授業を行う上での注意点や事前準備
この動画から学べること
概要
患者さんに信頼してもらいながら、的確に症状を聞き取っていくためのコミュニケーションを練習します。
Active Learning Online (ALO) について
Active Learning Onlineは、文部科学省の大学教育再生加速プログラムテーマI「アクティブ・ラーニング」に採択された全国の9つの大学が、連携して情報や成果の発信を行うポータルサイトです。
採択校である本校の授業動画については、以下からご覧いただけます。
>> 授業動画を見る <<
Q.AP(大学教育加速プログラム)について
新原 将義先生(以下、新原) 我々は、本学で採用している「大学教育再生加速プログラム(Acceleration Program)」を、縮めてAPと呼んでいます。
文部科学省におかれている「中央教育審議会」と呼ばれる、小学校教育から高等教育までの方向性を審議する場所があるのですが、そこから出てきている意見を元にしています。
「大学教育再生加速プログラム」という名前にはなっているのですが、大学教育の入り口から出口、つまり入学から卒業までの現状を変えたり、その質を上げたりすることを目標にしています。それを通じて、高校から大学までを一貫している文化も含めて、大きな改革を起こしていこうという事業です。
例えば、高校の授業がどうしても詰め込み型になってしまうと言われることを高校の先生方に言うと、高校の先生は「いや、それは大学の入試がそうなっているからしょうがないだろう」「知識の量で結果が左右する入試を求められるのだから、しょうがない」などと思うわけですよね。
こういった問題では、高校の先生方に「高校だけで授業を変えなさい」と言っても、高校の先生方は「大学の入試を変えてくれなきゃ」と思いますよね。あるいは大学側に「その授業の仕方を変えなさい」と言っても、大学側は「いや、高校で知識詰め込み型の授業しか受けていない子たちが来てしまうのだから」とおっしゃると思います。
つまり、大学だけを変えてはいけないし、高校だけを変えてもいけないのです。それだけでは対処できないところが、ここ数十年の日本の教育界で、非常に大きな問題になってきていました。
例えば、学力を測る時の公平性を保つために、今までは一点一点を厳密に測っていましたが、その公平性に対する概念そのものがおかしいのではないかという話になりました。大学や高校の教育が変わっていかなければいけないのです。
そこで、それまで変えられなかった根底にある文化や価値観を高校と大学が一丸となって変えていこうとして始まったのが、「大学教育再生加速プログラム」という事業の大まかなところだと思っています。
大学教育再生加速プログラムの中には、いくつかのテーマが設定されているのですが、本学はその中でテーマ1のアクティブ・ラーニングという事業に採択をされています。テーマ1の採択校は全国で9大学あるのですが、その中で国立大学は本学だけです。
これまでは大学ごとに情報発信をしていたのですが、今年度からテーマ1に採択されている9校の各大学の取り組みをとりまとめて、テーマ1全体としての情報発信を行うことになりました。
つまり、アクティブ・ラーニングというキーワードを元に、大学教育改革を行っている全国の大学の先駆的な立場として、9校の取り組みをまとめて情報発信をする役割を担っています。
テーマ別幹事校の応募がかかったのですが、今年度から本学が採用されまして、現在その9校の情報をとりまとめながら、全国に対して情報発信を行っていく事業を進めているところです。
Q.徳島大学のAPの具体的な内容について
新原 SIH道場アクティブ・ラーニング入門という科目を、1年次の必修に設ける形で申請をしています。SIHは「Strike while the Iron is Hot(鉄は熱いうちに打て)」の頭文字です。
これまでの大学教育の中では、自分で文章をまとめたり、プレゼンテーションをしたり、一人で何か知識を覚え込んだりという機会が多くありました。対して、立場の違う他の人たちと一緒になって何かのプロダクトを生産したり、人と協働したりといった機会が非常に少なかったのではないかと思います。
