での学びは、小中高との教育と違って先生が答えを伝える授業ではありません。私たちの今回のAP事業は、これまでの学びのスタイルを少し変えていただくために、できるだけ早い時期からこの大学で学びを体験してもらおうと思い、大学の入学初年時のオリエンテーションから実際に行っています。
SIH(Strike while Iron is Hot)は「鉄は熱いうちに打て」という意味の言葉なのですが、そこから取ってきて、そういうプログラムを行っています。
学びという時に、答えがない授業は、高校からの学生にとって少し不安なところがあるかなと思うのですね。自分がやっていることがこれでいいのかどうか、最初ははっきりと分からない部分があると思います。でも、SIHというAPの事業やアクティブ・ラーニングという色々な活動を通じて、大学での学びを実際に体験してもらおうと思っています。
私たちが今回取り組んでいるAPで学生たちに育てたい能力は、能動的学習で実際に必要な文章力やプレゼンテーション力、協働力です。グループとして課題に取り組み、その問題を解決していくという力ですが、高校からの学びとは違った形で体験してもらおうと思っています。そして、それ以降の教養教育や専門教育へ繋げていこうと思い、取り組んでいます。
Q.高校の先生に向けて
川野 高校までの学びから違う学び方をするので、最初、学生にとっては少し不安なところがあるかなと思います。
ビデオ撮りを行っていただいた授業では、模擬患者さんを活用しました。でも、もし実際の患者さんの場合、学生がやってきて入れ替わり立ち替わり同じ質問をしたり、様々な質問をしたりしている中で、学生自身がなにか大きな問題を犯して取り返しの付かなくなるかもしれません。
そこで模擬患者さんを活用することで、大体いつも同じ状態で、大体同じ応答が返ってくるという経験ができるので、安全な状態で学生が医療面接の事態に取り組むことができるという利点があると思います。
実際に専門の領域の実務になって、患者さんと接する前の段階でこういう機会を得ることは、とても必要なことだと思っています。
これは、医療面接だけではなく、大学での学びや色々なものに関わってくると思います。高校までの段階の答えがある授業では、「何が答えなんだろう」と考えていった時に、答えを見つけて安堵する部分があったかなと思います。でも、今その次のレベルとして、「これも答えかもしれない。これも答えかもしれない」と答えを出すこと自体が、実は学びにとって重要なことなのだと思います。そういうレベルが存在するかなと思います。
アクティブ・ラーニングやグループ活動を通じて、様々な人々や学生の考えに接して1つの答えを探すのではなくて、たくさんの答えをお互いに話し合いをしながら見つける。もしくは、何かより良い答えについて、お互いに気づいて作り上げていくという要素もあるのかなと思います。
徳島大学で行われているそのようなアクティブ・ラーニングの中での安全な環境を提供することで、学生が様々な可能性に対してチャレンジして、本当にアクティブに取り組むことができる状況を作っていこうとしています。
そういうプログラムを提供できているのではないかなと思っています。
Q.最後に
川野 授業改善においては、ほとんどの先生方が改善したいと思っているはずですよね。もしそうでなければ、おそらく先生は続けないほうがいいだろうと思いますが、いま、こういう形で組織的なFD活動という側面が強調されています。
「組織的な」となると、どこかで誰かが準備をしていて、それに携わる先生にとっては「やらされ感」が少し出てくるのかなという気がします。しかし、そもそもFDとは何かというと、先生方の個人的なFDや、個人内でのPDCAサイクルを回すという営みだと私は思っています。
つまり、私たち自身はできるだけ組織的なFDを先生方に提供しようと考えていますが、先生方の意識として、個人的にはFDを自分で自分に課していただきたいと思っています。
自分で授業改善の目標を立てて、自分で様々な取り組みを実際に行っていただき、その中で私たちはデータを集めなどのお手伝いやアイディアの提供をさせていただきます。
そして、お互いにそれを振り返り、自らの授業改善を行っていく中で、先生方のアクティブ・ラーニングを私たち自身もお手伝いできたらなと思っています。...
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