もちろん歴史的にこうした取り組みをやってきている大学もあるのですが、そういった機会は卒論や大学院の研究、その研究室に配属された後の研究室ごとのプロジェクトなど、大学生活の中でかなり後ろのほうに固まってしまう傾向にありました。
そのため、「卒論を書かなければいけないのだから、それに必要な知識を1年次2年次のうちに積み重ねて準備していきましょう」という形で設計されることが、大学教育では非常に多かったわけです。
しかし、基礎的な事項を全て学んでから現場に行くのではなく、その現場に行ってみて初めてその知識の重要性が分かったり、自分に足りないものが何だったのかを知ったりすることは多々あるわけですよね。
人と協働したりプレゼンしたりという機会が、大学の生活の中の最後にしか用意されていないのではなく、大学の入り口、つまり入学初期の時期に設けてしまおうという取り組みが、SIH道場というアイディアの大元です。
具体的に言うと、現在全学で16個のプログラムが動いていて、学生の専攻や学部、学科によって分かれているのですが、所属しているプログラムによって、やっている内容は全く違います。
なぜかというと、みんなに役に立つものは同時にみんなにとって役に立たないものであるわけですから、全ての学部学科の学生に合う汎用的な形でアクティブ・ラーニングの授業を考えて、それをトップダウン的に下ろしていく形ではいけません。
さらに、本学の場合、理工学部、昔でいう工学部や医療系の学部の一部では、早期に現場を体験してみたり、文系の学部の総合科学部では、1年次の前期にアカデミックライティングのスキルを鍛える読書レポートという企画が用意されたりしていました。
つまり、我々がSIH道場で設計して、1年生に体験してもらおうと思った趣旨に合致する企画は、各学部で一部ずつ、すでに用意はされていたのです。
そこで、従来から行われている企画を中心に、足りないところを独自の企画で埋めていただく形で16プログラムを組み立てていただくよう、各学部・各学科にお願いをしました。ですから、学科や専攻によってやっている内容が全然違うわけです。
ただし、その時に我々がお願いしていることは、絶対に1年前期のうちに全ての学科で、文章力・プレゼン力・協働力の3つのスキルを体験する場所や機会を設けてくださいね、ということです。新しいプログラムを使っても既存のプログラムを使ってもいいけれども、この3つの機会は絶対に設けてください、とお願いをしています。
加えて、3つの体験をした後に先生方からフィードバックをいただいたり、自分でまた振り返りを行ったりして、体験を振り返る機会を絶対に設けてください、と言っています。3つのスキルとプラス1つ振り返りの体験の、計4つの要素は絶対に1年次の前期に盛り込むよう16プログラムにお願いをして、現在進めているところです。
Q.16のプログラムによって起こった変化
新原 まず一番大きいものとしては、教員の変化があります。SIH道場での目標は、学生にプレゼンやアカデミックライティングの体験をしてもらうことです。そして、全学の全ての教員に、アクティブ・ラーニングや反転授業などの新しい授業のやり方を体験してもらうということもあります。
もちろん各プログラムでそれぞれ担当している先生は違うのですが、1年ごとにどんどん更新していってもらっています。そして最終的に、全ての先生方がSIH道場を1回は体験したところまで持っていこうというのが、目標になっています。
それが今年度、平成28年度で2年目です。私は28年度からの着任なのですが、色々な先生方からのお話を伺うと、先生方がそういった取り組みをしていく中で学生たちの反応を見て、「あ、確かにこういうことって必要なんだな」「こういうことって学生にとってはとてもいい機会なんだな」と感じてくださっているそうです。
もちろんこういった全学的な取り組みは、やはり最初は反対されるのですが、徐々にそれに対して肯定的に向き合ってくださる先生や、協力的に我々と連携してくださる先生方が増えています。
我々の体験ベースですが、一番大事なところである教員間での価値観の共有や、旧来型の古い価値観を刷新していくことを考えた時には、非常に大きい成果なのではないかと思っています。
Q.今後目指していきたいこと
新原 高校の先生方や大学の教員とアクティブ・ラーニングについての話をしていると、よく出される問いかけの一つに、「アクティブ・ラーニングをやったことで、学生のどういう能力が伸びた、どういうスキルが増えた、あるいは減った、ということを測定しなければいけないんじゃないの?」「そういう測定を前提にしてアクティブ・ラーニングをやったら、どういうスキルが伸びるの?」と求められる場合があります。
それに対して私はいつも明確には答えないのですが、それはアクティブ・ラーニングが現状、一つの授業の型を指す用語ではないからです。
元々、アクティブ・ラーニングと言われてきた背景には、「学生がずっと座って聞いているだけで、手も何も動かさない授業はなんとかして脱し、変えていかなければいけない」という大きな敵がいたからです。しかし、その敵はみんなが共有していたけれど、その先どのような授業をやっていくかは、授業者の個性や経験に非常に大きく任されていた、ということがあります。
現在もアクティブ・ラーニングと一言で言っても、例えば「クリッカーを取り入れればアクティブ・ラーニングになるんだ」と取り入れていただいている先生方もいると思いますが、そうではありません。
従来から、ご自分で授業に創意工夫を凝らしてこられて、後で振り返った時に「ああ、そういえば今、アクティブ・ラーニングという言葉があるな」「あ、自分がやってきたことは、アクティブ・ラーニングだったんだ」と、後付け的に意味づけをされる先生方もいるわけですよね。
その現状を考えると、アクティブ・ラーニングの授業の形式は、今のところ明確に定めることが非常に難しいのです。定めてしまうと、従来から創意工夫をしてこられた先生たちの工夫を拾い上げることができなくなるのではないかと危惧しています。
つまり、「授業の形式がこれ」と定めることは現状かなり難しいですし、そういった授業の効果を一概に決めることも難しいです。私は今のところ、無理であると思っています。
ただ、本学のSIH道場の取り組みや、APテーマ1で採択されている各校がやっていることは、確実に意味があることだと思っています。
どの取り組みでアクティブ・ラーニングを考えていっても、学生が大学や教室の外に出て行ったり、撮影していただいた長宗先生の授業のように、大学外から来た人と交わったりする機会はどこかで必然的に出てきますよね。
そういった機会は、私は非常に大事だなと思っています。大学で得た知識は、大学の中にずっと閉じこもっている限り何の役にも立たないわけであって、大学で培った知識や技術を世の中の人と共有して初めて、意味のあるものになるわけですよね。
今まではそういった機会が、例えば医療系で言うと、資格を取った後のインターン時期などにありました。要は、自分が社会人になるための入門編、あるいは自分が社会人として生活していくその先の初歩編として用意されることが非常に多かったのです。
しかし、大学は職業養成の場所ではなく、やはりリベラルアーツも非常に重要な大学の要素だと思います。そう考えると、「社会人の卵として」よりも、「大学生として」しかできない社会貢献が確実にあるはずなのです。
大学生としてしかできない社会貢献の一つの重要な機会が、テーマ1でアクティブ・ラーニングに採択されている各9大学の取り組みの中に、何らかの形で出てきているのですね。私は大学教育にアクティブ・ラーニングを導入する一つの重要な意義は、そこにあるのではないかと思っています。
能力や知識など、何か測定できるものを育てたり伸ばしたりという方向性ではなく、学生が学生としてしかできない社会への関わり方があると感じています。
「学生としてしかできない」というのは、必ずしもアマチュアということだけではなくて、一人前の社会人ではないけれど、リベラルアーツや何かしらの専門領域の体系的な知識を学んだ学生にしかできない、という意味です。
そういう学生にしかできない社会貢献のあり方、社会に対する働きかけ方を体験する一つの重要な機会が、今後、大学におけるアクティブ・ラーニングとしてもし広まっていくのであれば、非常に大きな価値になっていくのではないかと思っています。...
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